Fate/coin a term 東京模倣聖杯戦争 作:空白の端
/log:2014-12-21 06:56
朝。目覚めの時間だ。
……いつもならば窓の横からの光で目が覚めるようにしているのだが──今日はそうはならなかった。長身の女──ランサーが、俺のベッドの横に立っていた。本当に、ただ立っているだけで、ここまでの圧迫感。いや、いい加減慣れたはずなのだが──朝一番の寝ぼけ頭じゃ無理もない。
「おはようございます。マスター。今朝は私が
確かに、リビングの方からはよく焼けた肉の濃厚でいて野性味溢れる匂いがする。──いや、肉!? こんないい匂いのする肉なんてこのトウキョウじゃめったにお目にかかれない最高級品のはずだが。
「マスターの御父上に頼んで食材の買い方を教えてもらったのですが……やはり座から知識は得ていたとはいえ実際に体験すると……不思議ですね」
そういって早く出てくるように、とだけランサーは促して部屋を離れた。今日は日曜日。父さんも休みのはずだ。待て、さっきランサーは父さんに食材の買い方を教えてもらったって──
「ちょっと待てよ、ランサーが普通にスーパーに入ったって!?」
俺は着替えもそこそこに部屋から転がり出ると、そこはかとなく嬉しそうにしている父さんとランサーがそろって椅子に座っていた。ご丁寧に3人分、肉がうまみそのものを主張するように湯気を上げている。
「ああ、おはよう正一郎。まったくひどいな。こんなに素敵な彼女さんができたというのにどうして教えてくれなかったのかい?」
──どうやら、父さんはとてつもなく大きな勘違いをしているようだ。俺と、ランサーが?……だが、ランサーもまんざらでもないような表情をしている。何なんだこいつらは……調子が狂う。でも、そうか。母さんは魔術の話を父さんにしたとしても、聖杯戦争だとかそんなことまでは教えていなかっただろうし。
でも、父さんのうれしそうな顔は久しぶりに見た気もする。ここで否定して悲しませるぐらいだったら──しないほうがましだろう。
「確かに、父さんにはまだ会わせていなかったな。この人は別に、彼女ってわけじゃないけど、友達だ。うん。父さんも変な気を起こさないでくれよ」
「こ、困ります、マ……正一郎。私たちは友達というわけじゃなくてどちらかと言うと……あっ」
主従関係、と続けるつもりなのかはよくわからないが、これ以上ランサーを喋らせるのもどうかと思って机の下でランサーの脚を蹴った。
「詳しい話は後でしてやるから、父さん。まずは食べようよ。こんなお肉食べるの俺も久しぶりだからさ」
いただきます。そういって俺は目の前の皿にもはや暴力的なまでに俺の食欲をそそる肉に食らいついた。瞬間、口の中に広がるのはあまりにも濃厚な肉汁と噛めば途端に崩れる繊維。こんなに美味しい肉なんて今まで食べたこともない。普段食べてきたマケドドナルドの肉なんてただの紙切れみたいなものだ。
「いかがですか? 正一郎。あまりお金はかけられないとのことで、一番安い人工肉しか買えなかったのですが……その、お口に合いましたか?」
しまった。頬張りすぎて俺の口からはムグムグやらフグフグと情けない声しか出てこない。水で必死に嚥下しながら俺は親指を立てた。父さんも人工肉だよな? これ、といちいち驚きながら食べていた。ゆっくりと時間の流れる平和な朝。少しくらいはこんな日常が続いてほしい、と思ったのも確かだった。母親がいたら、こうだったのだろうか。しばらく抱かなかった
そこに、携帯IRC端末の鳴る音。この着信音は俺じゃない。父さんだ。
「ええっ!? テレビカードの機械が故障? そんなの総務にやらせておけばいいだろ……直し方なんて誰も知らない? 分かった、分かりましたから」
すまん、と父さんは俺とランサーに詫びてから肉と白米をかっこんで急き立てられるように家を出て行った。
残された二人にあるのは、静寂。俺はとりあえずこの目の前の肉を食べることから続けた。目の前のランサーは俺が肉を頬張る様子をずっといとおしそうに眺めている。その視線はただの主従というより最早──それを超えたナニカにも。
