Fate/coin a term 東京模倣聖杯戦争 作:ひつあつ
/log:2014-12-23
あたしの中に一瞬だけ何か
ホムンクルスってやつは、本当はどういうふうに生きるものなんだろう。あたしにはよくわからない。でも、あたしはあたしだし、そういうものなのか。
あたしはアインツベルンの創り出した
窓の外は、いつもと変わらない雑多で看板の文字にあふれた、溺れそうな情報の海。そしてそれを見下すようにそびえる大きな、大きい塔。正直言って、もう見飽きた。
オルガちゃんはあの地下空間で見たものがよほどショックだったのか知らないけど、ご飯を食べるのだって拒否してずっとベットの上で布団にくるまっていて、バーサーカーはずっとオルガちゃんのそばに立って離れようとしないし、ライダーはずっと霊体化して出てこない。
本当に、つまらない。あたしはこんなことをするために聖杯戦争に参加したんじゃない。あたしの予定だったら今頃とっくに勝利して、お城に戻っているはずなのに。
──お城に、あたしの居場所はない。そんなことはいい。
何かが、あたしにすすめといっている。稼働しなければ。早く、この茶番劇を終わらせなければ。███████のために、こんなことは終わらせなければならない。障害は全て排除して、死んでもなお、駆動しなければいけない。
「……うるさい」
本当に、どうでもいい。本当にどうでもいいはずなのに、あたしの身体はどうも動かないと満足してくれないみたいだ。あたしはオルガちゃんと違って、心が傷つくことも、病むこともない。
あたしの中で囁くうざったい声は聞かなかったフリをして、そっとドアを開けたけど、重い扉はいつも無遠慮に、ギギ、と音を立ててしまう。
オルガちゃんに少し悪いかな/悪いって何? と思いながら、ホテルの最上階の部屋を後にする。戦争っていうくらいだから、敵がここに攻めてくる、ぐらいのものを想像していたのに思ったよりここに住む人たちは大人しいみたいだ。
──めまい。
身体にかかる重さが。なにかおおきなモノが空を覆って、あたしを潰そうとしてた。──形而上ではなくなったものでも消えるにはラグがあって、まだ切れ端が質量を持ってソラを覆っている。
ここにいる人たちは人間だからか、異常とかそういうのは全く感じてないみたい。みんな不便とかそんなものもなさそうに、ただ朗らかに歩いている。あたしも忘れたいけど、それよりも頭痛が勝ってどうしようもない。
痛い、痛い、痛すぎて、壁に寄りかかる。でもニンゲンたちはあたしなんてまるで見えていないみたいに歩いて行く。壁はビックリするほど冷たいはずなのに、あたしの頬はそれを冷たいだなんて思わなかった。
──ダメだ。早くこの聖杯戦争を終わらせないと、って。私が言っている。
どこか引き込む気配と、雑に行使された魔術の痕。それは昨日あたしにはいりこんできた気配とどこか同じ。
「ここは……」
誰もいない路地の裏。でもここにはあたしを手招いている何かがある。
乱暴に切り分けられた術式、というよりは質量を持ったカタチ。
それに触れて──注ぎ込まれる、情報の渦。ニンゲンなら耐えられない、あまりにも濃縮された
◯*◯*
さて、この情報を見ている人が居るのは私が退去した後だが……今の世界はどうなっているだろうか? おおかたあの程度の知能なら──(聞き取り不可)を消したぐらいだろうか。ふむ、大変不味いな! 具体的に言うと、英霊そのものが成り立たなくなる恐れがある。
ああ、信用を勝ち取るために真名が必要かな。私はシャーロック・ホームズ。
──まぁ、それはいい。今はバベルの塔の話をしよう。もう、私に遺された時間も少ないからな。
今から話すのはバベルの塔というモノの存在の話だ。
アレは世界の
実のところを言うと、2015年の近づくこの今。地球上ではその
勘のいい君たちならわかるかな。
ニホンには今、バベルの塔が意識を向けているトウキョウ以外は存在しない。
私のマスターが働いていた前の職場は? 当然、崩壊して無くなった。存在そのものが無くなった。聖杯戦争の
この世界はいわば、泡沫のユメ。
バベルという
しかし、特異点になってしまった事実はもう
だが運のいいことにまだ彼女は魔力が足らず、完全にビーストに成ったわけではない。ただあれは……なんだろうな。聖杯にも近かった。
ここは、彼女の見たすべての情報──いわば、すべての可能世界が等しく可能性を持っている。それが彼女という存在の長所でもあり、弱点だ。彼女が一番(聞き取り不可)の破壊者でもあり、隷属するものでもある。
もしも。イフの姿であっても。彼女に対抗できるくらいの
──さて、
◯*◯*
「うーん、あたしはよくわかんなかったし、いいや〜」
本当に? 私がいまここで唯一の
ばかなあたしでも無視していいこととしちゃダメなことの違いくらい解っている。ここに態とらしく霊核を置いておくくらいだ。それは余りにも必死。
──カタマリが入ってきて、消えていった。
──考えたくも、なかった。私のなかに溜められていたはずの魔力はきっと、アレに行っていたのだろう。信じたくもなかった。私がよりにもよって、
『許しません、罪深い創造物』
あの塔の上、あれが私に放った言葉。あれは私という機構に向けての純粋な敵意。
でも。
あたしはそんなこと気にしない。
「どーせ最後には消えちゃう、もんね」
だったら、今何をしたってどうでもいい。だったら聖杯戦争を、めちゃくちゃにするのだっていいし、終わらせることだって。
どーせ消えるなら。一回くらいいい事をしたって、悪くはない。
ぱちぱちと頬を叩いて立ち上がる。
「ねぇライダー。悪い人になるのと、いい人になるの、どっちがいい?」
あたしの手のひらに咲く、三画の華。あまりにも白すぎる造られた手に、毒々しく刺さった魔力のカタチを見ながら聞いてみる。
(
あたしの頭の中にさっきまでの
(うん)
あたしの頭より一つ高い
「俺はどちらかっつーと……生前は悪者……というか
──まるで答えになってない答え。でも、それで十分。
アインツベルンの人形として、聖杯戦争を成就させないとイケナイって、自分で決めたから。
「いいよ。最初はオルガちゃんのためだけ、だったけどライダーも追加ね! あたし、ライダーの願いも叶えられる様に頑張るから! う〜ん、こういうときって何すればいいんだっけ?」
うーんうーんとしばらく考えて思い至ったのは──握手ね! はにかむライダーの手を乱暴に取って上下にぶんぶんと振った。よく考えればこうやってあたしが誰かの手を握ったのだって、オルガちゃんと目の前のライダーだけ、だったような。
こうすること、それってまるで友達みたいじゃない?
