閑話休題「黒瀬と任務」
夜の警戒区域を、黒瀬と三上は並んで歩いていた。
比較的平和な区域の見回り任務。基本的には出現したトリオン兵を処理して回るだけの仕事だ。
『付近でモールモッド出現しました〜』
通信越しに水瀬の声が入る。
『座標送りますね〜』
「ほら来た」
端末を確認しながら三上が溜息を吐いた。
「今日マジで多いな」
黒瀬も端末を見ながら小さく頷く。
「暑くなってきたからじゃないですか?」
「虫じゃねぇんだから」
三上が即座にツッコんだ。
黒瀬は少し考える。
「違うんですか?」
「何でちょっと納得しかけてんだよ」
二人は指定座標へ向かう。
暗い路地へ入った瞬間、地面が小さく揺れた。
「……来ます」
次の瞬間、地面を破ってモールモッドが飛び出した。
だが黒瀬は動じない。
両手の拳銃を構える。
二発。
乾いた銃声と共に、モールモッドの頭部と胴体が同時に撃ち抜かれ、そのまま崩壊した。
三上が普通に呆れる。
「お前さぁ、ランク戦みたいに消えたりしねぇんだな」
「わざわざ透明化使わなくても終わるので」
黒瀬は静かに拳銃を下ろした。
高火力二丁拳銃。
それだけで大抵のトリオン兵は処理出来る。しかも黒瀬はほぼ全て急所へ撃ち込むため、透明化や位置取りを使う必要自体があまり無かった。
「……まあ、それもそうか」
三上が苦笑した、その時だった。
『あ、追加です〜』
水瀬の声が通信へ入る。
『少し大きい反応あります』
「……あ?」
三上が嫌そうな顔をする。
数秒後、重い音が路地奥から響いた。
現れたのはバムスターだった。
黒瀬が少し目を細める。
「これがバムスターですか」
「おう。まあコイツ自体そんな頻繁に出る訳じゃねぇけどな」
「珍しいんですか?」
「そこそこな」
三上は肩を回しながら続けた。
「硬ぇから地味に時間かかるんだよな、倒すの」
「なるほど」
バムスターがこちらへ突進してくる。
だが黒瀬は特に焦らなかった。
静かに拳銃を構える。
連射。
重い銃声が響き、次の瞬間にはバムスターの装甲が砕け、そのまま内部コアごと撃ち抜かれた。
沈黙。
崩れ落ちるバムスターを見て、三上が固まる。
「……いや」
黒瀬は少し不思議そうだった。
「普通に落ちましたね」
「お前の火力がおかしいだけだわ」
『あはは〜』
通信越しに水瀬が笑う。
『黒瀬くん普通にバムスター溶かしましたね〜』
『怖……』
奈央の声も混ざった。
『相変わらず威力おかしいですね』
黒瀬が拳銃をしまった、その時だった。
『あ、すみません〜。もう一件あります』
「は?」
三上が真顔になる。
『今度はモールモッドです〜』
数秒沈黙。
三上は空を見上げた。
「……今日マジで虫みてぇだな」
黒瀬は少し考えてから頷く。
「やっぱり季節じゃないですか?」
「だから虫じゃねぇんだよ」