「ワートリ、ワールドトリガー」死角の銃手   作:黒星0214

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すみません、文字数の都合上3話同時更新でめちゃくちゃ長いです。m(_ _)m


Episode 7、Episode 8、Episode 9

Episode 7

 

B級ランク戦当日。

 

作戦室モニターに、 今回のマップが表示される。

 

《市街地C》

 

その瞬間。

 

「うわぁ……」

 

三上が露骨に嫌そうな顔をした。

 

「最悪寄りだな今回」

 

奈央も小さく頷く。

 

「かなり見通し良いですからね」

 

市街地C。

 

建物自体はある。

 

だが。

 

道幅が広い。

 

遮蔽物も少なめ。

 

射線が通る。

 

一度位置が割れると、 逃げ切りづらいマップだった。

 

かなり黒瀬メタ寄り。

 

その横で、 水瀬がのんびり端末を眺めている。

 

「今回ハウンド多そうだね〜」

 

「まあ入ってるでしょうね」

 

黒瀬は静かに頷いた。

 

最近かなり増えた。

 

というより。

 

黒瀬対策として、 ほぼ定番になりつつある。

 

「昔より露骨になったよな」

 

三上が苦笑する。

 

「最近の隊、マジでずっとレーダー見てるし」

 

それもかなり変わった部分だった。

 

最初の頃。

 

黒瀬の接近はかなり通った。

 

レーダー確認の頻度。

 

意識の隙。

 

その数秒で潜り込めた。

 

だが今は違う。

 

「まあ、最近はもう気にしてないですけど」

 

黒瀬が静かに言う。

 

「慣れた?」

 

「というより、“見られてる前提”で動いてるので」

 

かなり自然に言った。

 

三上が少し呆れる。

 

「順応早ぇんだよなぁ……」

 

普通ならやりづらくなる。

 

だが黒瀬は、 相手が警戒してくる事を前提に、 立ち回りを変え始めていた。

 

無理に通さない。

 

追われる形を避ける。

 

“射線が通る状況”を作る。

 

かなり堅実だった。

 

水瀬がジュースを飲みながら呟く。

 

「まあ黒瀬くん、最近ちゃんと待つもんね」

 

「待つ?」

 

奈央が少し笑う。

 

「前より無理に入らなくなりましたよね」

 

黒瀬は少し考える。

 

「……詰められると弱いので」

 

即答だった。

 

三上が笑う。

 

「自分の弱点隠さなくなったよなほんと」

 

「事実ですし」

 

市街地C。

 

見通し良好。

 

逃走ルート少なめ。

 

ハウンド増加。

 

かなり嫌な条件だった。

 

だが。

 

黒瀬はそこまで焦っていない。

 

自分がどういう状況で弱いか。

 

逆に、 どういう状況なら戦えるか。

 

それを理解していた。

 

奈央が端末を閉じる。

 

「でも逆に言えば、そこ管理できれば黒瀬くん強いんですよね」

 

「まあな」

 

三上が頷く。

 

「結局、“嫌な距離”維持し続けるの上手いし」

 

その横で、 水瀬が小さく笑った。

 

「あと黒瀬くん、何だかんだちゃんと点取るからね〜」

 

黒瀬は少し困ったように視線を逸らした。

 

数分後。

 

転送準備開始。

 

市街地C。

 

見通しの良い戦場へ、 黒瀬隊が転送されていく

 

 

 

Episode 8

 

転送完了。

 

市街地C。

 

見通しの良い道路と、 低めの建物群が広がるマップ。

 

『試合開始です!』

 

実況と同時に、 各隊が動き出す。

 

黒瀬は即座にバッグワームを起動した。

 

レーダーから消える。

 

だが。

 

「右側、二人で動いてますね」

 

奈央の声。

 

モニター上、 相手部隊はかなり慎重だった。

 

固まって動く。

 

定期的なレーダー確認。

 

