/log:2014-12-15 23:55
〇*〇*
「あなたが、私のマスターですか?」
ああ。確かに俺──加藤正一郎が召喚したサーヴァントで間違いない。
だが。アイサツ! アイサツをまずしなければ。しかし、この圧倒的存在の前では、顔をただ上下に動かすこともままならない。シッキンしそうになるのを必死に我慢することしか今はできそうになかった。
「あの──名前を、あなたの名前を教えてくれませんか?」
しかし、目の前のサーヴァントは俺が固まっていることには気づかない様子だ。むしろ俺をじっと見つめてアイサツを促してくる。よく見なくても、美人だ。それしか言葉の出ない俺が情けなくなる。しばらく呆けていたのだろう。女は俺の沈黙を何と取ったのかはわからないが自己紹介を続けた。
「ランサーです。あんまり優しくしないでくださいね……。あんまり優しくされると……困ります」
体に不釣り合いなほどのナガモノを携えたランサーは、俺に対してちっとも威圧的な態度を見せるそぶりもない。むしろ輝きだとか美しさの方が先行して、彼女が戦うイメージすら浮かばなかった。
かつて古事記とかを駆け抜けた、モータルを超えたものとして記録された存在はどれもこれも自信家で、俺のような才能も何もないマスターのことなんて気にせずに、他のサーヴァントとの戦いを望むようなものばかりと思っていたが。むしろ目の前の彼女は俺に対し、困惑めいたアトモスフィアを抱いているようでもある。
一呼吸置くと、過剰にランサーが大きく見えていた理由が分かった。その場に召喚の衝撃で俺が座り込んでしまっただけ。立ち上がって初めてわかったが、女と俺の身長は同じぐらい、といったところだった。
「ドーモ、ランサーサン。加藤正一郎です」
これは古事記にも書かれている由緒正しいアイサツの形である。俺は彼女の蝋人形のような手を握った。やっぱり魔術で構成されているからだろうか、人の温かみとかそういうものは実際全く無い。
○*○*
/log:error!!
私の前には……死体……。
これは殺害……。私がやったのだ……。
自分が死ぬ、それは想像もつかない……。
目を閉じても、
騒々しい……鬱陶しい……このような状態は、私には望まれない……。
この世の楔は、自分で壊してしまったから……。
これでは、
あかい水が目の前に滴っていた……。
今日は、雨がよく降る……。
…………。……。
……。………………。
………………。……………………。
…………。………………。
……………………。…………。
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時計塔トウキョウ支部の保有する霊脈の下に死体が発見されたのは、この召喚の儀からしばらく経ってからだった。当然である。消えた者の存在を誰が知れるのだろうか?
○*○*
「うーん……」
一体このアザはなんなんだろう。家に帰ってもなお立夏は悩み続けていた。
「とりあえず、校内IRCにスレ立てすればなんとかなるかも……?」こんなにいっぱいいるんだもん。一人ぐらい知っててもおかしくはなさそうだ。
> 【とても急ぐ】右手に変なアザ? 《画像付き》
> @14ritsukaF(スレ主)《画像》
> @14ritsukaF(スレ主) 本当にわからない!
「よーいしょっと」女子高生らしい高速10キータイピングを見せ、投稿は完了した。あとは朝にどうなってるか確認するだけ。
私は手にいつか誰かにもらったやたらと大きい絆創膏をとりあえず貼り付けておいた。母親には火傷と言っておこう。