僕のWINDWARD HEROES   作:のーぞー

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NEW SKY②

 警報。

 屋上の空気が変わる。

 

 カインが通信機を耳に当てる。

 

「状況」

 

 即座。

 

 通信越しに落ち着いた声。

 

 シーラスだった。

 

『テムズ川沿い建設現場。』

 

『クレーン倒壊。』

 

『高層部作業員取り残し。』

 

『救助対象四名推定。』

 

 ブレイズがもう前に出る。

 

「行くぞ!!」

 

「ブレイズ」

 

 カイン。

 

「先走らない。」

 

「うっ……はい。」

 

 エアロは少し驚く。

 

 返事。

 

 早い。

 

 そのまま三人は空へ飛び出した。

 

 

 ロンドン上空。

 

 風が速い。

 

 ブレイズは一直線だった。

 

 考えるより先に身体が動いているみたいな飛び方。

 

 速い。

 

 熱い。

 

 真っ直ぐ。

 

 その少し後ろ。

 

 カイン。

 

 静か。

 

 安定。

 

 風と喧嘩しない飛行。

 

 エアロは自然とその二人を追う。

 

 ……速い。

 

 でも。

 

 追える。

 

 風が教えてくれる。

 

 

『現場映像接続。』

 

 シーラスの声。

 

『右支柱不安定。』

 

『上層部二名。』

 

『中腹一名。』

 

『内部反応曖昧。』

 

『煙が強い。』

 

 現場が見えた。

 

 崩れた鉄骨。

 

 粉塵。

 

 悲鳴。

 

 傾いたクレーン。

 

 ブレイズ。

 

「オレ上行く!!」

 

「頼む。」

 

 カイン即答。

 

 連携が速い。

 

 ブレイズが爆発的加速で上層へ向かう。

 

 カインがエアロを見る。

 

「見える?」

 

 エアロ。

 

 目を閉じる。

 

 風。

 

 熱。

 

 煙。

 

 空気の流れ。

 

 ……いる。

 

「三人。」

 

「上二人。」

 

「中腹一人。」

 

「……あと。」

 

 風の奥。

 

 わずかな呼吸。

 

 小さい。

 

 不規則。

 

「内部。」

 

「一人います。」

 

 通信。

 

 一瞬沈黙。

 

 シーラス。

 

『センサー不明瞭。』

 

『だがエアロ判断優先。』

 

 カインが笑う。

 

「いいね。」

 

「エアロ。」

 

「内部救助。」

 

 胸が少し鳴る。

 

 初現場。

 

 初指示。

 

「……はい。」

 

「大丈夫。」

 

 カインの声。

 

 落ち着いていた。

 

「君のピンチには私たちが駆けつける。」

 

「だから。」

 

「行っておいで。」

 

 エアロは頷く。

 

 内部へ飛び込んだ。

 

 

 熱い。

 

 視界が悪い。

 

 鉄骨が軋む。

 

 でも。

 

 風が道を作る。

 

 ……いた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 作業員。

 

 脚が挟まれている。

 

 意識あり。

 

 救急優先。

 

 エアロは風を操作する。

 

 荷重。

 

 重心。

 

 ほんの少しだけずらす。

 

 持ち上がる。

 

 抜ける。

 

 成功。

 

『崩落予兆。』

 

 シーラス通信。

 

『十五秒。』

 

 カイン。

 

『エアロ。離脱。』

 

「了解!」

 

 作業員を抱える。

 

 上昇。

 

 崩落。

 

 その直前。

 

 ブレイズの火炎が鉄骨を弾き飛ばした。

 

「新人!!」

 

「ナイス救助!!」

 

 エアロ。

 

 少し息を吐く。

 

 着地。

 

 救急隊へ引き渡す。

 

 カインが近づく。

 

「お疲れ様。」

 

 ブレイズ。

 

「初現場でやるじゃねえか!」

 

 エアロは少し首を傾げた。

 

「……まだですよ。」

 

 二人。

 

「?」

 

 エアロ。

 

 現場を振り返る。

 

 風。

 

 煙。

 

 ……いる。

 

 小さい。

 

 震えてる。

 

 金属音の奥。

 

「まだ。」

 

「残ってます。」

 

 そのまま。

 

 再び飛ぶ。

 

「エアロ!?」

 

 ブレイズの声。

 

 内部。

 

 狭い鉄骨の隙間。

 

 震える小さな影。

 

 灰色の猫だった。

 

「……あ。」

 

 猫。

 

 警戒。

 

 威嚇。

 

 でも。

 

 逃げられない。

 

 エアロはゆっくりしゃがむ。

 

「大丈夫。」

 

「迎えに来たよ。」

 

 風を弱める。

 

 安心させるみたいに。

 

 少しだけ。

 

 猫が鳴いた。

 

 

 数分後。

 

 現場外。

 

 エアロが猫を抱えて戻ってくる。

 

 ブレイズ。

 

 沈黙。

 

 カイン。

 

 数秒無言。

 

 通信越し。

 

 シーラス。

 

『……猫。』

 

 エアロ。

 

「はい。」

 

「救助対象です。」

 

 ブレイズ。

 

「いや……。」

 

「そうだけどよ……。」

 

 カイン。

 

 少し笑う。

 

 優しく。

 

 誇らしそうに。

 

「いいヒーローだね。」

 

 エアロは猫を抱えたまま。

 

 灰色の空を見上げた。

 

 ……綺麗だね。

 

 WINDWARDの空は。

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