魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます 作:異星人アリエン
ダークネス。
それは闇そのもの。
『魔法少女マギアイリス』シリーズにおいて、ダークネス抜きでは語れないほどの存在だ。そもそもの話、ありとあらゆる存在……それこそシリーズが一新されようとも新たな敵組織ですら、《ディスナンド》とライバル関係だったとか、下部組織だったとかで何かしらに関わっていた。
そして今。ダークネスは倒された……
そもそもの話、
『魔法少女マギアイリス』は《ディスナンド》との戦いだ。
シリーズ毎に主人公が変わろうとも、敵が別の組織に一新されようとも、どれだけ変化しようとも全ての元凶はダークネスへと辿り着く。そしてダークネスは本人だったり、あるいは憑代を経たりと、さまざまな手法で復活してくるのだ。
そうして奴は魔法少女と戦い続ける。
《ディスナンド》がこの星を狙うのも解決しないまま、繰り返される戦いが『魔法少女マギアイリス』の大筋なのだ。
『魔法少女マギアイリス』で明確に復活を幾度もするのは、ダークネスだけだ。後発のシリーズの敵組織は、普通に壊滅したりする。おそらくは人気シリーズとなっただけに打ち切るわけにいかないための設定なのだろうが、もはやそれは絶望に等しい宣言だった。
ダークネスが生きている限り、被害はこれから広がる。
年若い少女たちが、終わりのない戦いの螺旋に身を投じる羽目になる。
その前に必ず仕留めるはずだったが俺が下手を打ったせいで、その目論見も頓挫した。
焔ちゃんと澪を庇ったことについては後悔はない。そもそも、魔法少女サンシャインとオーロラミストが想定よりも弱体化していたのは、全て俺が起こした行動に起因するのだから。
だからそう。
責めるべきところがあるとしたら、その後の俺の行動だ。二人に罪はない。
結局のところ、全て俺が悪いのだ。
「いたたた! もうちょっと優しくしてくれないか!?」
「アホ抜かすな。勝手な行動をして怪我をしたのは主様じゃろうとて! あのちびすけどもを庇って死にかけるとはまっことおバカにも程がある!」
「ぐうの音も出ないっ。ぐあぁぁぁ!?」
俺は今自宅でムラサメに包帯を巻かれていた。怪我の治療のはずなのに巻き方が力いっぱいで痛い痛い!
そのまま包帯を巻かれ終える。
すごい量だ、もはやミイラみたいになっている。これ、外す時も大変だぞ。
そう思っていると胸元に軽い衝撃。
ぽすん、とムラサメが俺の胸に顔を埋めていた。
「……頼むから、もう少し自身の身体を大切にしてくれる。人は、脆いんじゃ」
請うような声色で、ムラサメが語った。
普段の唯我独尊ではない、ただ震えるだけの少女がそこにいた。
……心配、かけてしまったようだ。当然だよな。
下手しなくてもダークネスの一撃で死んでいた恐れがあるし。あの時は勝手に身体が動いてしまっていたが、ムラサメにとっては生きた心地がしなかっただろう。
俺は彼女の頭を撫でる。
ムラサメは何も言わずに、俺が痛がらない範囲で力強く抱きしめてきた。
『今より数時間前、突如として星見ヶ丘が常闇に包まれました。これまでにない異常事態であり、一般人どころか魔法少女ですら昏睡する者がいたにも関わらず、これらの事態を解決したのは年若い魔法少女でした。映像をご覧ください──』
ちらり、とつきっぱなしのテレビを見る。
そこでは今日起きた出来事についてのニュースと、魔法少女サンシャインと魔法少女オーロラミストの姿が映っていた。
あの後。
焔ちゃんと澪がダークネスを消し去った後、人々が目を覚まし始めた。
人々は困惑していたが、ミラクルパワーによって一際輝いていた二人を見て、事件を解決したのを理解した。
『あの、お二人が助けてくれたのですか?』
『え!? あ、えっと、その、そう……なのかな?』
『サンシャイン、何も考えずに返事するのはやめなさい!』
こどもの問いかけに思わず焔ちゃんが答えてしまった。
