彩葉がガタガタなので、途中まで宗全視点で行きます。
※たまに がありますが、仕様です。
子供のほっぺが押し付けられて有頂天になってる親友を見ながら思案する。
『盲目のバルティマイ』で道筋を作り、3日後に復活すると言う荒業も荒業をやり遂げたはいいが、問題はこれからだ。
顔を顰めた酒寄 彩葉と視線を合わせる。
どうやら、柚葉さんセラピーはあまり効果がなかったと見える。
あの状態で8000年インストールを耐えられない。俺が手を貸して自認ヤチヨになるレベルだ。
酒寄 彩葉の隣でキラキラと輝きを放つかぐやと視線を合わせる。
困惑より嬉しさが勝っている。
あの状態を酒寄 彩葉に押しつける事ができれば8000年程度は楽勝となる。つまり、かぐやには酒寄 彩葉に寄り添ってもらう必要がある。そうしてもらうために、俺達は一度区切りをつけなければならない。
一先ず、1番の問題点を片づける。
琴葉が持つ勇斗の骨壺を、その影を用いて収納する。
はたから見れば、骨壺が琴葉の掌に落ちるかのようになくなったと思うだろうな。
そんな事が自身の身で起きた琴葉がこちらへ声をかけてくる。
「兄さん、今のは」
「勇斗の骨は回収だ。聖遺物になられでもしたら対処がメンドイ」
勇斗の遺骨を我欲で利用した者は悪鬼になる。
やはり、勇斗に対しての解はでない。
しかも、俺が識らないものとして何度も詰め込もうとリトライしてきやがる。世界バグったか。
14年前に死んだものとして処理されてるのだから当然ではあるが、こうも空白が入り込んでくると若干イライラする。
初老の夫婦、うちの父さんと母さんがこちらへ声をかけてくる。
死者の蘇生にはあまり驚いてない。
「おかえり、宗全」
「なにも準備がされてなかったから、帰ってくると思ってたわ」
「俺としては死ねる時にしっかり死にたいんだがな。まあ、とりあえず、ただいま」
あの爺に俺が蹴り返されるのは識っていた。だから、身辺整理はしていない。
そこから、うちの両親は自分達の息子が帰ってくると信じていた。本当に、よくわかっている。だが、こちらもこの2人があまり顔に出さないのを識っている。
もう少し会話しておこう。
「明日は京都、明後日は奈良に観光か」
「ああ。折角来たんだ。目一杯楽しんでいくさ」
「計画は生き当たりばったりだけどね」
「だろうと思った。ほれ」
1枚のメモ用紙と新幹線のチケットを2枚を差し出す。
メモには予約しておいた2つのホテルの住所。新幹線のチケットは東京→京都、京都→福岡のグリーン車のものだ。
「ありがとう、宗全」
「京都から奈良は自由にしてくれ。失くさないようにな」
渡すと同時に俺の骨壺と遺影を影の中に収納。例え、抑止力がないとしても、検査されて俺の遺骨だと知られたらいろいろと不味い。
去る両親を背に、盲目のバルティマイ連中へと片手を挙げながら声をかけにいく。
「お疲れさん。」
「できれば治して欲しいんですが」
「今回だけの出血大サービスだからな」
大和に言われて、ではないが、ここで治そうが治さまいが結果は同じだ。
影を這わせ、皮膚に1nm程度穴を空け、細胞間を通り、負傷箇所に巡らせていく。そうして補うようにして位置についた影を血肉または骨に変換すれば治療は終了。
「終わりだ。」
「助かります」
「ふぅ!原理が全くわかんねえ!」
「ちなみに、タバコで汚れた肺とかは·······」
「禁煙しろ、バカ」
タバコで肺が汚れるのわかってて吸うな。これだから、ヤニカス雨竜は。
そんなこんなでワイワイしていると、家族との団欒を終えた勇斗が合流を果たした。