「マスターは先ほど、私との関係について御父上に別の言い方をしましたが……それは?」
「別に。父さんは魔術とは何の関係もないところで生きてきたからな。ランサーがとか聖杯戦争が、とか言って混乱させたくないからな」
父さんのいなくなったリビングで、俺はランサーが淹れてくれた茶を飲む。聖杯戦争が始まって、もうすぐ一週間だ。思えばいろんなことがあったような──気も。
「そうですか。……マスター。今日は何を?」
思えばまだ、
「今日はランサーの好きに決めていいよ」
「それでしたら……ここはやはり、あのバーサーカーが気になりますね。あの剣……愛する人の気配が、します。それは、
何やら物騒なことを言いながらランサーは椅子から立ち上がった。やっぱり、ランサーは美しいと思う。──素敵な彼女さん──父さんの冗談交じりの一言を、心は取り消したくないと言っている。まるで、母親のような。恋人のような。友達のような女のヒト。でもそれでいて、俺よりもずっと──恐ろしい。
そんなことを考えていたからか、動きが止まっていたようだ。ランサーはもう玄関の前で今にもドアを開ける、といったタイミングだ。
「あー、待て。さっきスーパーに行ったって言ってたけど……もしかして、その格好のままか? もしかして、父さんと二人で行ったとかそんな馬鹿なことは言わないよな?」
俺の問いかけにランサーは何がおかしい、というような顔をしている。──嫌な、予感がする。
「ええ。この格好で行きましたが、ダメでしたか? 御父上は──メモ書きをくれただけです」
この、絶望的にこのトウキョウに似合わない格好で。スーパーをほっつき歩いたというのか。せめて俺の家に入るところを見られなかったことを祈ろう。
/log:2014-12-21 ██:██
蟲が、時計の針を思わせるようにカチカチと顎を鳴らしている。私のナカで、ジッと息を潜めて殺害の快楽を待っている。
──それは、とてもよくないことだ。サツジンは、誰にも許されていない。ヒトが犯す究極の罪。
それでも。私の手は、口は、頭は。サツジンの快楽を忘れてなんていない。
じめじめとした路地裏にくすぶるのは朱色の霧。
息を吸い込むたびに粘性を持ったそれは私の肺に絡みついて、私という機能をマヒさせる。
血の匂いは、不安を覆い隠すための
血の海で、私は溺れている。私というニクタイは蕩け、一呼吸ごとに堕ちていく。死ぬことも、生きることもかなわない。
ほんとうは うれしいくせに
ワタシは せいふくしか できないんだから
蟲ごときが、私に成り代わろうというのか。でも、私はその蟲に成り代わられるくらいの存在であることも確か。
ユメと
「アーチャー、私はどれくらい、ヒトを殺した?」
確かにこの手で何人もヒトを殺したというのに、私はそれを否定してもらいたかったのだろう。返事が返ってくる確証もないのに、私は虚空に問いかけていた。返事がないのをみると、今日もアーチャーはまともに動けない私の代わりに戦場を飛んでいるのだろう。でも、彼がいなければ、私はもう自分をヒトの側においておけない。もう一度、彼と繋がりたい。昨日のように、彼の全てを受け入れたい。
自分が、どんどんヒトから離れていくのを感じる。その果てに、ヒトよりももっと
──幼いころ。
自分が
くもひとつない、ぬけるようにきもちいいあおぞらのひに、ひとつの
たった一つの小さな石に、つまずいて転んだ。地面に打たれた皮膚は裂け、血が止まらなかった。ぼと、ぼと、と音を立てて地面に落ちる血液。視界が、血の黒で覆われる。
いたいです。いたいです。だれか、助けてください。
でも、他人は私を遠巻きに眺めるだけで、私が少し動くたびに、他人は後ずさっていく。足元には、血溜まりなんじゃなくて、沢山の黒い蟲。うじゃうじゃと、私をあざ笑うかのように
これは、いつものことです。気にしないでください。立てません。助けてください。だれか、だれか。
