エースは氷の魔剣士をキャプチャーし、街に戻った。
街に戻ると子供から老人など、色々な人達から感謝の言葉を貰った。
初めての経験で、エースは照れて顔を赤くしつつも丁寧に対応をした。
対応が終わった頃を見計らったのか、1人の龍喚士が近寄って来て、クロッカスの長老が呼んでいると言伝をエースに伝えた。
その翌日、エースは長老が待つ執務室へと足を運んだのだった……。
…………はい、回想終わり。
オレはそんなこんなで執務室に来ていた。
「エースさん、よくお越しくださいました。水の古老がお待ちです。さぁ、こちらへどうぞ」
執務室に入れば龍喚士の人が待っていた。多分秘書みたいな役割の人なんだろうなと思いながら後ろを着いていく。
「ほっほっほ!久しぶりじゃなエース!!」
「え?ヴァハトンさん!?なんでここに!!?」
「伝え忘れておったがの、わしは水の古老……。この街を治めるギルドの長老なんじゃよ」
執務室の一番偉そうな席に、ヴァハトンが座っていた。コレにはとても驚かされた。
「なぁに、かしこまる必要はないわい。いつも通り“ヴァハトンおじいちゃま”と呼んでくれればわしは満足じゃ!」
「急に捏造しないでほしいです。オレ一度もそう呼んだことないですよ」
「辛辣なツッコミじゃな」
「すみません、てっきりボケたのかと」
「ボケ違いじゃな」
エース、ヴァハトンの(漫才的な)ボケを(老化による)ボケと勘違いする。しかしヴァハトン、愉快そうに笑う。懐深すぎませんかね?
「オホン……、おぬしの評判は聞いておるぞ。早速活躍しておるそうではないか」
「新米ですからね、実績残せるように頑張らないと!」
「うむ……、よい龍喚士の顔をしとるのう。心配は無用じゃったわい」
エースの顔を見て、嬉しそうにヴァハトンは笑う。試験に合格したとは言えど、エースはまだ子供だ。この人なりに気にかけていたのだろう。ホントにいい人だなこのじいさん。
「安心したところで1つ、おぬしに仕事を頼んでもいいじゃろうか?」
「仕事?」
ヴァハトンは近くに控えていた龍喚士に視線を向ける。その龍喚士は頷き、エースに仕事の内容を話す。
「実は水炎の塔に住むモンスターが近頃活発な動きを見せておりまして……。この原因をエースさんに調査していただきたいのです」
「以前は静かな場所じゃったんじゃが、どうも気になってのう……。信頼できる者に頼みたかったんじゃよ。どうじゃ、引き受けてくれんかのう?」
「……分かりました。その仕事、引き受けます」
エースは少し考え、ヴァハトンからの依頼を了承する。
「うむ!それではおぬしに任せよう。水炎の塔は街の真東にあるからな、キチンと準備して調査にあたるのじゃぞ」
「了解しました」
「……そんな固くならんくってもいいんじゃぞ?」
「じゃあタメ口でも?」
「おぬし極端じゃな?」
軽く雑談し、エースは執務室から出ようとする。その時、ヴァハトンから声がかかった。
「あぁ、そうじゃ。今日はアルスは一緒に居ないんじゃな?」
「アルスは今日クエスト受けて街の外に行ってます。なんでも「命の石はいくらあってもいい」とかなんとか……」
「なるほどのう、2人セットという印象が強かったから少し意外じゃったわい。アルスに会ったら此処に来るよう伝えてくれんかの?」
「分かりました、後で伝えておきます」
エースは今度こそ、執務室を後にした……。
ーーーーー
エースは水炎の塔のボス———烈火のエンテツを倒した。此処までの過程を全カットという暴挙である、カメラマンブチ切れ案件だ。
ボスを難なく倒し、勝利に喜んでいるエースの背後から声がかかる。
「中々やるじゃないか」
エースは突然の声に驚き、後ろを振り向く。
そこには、頭に2本の角が生え、背中から翼が出ている美人なお姉さんが居た。
「お前、名前は……?」
「え、エースです」
生まれてこの方、美人に名前を聞かれるなんて経験が無いエース。少し戸惑いながらもちゃんと答えることができた。
「エースか……噂は色々と聞いているぞ」
「まだ龍喚士になって一日二日くらいなんですけどね……ところで、貴女は……?」
「私はソニア。ギルドに所属する龍喚士だ。ヴァハトンからの頼みで応援に駆けつけたんだが……余計なお世話だったようだな。ルーキーとは思えない戦いぶりだったぞ」
このお姉さん、先輩だったのか……なんて考えていたら急に褒められ、エースのテンションは絶好調。今なら多分10コンボなんて余裕で決められそうだ。
