【お詫び】
作者の無知な無知をお詫び申し上げます。
『脳死』と『植物状態』を同一のものとして捉えていました。この物語で『脳死』と記していたものは正しくは『植物状態』でした。
誠に申し訳ありません。
順次、修正していくので許してください。なんでもはしません。
9月11日、決戦前夜。
場所は前回と同じツクヨミ内のミーティングルーム。
最後の話し合いにと集まったBlack onyX、彩葉、芦花、真美、ヤチヨ、宗全。そして―――
「お久しぶりです」
「おひさー!」
「守くんデカくなったなー!」
「もう19ですから」
「勇斗さんは?いない?そっか」
「これ終わったら飯行くぞ!」
「はいはい!俺も行きます!」
「居酒屋行っとくー!?」
「気が早いですよ。ちなみに何処ですか?」
「ザギン?ザギンでシース?」
「それもう古いですよ」
「ニッポン、ゴハン、オイシイ!」
「日本語覚えたんですか!?」
「はいお前ら静かにしろー」
総勢59名。小さなイベントでも開催されるのかと言った雰囲気だ。
黒耀 勇斗たった一人の縁でここまでの人々が一ヶ所に集まった。しかし、当の本人はこの場にはいないのだが。
懐かしみの顔ぶれにテンションが止まることを知らず、宗全の言葉を無視して盛り上がっていく。
「よし。全員グループから脱退だな」
「「はい黙ります!!!!」」
「最初からそうしろ」
呆れ顔でため息を零しながら、盲目のバルティマイ創設者として1番先頭に立ち、彩葉へ鋭い視線を向ける。
「改めて問う。
何故戦い、何に命を懸けるのか。そして、何処に辿り着きたいのか」
先程まで笑い合っていた宗全の後ろの面々も真剣な表情になり、彩葉を見つめる。
その様子に重圧を感じるが、下唇を噛み締め、覚悟を口にする。
「私はかぐやのために戦う。そのためなら命だって懸けれる。目指すのはハッピーエンド以外ありえない」
重々しい空気を裂く必死の言葉を聞き、宗全達面々は真剣な表情から頬を緩める者もいれば、瞼を降ろし静かに頷く者もいる。十人十色ではあるが、その中に1人も否定する者はいなかった。
「いいな、ハッピーエンド。勇斗が是が非でも手伝いたい理由がわかる。
―――だがな。簡単に言うが、全員幸せのハッピーエンドってのは地獄の道を進むことになる。
愛と希望、持ったか?」
少し視線が彩葉の後ろへと向けたられたが、誰も気には留めなかった。
「愛と希望·········?」
「それがあれば大抵なんとかなる。明日までには用意しとけ」
「はい!········?」
「抽象的すぎでしょー!」
「シンプルでいいよ!シンプルで!」
「回りくどいんですよ、いつも!」
「黙っといてくれるかー!!」
愛と希望と言う具体性の欠片もない発言に納得言ってなそうな顔を浮かべる彩葉に声援+宗全への非難が飛び交う。
「ったく、いっちょまえに啖呵を切りやがって」
「帝涙もろすぎー」
「成長とはいつも速いものだ」
「立派だなぁ、いろは··········」
「うん、立派······」
彩葉の姿に感嘆する後方の知り合い組。ヤチヨはただその光景を薄っすらと微笑みながら見つめている。
盛り上がりも落ち着いた頃、誰かがとある疑問を口にした。
「そういえば、彩葉ちゃんと勇斗さんは何処で出会ったの?」
「一度も会ったことないですよ?」
「宗全、説明」
「まあ、彩葉と勇斗は一度も会ってないな」
「14年前以前に出会ったとかではなく?」
「3歳児が約束できる訳ないだろ」
「うーんっと?つまり、勇斗さんは面識のない子のために別の誰かと約束したってこと?」
「そうなるな」
面識のない子を助けるために何時何処で誰と彼は約束したのか。その疑問だけが残るが、それを知るのは勇斗と宗全のみ。
まあ、と言ってもいつもの事なのでそこまで深く考えないのが盲目のバルティマイ。結構適当な集団です。
「まあいっか。いつもの事ですし」
「そうそう。勇斗さん魔猪だし」
「どうするよ、次会った時猪になってたら」
「捕獲して飼う」
「·········とりあえず、君より先に保護しないと不味いな」
「変な話してないで、作戦概要説明するぞ」
ヤバい思想の者が見えた気がするが、それはそれ。癖強集団、それが盲目のバルティマイです。多分勇斗は笑ってる。
「報酬は2日間の東京観光。できれば全員で宴会したいが、そこは未定。夢があるな」
「夢にするなー!」
「酒飲ませろー!」
