閑話休題「クソゲー」
「……今回、遠征試験に呼ばれた隊って、多分隠密行動とか索敵得意な隊ばっかだよな」
拠点へ戻る途中。
男が小さく呟いた。
隣を歩く隊員も苦笑する。
「まあな」
「そうじゃなきゃ、俺たちみたいなB級中位を行ったり来たりしてる隊まで呼ばれないだろ」
それは全員薄々気づいていた。
今回、遠征試験へ呼ばれた隊は、多かれ少なかれ隠密行動を得意としている。
姿を消す。
索敵する。
気配を読む。
追跡する。
正面戦闘だけではない能力を持つ隊ばかりだった。
そして今回の試験。
最初から、“レーダー無し”が前提になっている。
最初は意味が分からなかった。
だが、数日やって理解した。
「遠征意識してるんだろうな」
「だろうな」
通常の防衛戦なら、味方が多い。
誰かが敵を捕捉する。
レーダーもある。
逆に言えば、“誰も敵を捕捉できない状況”そのものがかなりまずい。
だから普段のランク戦は、レーダーありきで成立している。
だが。
遠征は違う。
環境も違う。
地形も違う。
敵も違う。
レーダー妨害。
未知の兵器。
そもそもレーダーに映らない前提の敵。
そういう状況でも戦えるか。
今回見られているのは、多分そこだ。
「……まあ、意図は分かる」
男が深く息を吐く。
「分かるんだけどさぁ……」
「だとしてもだ」
端末を見る。
順位表。
黒瀬隊。
冬島隊。
上位二つを見て、全員が無言になる。
「あまりにもあの二隊が有利すぎるだろ」
誰かが真顔で言った。
まず黒瀬隊。
隊長の黒瀬。
カメレオン持ち。
今回のルールと噛み合いすぎている。
見つからない。
しかも、何故か敵を見つけるのも異常に上手い。
最初に見つけられた時点で終わる。
気づいた時には近くにいる。
「あれ絶対サイドエフェクト絡んでるだろ……」
「じゃなきゃ説明つかねぇよ……」
「で、冬島隊な」
空気が重くなる。
「いやもう、そもそも同じ土俵だと思うなよ」
即答だった。
A級2位。
その時点でおかしい。
しかも日数を重ねるごとに状況が悪化していた。
ワープ。
罠。
冬島隊の有利な環境が、時間経過で完成していく。
「冬島隊警戒して、遮蔽少ない複雑なルート通るだろ?」
「黒瀬に狩られる」
「逆に黒瀬を警戒して、見通しのいい場所を動くだろ?」
「当真さんに抜かれる」
沈黙。
誰かが呟く。
「……これをクソゲーと言わず何て言うんだよ」
誰も否定しなかった。
だから。
自分たちはもう割り切っていた。
「隊員詳細表示権、多めに買っといて正解だったな」
「ああ」
黒瀬と当真。
その二人がどのエリアにいるか。
まずそれを確認する。
そして“近づかない”。
戦うのではなく、避ける。
それしかない。
「もう上位勢と正面からやるゲームじゃねぇんだよなこれ……」
遠くで銃声が響いた。
全員が反射的に身を低くする。
数秒後。
ベイルアウト光。
誰かが落ちた。
全員、確認するまでもなく思った。
「……今の、多分どっちかだろ」
誰かが小さく呟く。
「帰りてぇ……」