「うん、うん、これでいいかな? よろしくね、ライダー! じゃなくて。マンドリカルド!」
「っは、はい! っす」
◯*◯*
クリスマス前だというのに、トウキョウの人々はどこかぎこちなく存在している。ただ茫然とした
最早トウキョウの外は存在しえないことをここにいるどれだけの人間が認めただろうか。しかし現実として、
こんな光景は、何一つも変わらない。代わり映えのない人類の営み。
──生きるという行為は、まるでイロを薄く伸ばして伸ばし続けるだけみたいなどうでも良い行為だと、記録した。
ただ起伏のない時間がゆっくりと/光のように過ぎていって、
でも、あの
あの原罪のカタチをした創造物も、同じようにあの情報に触れていた。あんなもの、唯の魔力源、ぐらいに思っていたのに。
今日もマシュは隣で無駄に塔から街を見下ろすだけだ。
初めは
わたしと彼女の間に細く細く繋がっている魔力の糸を摘んで断ち切る。
「セイバー!? 何を!?」
さようなら、と口がカタチをつくる前にマシュはわたしと酷く距離をとった。今まで飽きるほど観てきた憎しみの表情が、彼女の顔にも張り付いていた。
彼女だって、
◯*◯*
██を失って、学内掲示板もニュースも嘘のように賑やかさがピタリと止まった。失った、という事実は覚えていても、何を失ったかは誰も覚えていやしない。
時間を失った時よりも、ずっと哀しい空間がトウキョウを埋め尽くしている。唯一人の側でありながら覚えていたのは私だけ。でも、今██を紙に書いてみようとしても、鉛筆は
それをみかねたキャスターが紙に書いてくれたのは、フジマルリツカ、を表す線だった。それでやっとああ私も忘れてしまったんだ、と自覚すると、なぜか涙が紙を濡らしていた。
私の名前もフジマルリツカで、キャスターの名前もフジマルリツカというオトだ。それが何を意味するかなんて考えたことは全くなかったけど、今になってなぜかその事実ばかり頭を埋め尽くしている。
名前も同じ、外見も同じ。でも身体の中身は全く違うし、見てきたものも全然違う。
その事実を受け入れる事も、理解することも通常だったら簡単な事なのに、今の私は██が無くなった途端に、それを疑うようになっていた。
「ねぇ、キャスターと私ってさ、なにがちがうのかな」
「……何もかも」
「でも、外から見たら一緒、だと思うんだけど」
「……否定はしない」
というか、出来ない。とキャスターは付け足した。
「私と立夏は根底が全く同じ、同一の魂。だから魂でヒトを見るようなのがいれば私と立夏はきっと同じモノね。でも他人が見ればせいぜい姉妹か双子ってところ。私だって魔術に詳しいわけじゃないから……正確なところはよく知らない。きっと、私と立夏が同じ格好までしたら──誰にも、見抜けないわね。それくらい、今の私と立夏は精神の構造まで同化しつつある」
精神の同化。その言葉が何を指すのか私にはさっぱりだったけど、キャスターの表情をみるにあまりよくないということはわかる。
「キャスターは、世界を救いたいって、思ってるよね?」
何を言っていいかわからなくて、ついそんなことを言ってしまった。でも私にだって聞こえるこの世界を救ってっていう声はきっとキャスターにも聞こえてるはずなんだそれは私がフジマルリツカにかけた呪いだから私にもかかってしまったけど。
世界から██を消した犯人を倒せば、聖杯戦争が終わると考えるのは、妥当か。それで、そのあとは──
私を観ている、観測してる目の前では、そういう風に振る舞わなくちゃいけない?
「いこう、キャスター。もうこんなことしてられない。はやく終わらせなきゃ」
世界が一瞬だけ割れて/重なって見えた。片方の目は、母と妹がただ揃って朝ごはんを食べているだけの、絵に描いたような幸せ。片方には、母も妹もいない、ただ灰色の空気が広がる屋根すらも無くなった家。
目を擦ってドアに手を掛ける。おもいっきり引いて──私の胸に、刃がとん、と置かれる。
「まだこんなところにいたんですね、先輩」
直後、轟音。
◯*◯*
手には
これは神話の再演。かつてあったと記述された神に触れようとした人類の虚しい結末。
セイバーという
見よ、この世界への
人類の礎であった
所詮、テクストに過ぎないあなたたちが──
一筋の光が、ソラを割ったのを、このトウキョウにいる全てのモノが見た。それは、あまりにも──
2週間遅延してこの文字数!? 最近心の調子も体の調子も悪く、1週間に一回のスパンで出しても自分が満足できるようなものが出せないので、クオリティー維持の為に2週間に一回にさせて頂きます……
よろしければここすき、コメントよろしくお願いします!