Fate/coin a term   作:空白の端

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/log:2014-12-17

 夢を見た。
 白い地球、混沌とした星。そんなものが脳裏に浮かぶ。
 煩雑としたノイズのみが広がっているぼんやりとした空間に私は投げ出されていた。だれかの応援する声もあった。叱咤する声もあった。
 その中心にキャスターが佇んでいる。顔は相変わらず見えないが、外套(コート)がなくてもその背中はどうしようもない孤独を背負っていた。
 
 また、何処かで煙が上がり、空間に衝撃が走る。そのたびにキャスターは召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し、召喚され、殺し──。
 殺した顔も、助けた顔も見えなくなるほど淡々と。こんなの、機械じかけの戦争人形だ。
 私に名前も顔も明かさない、私のキャスターが辿ってきた道は、こんなにも酷いものだったのか。私は悔しさでいっぱい。私だったら、何もできないとしてもキャスターのそばにいることはできたのに。

log end/


蛍光不眠都市・トウキョウ 7

 

/now:2014-12-18

 

 机の上のICR端末が揺れる音が聞こえた。時計は六時五分を指している。今日は、何日だっけ。フートンの中からは出たくないから、もぞもぞと芋虫のように動きながらカレンダーのある壁に近寄る。

 頭の中に何かぼんやりとしたものが浮ついていた。確かに夢か何かを見た気がするけど、完全に思い出す前に私の手からするりと逃げ出していって、尻尾すら掴めなかった。

 壁のカレンダーには申し訳程度に雪の絵が描いてあるけど、排気ガスに覆われるトウキョウはいつまでも暖かいから、雪なんて降ることはない。教科書とかで雪景色や白くなる息の写真を見るたび、うらやましいとか、いつか体験したいと思ったものだ。

 

 ……昨日のあの体験をしてもなお、私という人間はまだ多分、現実の方にい続けたい、と思っている。でも、キャスターのために、聖杯を勝ち取りたいとも、思っている。

 十二月十八日。今日から冬休み。せっかくの休みなのに朝早く私が目覚めたのは──こんな時間からICR端末を揺らす人がいたから。眠い目をしばたたかせてブルーライトを浴びる。

 

>@13seeeichi おはようございます。7時30分から学校の駅集合でよろしくお願いします

 

 私を叩き起こした原因は──加藤先輩。折田サンからは相変わらず返信も何も来ない。ずっとオフライン表示のまま。最終ログイン時間は、おとといの夜。

 

「起きたのね、立夏」

 

 最初に聞いた声はママでも妹、ましてやパパでもない。キャスターだ。部屋の中でも彼女はボロボロの外套(コート)を着て、顔はおろかその下の服の一切を見せなかった。

 

「まだ誰も起きてないから、今のうちに家を出ましょう。早く、聖杯を手に入れて、こんな怖いことなんて終わらせるから」

 

 なんだか、昨日学校で喋っていた時より慌てている感じ。私はそんなキャスターに従い、着替えて顔を洗う。「刺激的に」というラベルが主張して貼られたヒジキペーストの瓶の底をこそぎ取ってトーストしたパンに塗った。今日、妹が食べて終わっちゃうな。帰る時に買わないと。

 そんなことを考えながら口に運ぶ。いつも通りサクサクふわふわとしていた。

 

「いってきます」

 

 いつもより小声で、起こさないように。私は極力音を立てないように扉を閉めたけど、最後にがちゃり、という音が鳴るのはやっぱり防げなかった。

 いつもより早い朝のトウキョウ。こんな時間に出歩いているのは目の下におおきな隈を作ったサラリマンとか朝帰りの無軌道大学生とかだった。ぼんやりと、皆駅の方に進んでいた。いつもの満員電車とは違う、ゆったりとした人の波。私以外に学生っぽい人はいなかった。当たり前だ。今日から冬休みなんだから。