「沼菩、俺の刀何円で売れたー?」
「査定中です。詳細は酒寄様へお聞きしてください」
「ん?もしかして、沼菩が買い取るのか?仲介じゃなく?」
「はい。」
「珍しい事もあるもんだ」
価値ある物を価値ある人へ届ける、を掲げている事を知っている勇斗にとっては珍しいと思えるだろう。が、あの刀の存在について知った時から虎視眈々と狙っていた沼菩を識っている身としては、あまり予想外でもなんでもない。
名前が挙がった彩葉の方へ勇斗の視線がほんの一瞬揺れたが、すぐさま戻し、全体を一望する。
勇斗は、彩葉が自身に対して恐怖心を抱いていると判断した。
「よし。それじゃあ、どっか食べにでも行くか!」
盲目のバルティマイ連中が沸き立つ。
そんな光景に頬が上がるのを自覚しながら、勇斗の肩に手を置く。
「もちろん奢りだよな?」
「もち―――」
「勇斗さん?」
「·········宗全、3:2ぐらいで割り勘してくれないか?」
「はいはい。知ってた」
完全に尻に敷かれている親友を憐れみながら、割り勘の申し出を快諾する。
金の使い道が殆どない俺からすれば、約12万など痛手ではない。しかし、2児の親となれば話は別だが。
「それで、何処にしますか?」
「ホテルの近くの焼肉屋。そこ予約してるから心配すんな」
「助かります」
透の質問に、2週間前に2時間貸し切りの予約をしておいた件を伝える。
少し生真面目すぎる所はあるが、この勢いで生きてきたような集団においてはとても貴重なまとめ役だ。
そんなことはさておき、今回の主題に目を向ける。
「んで、彩葉とかぐやはどうする?」
「あー、私たちはえん―――」
「行く行く!」
遠慮しようとしていた彩葉の横からかぐやが手を挙げ、勢いよく参加を表明した。当然そうなってしまえば、彩葉だけが帰る訳にはいかず、最終的には2人参加が確定している。
頭がごちゃついてる彩葉からしたら、一度かぐやと一緒に家へ帰って落ち着きたいと思っている。しかし、焼肉一直線のかぐやはその憂いを拾い上げることはできない。
「じゃ、一先ず解散。汚れてもいい服に着替えて集合で。場所は後で送るから確認してくれ。
柚葉さん、かぐやと彩葉の送迎頼んだ」
「おっけー」
酒を飲みたい連中のために、ここは一度解散することにする。それでも飲酒運転をしようものなら、透から拳骨が見舞われることになる。
ではでは、俺の視点はここまで。彩葉の視点に戻す。
葬儀場を後にし、自宅へと戻ってきた私とかぐやは制服からラフな私服へと着替えていた。
頭の中にこびりついているのは勇斗さんと赤松さんの事。
まず、常識的に考えて死人が生き返るなんて可笑しい。奇跡的に脈拍を取り戻して蘇生したのなら、神様に感謝していただろう。しかし、あろうことか同一個体がリポップしたかのような現れ方だった。その点が実に人外染みていて恐ろしい。
いや、わかってる。
恩人が生き返ったんだ。その事実は喜ばしい事だなんてわかりきっている。だが、それでも怖いものは怖い。
ただでさえ、殺そうと思えば一瞬で殺されるのに。ちゃんと人として死ぬんだと安心していのに。
それすらもあの2人は凌駕してきた。
「そんなの、化け物じゃん」
関わり合いたくない。今すぐに距離を取りたいと思ってる。
私服に着替え終わり、最後に姿見で前髪を整える。
定位置に揃えれたのを確認し、一息つく。と同時に、姿見に映るスライド式の扉が引かれ、その隙間から顔だけ出してこちらを伺うかぐやが現れた。
「彩葉、着替え終わったー?」
「うん」
電気を消し、かぐやと共にリビングへと向かった。そうして、かぐやと隣り合ってソファーに座る。