澪の制止も虚しく、焔ちゃんが頷いてしまったことで人々は歓声を持ってして二人を褒め称えた。
俺はその隙を縫うように、寧々子に手伝ってもらって人知れずその場から立ち去った。
本来であれば、二人はアクラーツによって一時人々に追われた。二人が近付く人々に《ヤミノマ》を
それでも自分たちを信じてくれる友だちや家族、そして今まで二人に直接助けてもらった人々の励ましによって二人は立ち上がり、アクラーツを撃破。その後続けて、ダークネスを撃破するという筋書きだった。
焔ちゃんと澪の正体バレという、鬱イベントはなくなり、二人はただただ救世主として民衆に好意的に受け入れられた。
それで良い。
それが良い。
あの娘らが無駄に傷つくことはない。笑っている姿が、一番だ。
「おい、聞いておるのか?」
「あ、あぁ。聞いているさ」
「どうだかのう。財参のやつに苦言を呈されたのも忘れておらぬか?」
「うぐ、も、もちろん忘れていないさ」
大金持には、治療こそされたが「もう少し、御身の身体を労ってください」と懇願された。その後、全身の検査をした後にこうして家に帰ってきたが、たくさんの医療機器を渡された。
ムラサメが巻いてくれた包帯もその一部だ。
俺は痛みを訴える身体を動かして、自らの手のひらを見る。
「もっと強くならなければ。奴等に脅かされないように、もっと」
豆の多い手だ。
自らの手のひらがそこまで大きくないのは知っている。それでもせめて、拾える範囲だけであろうと、溢さずに守り切りたい。
全ては《ディスナンド》を倒すため。
そして、俺自身の……
「えい」
「わぷっ」
俺の目元が隠される。何か柔らかいもので包まれていた。
寧々子だ。猫の姿になって俺の頭に乗っかって、尻尾で視線を塞いできた。そのままぺしぺしと、柔らか肉球で額を叩かれる。
「ボス、考えすぎ。寧々子も、成金ピカピカ郎も、
「だれが妖刀おばばじゃ!」
ムラサメのツッコミも他所に、寧々子が身を乗り出す。
俺と瞳が合う。じっ、と優しげに俺を見ていた。
「だから、ひとりで抱え込んじゃだめだよ」
「寧々子。……そうだな、頼りにさせてもらうよ」
「むふー、よきよき。そうだよ、ボスには寧々子たちがいる。だから、もっと頼ってよ。ね?」
そのままよしよししてあげると、寧々子は満足そうに頷いた。
その後、不貞腐れたムラサメが俺に突撃してきて、ふたりは
「……はは、ほんとうに騒がしいな」
……でも、今はその騒がしさがありがたかった。
あのがらんとした部屋でひとり、過ごしていた時と比べて。
光莉。
なぁ、光莉。
なんで光莉じゃなくて、俺が『魔法少女マギアイリス』の世界に来てしまったのか全くわからないけども。
それでも出来る範囲で頑張るよ。
きっと色々間違えるし、ダメなことも多くあるだろうけども、頑張る。お前と同じくらいの年頃の少女たちが、戦いに赴かなくても済むように。
だからいつか、俺が死んだ時。
光莉にたくさんのお土産話を用意するからさ。
ばかじゃないのとか、ずるいとか、色々言われるだろうけど。
その時はまた、俺をお兄ちゃんと呼んでくれるか?
《ディスナンド》はまだ消えていない。
それでも《ヤミノマ》の脅威が訪れない、束の間の平穏を楽しむのであった。
『魔法少女マギアイリス』、1stシーズン《二人のオーレオール》 完。
だが、まだ闇は終わらない──
『我々は《セブンスター》、ダークネス様の親衛隊である。ダークネス様を退けたとの話、どうやら嘘偽りではなさそうだな』
『燃え上がる炎、みんなの気分をぽかぽかに〜。魔法少女ファイネル〜』
『いなびく雷光、悪しき相手に華麗な鉄槌を! 魔法少女エクレールですわ!』
『その通り! 今の《魔法執行機関》はぬるすぎる。魔法少女は
『あーはっはっはぁ! じゃあ始めようか? 《怪盗》ミスティリア、その最高の
→NEXT 2ndシーズン、『魔法少女マギアイリス』2ndシーズン《スタートゥインクル〜》 近日公開