 学校の周りはしとしとと雨が降っていた。鉛みたいに黒い空から、有害物質をたっぷりと含んだ雨が街を覆っている。今日は雨予報じゃなかったはずだけど。トウキョウの雨は体に悪い。私は仕方なく持ってきていた対重金属酸性雨用の折り畳み傘を開いた。ぱちぱちと小気味よく傘の上を雨が躍っている。そんな音を聞いていたら、向こうから先輩が小走りでやってきた。

 

「ゴメン、遅れたか? コンビニで傘買ってたからかな」

 

 大丈夫、とだけいって私達二人はあてもなくぶらぶらと歩き始めた。別に、どこに行けばサーヴァントに会える、とかは分からないからこうして歩き続けるほかない。動くならやっぱりコートの方がよかったかな、とか今更後悔しても遅かった。

 私達はしばらく雨の中を歩き続けた。アサシンの気配はおろか、オルガマリーとかセシリスフィールの気配も私にはよくわからないけど。

 雨は強さを増す。ごうごうと地下を流れる雨水の音が近くでしていた。さっきからおいしそうなにおいがするのは飲食店の近くだから、だろうか。

 きぃ、と音がして従業員っぽい人がゴミ袋を持って出てきている。生身のままあの雨に当たることをいとわず、ゴミ箱にゴミを放り投げていた。その顔は──見間違えるわけなんてない。折田サンだった。

 

「折田サン!」

 

 思わず走り出した。まだこちらには気づいていない。早く、全部のゴミ出しが終わるまでに彼女の元に行かないと。折田サンはただ忙しかっただけ。時間貯蓄銀行(アサシン)なんかにに時間を奪われているわけないんだから!

 傘の空気抵抗がもどかしい。でも、完全に扉が締め切る前にたどり着いた!

「ねぇ、折田サン!」

 なにかあったの、と続けたかった。おとといの会話の続きをまた、いつものように続けたかった。でも、その目は。焦点の定まっていない、虚ろな目。センセイの怒っていた目より、私にはその方がずっと怖かった。今の私には、折田サンがどこか遠くからやってきた人にしか、見えない。人違い。そう、これは人違いだから──でも、胸元の名札には大きく「折田」と書いてあった。

「雨、直接浴びたら(ただ)れちゃうよ」

 そう言って私はゴミ箱と店を往復する折田サンの隣で傘を差し続けた。永遠に追いつかない追いかけっこみたいに。

 最後のゴミも終わった。それでも彼女は私を見ることなく店の中に戻っていった。道に一人取り残される。

 

「立夏サン!」

 

 しばらく立ち尽くしていた私の体は先輩の一言でようやく動き始めた。

 

「さっきの彼女は、もしかして」

 

 どう答えればいいかわからない。私は石膏に固められたみたいに、顎を引くことも首を振ることもできなかった。先輩は何も言おうとしない私に何か感じたのかそれ以上追及することもなくまた歩き始めた。

 

      〇*〇*

 

 二人の間に無限に近い沈黙が広がる。隣で歩いているのに、相手は幾億光年先にいるような。ポツポツと容赦なく雨粒が傘に当たって一定のリズムを刻んでいる。電光掲示板の示す時間の秒のあたりがやけに早く動いていた。いや、やけにじゃない。本当に早かった。

 その時。路地裏からゾッとする感覚……アサシンの気配が背筋を撫でた。また、意識が泥沼に沈んでゆく。無数の手が、私という存在を箱に押し込めるように。

 

「──あ──」

 

 その気配は私に囁きかける。幾重にも折り重なって私に入ってくる。

 

──しょせん人間は時間の価値の前には無力──

──我々と契約しろ、さすれば彼女と同じ光景が見られる──

──君達の余分な資産を未来のために貯蓄するだけだ──

 

 甘い蜜のような誘い。頭が軋む。私を、堕とす。

 

「ああ、あぁ、あああ──!」

 

