閑話休題「水瀬と作戦室④」
休日。四人はボーダー本部近くのショッピングエリアへ来ていた。
先頭を歩いているのは当然、水瀬だった。
「まず大型家具系はこっちです〜」
迷いがない。
完全にルートが決まっている動きだった。
三上が少し引く。
「……何でそんな詳しいんだよ」
「見てるだけでも楽しいので〜」
水瀬は当たり前みたいに答える。
「あとここ、一定額以上買うと送料無料なんですよ」 「大型家具も設置までやってくれますし」
「へぇ」 奈央が少し感心したように店を見る。
かなり大きい家具専門店だった。
ソファ。
棚。
ローテーブル。
照明。
ラグ。
全部揃っている。
水瀬は慣れた動きで店内を歩いていく。
「ソファはこっちですね〜」 「あと黒瀬隊の部屋、壁の色ちょっと暗めなので、家具明るすぎると浮くんですよ」
黒瀬が静かに周囲を見る。
「……全然分からないです」
「そこを考えるのが楽しいんです〜」
水瀬が笑う。
奈央が小さく笑った。
「本当に好きなんですね」
「好きです」
即答だった。
その後も、水瀬は止まらなかった。
「照明は別の店行きます」 「ここ種類少ないので」
「店分けるんだ……」 三上が呆れる。
「当然です〜」
次に入ったのは照明専門店だった。
暖色系の光が並ぶ、少し落ち着いた雰囲気の店。
水瀬が嬉しそうに説明を始める。
「この辺りの暖色系照明、めちゃくちゃ落ち着くんですよ〜」 「白色強すぎると作戦室っぽくなりすぎるので」 「少しオレンジ寄りの方が居心地良いんです」
奈央が小さく頷く。
「……確かに、ちょっと雰囲気違いますね」
「ですよね!」
水瀬のテンションが上がる。
「あと間接照明あると夜の作戦会議かなり良い感じになります!」
「夜の作戦会議って何だよ」 三上が笑う。
黒瀬は静かに棚のライトを見ていた。
その中で、一つの照明へ視線が止まる。
黒いフレームの、小さめのペンダントライト。
派手ではない。
だが、少し落ち着いた雰囲気があった。
「……これ、良いですね」
水瀬が一瞬止まる。
「……え」
黒瀬が照明を見る。
「部屋に合いそうです」
数秒沈黙。
次の瞬間。
水瀬がめちゃくちゃ嬉しそうな顔になった。
「良いでしょ!?」 「良いですよね!?」 「絶対合います!!」
急に距離が近い。
三上が笑う。
「テンション上がりすぎだろ」
「だって黒瀬くん初めて自分から選びましたよ!?」
「そんな大袈裟な……」
「大袈裟じゃないです〜!」
その後。
水瀬は完全にスイッチが入っていた。
「気になった物あったら教えてくださいね!」 「絶対部屋の雰囲気に合わせますから!」
「いやお前、そんな自信あるのかよ」
「あります」
即答だった。
最後に水瀬が案内したのは、小さなアンティークショップだった。
木製看板。
少し古びた扉。
店内にはレトロな家具や時計、小物が並んでいる。
奈央が思わず声を漏らす。
「……凄いですね、ここ」
「良いですよね〜」
水瀬が嬉しそうに笑う。
「ここ、隠れ家的で好きなんです」
三上が古いランプを見る。
「なんか急にオシャレ度上がったな……」
黒瀬は静かに店内を見回していた。
視線が、一つの古い掛け時計で止まる。
木製。
シンプル。
少しだけ傷がある。
「……これ、良いですね」
また水瀬が反応する。
「良いですよね!!」
「いや反応早ぇよ」
「絶対作戦室に合いますって!」
奈央が少し笑った。
「水瀬さん、今日ずっと楽しそうですね」
「楽しいです〜」
水瀬は即答した。
「だって、自分たちの作戦室ですよ?」 「楽しくないわけないじゃないですか〜」