閑話休題「水瀬と作戦室⑤」
後日。
黒瀬隊の作戦室には、大量の家具と家電が運び込まれていた。
段ボール。
棚。
照明。
ソファ。
ラグ。
机。
想像以上の量である。
三上が普通に引いていた。
「……いや、買いすぎじゃね?」
「全然です〜」
水瀬は即答した。
既に作業モードに入っている。
髪を後ろで軽くまとめ、端末を片手に部屋の中央へ立っていた。
「三上先輩、その棚そっちです」 「黒瀬くん、その照明まだ箱開けないでください〜」 「奈央ちゃん、その時計一回こっち置いてもらっていいですか?」
指示が飛ぶ。
しかも妙に的確だった。
三上が棚を運びながら呟く。
「何でこんな慣れてんだよ……」
「趣味なので〜」
水瀬は楽しそうだった。
普段ののんびりした雰囲気とは少し違う。
完全に“好きなことしてる時の人間”だった。
黒瀬は静かに照明を組み立てている。
奈央は届いた小物類を整理していた。
数時間後。
ようやく作戦室が完成する。
「……おお」
最初に声を漏らしたのは三上だった。
部屋の雰囲気が、最初とは別物になっている。
シンプル。
だが、妙に落ち着く。
秘密基地みたいだった。
中央には大きな机。
四人が座っても余裕のあるサイズで、作戦会議用モニターも見やすい位置に配置されている。
壁際には低めの棚。
古い木材風のデザインで統一されていて、無機質になりすぎていない。
照明は暖色系。
少し暗めだが、その分落ち着く。
モダンな空気の中に、アンティーク調の時計や小物が自然に混ざっていた。
そして。
窓際。
そこには、水瀬が特に拘っていたスペースがある。
バーみたいな高めの椅子が二つ。
それに合わせるように、木目を基調とした少し高さのある横長のカウンターテーブルも置かれていた。
深い色味の木材と黒フレームで統一されていて、モダンな空間の中にも落ち着いた雰囲気がある。
窓際へ寄せる形で配置されていて、軽く飲み物を置いたり、端末を開いたりするのに丁度いい。
照明の暖色も相まって、小さなバーみたいな空間になっていた。
奈央が少し感心したように言う。
「……凄いですね」 「ちゃんと作戦室なのに、普通にオシャレです」
「良いですよね〜」
水瀬が満足そうに頷く。
「秘密基地感あります」
「まだ言ってんのか」
三上が苦笑する。
だが、否定はしなかった。
正直。
かなり良かった。
黒瀬は静かに部屋を見回す。
「……落ち着きますね」
水瀬がすぐ反応する。
「ですよね!」
「だから言ったじゃないですか〜」 「居心地大事なんですよ〜」
三上がソファへ座る。
「うわ、これ普通に寝れるな」
「寝るのは禁止です〜」
「何でだよ」
「絶対三上先輩住み始めるので」
「否定できねぇ」
奈央が少し笑う。
テレビの位置も完璧だった。
中央の席からも。
ソファからも。
窓際のカウンター席からも見やすい。
完全に計算されている。
水瀬が満足そうに部屋を見回した。
「……うん」
小さく頷く。
「かなり良い感じです」
その顔は、本気で嬉しそうだった。
基本的な定位置は、三上がソファー。
奈央はカウンター席で端末を触っていることが多く、黒瀬と水瀬はその時空いているソファかカウンター席に座っている感じです。
作戦会議の時だけ中央の大きな机を使います。
ちなみに、水瀬と奈央がよく映画を持ってくるので、たまに隊のみんなで映画鑑賞会みたいなこともしています。
三上が四人用のパーティゲームを持ってきて、皆で遊んでいたりもします。ゲーム用のコントローラーは部屋に四つ常備されるようになりました。
他にも、中央の机で麻雀をやったりしていて、作戦室というより半分、本当に秘密基地みたいな空間になっています。