「それがメインだろー!」
「いや違いますけど」
「達成目標は、かぐやの完全防衛もしくは月人一掃。最悪の場合、朝まで耐久を視野に入れておけ」
「朝、まで?」
「30連勤残業ありを超えた私に不可能はない」
「労基に今すぐ行ってください」
もちろん30連勤全て終電ギリギリまで残業だ。
正直、アレは人のする事じゃない。とは本人談。
「日出はBlack onyXに同行。透、大和、霙はかぐやがいる高台防衛。それ以外は散って月人撃破だ。無限湧きを想定している」
「妥当か」
「妥当」
「しゃーなし」
「無限湧き······朝まで耐久だな、コレ」
宗全の説明に悟った顔で天を仰ぐ面々。宗全の応援要請でキツくないものなど一度もないのだから。
ちなみに、日出のみがBlack onyX同行員になっている理由としては、前衛が足りない+この中で1番協力プレイ慣れしているためである。
「後は各自自由。
月人に寝返るも良し。自分の会社の商品紹介しながら戦うも良し。
ただし、歌っているかぐやの妨害をしようとした奴は自分の影に裂かれることになる。いいな?」
「アバター?それとも本体?」
「本体に決まってんだろ。死体はアマゾンに埋めてきてやるから安心しろ」
「なら安心」
「いつか勇斗さんに掘り起こしてもらお」
「やめろ。勇斗の精神衛生上よくない」
「渚さん、そろそろ自重してください」
なにが安心なのだろうか、と彩葉達は一抹の不安を覚えながら、確かな安心感を覚えていた。
彼らのほとんどは人生経験豊富な大人。それも、一つの業種の頂点に近い人々。頼もしいこと限りない。
「話は以上だ。解散していいぞ」
「以上?1番重要なこと話してなくない?」
「そうだそうだー!」
「勇斗さんはどうしたー!」
「あのドンファンをここに呼べー!」
「理想バカはどうなってるんだー!」
「甘ちゃんはどこだー!」
「わかったわかった。一先ず落ち着け」
宗全がジェスチャーを取りながら、一団の騒動を抑えつける。
最後の方、悪口になっている気がしたが、きっと気の所為だろう。そうに違いない。
「昨日の昼頃、アマゾンで23時頃、レオと宗武、岩太がアマゾン入りした連絡があった。
聞くに、日本語をほんの少し解する部族の集落があったようだ。十中八九勇斗の仕業だろうな」
「おお!」
「やっぱあの人、人間じゃないだろ!」
「上位生物って言われても納得できる」
「てんてれてん♪てんてててん♪*1」
「そんな感じで、勇斗の痕跡が至る所にあるんだが、肝心の勇斗が見当たらないってよ。まあ、アイツが作った道辿ってれば決戦までには会える筈だ」
「それが聞きたかった」
「勇斗さんと肩並べて戦えるなんて思いもしなかった」
「まさか念願叶うとは」
「ツクヨミには感謝しかない」
その言葉に、いつも隣で苦労しまくっている宗全は苦笑いするしかなかった。
絶対の信頼からくる無茶振りは嬉しいのだが、それはそれ、これはこれ。彼が天才でなければ何度死んだことか。
「んじゃあ話は以上。解散!」
「飲み行こう!」
「奢りなら付き合いますよ」
「もちろん奢る!」
「じゃあ私もー」
「俺も行きまーす!」
「俺は寝る」
「はいおやすみー」
「守くんも飲み行くよな」
「まだ飲めないんですが」
「大丈夫、バレなきゃいいから」
「はいはい、さっさとログアウトしてなー」
その声を皮切りに、宗全以外は全員ログアウトしていった。
そうして残された宗全は、彩葉達へ向き直る。その顔は覚悟を問うた時と同じく真剣な顔だった。
「真面目な話、この戦いは敗北濃厚だ」
その言葉に、ヤチヨ以外は瞠目した。
あれだけの人員を揃え、Black onyX相手に蹂躙を成した人物が言うには、あまりにも弱々しい言葉だった。
「勇斗は英雄だと謳われてはいるが、その実、多くの人々を殺し、踏みつけ、壊してきた。
怒りや怨みを買いすぎている勇斗の5分というのは、あまりにも致命的だ。最悪死ぬかもしれない」
「っ······、ならなんで私なんかのために―――」
「それだけの価値がこの戦いにはある。俺も勇斗もそう思って此処にいる」
勇斗が南米の治安を維持しているのは義務感でも大義によるものでもない。
ただ、―――いや、それは今ここで語るべきではない。本人の口から聞くべきだろう。
「―――だがな。
勇斗が多くの運命を捻じ曲げて今の今まで生きてきたのも事実だ。今回もそれに賭ける。」
「賭けるって、んな適当でいいのか?
