Episode 11
Episode 11「遠征試験」
呼び出しは突然だった。
任務終わりの廊下。
黒瀬隊全員宛てに、本部上層部からの呼び出し通知が届いた。
「……何ですかね」
奈央が端末を見ながら言う。
「さあ」
三上も首を傾げていた。
「怒られるようなことしたか?」
「心当たりないですけど」
「なんか緊張しますね」
奈央が小声で言う。
「まだ怒られると決まった訳でもないですし」
「……まあな」
水瀬がのんびり言う。
「行けば分かりますよ〜」
指定された部屋は、普段立ち入ることのない本部上層フロアだった。
重厚な扉。
静かな廊下。
室内へ入ると、机を挟んで二人の職員が座っていた。
「座ってください」
四人が席に着く。
「今日呼んだのは他でもない」
職員が資料を開く。
「遠征任務の打診です」
沈黙。
四人の空気が微妙に変わった。
職員が続ける。
「ただし、すぐに遠征というわけではありません」
「まず遠征特別試験があります」
「それを通過した隊のみ、正式に遠征任務へ参加できます」
もう一人の職員が補足する。
「今回の選抜は戦力やランク順位だけで選んでいません」
「隠密行動能力、個々の最低限の戦力、連携の安定性」
「そうした適性を踏まえた上で、現在は特定の隊にのみ打診しています。」
三上が静かに聞く。
「……他にも声かけてる隊があるということですか」
「はい」
「ただし、数は多くありません」
黒瀬が口を開く。
「断ってもいいんですか」
職員が頷く。
「構いません」
「遠征に行く意思がない、あるいは現時点では時期尚早と判断するなら断っていただいて問題ない」
「強制ではありません」
給与面。
任務規約。
危険度の説明。
遠征任務に伴う諸々の説明が続いた。
難しい話も多かったが、職員はひとつひとつ丁寧に説明した。
一通り終わったところで。
「何か質問はありますか」
沈黙。
三上と奈央が顔を見合わせる。
黒瀬は少し考えていた。
その時。
水瀬がすっと手を挙げた。
「はい」
全員の視線が集まる。
水瀬は至って真顔だった。
「遠征試験に合格した場合、報酬とは別に隊専用の作戦室を用意していただくことは可能ですか」
沈黙。
職員二人が顔を見合わせた。
三上が小声で言う。
「お前今それ聞くの?」
「大事なことです」
水瀬は動じない。
職員が少し間を置いてから答えた。
「……試験合格が前提になりますが」
「検討はできます」
水瀬の表情が少し明るくなった。
「ありがとうございます」
「他に質問は?」
しばらく沈黙が続いた後、三上が口を開く。
「返答はいつまでに」
「一週間以内にお願いします」
「分かりました」
室内を出る。
廊下。
扉が閉まった瞬間。
三上が水瀬を見た。
「……お前本当にそこ聞くんだな」
「だって大事じゃないですか〜」
「いや大事かどうかじゃなくて」
奈央が苦笑する。
「でも意外とあっさり検討してくれましたね」
「礼儀正しく聞いたので」
水瀬がのんびり言う。
三上が深くため息を吐いた。
その横で、黒瀬が静かに口を開く。
「……どうしますか」
四人の足が止まる。
廊下。
静かだった。
三上が腕を組む。
「まあ、即答はしなくていいだろ」
「一週間あるし」
「ですね」
奈央が頷く。
「ちゃんと話し合ってから決めましょう」
水瀬はのんびりと天井を見上げた。
「でも専用作戦室、いいですよね〜」
「そこに戻るんかい」
三上が即座に突っ込んだ。