──その日は結局、出血が収まるまでその場から動けなかった。やっと一人で立ち上がれた頃、私の目の前に広がっていたのはまっかな夕焼けの空。
とおくのほうから他人の歌う声が聞こえていた、なつのゆうぐれ。
その日から、私は他人と関わることをやめて、家からでなくなった。家にいても蟲蔵にいる時間が増えるだけだった。でも、他人の怪物を見るような視線よりはずっとマシだった。
おばあさまは家にいることを選んだ私に喜び、日に日に私のナカは蟲の比重が高くなる。その時にはすでに母親も、父親も妹を連れておばあさまの家から逃げてしまっていた。じきに、両親と妹は死んだと聞いた。とんだ変死、怪死だったそうだが、それを聞いても私は特に悲しむこともなかった。少しあるなら、死ねるなんてうらやましい。それぐらいだった気がする。
──過去の事ばかり思い出すのは、きぶんがわるい。はらがたつ。
こういう時、アーチャーがそばにいてくれたら、と思う。令呪はまだ3画、きちんと残っている。私と、アーチャーが繋がっている証。令呪を触ろうとして、手を少し動かしたとき。カラリ、と乾いたものが落ちる音がした。そういえば、今の私はどこにいるのだろう。そう思って体を起こすと──それは、死んだヒトの痕。頭が、私を見つめている。濁り切った水晶体。半分が無くなった顔。そのどれも、私を憎いというような顔に固定されていた。目算で、だいたい五十人。中にはただの骨もあった。ただ、全部が
「これは、何?」
血液の海に浮かぶ一つのニンゲンの島は、私が動いたことであっけなく崩壊してしまった。思えば、最初は白かったはずのシャツも、今は茶色の染料に染まっていた。
ツン、と鼻をつく濃厚なヒトの匂い。自分がその匂いなのか。それともこの地獄のすべてがその匂いなのか、私には判断がつかない。
ワタシと アナタで やったのよ
蟲のおとが。今は幻聴となって私に囁きかける。
こんなには イラナイって いったのに ころすのは タノシかった からでしょう?
ヒトを殺すのは、楽しい? そんなわけがない。だって、殺し方を私は知らないはず──だから。ただ、私のナカにいる何かが、殺人を楽しんでいるのを、私は見ていただけだ。けっして、私がやったことじゃ、ない。
詭弁 これは アナタの意思の 結果
蟲が羽化する音ばかりが響いて、あたまがおかしくなりそう。蟲たちは私の目の前で群を成して飛んでいる。私そっくりの形をとって、生意気にも自由意志を持つように振る舞っている。
髪の長い、女の頭。蟲たちは乱暴にそれの髪を掴んでぐるぐると振り回した。開いた口からひゅうひゅうと音が鳴る。それは、幼いころの私の泣き声そっくりだ。
タノシイの アナタの 真似
蟲は露悪的な行動をやめない。やめて、もうやめて。でも、私の喉には粘っこい血が絡みついてうまく音を出してくれない。イライラ、する。うる、さい。
これは、ただのワルい夢だ。私が、あんなことをするはずもないし、人を殺すわけもないし、蟲が喋るわけもない。こんな嫌なユメからははやく、さめなくては。
「悪い夢でも、見ているのかな。マスター」
真っ赤に染まる私をユメから覚ます、青い声。
まだ、この声があるからヒトでいられる気がする。私は真っ直ぐ手を伸ばして、声の方に触れて──
「え?」
ごろんと、世界がかたぶく。鞠のように視界は跳ねて、死体の山から落ちていく。ちょうど、山を見上げるような形で止まった。頂上には、上の方に右手を差し出し、首からぴゅうぴゅうと血を噴いているまぬけな人形が、置かれていた。──首を切られた。そんな簡単な事さえ、今の私が理解するまでにはいくばくかの時間を要する。でも、誰が。誰にも見つからないってアーチャーが言ったはずの場所に。視界がまた、転がる。蹴られたのだろう。目の前には何対かの、足。多分、3人。
首を切っただけで安心したのだろう。足は私の目の前から過ぎ去っていった。私という命を、いともたやすく消しておきながら。
──それって、私を舐めているから? 私が、こんなところにいる弱者だから?……何故だか。許せない、と感じる。一矢報いてやろうとか。たぶんそんな名前だと思う。
