閑話休題「水瀬と作戦室②」
翌日。
作戦室へ入った三上は、部屋の中央で固まった。
机の上。
綺麗に並べられた三冊のファイル。
しかも妙に本格的だった。
表紙にはタイトルまで書かれている。
《案① 秘密基地特化型》
《案② シンプル戦術型》
《案③ 折衷案》
「……何これ」
三上が嫌な予感を覚えながら聞く。
「作戦室のレイアウト案です〜」
奥から水瀬が普通に答えた。
「早ぇよ」
「昨日の夜作りました」
「寝ろ」
奈央が少し興味深そうにファイルを開く。
「あ、凄いですねこれ」
中には簡単な見取り図まで入っていた。
ソファ配置。
棚位置。
モニター角度。
照明。
観葉植物。
ラグの色。
果ては配線整理まで細かく書かれている。
三上が呆れた顔になる。
「本気じゃねぇか……」
「当然ですよ〜」
水瀬は真顔だった。
「作戦室ってかなり大事ですし」
黒瀬も静かに資料を見ている。
「……細かいですね」
「住みやすさ大事ですから」
「作戦室だぞ?」
水瀬は気にせず一冊目を開いた。
「まず案①なんですけど〜」
《秘密基地特化型》
部屋全体が少し暗め。
間接照明。
大型棚。
ソファ多め。
ラグあり。
観葉植物あり。
立体マップ投影機周辺だけ少し広く取られている。
「これは完全に私の趣味です」
「潔いな」
「秘密基地感重視ですね〜」
「いやまあ、嫌いじゃねぇけど」
三上が図面を見る。
「居心地良すぎて絶対ダメになるだろこれ」
「そこが良いんですよ〜」
「作戦室なんだよ」
奈央が少し笑った。
「でも、水瀬さんっぽいですね」
「ですよね〜」
次。
《案② シンプル戦術型》
空気が一気に変わる。
白と黒基調。
必要最低限。
大型机。
整理された棚。
動線重視。
「これは隊の雰囲気に合わせたやつです〜」
水瀬が説明する。
「三上先輩と黒瀬くんの好み分からなかったので」
「一般的に男の人でもオシャレって思える感じにしました」
「男の人って何だよ」
「いやでも、普通に良いですね」
奈央が頷く。
「使いやすそうです」
黒瀬も静かに図面を見る。
「……落ち着いてますね」
「黒瀬くんこういうの好きそうだな〜って思いました」
「まあ、好きです」
「予想通りです〜」
そして最後。
《案③ 折衷案》
「これは中間ですね〜」
秘密基地感を少し残しつつ、全体はシンプル。
暖色照明。
ソファもある。
だが配置はかなり整理されていた。
「個人的にはこれが一番バランス良いと思ってます」
三上が図面を見ながら頷く。
「……確かにこれが一番まとまってるな」
「ありがとうございます〜」
水瀬が少し嬉しそうに笑った。
奈央がふと気づく。
「でも水瀬さん、これ全部一人で考えたんですか?」
「はい〜」
「好きなので」
即答だった。
「こういう部屋考えるの、めちゃくちゃ楽しいんですよ〜」
三上が苦笑する。
「お前ほんとインテリア好きだな……」
「秘密基地好きなんですよ」
「まだ言ってんのか」
黒瀬は静かに作戦室を見回した。
まだ何も置かれていない空間。
けれど、水瀬の図面を見ると、不思議と完成後の光景が想像できた。
「……本当に作れそうですね」
黒瀬が静かに言う。
水瀬は少し得意そうに笑った。
「良い作戦室になりますよ〜」