不用意に建物へ入らない。

 

完全に黒瀬警戒。

 

「めっちゃ見てるなぁ……」

 

三上が苦笑する。

 

「最近の隊ほんと露骨」

 

黒瀬は小さく頷く。

 

「まあ、こっちも最近は慣れました」

 

言いながら、 細い路地へ入る。

 

だが。

 

以前ほど深くは入らない。

 

見通し。

 

逃走ルート。

 

詰められる距離。

 

全部確認している。

 

その時。

 

『ライトニング!!』

 

乾いた高速射撃音。

 

相手ガンナーが反射的に横へ飛ぶ。

 

「うわっ!?」

 

回避成功。

 

だが。

 

その動きで隊列がズレた。

 

「ナイスです水瀬さん」

 

黒瀬が静かに言う。

 

「当たればラッキーくらい〜」

 

水瀬ののんびりした声。

 

だが、 目的は最初から命中ではない。

 

射線で動かす。

 

位置を崩す。

 

黒瀬隊らしい動きだった。

 

観戦席でも声が上がる。

 

「また水瀬撃ってる」

 

「最近ちょくちょく撃つよな」

 

「でもあれで動かされるの嫌だわ……」

 

その裏。

 

黒瀬が動く。

 

建物横。

 

グラスホッパー起動。

 

横方向へ高速跳躍。

 

「いた!」

 

相手隊員が反応。

 

だが次の瞬間。

 

黒瀬の姿が消えた。

 

「……は?」

 

グラスホッパーの軌道だけが残る。

 

着地地点にいない。

 

観戦席がざわつく。

 

「消えた!?」

 

「今グラスホッパー終わった瞬間にカメレオン入れた?」

 

「うわ、嫌……」

 

跳躍の軌道だけを残して、 黒瀬の姿が掻き消える。

 

遊真との個人戦以降、 黒瀬が取り入れ始めた新しい動きだった。

 

もちろん、 遊真のような曲芸機動は出来ない。

 

だが。

 

“視線を切る”だけなら、 十分だった。

 

その時。

 

「炙り出す!」

 

相手シューターがトリガーを起動する。

 

ハウンド。

 

分裂弾。

 

逃げる黒瀬へ追尾。

 

『ハウンド!!』

 

「やっぱ入れてますよね」

 

黒瀬が小さく呟く。

 

カメレオン解除。

 

即座にシールド展開。

 

弾道を受け止める。

 

だが。

 

その瞬間。

 

相手側が動いた。

 

「今だ!」

 

「位置割れたぞ!」

 

距離を詰める。

 

黒瀬対策としては正しい。

 

カメレオンを切らせた。

 

位置も見えた。

 

逃がさない。

 

だが。

 

黒瀬は落ち着いていた。

 

グラスホッパー起動。

 

横跳躍。

 

視線がそちらへ向く。

 

――次の瞬間。

 

黒瀬の姿がまた消える。

 

「は?」

 

観戦席がざわつく。

 

「またやった!?」

 

相手隊員が反射的にレーダーへ視線を落とす。

 

反応はまだ近い。

 

――その確認へ意識が向いた、 ほんの一瞬。

 

死角。

 

カメレオン解除。

 

ダブルハンドガン。

 

至近距離連射。

 

《BAIL OUT》

 

『うわぁ!?』

 

実況が叫ぶ。

 

「ハウンドで炙ったのに!?」

 

「なんでまた横取られてんだよ!?」

 

観戦席から悲鳴が上がる。

 

しかし。

 

黒瀬は留まらない。

 

即座にグラスホッパー。

 

横跳び。

 

そのまま再びカメレオン。

 

位置を変える。

 

追わせない。

 

『黒瀬隊員、離脱まで早い!』

 

「マジで捕まんねぇな……」

 

誰かが呟く。

 

その時だった。

 

道路を横切った敵隊員へ。

 

乾いた狙撃音。

 

《BAIL OUT》

 