 苦しい。今、私の脳内に流れ込んできたのは何? ボヤボヤとした影が、怨嗟を放って跋扈する、地獄の光景。これが彼らの望む未来? こんなの、こんなの──()()()! 咄嗟に先輩が私の肩を支えた。先輩も頭を押さえている。体が震える。私の全てが警鐘を鳴らし、本能で彼らを拒絶していた。

 

「ちょ、何倒れてるのよ! 変な声で叫んで……うるさいのよ!」

 

 ヌバタマ・ボール──注・深すぎる闇──の路地を引き裂くように現れたのはあの昨日戦っていたオルガマリー! セシリスフィールは連れていないのか、はぐれたのかはわからないが、とにかく一人。咄嗟に先輩が身構えるのを感じた。

 彼女と目が合うまで、あと少し。まだこのまま遁走するチャンスはあった。でも、私はどうしても彼女の顔が気になる。何故かその声に、懐かしさを感じるから。アサシンは彼女の登場に恐れをなして逃げたのか気配もろとも退散していた。多分──彼女も追っていたのだろう。頭の痛みは引いていった。情けないサーヴァントだ。

 

 少し顔を上げた。そこには、オルガマリーの目があるはずだった。でも、私とオルガマリーの視線は永遠に交わされない。代わりに私と視線を交わすのは、明らかなこの世の異物の少女だった。彼女は何でもないように私に微笑んでいた。

 いや、笑ってなんていない。ただ口角を釣り上げただけの、うわべだけの表情。その目は、私という人間の()まで見透かすようにジッとしていた。──井戸の中の闇を覗き過ぎると落ちる──ミヤモト・ムサシの残した言葉そのままのような目を、私は覗き返さずにはいられなかった。

 

「お久しぶりですね、先輩。いえ……ここでは初めまして、ですか?」

 

 その言葉はどこまでも私を(いつく)しむような響きを(たた)えていた。

 今、この瞬間だけ、時間は限りなく引き伸ばされて私達を弄んでいる。ゆっくりと目の前の彼女が腰から剣を引き抜いた。指先のわずかな動きまで見える。尖先(きっさき)のない(つや)やかに輝く剣をゆっくりと振りかぶり──「だめ!!」──キャスターが叫ぶ声が遠くから聞こえたと思ったら、もう近くになっていた。どん、と体に衝撃が走って初めて、私は突き飛ばされたことに気がついた。傘が鉛の空を舞って飛ばされていくのが見えた。

 剣は、私の代わりにキャスターの肩を斬りさいていた。

 

「どういう、つもり」

 

 彼女はキャスターに強く問われても動揺する素振りも何もない。ただ、恐ろしいまでに凪いだ視線をキャスターの傷跡に投げかけ続けていた。

 

「あんな世界の終を迎えないために、先輩は殺します。カルデアス(異星)の起動も許さない」

「私の知る限り、世界の終わりには貴方なんてもう死んでいたけど? どういう風の吹き回し?」

 

 キャスターは口先では余裕げだけど、実際は違う。今この瞬間も私のお腹辺りから何かが強引に引きずり出されるような痛みが続いている。多分、魔術回路ってやつの痛み。大して魔力の足しにならない私を頼るしかないくらい──キャスターは切羽詰まってる。

 

「ただ歩む道が違っただけです。結局滅んだ結果、先輩はここにいるのでしょう?」

 

 そう言って私を見て、ひどく凪いだ口調で私に問うた。いや、キャスターに言っていたのかもしれない。

 

「世界を救う重荷を背負わされても、マスターは生きていけますか?」

「うるさい、答えなくていいから、立夏」

「白紙化した地球を前に立ち上がれますか? 目の前で親しい人が殺されても?」

「……黙って!」

 

 傷を抑えながら未だかつてないほどに激昂するキャスターとは正反対に、それを見下ろす彼女の声色は平坦そのままだ。ただの事実確認のように淡々と。ただ、あったことを確かめるように。

 

「マスター、答えてください。答えないと殺しますよ」

 

 答えなくていい、とキャスターはいう。でも、彼女は答えないと殺す、といった。私が答えなかったら──キャスターが殺される?

