「ワートリ、ワールドトリガー」死角の銃手   作:黒星0214

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Episode 39

Episode 39「遠征用」

 

遠征参加決定から数日後。

 

黒瀬隊は、本部施設の一角へ呼び出されていた。

 

普段使っている訓練室とは明らかに空気が違う。

 

壁際には大型機材。

 

整備途中のトリガー。

 

技術班らしき職員達が忙しそうに行き来している。

 

「何か研究所っぽいですね〜」

 

水瀬が辺りを見回しながら言った。

 

三上が小さく周囲を見る。

 

「俺らここ来るの初めてだな」

 

奈央も少し緊張した様子で機材を見ていた。

 

「でも、本当に遠征準備って感じですね」

 

「今までは資料だけだったので、あまり実感無かったですけど……」

 

黒瀬は静かに周囲を見る。

 

整備されている装備。

 

聞こえる専門用語。

 

いつもの本部とは違う、“外”へ向かうための空気。

 

その時。

 

奥から担当職員が歩いてきた。

 

「お待たせしました」

 

「本日は、遠征用装備及び長期活動時の運用説明になります」

 

四人が小さく頷く。

 

職員はそのまま端末を操作した。

 

壁面モニターへ装備一覧が表示される。

 

「今回の任務は、少人数による長期活動を想定しています」

 

「そのため、通常任務とは装備構成も一部異なります」

 

三上が資料を眺めながら口を開く。

 

「結構違うんですね」

 

「はい」

 

「特に重要になるのが、通信・補給・現地活動支援です」

 

「遠征先では、本部から常にサポートが受けられるとは限りません」

 

「現地で対応出来る人員が必要になります」

 

その時。

 

職員が奈央を見る。

 

「そのため、オペレーターも同行対象になります」

 

奈央が少し目を丸くした。

 

「……オペレーターも、ですか?」

 

「通常任務では後方支援が基本ですが、遠征では話が変わります」

 

「長期活動時における情報整理、通信補助、機材管理」

 

「それらを現地で即座に行える人員が必要になります」

 

「また今回の任務は、“長期間活動した場合、どのような問題が発生するか”というデータ収集目的も含まれています」

 

「オペレーターの現地運用も、重要な確認項目です」

 

奈央が静かに資料へ目を落とす。

 

「……なるほど」

 

「現地サポート要員、という事ですね」

 

「その認識で問題ありません」

 

職員が頷く。

 

その後。

 

壁際のケースが開かれた。

 

中には、通常トリガーとは少し形状の違う装備が収められている。

 

「おぉ〜」

 

水瀬が興味深そうに覗き込む。

 

「普通のトリガーと違いますね〜」

 

「こちらが遠征用オペレータートリガーになります」

 

職員が説明を続ける。

 

「戦闘特化型ではありません」

 

「主に長期活動支援用です」

 

「簡易通信中継」

 

「地形マッピング」

 

「レーダー補助」

 

「機材診断」

 

「トリオン機器の簡易修理補助」

 

「記録保存」

 

「その他、現地活動支援機能を搭載しています」

 

三上が少し笑った。

 

「完全にサポート職だな」

 

「戦闘より、生き残る為の装備って感じか」

 

「そうですね」

 

職員が頷く。

 

「特に今回のような少人数任務では、一人欠けるだけで活動効率が大きく低下します」

 

「そのため、戦闘能力以外の維持管理も非常に重要になります」

 

黒瀬は静かに装備を見たまま口を開いた。

 

「……本当に、長期活動前提なんですね」

 

「はい」

 

「補給」

 

「生活」

 

「通信」

 

「環境変化」

 

「そういった部分も含めて、今回の遠征では確認対象になります」

 

静かな空気だった。

 

今までは、どこか現実感が薄かった。

 

遠征。

 

知らない世界。

 

言葉としては理解していた。

 

だが。

 

こうして装備を見せられ、説明を受けると、本当に“外”へ行くのだと理解させられる。

 

その時。

 

水瀬が奈央を見る。

 

「奈央ちゃん、何かかっこいいですね〜」

 

「え?」

 

「遠征オペレーターって感じです」

 

「いや、そんな大層な……」

 

奈央が少し困ったように笑う。

 

三上が横から口を挟む。

 

「でも実際、奈央いないと普通に困るだろ」

 

「俺らだけで管理とか絶対雑になるぞ」

 

「水とか食料とか、その辺絶対適当になる」

 

「それは……否定できませんね」

 

奈央が少し苦笑する。

 

水瀬も小さく笑った。

 

「三上さん、そういうの割と勢いで何とかしようとしますしね〜」

 

「お前も大概だろ」

 

三上が呆れたように返す。

 

少しだけ空気が和らぐ。

 

黒瀬も静かに小さく笑った。

 

だがその奥で。

 

全員、少しずつ理解し始めていた。

 

これは、いつもの任務ではない。

 

本当に知らない世界へ行く。

 

そのための準備が、静かに始まっていた。

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