「ワートリ、ワールドトリガー」死角の銃手   作:黒星0214

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閑話休題「クソゲー」

閑話休題「クソゲー」

 

「……今回、遠征試験に呼ばれた隊って、多分隠密行動とか索敵得意な隊ばっかだよな」

 

拠点へ戻る途中。

 

男が小さく呟いた。

 

隣を歩く隊員も苦笑する。

 

「まあな」

 

「そうじゃなきゃ、俺たちみたいなB級中位を行ったり来たりしてる隊まで呼ばれないだろ」

 

それは全員薄々気づいていた。

 

今回、遠征試験へ呼ばれた隊は、多かれ少なかれ隠密行動を得意としている。

 

姿を消す。

 

索敵する。

 

気配を読む。

 

追跡する。

 

正面戦闘だけではない能力を持つ隊ばかりだった。

 

そして今回の試験。

 

最初から、“レーダー無し”が前提になっている。

 

最初は意味が分からなかった。

 

だが、数日やって理解した。

 

「遠征意識してるんだろうな」

 

「だろうな」

 

通常の防衛戦なら、味方が多い。

 

誰かが敵を捕捉する。

 

レーダーもある。

 

逆に言えば、“誰も敵を捕捉できない状況”そのものがかなりまずい。

 

だから普段のランク戦は、レーダーありきで成立している。

 

だが。

 

遠征は違う。

 

環境も違う。

 

地形も違う。

 

敵も違う。

 

レーダー妨害。

 

未知の兵器。

 

そもそもレーダーに映らない前提の敵。

 

そういう状況でも戦えるか。

 

今回見られているのは、多分そこだ。

 

「……まあ、意図は分かる」

 

男が深く息を吐く。

 

「分かるんだけどさぁ……」

 

「だとしてもだ」

 

端末を見る。

 

順位表。

 

黒瀬隊。

 

冬島隊。

 

上位二つを見て、全員が無言になる。

 

「あまりにもあの二隊が有利すぎるだろ」

 

誰かが真顔で言った。

 

まず黒瀬隊。

 

隊長の黒瀬。

 

カメレオン持ち。

 

今回のルールと噛み合いすぎている。

 

見つからない。

 

しかも、何故か敵を見つけるのも異常に上手い。

 

最初に見つけられた時点で終わる。

 

気づいた時には近くにいる。

 

「あれ絶対サイドエフェクト絡んでるだろ……」

 

「じゃなきゃ説明つかねぇよ……」

 

「で、冬島隊な」

 

空気が重くなる。

 

「いやもう、そもそも同じ土俵だと思うなよ」

 

即答だった。

 

A級2位。

 

その時点でおかしい。

 

しかも日数を重ねるごとに状況が悪化していた。

 

ワープ。

 

罠。

 

冬島隊の有利な環境が、時間経過で完成していく。

 

「冬島隊警戒して、遮蔽少ない複雑なルート通るだろ?」

 

「黒瀬に狩られる」

 

「逆に黒瀬を警戒して、見通しのいい場所を動くだろ?」

 

「当真さんに抜かれる」

 

沈黙。

 

誰かが呟く。

 

「……これをクソゲーと言わず何て言うんだよ」

 

誰も否定しなかった。

 

だから。

 

自分たちはもう割り切っていた。

 

「隊員詳細表示権、多めに買っといて正解だったな」

 

「ああ」

 

黒瀬と当真。

 

その二人がどのエリアにいるか。

 

まずそれを確認する。

 

そして“近づかない”。

 

戦うのではなく、避ける。

 

それしかない。

 

「もう上位勢と正面からやるゲームじゃねぇんだよなこれ……」

 

遠くで銃声が響いた。

 

全員が反射的に身を低くする。

 

数秒後。

 

ベイルアウト光。

 

誰かが落ちた。

 

全員、確認するまでもなく思った。

 

「……今の、多分どっちかだろ」

 

誰かが小さく呟く。

 

「帰りてぇ……」

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