暫しの沈黙の後、かぐやが口を開く。
「あんまり嬉しくない?」
なにが、とは思わなかった。
「素直には、喜べないかな」
視線を下に向け、言葉を濁す。
お別れした時、すごく寂しかったし悲しかった。
だからこそだろうか。あの2人が生きている事が間違っていると叫び出しそうになる。
「行かないどく?」
こちらの顔を覗き込むように首を傾けるかぐやと視線が合う。
正直、焼肉は食べたい。
勇斗さんと赤松さんの奢りであるから尚更行きたい。きっと、このチャンスを逃せば次焼肉を食べれるのは遥か未来になるだろう。だから、是が非でも行きたい。
よし。焼肉考えてたら行ける気がしてきた。
心を奮い立たせ、決意を表明する。
「焼肉、行こう」
「ヨダレ垂れてるよ?」
垂れてない。
決意表明した後、10分程して今朝同様武内さんがお迎えに来てくださった。
「よし、しゅっぱ〜つ」
「おー!」
気の抜けた掛け声にかぐやが乗っかり、前のめりになりながら右拳を突き上げる。
そんなこんで出発した車。行先はおそらく焼肉屋。たぶん寄り道はない筈だ。
そんな2人の様子を見ている私はと言うと、内心で焼肉に釣られた事を後悔していた。
気分を損なえば死、はないとは思うが、反感を買ってしまったら不味い事になるのは明白だ。一挙手一投足に気をつけなければ。
「彩葉ちゃんビビってる〜?」
「ビビってないですけど」
「え、彩葉ビビってるの?」
「ビビってないが?」
武内さんとかぐやのおちゃらけた煽りに即リプする。
別に顔真っ赤ではないが。と付け足しそうな所を理性でぐっと堪え、震えを踏ん張って消そうとするが、なかなかうまくいかない。
「そんなにビクビクしなくとも大丈夫だよ、彩葉ちゃん。
勇斗くんは悪意以外には寛容だし、宗全くんは何があろうとも彩葉ちゃん達を害することはないと思うから」
落ち着いた声色の言葉に頷く。
内容を咀嚼しても尚、やはりドキドキは止まらない。武内さんを信じられない訳ではないのだが。
そっと、膝の上で拳を作っていた私の左手にかぐやの右手が添えられる。
隣に視線を向ければ、勝ち誇ったような顔をしたかぐやと目があった。
「だいじょーぶ。かぐやに任しときっ!」
むふー、っと謎に自信満々に言うかぐや。
頼りがいはなかったが、なんだか陽の光が当たったかのように心がじんわりと暖かった。
「着いたよー」
武内さんの言葉に意識を浮上させる。
かぐやの愛しさに思わず意識を飛ばしていた。理性を保っていただけマシか。
隣を見ると、ハイテンションのかぐやがシートベルトを外している。
私もその存在を思い出し、シートベルトを外す。
自由になった私とかぐやは車から降り、今日お世話になる焼肉店を見上げる。
「お〜!焼肉の匂いがする!」
「まだしないでしょ」
そんな会話をしていると、エンジンを切り終えた武内さんがゆっくりと降車してきた。車の鍵を締めと、私たちの方へ振り向き
「じゃ、行こうか」
「あ、これ。壮大なBGM流れるヤツだ」
「流れないから」
武内さんを先頭にして入店。もちろんBGMなんてものは何もない。
真っ先に感じ取れたのは、賑やかな喧騒。
耳に入る全ての音が喜びに満ちている。幸せな空間そのものだろう。
店内の間取りとしては、入口の正面にカウンター席が7つ、そして左右に座敷の部屋が2つずつ。障子は開け離れていて、ここからでも様子が伺えた。
座敷の部屋は結構な広さで、余裕で15人以上は一堂に会することができるだろう。
バーカウンターには左から一つ空けて赤松さん、また一つ空けて本國さん、その隣には葬儀の際にただ1人黙々とご飯を食べていた人が座っている。その横からは空席だ。