 

「わかんない、白紙化した地球、とか、世界を救うとか、全然わかんない」

「──ちょっと待ってどういう事!? そもそも私が目の前にいるってこと忘れちゃったの!? あと、カルデアスの起動は許さない、とかそんなの聞き捨てならないんだけど!?」

 

 彼女の後ろからちょっと間の抜けたオルガマリーの声がしてようやく私は敵の面前にいたことを思い出した。ヤバい。このままだと何をしても結局殺される気がする。しかも、現在進行形で傘を失った私の体に雨水は容赦なく打ち付けられて、どんどん皮膚が赤くなっていった。

 わずかに、私を先輩とかマスターと呼んだりする少女の目が明確な怒りに揺れたのを見た。

 

アニムスフィア(星見の民)ですか。そう……私がここに喚ばれた理由はこれだったのですね」

 

 彼女は後ろを振り返らなかった。さっきの凪いだ声と少し違って声がところどころ震えていた。それは怒りと言うより──。

 

「オルガマリー・アニムスフィア。あなたがこの聖杯戦争で勝利することによってどうなるかマリスビリー氏から知らされていない、のですね?」

「ええ? カルデアスを起動するため、とお父様は言っていたけど。アニムスフィア家に課された冠位指定(グランドオーダー)、これが成就することで人類はさらなる発展を遂げられるようになるのよ」

「ええ、そうですね。やはり貴女は()()()()()()。ここで殺す方が貴女のためになります」

 

 どちらかというと、会話は成立していない気がする。傷の痛みかキャスターは彼女の前に(ひざまず)いたまま動かない。

 

「ちょっと待ちなさい! いきなり貴女に殺すとか言われても納得できないの! 理由を言いなさい!理由を! だいたい話し合いたいならまずこっちを向いて!──そんなに私のことが嫌いだって言いたいの!? そうなのね!?」

「いいでしょう。そんなにも聞きたいというのなら──」

 

「そんな話、今しなくてもいいんじゃない? サーヴァントにとってはこんな雨程度、どうってことないかもしれないけど立夏にとっては違うの」

 

 はぁはぁと肩を抑えながらようやくキャスターは口を開いた。先輩はいつの間にかどこかに逃げてしまったみたいだ。彼女は一瞬私を見て、ようやくかぶれた肌を認めたようだ。

 

「……先輩はどこまでも優しいんですね。気が変わりました。先輩にその気がないなら私も殺しません。ですが、条件があります」

「何よ」

「アニムスフィアに、聖杯を渡さないでください」

 

 それだけ言い捨ててどこかに去っていった。助かった、そう思ったのもつかの間、まだ問題は目の前にあることを思い出した。目の前にはオルガマリーがいる。待って、彼女のサーヴァントは? あの、異常に先輩のランサーに執着するセイバーは?

 

       〇*〇*

 

「アッハハハハ!! 最悪に楽しいわ!!」

 

 路地裏というナガモノを振り回すにはやや不向きな場所に誘い込まれ、ランサーは徐々に追い詰められていた。

 そもそも、俺の魔術回路の貧弱さじゃどんなに彼女が強い英霊でも十全の力は発揮できないはず。それに対して相手はあの何千年も続いてきたであろう魔術家系の跡取り娘だ。そもそもの土台から違う。

 不意打ちを避けて迎撃をするのに大量の魔力を吸われたというのに、今も、激しくナガモノと黒い剣が打ち合うたびに代償(フィードバック)は俺の体に跳ね返り、俺の魔力は容赦なく吸われていった。背中がびりびりと金属音に共鳴し、痛みを伴って震える。それに呼応するように雨粒は更に激しく傘に打ち付けてビートを刻んでいる。

 俺はこの間合いに入ったら最後、生きては出られない空間から少し離れて見守るしかなかった。路地裏には相変わらず煙が充満していて、俺は魔術回路の酷使からくる痛みで気を失いそうになるのを堪えながら呼吸を整える。

