「ワートリ、ワールドトリガー」死角の銃手   作:黒星0214

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閑話休題「水瀬と作戦室①」

閑話休題「水瀬と作戦室①」

 

「……え、ここですか?」

 

水瀬が扉の前で止まる。

 

職員が頷いた。

 

「はい。黒瀬隊専用作戦室になります」

 

水瀬は数秒黙った。

 

それからゆっくり扉を開ける。

 

「……わ」

 

思わず声が漏れた。

 

広い。

 

今まで使っていた共有スペースとは全然違う。

 

大型モニター。

 

壁一面のホワイトボード。

 

立体マップ投影機。

 

棚。

 

ソファ。

 

しかも奥側、少し空間が区切られている。

 

水瀬の目が少し輝いた。

 

「……秘密基地じゃないですか〜」

 

「作戦室な」 後ろから三上が突っ込む。

 

「いやでも秘密基地ですよこれ」 「めちゃくちゃ良くないですか?」

 

水瀬はもう部屋の奥を見回していた。

 

「ここ絶対照明暗めの方が良いですよ〜」 「あと棚置けますね」 「ラグも欲しいです」 「観葉植物も合いそうです〜」

 

水瀬が珍しくかなり早口で喋る。

 

ここまで露骨にテンションが上がっている水瀬を、三上はあまり見たことがなかった。

 

普段の水瀬は、のんびりしている。

 

感情の起伏もそこまで大きくない。

 

だが今は違った。

 

完全に目が輝いていた。

 

「お前もう住む気だろ」

 

「居心地大事ですよ〜」

 

奈央が少し笑う。

 

「でも、水瀬さんずっと欲しがってましたもんね」

 

「欲しかったです」 水瀬が即答する。

 

「自分達専用の作戦室」

 

そう言いながら、壁際へ歩いていく。

 

ホワイトボードを指で軽く叩く。

 

「ここに地図貼って〜」 「この辺にモニター増設して〜」 「射線メモ書けるようにして〜」

 

「もうレイアウト考えてんのか」

 

「当然です〜」

 

水瀬は完全にテンションが上がっていた。

 

奥側のスペースを覗き込む。

 

「ここ、休憩スペースっぽく出来ませんかね〜」

 

「だからお前は何を目指してんだ」

 

「秘密基地です」

 

即答だった。

 

奈央が少し肩を震わせる。

 

「水瀬さん、今日ずっと楽しそうですね」

 

「だって楽しいですもん〜」

 

水瀬はそう言いながら、また室内を見回す。

 

今までは違った。

 

共有スペース。

 

空き部屋。

 

使うたび片付け。

 

資料を広げても、途中で撤収しなければいけない。

 

でも、ここは違う。

 

自分達の部屋だ。

 

「……良いですね〜」

 

水瀬が小さく呟く。

 

珍しく、本当に嬉しそうだった。

 

黒瀬は静かに部屋を見回していた。

 

「……広いですね」

 

「黒瀬くん絶対そういう感想だと思いました」

 

「いや、嬉しいですよ?」

 

「もっとこう、テンション上げてくださいよ〜」

 

「水瀬さんほどじゃないです」

 

「当然です〜」

 

三上が苦笑する。

 

「まあでも、遠征試験頑張った甲斐はあったな」

 

「ですね〜」

 

水瀬が頷く。

 

それから、ふと思い出したように言った。

 

「そういえば、他の隊って結構自由に使ってるらしいですよ〜」

 

「自由?」

 

奈央が首を傾げる。

 

「はい〜」 「作戦室に麻雀卓置いてる隊もあるみたいです」

 

「何してんだその隊」

 

「なので、多少レイアウト変えても問題ないと思います〜」

 

その瞬間。

 

三上が少し嫌そうな顔をした。

 

「……お前、絶対変な部屋にする気だろ」

 

「失礼ですね〜」

 

水瀬は少し頬を膨らませる。

 

「ちゃんと隊の雰囲気にも合わせますよ〜」

 

「信用ならねぇ……」

 

奈央が少し笑った。

 

「でも、水瀬さんなら凄く凝りそうですね」

 

「凝ります」

 

即答だった。

 

「作戦室って、居心地と集中しやすさかなり大事ですし」 「せっかくならちゃんと作りたいじゃないですか〜」

 

黒瀬が静かに部屋の中央を見る。

 

まだ何もない空間。

 

けれど、水瀬の頭の中ではもう完成形が出来上がっているんだろうなと、何となく分かった。

 

「……楽しそうですね」

 

黒瀬が静かに言った。

 

水瀬は少し得意そうに笑う。

 

「いい秘密基地にしますよ〜」

 

三上が深くため息を吐いた。

 

「もう秘密基地で通す気なんだな……」

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