死角の銃手   作:黒星0214

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Episode 61

Episode 61「誕生日」

 

それから数日後。

 

リサの誕生日当日。

 

村の家には、朝から少しだけ特別な空気が流れていた。

 

「これ全部……私の?」

 

テーブルに並ぶ料理を見て、リサは目を丸くする。

 

「そうですよ〜」

 

水瀬が嬉しそうに笑う。

 

「リサちゃんの好きなもの、いっぱいです」

 

奈央も優しく頷いた。

 

「今日は主役ですから」

 

三上は少し照れくさそうに頭をかく。

 

「まぁ……誕生日だしな」

 

リサはぱぁっと笑った。

 

「やった!」

 

そのまま何度もテーブルを見回す。

 

本当に嬉しそうだった。

 

そしてプレゼントの時間。

 

黒瀬が静かに箱を差し出す。

 

「これを」

 

リサが受け取る。

 

「なにこれ?」

 

そっと開く。

 

中にあったのは懐中時計だった。

 

落ち着いた銀色。

 

小さな装飾の入った時計。

 

リサの目が一気に輝く。

 

「すごい……!」

 

「これいい!」

 

その場で何度も開いては閉じる。

 

「おにい!」

 

「今何時だと思う!?」

 

アデルは少し笑って。

 

「九時二十分くらいですか」

 

リサは時計を見る。

 

「正解!」

 

嬉しそうな笑顔。

 

少し落ち着いた頃。

 

黒瀬がふと思い出したように、袋に手を入れる。

 

「そういえば」

 

三上が目を細める。

 

「まだあんのかよ」

 

黒瀬は何も言わず、小さな笛を取り出した。

 

羽の付いた、妙に派手な笛。

 

兎の耳まで付いている。

 

市場で、他の物と一緒に黒瀬が“ついでに”買っていたものだった。

 

三上がすぐに言う。

 

「お前それ結局買ってたのかよ」

 

水瀬は笑いを堪えて肩を揺らす。

 

奈央はそっと視線を逸らす。

 

リサはそれを初めて見る。

 

「……え?」

 

素直な反応。

 

黒瀬は真面目に言う。

 

「危険時にも使えます」

 

「子供向けです」

 

「耳もあります」

 

三上が即座に突っ込む。

 

「そこじゃねぇんだよ」

 

リサは笛をじっと見て。

 

「……かわいい、と思う」

 

少し間。

 

その空気に気付いたように、慌てて首を振る。

 

「いや、ほんとに変とかじゃなくて!」

 

「ちゃんと嬉しいよ!」

 

「ありがとう!」

 

少し早口で言ってから、もう一度笛を見る。

 

三上が軽くため息をつく。

 

「いや、リサも反応困ってんだろそれ」

 

その後。

 

リサがふと思い出したように顔を上げる。

 

「おにいのプレゼントは?」

 

一瞬、空気が止まる。

 

アデルは少し困ったように笑った。

 

「用意はしているのですが」

 

「最後の仕上げが間に合わなくて」

 

水瀬はすぐに笑って続ける。

 

「でもすごく良いものですよ〜!」

 

「きっとリサちゃんも喜びます!」

 

奈央も頷く。

 

「楽しみにしていてくださいね」

 

リサは少しだけ目を丸くしたあと、嬉しそうに笑った。

 

「うん!」

 

「楽しみにしてる!」

 

夜。

 

誕生日会も終わり。

 

村の家は少しずつ静かになっていく。

 

リサはベッドの上で、懐中時計を何度も開いていた。

 

「おにい!」

 

「はい」

 

「今何時だと思う!?」

 

アデルは少し笑う。

 

「九時二十分くらいですか」

 

リサは時計を見る。

 

「正解!」

 

嬉しそうに笑う。

 

それからも。

 

何度も。

 

何度も。

 

同じやり取りを繰り返していた。

 

よほど気に入ったのだろう。

 

しばらくして。

 

リサは時計をぎゅっと抱えたまま、少し眠たそうに目をこすった。

 

「……おにい」

 

「はい」

 

「これ、大事にするね」

 

アデルは少しだけ笑って。

 

「それは良かったです」

 

アデルは小さく笑った。

 

そっと時計を落とさないよう整えてやる。

 

「……良かったですね」

 

誰に聞かせるでもなく。

 

静かに呟く。

 

リサの寝顔は、とても幸せそうだった。

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