Episode 34「水瀬vs当真」
ライトニングを撃った直後。
水瀬はすぐにその場を離れていた。
廃ビルの一室。
窓から離れた暗い場所で、静かに息を潜める。
廃ビルエリア全体が静まり返っていた。
黒瀬が落とされた。
三上も落とされた。
残ったのは水瀬だけだ。
撤退条件は2人撃破か1時間生存。
黒瀬隊はまだ一人も落とせていない。
撤退は出来ない。
水瀬は静かに端末を見る。
一時間まで、もう少しだった。
当真は今、どこにいるのか。
スナイパーとして、狙撃に向いた場所は想像できる。
だが、当真がそこにいるとは限らない。
むしろ。
そういう場所には、もういない気がした。
当真勇。
あの人は、そういう読みの一枚上にいる。
水瀬は静かに息を吐いた。
部屋を移動する。
音を立てない。
床に散らばった瓦礫を避けながら、ゆっくり廊下へ出る。
薄暗い。
崩れた壁。
割れた窓。
風の音だけが響いている。
水瀬は何度も周囲を確認した。
見えない。
何も。
それが怖い。
当真は気配を読むのも、消すのも上手い。
見えていないだけで、既にスコープを向けられている可能性だってある。
水瀬は別の部屋へ入った。
窓から見えない位置へ身体を寄せる。
少しだけ外を見る。
静かだった。
何も動いていない。
それでも、水瀬は窓際へ近づかなかった。
近づいた瞬間に撃たれる。
そんな気がしていた。
あと少し。
あと少し耐えればいい。
水瀬はゆっくり移動を再開する。
向かう場所は決めていた。
廃ビル中央付近。
崩れた連絡通路が見える高層階。
あそこなら射線がある程度限定される。
少なくとも、完全に好き放題撃たれる状況にはならない。
足音を殺しながら階段を上がる。
途中で何度も止まる。
気配を探る。
何もない。
それでも怖かった。
当真がいる。
見えていないだけで。
ずっと。
どこかから見ている。
水瀬は高層階へ辿り着く。
崩れた壁。
割れた窓。
薄暗い部屋。
水瀬は窓から離れた位置へしゃがみ込んだ。
呼吸を整える。
まだ動かない。
あと少し。
あと少しだけ。
その瞬間だった。
窓の向こう。
一瞬だけ、微かな反射光が見えた。
水瀬の動きが止まる。
スコープ。
こちらを向いている。
息が止まった。
見られている。
当真が既にスコープを向けていた。
暗い室内。
窓の奥。
水瀬の位置を正確に捉えている。
動けない。
動いた瞬間、撃たれる。
時間が止まったようだった。
当真のスコープが静かに、確実に水瀬へ向けられた。
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