左の1番奥の部屋には、子どもが2人居ることから勇斗さんのご家族だけの部屋だとわかるが、その他はわからない。おそらく、話が合うメンバーで固まっているのだろう。
そんなことを考えていると、赤松さんが立ち上がり、こちらへと近づいてきた。
「一先ず、左の1番奥、勇斗んちが居る部屋で食べてくれ」
「わかった!」
「わかり、ました·······」
「私も?」
「子どももいるし、丁度いいだろ」
「確かに」
そう言い終えると、赤松さんは座っていた席に戻って行った。
私たちは武内さんを先頭に左側の1番奥にある部屋へと進んでいく。
心持ちとしては判決を持つ囚人のようなものだ。
そうして、部屋の前に立った私の目に入ってきたのは―――
「大丈夫か、友奈?」
「お腹苦しい······」
「一気に食べ過ぎなんだよ」
「うっぐぐぐ。姉を敬えーー!!うっ゛」
「はい落ち着いてね〜」
「まだ寝てなさい」
お母さんに膝枕してもらっている娘さん。それを心配している勇斗さん。呆れたような物言いをする息子さん。宥めるお母さん達。いや、達の時点で可笑しいのだが。
完全に家族団らんの光景に羨望を抱く。きっと、深層心意で羨ましく想ったんだと思う。
部屋の前で立ち尽くしていると、靴を脱いだ武内さんとかぐやがその光景に怯むことなく踏み入る。
「お邪魔するねー」
「おっ邪魔しまーす!」
「あ。お、お邪魔します」
その後に続くように、急いで靴を脱ぎ、恐る恐るその空間に踏み入る。
「柚葉さん!お久しぶりです!」
勇斗さんがぺこりと会釈をすると、家族もそれに続いて一言と合わせて会釈をする。
「うん、久しぶり。友奈ちゃんと響介くんは大きくなったねー」
「そうですかね?」
「でしょー!いっぱい食べていっぱい寝てるからかなー!」
恭しく謙遜する弟と鼻を天狗にする姉。正反対がすぎるその2人に思わず頬が上がるのを自覚する。
っと。ずっと立っている訳にもいかないので、私とかぐやは膝枕されて休んでいるお姉ちゃんの隣、武内さんは弟くんの隣に腰を降ろした。
「生いろPとかぐやだ·······」
「えっ」
「かぐやだよー」
ここで聞くことはない筈の呼称に、首を勢いよくそちらへと回す。
そこには目を輝かせてこちらを見入る膝枕されているお姉ちゃん。まさかこんな所にライバーとしての私たちを知っている人がいるとは。
「友奈は2人のこと知ってるのか?」
「もちろん!超新鋭でヤチヨカップを優勝したかぐやいろP。ライバー界隈に触れてる人で知らない人はいないよ!」
「そうなのか」
「そうなの!てか、卒業ライブあんなんにしといて2人のこと知らなかったの!?」
「卒業ライブだったのか!?」
「いちおうは······」
目を大きく見開いた勇斗さんに歯切れ悪く答える。
確かに、勇斗さんの身振りから推し活など触れてこなかったのだろうと予想できる。だけど、まさか素性を全く知らない私たちの為に命を張っていたとは。お人好しがすぎる。
「·········2人はライバー活動を続けたいのか?」
少し考え込んだ勇斗さんが防衛戦の時みたく、瞳を見つめながら真意を問うてくる。
おそらく、この質問をかぐやを軸にして答えた場合、それは違うと言われるだろう。だから、これは私自身の―――
「かぐやはやりたいっ!」
「それは良かった。それで彩葉は?」
私の隣からかぐやが身を乗り出して宣誓する。それを聞き届けた勇斗さんは、少し頬を緩めるがすぐに戻してこちらへと視線を戻した。
考えるのはライバー活動を始めた理由。
