魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます   作:異星人アリエン

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参ったな、まるで俺が悪いみたいじゃないか

 

 ウイスキーボンボンは、アルコールを含んでいる。

 

 無論、未成年が食べられるようにアルコール度数自体はお酒に遠く及ばないが、凪沙はいけますいけますと、俺を見返すためかひょいひょいと食べまくった。

 

 結果見事に出来上がってしまった。

 

 めっちゃ意気込んでいたのに、はしたなさが更新されちゃったよ。

 

「んぅ、あつくなってきました……。ここ、暖房効きすぎですぅ」

「こらこら、はしたないよ。みだりに肌を出すんじゃない」

「はしたない……?」

 

 ノースリーブのセーターだから首元を煽げない凪沙が、脇の方からぐいっと引っ張って風を送ろうとする。

 

 ちょっと……というか、酔って力加減がうまくいかないのかかなり強く引っ張ってるせいで白いブラジャーが見えてしまっている。凪沙、意外と大胆なのつけているんだな……。

 

 そのことには指摘せず、やんわりと咎めるとぴたり、と凪沙が固まった。

 

「う、う、わかってます。わかってますぅ! わらしにあんな格好がにあってないってことくらひぃ!」

「なんのはなしだ?」

「わらしだってぇ! 本当はあんなの着たくないないのよぉ! ひぇもぉ! 仕方なくぅ……ふぇぇぇ、やっぱり恥ずかしいよぉぉ!」

「うん、よくわかったからちょっと声量を抑えようか!?」

 

 酔いが回っているせいか、声量が大きくなる。

 

 これ絶対、魔法少女アネモスとしての格好のことだろ!?

 

 確かに魔法少女アネモスの格好はなんというか、色々と際どいのは事実だ。主人公の焔ちゃんたちの先輩としての、色気を出すためにアニメスタッフが安直に露出度をあげる方にしたのが原因だ。

 

 でもそんなこと今を生きる凪沙には関係ないわけで。

 

 しかも内容が内容なので、オレがまるで望まぬ羞恥プレイを強いているDV彼氏みたいじゃないか!?

 

 あぁ、周りのお客さんや店員さんの視線が冷たくなっていく……!

 

「うぅ、先輩。はしたない女でごめんなさいぃ。こんな女でも先輩の側にいていいですか……?」

「俺は凪沙が側にいて迷惑だと思ったことは一度だってないよ」

「ぜんばいっ〜!」

「うお!?」

 

 抱きつかれる。やわらかっ、それに良い匂いがする。

 

 いや、そんな場合じゃない!

 凪沙は酔っているが人前だ。早く離さなければ……!

 

「ふゅへへ、せんぱ〜い、逃げちゃダメですよぉ?」

 

 なんて力だ!? 

 逃げようとするたびに、凪沙は俺の頭を胸へ抱え込もうとしてくる。

 

 魔法少女になっていないのに、このパワー。これが現役最強の魔法少女の実力か!? 変身なしでも強すぎる。

 

「すぴー……」

「はぁ、やっと落ち着いた……」

 

 力では対抗できないと悟った俺は、凪沙を宥めすかし、褒めそやすことで機嫌をとった。やがて、散々に酔った凪沙はそのまま眠り始めた。

 

 こりゃ、成人しても絶対に酒は飲ませられないな。凪沙のためにも。

 

 俺は凪沙が寝た後に会計を済ませて、おんぶしながら店を出た。

 

「さむ。俺のコート凪沙に着せて正解だったな」

 

 今はもう春だが夜はほんの少し寒い。ノースリーブの凪沙じゃ風邪ひいてしまうだろう。

 

 はてさて、これからどうするべきか。

 

 凪沙の家は俺も知っている。

 だが、それは高校時代の時の話で、今は一人暮らしらしい。

 

 多分《魔法執行機関》の方に補助された家なんだろうけど、何処か知らないんだよなぁ。

 

 当てもなく、とりあえず凪沙が目を覚ますまで歩いていく。

 

「あれ、八雲おにいさん!?」

「あっ、おばかっ」

「ん? やぁ」

 

 聞き覚えのある声。それも二人。

 

 振り返るとそこには焔ちゃんと澪がいた。しかも、何故かパジャマ姿であった。

 

 まさか会うとは思ってなくて、びっくりした。向こうも俺がいることに驚いていた。

 

「どうしてこんなところにいるんですか?」

「君たちこそ、どうしてこんな時間にこんなところに?」

「うぇっ!? そ、それはその〜、あの〜」

 

 俺の問いに歯切れ悪く慌て出す焔ちゃん。

 

「ちょっと! なんで話しかけちゃうのよ!」

「うぅ、だ、だって、こんなところで八雲おにいさんに会えると思わなかったから、つい……」

「こ、この仔犬っ……!」

「くぅん……」

 

 こそこそと小声で話す二人を見ながら俺は事情を察した。

 

 あぁ、なるほど。

 

 確か《ヤミノマ》との戦いで夜間で対決するのがあったはずだ。なら、その戦いの後ということだろう。

 

 現に二人とも、衣服自体は汚れていないが肌や髪には汚れが付着していた。

 

 そして今はその帰りってところか。

 

 こんな夜にまで《ヤミノマ》との戦いに明け暮れているとは、魔法少女には足を向けて寝られないな。

 

 俺の後ろで背負われている方は、足を抱えられて寝てるけど。

 

「と、ところで八雲おにいさん! そちらの方はどうしたんですか? 具合でもわるいんですか!?」

 

 やや強引に話を変えようと、焔ちゃんが声を張り上げる。

 

