Episode 12「話し合い」
翌日。
四人が集まっていた。
「まあ、改めて」
三上が机を挟んで座る。
「どうする」
沈黙。
奈央が端末を置く。
「遠征試験、ですよね」
「そう」
三上が腕を組む。
「断ってもいいって言われてるし、全員の意見聞いとこうかなと」
「まあ順番に言うか」
少し間。
「俺は、受けたい」
三上が言う。
「理由は?」
黒瀬が静かに聞く。
「単純に、ランク戦だけじゃ見えないもんがあるだろうなって」
三上が続ける。
「実戦と訓練は違うし、遠征ならもっと別の動きが必要になる」
「やってみたい気持ちはある」
「奈央ちゃんは?」
奈央が少し考える。
「私も、受けたいです」
「オペレーターとして遠征経験があるのとないのとじゃ、だいぶ違うと思うので」
「情報収集とか索敵とか、実際の遠征じゃないと分からないことも多いですし」
三上が頷く。
「水瀬は?」
水瀬がのんびり口を開く。
「受けますよ〜」
「理由は?」
「作戦室貰えるかもしれないので」
沈黙。
三上が目を細めた。
「……それだけ?」
「あと遠征も普通に興味ありますよ〜」
「作戦室が先に出てきたのが気になるけどな」
奈央が苦笑する。
視線が黒瀬へ向く。
「黒瀬は?」
黒瀬は少し考えてから答えた。
「受けます」
「理由は?」
「ランク戦で出来ない経験が積めると思うので」
三上が少し笑う。
「まあそうだよな」
「全員一致か」
奈央が頷く。
「ただ」
黒瀬が続ける。
「試験の内容次第では、今の戦い方が通じない場面も出てくると思います」
「まあな」
三上が頷く。
「ランク戦と遠征じゃ条件が違う」
「人数も、地形も、目的も」
「今まで通りにはいかない部分はあるだろうな」
少し沈黙。
奈央が口を開く。
「だから試験があるんじゃないですかね」
「試験で何が足りないか分かるなら、そっちの方が良いと思いますし」
「まあそうだな」
三上が腕を伸ばす。
「じゃあ全員受ける方向で返答するか」
「はい」
「いいと思います」
「楽しみですね〜」
水瀬がのんびり言った。
Episode 13「遠征特別試験」
返答から数日後。
本部の大きな会議室に、いくつかの隊が集められていた。
黒瀬隊が室内へ入ると、既に何組かが席についていた。
「結構いますね」
奈央が小声で言う。
「5、6隊くらいか」
三上が室内を見回す。
見覚えのある隊員もいる。
見覚えのない隊員もいる。
どの隊も、雰囲気は悪くない。
派手さより、静かな練度を感じる顔ぶれだった。
その時。
水瀬が小さく止まった。
「……当真先輩いる」
「え?」
三上が視線を向ける。
壁際。
腕を組んで座っている隊員。
冬島隊。
「冬島隊も来てるのか」
三上が少し目を細める。
「遠征経験者がいる隊じゃないですか」
奈央が静かに言った。
「まあ、そういう隊も選ばれるってことだろうな」
黒瀬は無言で席へ向かった。
しばらくして、前方の扉が開く。
先日と同じ職員が資料を持って入ってきた。
「全員揃いましたね」
室内が静かになる。
「今回の遠征特別試験について改めて説明します」
室内の空気が少し引き締まった。
「試験は長期間を想定した特別形式になります」
「戦闘能力だけでなく、複数の適性を総合的に確認します」
職員が続ける。
「詳細は各試験前に説明しますが、今日はまず全体の流れと日程をお伝えします」
資料が配られる。
奈央が素早く目を通し始めた。
三上がぼそっと言う。
「思ったより本格的だな」
「遠征ですから」
黒瀬が静かに答えた。
水瀬はまだちらっと冬島隊の方を見ていた。
「当真先輩、雰囲気あるな〜」
「見るな」
三上が小声で言う。
「別に見てるだけですよ〜」
奈央が二人を軽く窘める。
「説明中ですよ」
水瀬がのんびり前を向いた。
職員の説明が続く。
日程。
試験の大まかな流れ。
注意事項。
淡々と進んでいく。
黒瀬は静かに資料を見ながら、室内をもう一度見回した。
どの隊も、それぞれ選ばれた理由がある。
そういう顔ぶれだった。