光る電柱から始まった奇妙な1ヶ月と少し。天真爛漫で美少女のかぐやに半ば無理矢理巻き込まれたライバー活動。イヤではなかったし、楽しくもあった。だが、楽しかったからやっていた訳ではない、と思う。なら、何故自分はここまでやってこれたのか。
かぐやが変なことを言わないかの監視をするため。もちろんそれもあるが、1番は―――
ストンと欠けていた部分が埋まった。
頭の中が透き通っていく感覚がした。悩みなんてどうでもよくなるような爽快感だった。
なら、勇斗さんへの返答は1つだけ。
「ライバー活動は続けます」
「ははっ!よし、じゃあ··········」
なにが琴線に触れたかはわからないが、ご満悦だったのも束の間。目を閉じて、深く考え込む。
全ての視線が勇斗さんに向けられている静寂の部屋という異様な光景が出来上がってしまった。
そんな中、勇斗さんが勢いよく瞼を上げた。
「ちょっとライバーになってみるか」
え、と全員の声がハモる。
そうして、フリーズからいち早く復帰した琴葉さんが勇斗さんに詰め寄る。
「ネットに晒されることになるんですよ!?いいんですか!!?」
「個人情報全部ネットに出てんだから今更じゃないか?」
「そうですけど·······っ!」
まだまだ言いたそうな言葉があるにも関わらず、無駄だと判断したのか食い下がる琴葉さん。
と言うか、なんでこの人の個人情報全部ネットに出てんの?赤松さんの手紙に書いてあった事ってそういう意味だったの?
次に、弟くんの隣に座っている大人の女性が詰め寄る。
「また誹謗中傷とか飛んできたらどうするんですか?」
「誹謗中傷ぐらいなら何とでもなる。現実の方でなんかしてきたらたたっ斬るまでだ」
「それならいいですけど」
良くない良くない。たたっ斬ったら人は死にますからね?いや、銃刀法違反で捕まるのが先かもしれない。
次に、弟くんが言葉を口にする。
「変な事言わないでね。学校でネタにされるとか絶対いやだから」
「わかった。絶対に変な事は口にしない」
確かに、配信でド下ネタ言ったら学校でイジられるのは確実だ。そう考えると、弟くんからしてみれば死活問題かもしれない。
次に、お姉ちゃんがテンションをぶち上げながら上体を起こした。
「私もやりたい!」
「「「「それは駄目」」」」
「なんでェ!?」
武内さん以外の大人達どころか弟くんからもストップが出され、泣く泣く琴葉さんの膝に戻って行った。
ネットと言う悪意と愉悦が入り乱れた場所にまだ幼い子供を入れるのは親として心配なのは当然だと思う。
「じゃ、俺は宗全と話があるから」
「わかりました」
そう短く琴葉さんと言葉を交わした勇斗さんは部屋から出て行ってしまった。
まとめ役である家主が離席するや、代理として弟くんの隣に座っている女性が注文取りを行っていく。
「彩葉ちゃんとかぐやちゃんは何頼む?」
「肉!」
「カルビとタンを2つずつお願いします」
「うん、わかった」
焼肉の定番をかぐやの分含めてお願いする。
「柚葉さんはどうしますか?」
「私は石焼ビビンバだけでいいよ」
御高齢と言うこともあって、武内さんは単品のみ。
よくよく考えてみると、今日ケバブ食べたんだった。お腹周りが心配ではあるが、焼肉屋来て肉を食べないのは失礼。だから、これはしょうがない。しょうがないのだ。
焼肉を堪能している彩葉から視点を引き継ぐ。
視線の先には、ずっと取っておいた席に躊躇なく座った親友こと黒耀 勇斗。その第一声が―――
「俺、ちょっとの間ライバーになるわ」
「そうか」