 子どもらしい誤魔化し方だと苦笑するが、今回は乗ってあげるとしよう。向こうもあんまりつっこまれたくないだろうしね。

 

「あぁ、久々にあった後輩とつい話が弾んでね。今はその帰りさ」

「後輩さんですか? でもその人ぐったりしてますけど」

「ちょっと酔ってしまってね。どうやらチョコレートに入っていたアルコールにやられてしまったようで。今、送っている最中だよ」

「……あれ、なんだかその人見覚えが……」

「うぅ〜ん、なんれすかぁ、先輩。わたひ、先輩となら……」

 

 声に反応したのか、もぞもぞと背後の凪が動く。その度に柔らかいものが俺の背中で形を変える感覚を覚える。

 

 そのまま凪沙は目を覚ました。

 

「え」

「あ」

「へ」

 

 時が止まった音がした。

 

 背中から、ひゅっと、か細い息を飲む声が聞こえた。

 

 ……え、何その反応。

 

「え、え、え。どうして、風羽さんがここに、いっしょに? え、八雲おにいさんとお知り合い……!?」

「ど、ど、ど、どうしてあなたたちがここにっ……!?」

 

 なんでお互いに知ってんの!!?

 

 なにそれ、俺はそんなの知らない! 凪沙と知り合うのは2ndシーズンからのはずでしょ!? いつ、どこのタイミングで知り合ったの!?

 

 驚きにあわあわしている焔ちゃんと凪沙を他所に、いち早く正気に戻った澪が問いかける。

 

「あの、風羽さん。いったい何が」

「人違いです」

「え? いや、風羽さ」

「人違いです。先輩、今日はありがとうございました。急用を思い出しましたので失礼致します。それでは!」

 

 澪からの言葉を遮り、シュババッと、先ほどまでの泥酔はどこへやら。

 

 機敏な動きで凪沙は去っていった。すごいな、めっちゃきれいなフォームで走っていったぞ。流石元陸上部。魔法少女にならなければ、全国を目指せたであろう。

 

 あ、てか俺のコート持って行かれた!

 

「い、いっちゃった」

「食べ飲んだ後に急に走ると、胃が逆流する可能性があるのだけどね。酔うほど飲んでいたから心配だ」

「冷静ですね……」

 

 唖然とする焔ちゃんに、俺が凪沙の心配をしていると澪が突っ込んだ。

 

 その時、グイッと俺の袖が引っ張られる感覚。見れば、何やら焔ちゃんが若干焦りを滲ませた様子でこちらを見上げていた。

 

「あの、風羽さ……っ、あの女の人とどういう関係なんですか?」

「ん? 凪沙は、俺の高校時代の後輩でね。よく面倒を見ていたんだ。今日は久々に会ってたところさ」

「へ、へ〜。そ、そうなんですか……」

 

 んん? 普段の明るさはどこいった?

 

 てっきり、どんな関係なのか根掘り葉掘り聞かれてるかと思ったが、なにやら思ったよりも落ち着いた反応だ。

 

 もごもごと、口を何度も動かして尖らせる。

 

「ま、とにかく君たちも早く帰らないと。送っていくよ。こんな夜更けに二人が心配だからさ」

「八雲おにいさんっ……!」

「も、申し訳ございません……」

 

 まぁ、《ヤミノマ》を除けば割と治安のいい星見ヶ丘なので、そんなことはないだろうが歳上としての義務だ。

 

 オレの言葉にさっきまで若干様子がおかしかった焔ちゃんも、わかりやすく顔が明るくなる。一方で澪は申し訳なさげだ。ほんとうに対照的な2人だな。

 

「でも、それはそれとしてこんな遅くまで遊びに行ったからには、家族には叱られてね」

「うぐっ! や、やっぱりお母さん怒ってるよね? うぅぅ、やだぁぁぁぁ」

 

 頭を抱えて嘆く焔ちゃん。対して、澪の方は俯く。

 

「そんなの不要よ。どうせ、わたしのことなんて心配してないもの……」

 

 ボソリと呟いた内容を俺は聞き逃さない。

 

 ううむ、闇深いなぁ。

 月詠家は、というか澪自身の問題か。

 

 本来なら確か『魔法少女マギアイリス』の7話辺りで一旦解決したはずだけど、この様子だと解決していないのか?

 

 こりゃこっちも、何らかのアクションを起こした方が良いかもしれない。幸いというべきか、そっちに関しても手はある(・・・・)

 

 凪沙の件もある。とりあえず、二人を家に送ったら凪沙に大丈夫だったかの確認のメールと、もう一つ(・・・・)メールを送るとしよう。

 

 まったく。

 

 妹があんな顔をしているというのに、()のあいつは何をやっているんだか。

 

 結局その後、二人を家にまで送っていったのだが、その最中やたらと焔ちゃんが話しかけてきた。いつにも増して話しかけてくる焔ちゃんの様子に首を傾げつつ、俺は2人を家まで送ったのだった。

 

 ちなみに職質で、警察の御用になりかけた。

 

 そりゃ高校生とパジャマ姿の中学生がいたら当たり前ですよね! 下手すれば、前科がつく所だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ボス、女の匂いがする。いやらしい牝の匂いがぷんぷん」

「なんたる浮気者、すけこまし! これはもう我輩たちで主様が誰のものかわからせるしかないようじゃの!」

「一時休戦だね」

「うむ。覚悟するが良いぞ主様!」

「待て待て待て、話くらい聞いてくれ!」

 

 更には家に帰ったら帰ったで、待っていた二人にもみくちゃにされた。理不尽である。

 




気付けば日刊3位まで来ていました。正直、ここまで来られるとは思っていませんでした。

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