首から未だに止まることなく流れ続ける血液。襲撃者はそれに気づかずに、この死体の山を後にする。
馬鹿ども、め。首を切られたくらいじゃ、意識なんて途切れないのに。体はずっと
指を動かす、動けと考えても動きが伝わるのは数秒後だ。この差がもどかしい。でも、私の残ったほうの指はそれでもそばにあったヒトの額に小さな陣を描く。
「……
首がないから、声は出ないけど。指先に確実に術式を起動させる命令を送る。視界には、私をあざ笑う、私。
コの あたま イラない ね
流れ続ける血はぶくぶくと蟲に変生し、宿主の失われたアタマを補おうと蠢き合う。少しでも、宿主であろうとしているのか、切られた私の破片をそのアタマを振りながら探している。
──その体に、あまりに不釣り合いな巨大な頭。虫を無理やり寄せ集めてツギハギした、醜い、ワタシの新しい顔。キシキシと不愉快な歯ぎしりをしながら襲撃者に襲い掛かっていくのを、見た。
──意識が、朦朧とする。
アーチャーのカオを、もウいちど、ミたかった、のに。
カラダとアタマが、うまく、つながらナい。
これガ、最後の景、シキ 。
/log:2014-12-21 11:24
マスターをあんな場所に放置しておくのもどうだか、と独りホームズは路地裏を歩いている。大量のビルが
凍傷で黒く変化した指先が、道端に転がっていた。
「……あなたがアーチャーね?」
広場に足を踏み入れたホームズの背後に突如として現れたのはこの冬よりも冷たい気配。──予想していた通りの声。見るまでもない。声の主は──オルガマリー・アニムスフィア。そうだが、と一言だけ返すと、彼女は私が驚かないのに驚いたらしい。少し間の抜けた顔をしてすぐ──最初の冷静を装った顔に戻った。
「最近やたらと人が消えていると思ったら、あなたたちの仕業なのかしら? まぁ浮浪者の数十人が消えても──まだ関係はないみたいだけど」
「ご名答。だが、それは半分だけだ。人は消えているのではなく、私のマスターに喰われている。それを止めなかった私にも、まぁ多少の責任があるのだろう。実のところ、マスターの生死さえ私の目標には関係ない。たった一つの凡てが私の前で生まれてくれさえすればいいだけの話だ。そして、そのためには少々──君は、邪魔だ」
別段、隠すことでもない。あっさり認めてしまったものだから、彼女はわずかに眉をひそめた。もしかしたらハッタリのつもりだったのだろうが。だが、あのソラを塗り替える能力。あれは──少し、邪魔だ。ソラの権利は
塔で見た彼女の能力は主に、身体強化。とはいえ所詮は人間だ。サーヴァント化に当たって強化された私の肉体とバリツの前には児戯にも等しい。それに、
「食べてるって、あなたたち──」
「ところで、君はなぜ聖杯戦争に参加した。オルガマリー・アニムスフィア。君は、何のために聖杯を求める?」
魔力を巡らせ、宝具の対象を彼女に固定する。私の眼は、オルガマリー・アニムスフィアの一挙手一投足全てを見逃さない。
天文学にはあまり詳しくはないが……一つの巨塔を継ぐことになる少女というものは私にとって大変興味深かった。
「もちろん。お父様、いえ私たちアニムスフィア家の悲願である
──理想を語る、幼さの残る表情。その
「──君は本当は聖杯なんかが欲しいわけじゃない。その先にある、成果も結果も特に求めてなんていない。ただその後にある父親からの承認だろう。違うのか?」
少女は私の質問に答えない。ただ、ふるふると震える手を握り、唇をかむだけだ。その反応は、図星。
「想像に難くない。君の行動、思考を見るに君はきっと父親よりもずっと平凡な魔術師だろう。例えば、バーサーカーにセイバーと名乗らせたように。
君よりずっと優秀な魔術師だってごまんといる。父親の取っている弟子の中には君よりもずっと優秀な魔術師だっているはずだ」
「──黙りなさい。サーヴァント風情が、知った口を」
「黙らないさ。それとも、君の口から言ってもらう方がいいかな。私はそういう英霊だ」