 ──あんまり使いたくはなかったけれど。俺はポケットからバリキドリンクの小瓶を取り出した。魔術回路に強制的に活を入れるならこれが最短経路だ。大体、なんで俺はこんなになるまで巻き込まれているんだ!? 大した願いもない。ただもう一度母に会いたいだけだというのに俺はなんで今こんな目に遭っているんだ。でも、立夏サンのことは見捨てられない。カキョ、と蓋を開けて俺は一気に飲み込んだ。やっぱり好きになれない味は変わっていなかった。

 

「……私の心はどうにも貴女を好きになれないようです。でも、その剣からは私の好きなひと、の気配がします」

「……そう。あなたの初夜はこの剣の持ち主が奪ってやったのよ! ブリュンヒルド! あの時、あなたもあの場まで引きずり出すべきだったの!! あなたの首も刎ねてから、ハーゲンも殺すほうが……ずっと良かったのね」

 

 カン、と静謐な金属音が路地裏に響いて、ギン、と荒々しい音が鳴った。ようやく剣撃は終わったらしく、俺は路地裏をのぞき込んだ。ようやくセイバーを落ち着いてみて初めてそのパラメーターを見た。直接情報が流れ込んできて頭痛はするが、それはバリキドリンクの覚醒作用で抑えられていた。

 セイバーであるならば本来持ち得るスキルは一つのスキルに塗りつぶされていた。狂化:EX。彼女はセイバーではない。バーサーカーだ! ならば今までの行動にも幾分か説明がつく。

 

「あなた、その手……!」

 

 ランサーが驚くのも無理はない。今までは彼女に振り回されていてよく見えなかったがその持ち手はトゲに覆われて、彼女の手を常に蝕み続けていた。今もじわじわと剣はバーサーカーの血を吸って鈍く輝いている。

 

「あぁ、これ? あなた達に心配される筋合いは無いの。私は……私の意思でこの剣を握ったのだから……!!」

 

 アハハハ! と叫びながらバーサーカーはさらに強く剣を握った。よく見るともうすでに手の関節は完全に砕けていた。

 

「ランサー! そいつはセイバーなんかじゃない! バーサーカーだ! まともに話の通じる相手なんかじゃない!」

 

 ここは撤退したほうが身のためだろう。モタモタしているうちにいつオルガマリーが出てきたらそれこそ終わりだ。

 

「そう、よね。私は、あの人の代わりに、なれない? 私、失敗しちゃったの?」

「……シグルドを夫に持つ方なのですか?」

「黙りなさい!! 私に、あの人の、話をしない、で!!」

 

 ランサーの問いかけ一つでバーサーカーは今までにない以上に逆上して立ち上がろうとするが、剣を持ち上げる力すらもう残っていなかった。

 

「何やってんだランサー! いいから撤退だ! 立夏サンを助けるほうが先!」

「えぇ……やはり次、次があるならばその剣を……()さなくては……」

 

 俺が促すのを無視してランサーはバーサーカーの持つ剣に釘付けになっている。このままでは、よくない。何故かバーサーカーは立ち上がろうとしない、いや、立ち上がれないようだった。

 

「構うな、ランサー!」

「……! はい、マスター」

 

 俺達はバーサーカーを背に元きた路地裏をたどる。だいぶ奥まで行ってしまったようで、曲がれど曲がれど大通りは出てこなかった。更に走る足をルーンで強化する。

 

「マスター! 前から」

 

 ランサーが完全に言い終わる前に、彼女はあと数十cm程の目の前にいた。オルガマリー・アニムスフィア。しかしさっきまでの彼女とは打って変わって……覇気がない。両手で自分を守るように強く抱きしめ、俺達なんて気付かなかったように通り過ぎていった。立夏サンは!?

 

「立夏サン! 無事か!?」

「ええ、無事よ。それより治癒のルーン、もってないの?」

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