『イーグレット!!』

 

「うわっ!?」

 

「水瀬!?」

 

建物上。

 

水瀬が静かに銃口を下ろしていた。

 

「今のは撃つんだ……」

 

観戦席から思わず声が漏れる。

 

だが。

 

その直後。

 

「水瀬いたぞ!」

 

「屋上だ!」

 

「今のうちに詰める!」

 

相手アタッカーが、 一気に建物側へ走る。

 

スナイパーを放置するのは危険。

 

判断としては正しい。

 

奈央が即座に声を飛ばす。

 

「水瀬さん側、一枚行きます!」

 

「了解」

 

だが。

 

相手が建物へ入る直前。

 

横合いから、 三上が飛び込んだ。

 

『ここで三上隊員!!』

 

『進路を塞いだァ!』

 

「っ!?」

 

「行かせるかよ」

 

弧月を振り抜く。

 

強引に進路を切る。

 

相手アタッカーが舌打ちした。

 

「邪魔だ!」

 

「そりゃ仕事なんでな」

 

鍔迫り合い。

 

押し返す。

 

そのまま三上が笑った。

 

「水瀬は自分が絶対に安全だと思った時しか撃たねぇんだよ」

 

さらに踏み込む。

 

相手の足を止める。

 

「つまり、今のは撃っていい状況ってことだ」

 

 

 

 

 

Episode 9

――試合終了後。

 

作戦室。

 

『ROUND終了。黒瀬隊、一位』

 

モニターの表示が切り替わる。

 

三上がソファへ倒れ込んだ。

 

「疲れた……」

 

「お疲れ様です」

 

黒瀬はいつも通り静かだった。

 

奈央が端末を操作する。

 

「でもかなり良かったですね」

 

「まあ点は取れたしな」

 

三上が言いながら、 リプレイ画面を開く。

 

そこには、 さっきの戦闘。

 

グラスホッパー。

 

カメレオン。

 

再奇襲。

 

観戦席がざわついていた場面が映る。

 

「いやこれほんと嫌だな」

 

三上が真顔で呟く。

 

「相手視点ストレスすごそう」

 

「でもハウンドはやっぱり面倒ですね」

 

黒瀬が画面を見ながら言った。

 

「シールド強制されるので」

 

「最近ほんと増えたよね〜」

 

水瀬がのんびりジュースを飲む。

 

「黒瀬くん対策」

 

奈央も頷く。

 

「レーダー確認かなり徹底されてましたし」

 

「まあ最近露骨ですしね」

 

黒瀬は苦笑する。

 

以前なら、 もっと自由に動けていた。

 

だが今は違う。

 

奇襲を警戒される。

 

消え方を見られる。

 

ハウンドも飛んでくる。

 

それでも。

 

「でも今日の新しい動きかなり良かったんじゃね?」

 

三上がモニターを指差した。

 

グラスホッパー横跳び。

 

そのまま消える場面。

 

「あれ遊真の真似か?」

 

「参考にはしました」

 

黒瀬が小さく頷く。

 

「まあ流石にあそこまでは出来ないですけど」

 

「十分嫌だよ」

 

三上が即答した。

 

「消えたと思ったら横いるの怖ぇんだわ」

 

「結構レーダー見ますしね皆さん」

 

黒瀬が静かに言う。

 

「確認する瞬間、少し止まるので」

 

「あー……」

 

三上が嫌そうな顔をした。

 

「そこ狙ってんのか」

 

「割と」

 

かなり黒瀬だった。

 

その横で、 水瀬がのんびり口を開く。

 

「でも今日かなり見られてたよね黒瀬くん」

 

「まあ対策されてますし」

 

「それで普通に点取るのズルいよね〜」

 

「何だかんだ取るんだよなぁ……」

 

三上が深くため息を吐く。

 

そして。

 

少し笑った。

 

「……やっぱうちのエースだわ」

 

 

 

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