Episode 37「最終日」
あれから数日。
黒瀬隊は様々なミッションをこなしながら、他隊との遭遇戦も繰り返していた。
トリオン兵討伐。
物資回収。
護衛任務。
時には他の隊と正面からぶつかり、ポイントを奪い合うこともあった。
その結果。
試験はいよいよ最終日を迎えていた。
拠点のモニターには各隊のポイントが表示されている。
黒瀬隊は現在1位。
冬島隊との差はわずかだった。
「……ギリギリだな」
三上がポイント表示を見ながら呟く。
「他の隊も追い上げてきてますね」
奈央が端末を操作しながら言う。
「エース級の隊員、7〜9ポイントになってる人が結構いますよ」
「連続撃破の結果ですね」
「黒瀬君は12ポイントになってますしね」
黒瀬が静かに言う。
「一回落とされたり、落としたりするだけで順位が一気に動く可能性がありますね」
三上が苦笑する。
「暴れすぎだろお前」
「結果的にそうなりました」
「狙われやすくなってるんじゃないか」
「まあ」
黒瀬が静かに頷く。
「気をつけてます」
水瀬がのんびり言う。
「最終日はトリオン兵狩ってる隊ほとんどいないですよね〜」
「そうですね」
奈央が頷く。
「終盤は撃破ポイント狙いが多いですし」
「通貨より点数の方が大事ですから」
「今日1日、気を抜かずにこのまま行くか」
三上が腕を組む。
「冬島隊との差もあるし、慎重に動けば逃げ切れる」
黒瀬が静かに頷いた。
「ですね」
その時。
奈央の端末が小さく鳴った。
「……あれ」
奈央が画面を見る。
表情が変わった。
「冬島隊のポイントが上がってます」
「まあ誰か落としたんだろ」
三上が軽く言う。
「いや」
奈央の声が少し硬くなる。
「上がり方がおかしいです」
三上が端末を覗き込む。
「……何だこれ」
冬島隊のポイントが急激に伸びていた。
一人を落としたような上がり方じゃない。
あり得ない速度で数字が増えている。
「何が起きてるんですか」
水瀬が少し真顔になる。
黒瀬は静かにショップを開いた。
アイテム一覧。
スクロールしていく。
「……これですね」
黒瀬が画面を指差す。
《撃破ポイント2倍 30分》
三上が固まった。
「……まさか」
「買ったんでしょうね」
黒瀬が静かに言う。
「でもあの額ですよ」
奈央が頷く。
「かなりの通貨が必要なはずですけど」
三上が少し考える。
「待てよ」
「冬島隊って3人しかいないだろ」
「食料も日用品も出費が少ないんじゃないか」
「……確かに」
奈央が気づいたように言う。
「私たちより通貨の消費が少ないですね」
黒瀬が静かに続ける。
「もし今までお助けアイテムをほとんど使ってなかったとしたら、通貨もかなり残ってたはずです」
静寂。
三上が頭を掻く。
「……ずっと素の実力だけであのポイント維持してたのか」
「そういうことになりますね」
奈央が静かに言う。
水瀬が少し呆れたように呟く。
「普通に怖いですね〜」
モニターのポイントがまた動いた。
冬島隊が黒瀬隊を上回った。
三上が深くため息をつく。
「……逆転されたか」
「残り時間でこっちが動いても」
奈央が静かに言う。
「2倍補正がある状態で追いつくのは厳しいですね」
沈黙。
黒瀬はモニターを静かに見ていた。
そのまま時間が過ぎていく。
《サバイバル試験終了》
アナウンスが流れた。
最終結果。
1位 冬島隊。
2位 黒瀬隊。
三上が深く息を吐いた。
「……負けたな」
「ですね」
黒瀬が静かに答えた。
「でも2位ですよ」
奈央が言う。
「当真さんも落としましたし」
水瀬がのんびり言う。
「十分じゃないですか〜」
三上が少し笑う。
「まあな」
黒瀬は静かにモニターを見ていた。
負けた。
だが、やれることはやった。
そう思った。
遠征試験編はこれで終了となります。
次回からは遠征編へ入る予定です。
一応、頭の中に大まかな構想自体はあるのですが、まだ細かな設定や構成を詰め切れていないため、更新は少しゆっくりになると思います。
また、読みやすさを意識して、ある程度まとまった区切りごとに一気に投稿する形を予定しています。
細かな構成や設定が固まるまでは、しばらく閑話休題的な話を挟みつつ更新していく予定です。
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ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。