完全であろうとした少女の綻び。私の眼はそれを見逃すこともなく、ただ宝具でその精神を融かす。少女の白い髪の毛が、魔力の流れにわずかに揺れた。
「私は──キリシュタリアが嫌い。……違う、私は彼を見るたびに苦しい。私の陰口を言うやつが嫌い。お父様の理想を貶す人たちが憎い。
──お父様は人間を愛しているって言っていたけど、私には理解できない。低俗な人類を、私は愛せるようになんてできていない。そんな私も嫌い。
聖杯戦争に私が派遣された理由? そんなの、キリシュタリアとかを出向けさせるまでもない、大したことないからだって解っているからよ。本当は私だって解ってるはず、はずなの。でも……」
でも。彼女は自分の口から出た言葉を取り消そうと必死だ。だが、もう遅い。私の頭に、
「だから、なんだっていうのよ! ああ、いらいらする! そんなこと……私が一番よく分かっているのに! 人の心に勝手に入り込んで言わせて! ほんっとうに、本当になんなのお前たちは!?」
「私は、名探偵だ」
「……そう。サーヴァントは殺せって最初に私が言ったものね!いいわ。殺してあげる。私の手にかかることを光栄に思いなさい……!」
衆目の下にあることすら考慮の外なのだろう。彼女は通行人に怪訝な顔で見られることすら厭わずに声を荒げる。その時、私の体内に一瞬の異常が入った。これは、マスターの危機を知らせるものか。
生命の昇華、流血の大地、一に至る無限、創造の喪失、殺害を否定するために殺害。増殖して分裂する意識、反転する地球、雨に焼け爛れたタンパク質の人形、腹のない獅子の四肢の死。永遠に続く天国への旅路という地獄。死体でできた自己の崩壊。ひとりでに歩き出すゴミ袋。花に見立てられて折られたヒト、他に私のいるワタシ。首のない目の形代、蟲のたかる都市、寒い、怖い、欲しい、欲しい、欲しくて、殺す、殺す、殺して、憎しみにさえ祝いを。
──なんだ、この悍ましい思考は。最早狂気ですらない。私が少々手を加えたとはいえ、ここまでのモノになるとは。自分の頭の中にあることは全て理解してきたつもりだが──これだけは、理解ができない。いや、私の頭が理解をしたからこそ拒んでいる。
「……マスターに、何かしたか」
「あら、やっぱり今になってマスターのことが心配? 見上げた根性ね。でも大丈夫。今私のサーヴァントとアインツベルンの子が向かったところ。心配しないでもあなたのマスターも、あなたも私達がしっかり地獄に突き落としてあげる」
もと来た道を辿ってマスターの元に戻っても彼女の従者かサーヴァントに殺されるだろう。そもそも、オルガマリーに背中を見せることになるのは避けたい。バリツも彼女には通じるかもしれないが、いくら武術とはいえ戦士の英霊にまではかなわない。
──自分よりも、ずっと先を見通している。これが、
「この街に来てから、なんだか魔術回路の調子がいいの。今ならこんなところくらい簡単に吹き飛ばしちゃうかも! 見てなさい、名探偵。アニムスフィア家の深奥を冥途の土産に見ていきなさい! 逃げようったって許さないんだから!」
勝利を確信した少女の顔にはさっきまであった負の感情の一つもない。そして、一つの魔術家系の深奥。私の知識欲はどうしてもその蠱惑的な響きに抗えない。しかし、このままでは██████。私がここで死ぬというのなら──人類に、逆転のチャンスを用意しなければ。私の行動は███に監視されている。もとよりここで退場するほかないのだと、█った。
「
──それは、私といういちサーヴァントを殺すには過剰すぎる魔術。天を編み、宇宙を一時的に自分のものとして運営し、ここに隕石として結果を落とす。あまりにもシンプルだが大それた魔術。私は、全てを見誤っていた。
(令呪を持って命ずる。アーチャー、今すぐ私のところに来て!)
それは、たった三回のみの絶対命令権。それを、今このタイミングで。最早気味が悪いほどに運がいい。体が解けてただの情報になるのを感じる。意識が、彼女のもとに飛んでいく。
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