カウンター席に静寂が訪れる。が、それも一瞬のこと。すぐにまた箸の音とトングの音が鳴り始める。
「1本目はなにするんだ?」
「謝罪動画だな」
「スーツ着てか?」
「いや。そこまでしなくていいだろ」
まあ十中八九かぐやの卒業についての謝罪動画だろう。事情を知らない者からしたら、変なおっさんが出しゃばったように見えたろう。
「その後はどうするんだ?」
「後は··········まあ適当やって引退しとく」
「できたらいいな」
「怖いこと言わないでくれ」
如何せん勇斗の知名度は高い。14年前の出来事に加え、海外での活動。
カール大帝勲章とノーベル平和賞を授与された超人あるいは化け物。14年前のアレがちゃんと認めてられてればもう1つ勲章が増えていたのにな。だから人類史は行き詰まっている。
っと、そろそろか。
席から立ち上がり、玄関へと体を向ける。続くように勇斗も席を立ち、肩を並べる。
「誰か来るのか?」
返答はしない。見た方が手っ取り早い。
引き戸がガラガラと音を立てて開かれていく。
その先に立っている者の名は黒耀 幹弥。黒髪黒目の戸籍上黒耀家の長男である青年。歳は19。元傭兵である。
こちらの存在を認識してか、その生気を灯さない死んだ瞳が大きく開かれる。
「·········イエス・キリストか」
「知ってるのか?」
「ああ。ヨーロッパ圏の子供らによく読み聞かせをしている」
「情操教育にはうってつけだもんな」
現孤児院の施設者でもある。
欧米に跨って活動しているため、月末辺りは視察と手続きで11ヶ所の孤児院を周っている。今日が9/15であることを踏まえると、そろそろ大忙しになるだろう。
「それで、今日はどうしたんだ?」
「復活した、との連絡があった。半信半疑だったために確認をしに来ただけだ。」
それもあるが、心の奥底には父親と会話をしにが大半である。
心の中でニヤニヤしてると、左(玄関からは右)の部屋から竣太がコーラ片手に出てきた。
「俺が連絡しときました」
「連絡先交換してたのか?」
「幹弥くん、FPSがマジで上手なんで偶に、極々稀に一緒にやってるんですよ。ねー」
「マジ?」
「雨竜ともしている」
「雨竜くんは3回に1回は死体撃ちでペナルティ食うんで、途中でいなくなります」
「流石、ガチクズ雨竜だな」
子供に知らない一面があったことを知り、ガチで凹んでいる勇斗を尻目に雨竜のガチクズぶりを称賛する。
まあ、これでも大分マシにはなってる。
名前が聞こえたからか、雨竜もまた竣太同様コーラ片手にこちらへ近づいてくる。
「暴言とか暴力とかよりマシでしょ?」
「まあマシの部類だな、お前にしては」
「なら死体撃ちすんなよ」
「死体撃ち楽しすぎ」
「ん?また雨竜が人をいじめたって?一発喰らっていくか?」
「遠慮しときまぁす」
復帰した雨竜のストッパーを担う勇斗が握り拳を作るや否や、雨竜はそそくさとと部屋に戻って行った。
「てか、ゲーム機とか孤児院にあるんだ」
「ああ。共有物として買ったが」
「が?」
「するよりも観る方が楽しいらしい。」
「あー、なるほどな」
プロのプレイ動画は見てて面白い。それと同じ原理だ。
「まっ、立ち話もなんだし、食ってけよ」
「···········そうだな」
勇斗の言葉に、飛行機の予約や子供達のことを考えるが、全てを放り投げ、カウンター席の1番左に座る。彼もまだまだ子供ということだ。
元々俺の席だった所に座った勇斗の隣に座る。
「恋人とかできたか?」
そんなド定番で始まった親子の会話は1時間程続いた。
7対7のKASSENの存在を最近知りました。(8週目)(大敗)
きっと、次に活かせる筈。