その大見栄張った啖呵を嘲笑うことなく、少し頬を緩め、笑みを零す。
ここに勇斗がいたのなら、丸くなったと茶化す所だろう。
「期待してるぞ」
その言葉を残し、彼もまたログアウト。ツクヨミから彼の残滓が消え去った。
本番はここから。最後の大詰め。
東京、23時頃。
新設された冷却設備完備の地下の一室。そこには2000台ものスパコンが設置されていた。
「とりあえず2000台。日本中からかき集めて来ましたよ」
「助かった。これで勇斗が暴れてもツクヨミのサーバーは保つだろ」
「2000台で足りますかね?」
「ギリだが足りる」
「海外にも手を回せば、明日の本番前までには届きます。声かけときます?」
「いや、大丈夫だ。海外は勇斗に反感持ってるヤツ多いからな。ヨーロッパならまだしも」
「ですね」
宗全が管理システムを組み立てながら、それを確認する同伴者。
間違いは宗全である以上ないだろうが、念の為だ。二次確認はなんでも大事。
「よし。一斉配布完了だ」
「ほんと、どういう脳みそしてんですか。解剖して見たいくらいです」
「なんも変わらねえよ。普通の脳みそだ」
要した時間は3時間。常人なら一日を要していただろう作業をサクッと終わらせ、椅子から立ち上がる。
その顔には若干の疲れが見える。
「それにしても、電気代心配ですね」
「ああ。俺が作った装飾品やら何やらを
「はは、それは相当ですね········」
お金に頓着しない宗全が払うのを他者に分割するとは、相当なのだろうと同伴者は笑うしかなかった。
そもそも、スパコン2000台など個人で運用するものではないのだ。前提がおかしい。
この部屋ですることを終えた二人は、施錠し、階段を上がっていく。
「この戦いが終わった後はどうするんですか?」
「半分は世界中に寄付。半分はこのホテルに寄贈。
3階を多目的ホールに改築して、ゲームのイベントやらツクヨミのコラボイベントやらで使うらしい」
「健二さんは商売に魂売ってますよね」
明かりが漏れる扉を開け、ホテルの用具室に出る。綺麗に整頓された用具を避けながら抜けていく。
「ここの改修は間に合いませんでしたね」
「ここまで終わらせたなら完璧だ」
用具室を出て、職員用の休憩室を出て、ロビーを通り過ぎ、貸切にした2階へと上がる。ついでに3階も貸切である。
2階の広間に入り、第一声を大にして告げる。
「大詰めは終わった!」
ここに集った志を同じにした人々の前を堂々と歩きながら、演説を続ける。
丁度真ん中あたりで足を止め、体の正面を大勢に向ける。
「決戦は明日!敗北濃厚だが、諦める奴なんていねえよな!!」
「「「おおーー!!」」」
「月人潰すぞーー!!」
「ネタが古すぎーー!!」
「んじゃま、今日は寝る!!おやすみ!!」
「「「おやすみー」」」
かくして、大詰めは恙無く終わり、夜は深く落ちていく。ただしそれは、日本の裏側―――南米では逆なのだが。
靴、ズボン、上が一体化した迷彩柄の服。
頭に塵が降りかかるため巻いた黄色のバンダナ。
木屑が口に入らないように巻いた白いタオル。
まるで土木業に従事している者かのような着合わせをしている青年、と言える年ではないか。
そんな男性が、切り株に座り、水分補給をしている。
「ローラン、リナルド、鎮圧しろ」
彼がそう呟くと、虚空から黄色、黒色の宙に浮かぶ剣が出現し、瞬く間に木の影に身を隠していた二人の男の足元に刺さる。
「なッ!?」
「―――詰みだ」
「っ······。」
波打つ剣が首元に突き立てられる。
驚きで動きを止めた瞬間には負けが決定している。
手に握られた拳銃など、この男の前ではおもちゃの銃と同列だ。なんの自衛にはならない。
「遺言なら聞く」
「っ―――、クソ喰らえッ!!」
剣を突き立てられていなかったもう1人の男が化け物に銃の引き金を引く。
引き金を引いた男の視界が斜めに落ちていく。
「········」
最後に見えたその表情は、何も示していなかった。
無、それに近しい何かが垣間見えた。
だが、それも自身の血飛沫によってすぐに見えなくなってしまった。
スパコンについてはChatGPTに全て聞きました。
大規模のゲームサーバーで2000台と聞いたので、今回は2000台を宗全と勇斗のツテで集めてもらいました。
専門家ではないので、もし間違っていても蔑む目で見守ってもらえると幸いです。