しかし、そんな様子に気付かないソニアは気にすることなく続ける。
「しかし、この辺りの様子……少しばかり気になるな。烈火のエンテツはこの辺りに生息していないモンスターなんだ。あいつのせいでここに住むモンスターが騒ぎ出してしまったのかもしれない……」
ソニアは少し考えこみ、エースに伝える。
「まずは街へ戻ろう。このことをヴァハトンに伝えるんだ」
「ふぅむ……、そんなことがあったのか。2人ともご苦労じゃったのう」
「近頃モンスターの異常な行動が度々報告されているらしいじゃないか。今回のことも関係があるのだろうか……?」
「まだ分からんわい、引き続き調査の必要がありそうじゃのう」
ヴァハトンとソニアは近頃起こっている異常事態と今回のことを少なからず関係があると睨んでいるようだ。エースはそんなことを全く知らないため、話について行くことができない。と言うか頭がショートしている。
「エースよ。よくぞ務めを果たしてくれた。危ない目に合わせてしまったが、無事に乗り越えてくれて助かったわい」
「……え、あ、いえ。これくらいお安い御用です」
「たまぁ〜!」
ショートしていた頭を無理矢理起こし、返事をする。
が、何故かタマゾーも返事をした。
驚愕し、目を見開くヴァハトンとソニア。コイツ自分から出てきたなと謎に感心しているエース。目に映る全ての物に目を輝かせ、あちこちに駆け寄って行くタマゾー。この場を混沌が支配していた。
「なんじゃ?あのモンスターは……。勝手に龍喚したように見えたぞ!?」
「スゴイですよね、いつの間にこんなことが出来るように……」
「親目線か!?」
クエストに行く前とは打って変わってボケとツッコミが逆転しているエースとヴァハトン。
とりあえず3人はタマゾーに駆け寄る。タマゾーは形が変わっている花瓶に夢中になっていた。
「その花瓶が気になるのか?そんなもんでよければおぬしにやるぞ?」
やはり懐が深いヴァハトン、タマゾーに花瓶を譲ってくれた。
タマゾーは丁寧にお辞儀し、喜びながら花瓶を受け取った。
タマゾーが花瓶に触れた瞬間、一瞬別の姿に変身した。
この3人は知らないことだが、ヴァハトンが花瓶に使っていた物はタマゾー専用のクロスギア———以降はタマゾーアーマーと呼称———で、別のモンスターの力を一時的に使用することが出来るものだった。
因みに、ヴァハトンの花瓶はヒノカグツチのタマゾーアーマーだった。神様じゃねぇかとんでも無いなおい。
「な……なんだ、このモンスターは……!今、一瞬だったが変身しなかったか!?」
「う……うむ、わしの目にもそう見えたぞ!こやつはいったい……?」
「え〜と……」
エースはどう説明説明するか悩んだ。ぶっちゃけあの時のことは正直に言ってもなに言ってんだコイツと思われるくらいには現実味がない現象だからだ。
エースは悩む、正直にそのまま伝えるか、良い感じに誤魔化すか……。しかし誤魔化しても後々ボロが出れば意味がない。一度イマジナリーアルスに相談しようか……なんて考え始めた時、D-リンクLI○Eみたいなものに通知が入った。
残像が見える速度で連絡を確認してみれば、アンジーヌからだった。
『エース、今どこに居るんだい?そろそろうちに帰っておいで。あんたに聞きたいこともあるからね、待ってるよ』
それは、地獄に垂れる、蜘蛛の糸であった。
コレを利用するしかない!と帰宅する動作に入る。
が、ヴァハトンが声をかけてくる。
「どうしたのじゃエース。もしやアンジーヌからか?」
「はい!早く孵って来いと連絡が入りましたので帰宅させてもらいます!!」
「お、おう……さっきのモンスターも気になるが、それは別の機会に尋ねるとしよう。ご苦労じゃったな、何かあればまた声をかけさせてもらおう」
「はい!失礼します!!」
エースは音を置き去りにする速度で執務室から
ーーーーー
エースが去った後の執務室にて。
ソニアはヴァハトンに尋ねる。
「ヴァハトン、あの子供のことなんだが……」
「そうじゃ、あの男の血を引き継ぐ者がこの島へと戻ってきたのじゃ」
「やはり、そうだったのか……。どうりで懐かしい雰囲気を感じたハズだ」
「これは、良いことが起きる前触れなのか、はたまた悪いことが起きる前触れなのか……。全く、あやつの将来が楽しみじゃわい」
「……少なくとも、最悪な事態にはならないだろう」
「……ほう?どう言うことじゃ?」
「あの子供と一緒に、アルスもこの島に来たのだからな」
ソニアは、意味深にそう答えた。
主人公、登場せず。