「ワートリ、ワールドトリガー」死角の銃手   作:黒星0214

4 / 23
Episode 3

Episode 3

 

「なんとなく分かる」

 

訓練室へ向かう廊下を歩いていると、後ろから声が飛んできた。

 

「今日も個人戦?」

 

振り返る。

 

「……まあ」

 

「絶対そうだと思った」

 

呆れたように笑いながら、三上が隣へ並んだ。

 

「お前ほんと好きだよな」

 

「楽しいので」

 

「普通そんな毎日何十戦もやらねぇのよ」

 

黒瀬は否定しなかった。

 

実際、楽しい。

 

どう動けば通るのか。

 

どこまで近づけるのか。

 

どうすれば反応されるのか。

 

試したいことが尽きない。

 

訓練する度に少しずつ形になっていく感覚があった。

 

三上はそんな黒瀬を見ながら苦笑する。

 

「まあ、お前の場合ちゃんと強くなってるから怖ぇんだけど」

 

「……?」

 

「自覚ないのかよ」

 

訓練室の自動ドアが開く。

 

中では既に何人かが個人戦をしていた。

 

銃声。

 

爆発音。

 

モニターに映る戦闘ログ。

 

いつもの光景。

 

黒瀬は空いている端末へ向かう。

 

その途中。

 

「あ、そういや」

 

三上がふと思い出したように口を開いた。

 

「前から気になってたんだけどさ」

 

「?」

 

「お前、なんで相手見えてないのにカメレオン起動するの?」

 

黒瀬は端末操作を止めた。

 

「……?」

 

「いや、だから。建物入る前とか、まだ視認してないのに“この辺いる”みたいな動きするじゃん」

 

黒瀬は少し考える。

 

「……近くにいる感じしたので」

 

「感じ?」

 

「なんとなくです」

 

三上は胡散臭そうな顔をした。

 

「いや、その“なんとなく”で毎回綺麗に接敵してるのおかしいだろ」

 

「でも遠いと分からないですよ?」

 

「そういう問題じゃなくて」

 

湊は少し視線を逸らした。

 

「ピンポイントで場所分かる訳じゃないですし。近くにいるな、くらいです」

 

「十分怖ぇよ」

 

即答だった。

 

湊は少し困った顔になる。

 

「でも、人の気配感じるって言う人いるじゃないですか」

 

「まあ、なくはないけど」

 

「多分それと同じ感じですよ」

 

三上は数秒黙った。

 

それからじわじわ真顔になる。

 

「……それ、サイドエフェクトじゃね?」

 

湊の動きが止まる。

 

「いや……」

 

「いやじゃなくて」

 

「そんな大したものじゃないと思いますけど」

 

「普通じゃねぇんだって」

 

黒瀬は少し考え込む。

 

昔から、近くに人がいる感覚はあった。

 

後ろ。

 

曲がり角の先。

 

建物の中。

 

でも、それを能力と思ったことはない。

 

ただの感覚だと思っていた。

 

「……まあ、結局ちゃんと確認しないと分からないので」

 

だから必ず目で見る。

 

位置を読む。

 

音を聞く。

 

動きを予測する。

 

三上はそんな湊を見ながらため息を吐いた。

 

「無自覚って怖ぇ……」

 

黒瀬は端末を起動する。

 

個人戦申請。

 

対戦待機。

 

すると三上が、ふと思い出したように言った。

 

「そういやお前、また勧誘来てたらしいじゃん」

 

「まあ」

 

「何回断るんだよ」

 

黒瀬は少し考えてから答える。

 

「今はまだ、個人戦やりたいので」

 

「そんな楽しい?」

 

「かなり」

 

即答だった。

 

三上が笑う。

 

「個人戦狂じゃん」

 

黒瀬も少しだけ口元を緩めた。

 

実際、その通りだった。

 

まだ試したいことがある。

 

まだ改善したい部分がある。

 

撃った後の動き。

 

接近ルート。

 

サブマシンガンの使い方。

 

対策された時の崩し方。

 

未完成だ。

 

だから、まだ面白い。

 

だが。

 

最近少しだけ考えることが増えた。

 

個人戦では見えないもの。

 

複数人の動き。

 

連携。

 

ランク戦。

 

一人では作れない盤面。

 

モニターに対戦マップが表示される。

 

転送準備開始。

 

湊は静かに立ち上がった。

 

「……まあ」

 

「?」

 

「そろそろ、隊は考えてもいいかもしれません」

 

三上が少し目を見開く。

 

「お、珍しいこと言うじゃん」

 

黒瀬は小さく肩をすくめた。

 

「スタイル、前よりは固まってきたので」

 

それに。

 

ランク戦も、少し興味があった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。