魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます   作:異星人アリエン

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第二章 《スタートゥインクル》編
魔法少女は大人気


 

 

 春が終わり、夏が少しずつ顔を出し始めた時期。

 

 四月末。

 星見ヶ丘を覆い尽くした漆黒の夜は、《ダークドリーム》と名付けられた。その大災害は、《ディスナンド》が引き起こした史上最悪の出来事として人々に周知された。

 

 そして、それらを打ち砕いた魔法少女サンシャインと魔法少女オーロラミストの名は、一気に民衆に知れ渡った。

 

 その超新星の如き活躍にニュースは連日特集が組まれ、その正体は何ものなのか議論され、口にしない者はいなかった。

 

 そしてその人気は当然鰻登り。

 

 今や星見ヶ丘だけにあらず、全国各地で話題沸騰。

 

 〝まほメイト〟に至っては、一角を2人のグッズで埋め尽くす勢いだ。かつて缶バッジぐらいしかなかったとは思えないグッズ展開ぶりだ。てか、グッズ展開早すぎない? 《ダークドリーム》から、3日しか経ってないんだけど。

 

 無名だった頃から一転、まさに綺羅星の如くの躍進。

 魔法少女としてこれほど名誉なことはないだろう。

 

「だから喜んで良いと思うよ。どうしてうずくまっているんだい?」

「だってぇ〜っ……!」

 

 俺の足元では頭を抱えてうずくまる焔ちゃんがいた。

 

 いつもの学校へと向かう最中に合流し、通学路を歩いているその途中で大型ディスプレイで映し出された魔法少女サンシャインと魔法少女オーロラミストがあった。

 その映像を見て、羞恥に悶えていたのだ。

 

「すごいね。どこを見てもサンシャインばかりだ。いつの間に撮ったんだろうね」

「ぬぁあぁ〜ん! そんなに映さないでよぉ〜! 恥ずかしぃ〜! せめてモデル料をください〜!」

「言えばもらえると思うよ」

「お金のために魔法少女しているんじゃないんですぅ〜!」

「複雑な心境だなぁ」

 

 人気なのは嬉しいが、自らの衣装を撮られるのは恥ずかしい。

 確かに焔ちゃんの魔法少女のコスチュームは、お腹丸出し、短いスカートと『魔法少女マギアイリス』シリーズでも、かなり露出度の高い衣装だ。なんなら、魔法少女アネモスと匹敵するくらい。

 

 年頃なだけに、恥ずかしいのだろう。

 

「あまり大声で魔法少女と言うのは控えなさい」

 

 そこへ声をかけて来る、まさに話題の渦中である魔法少女オーロラミストこと、月詠澪。

 彼女はお淑やかに歩きながら、俺に挨拶をしてきたので手をあげて挨拶を返す。

 

「みおみおは、落ち着いた格好だからそんなこと言えるんだよ! みおみおだって、お腹丸出しのところをテレビで映されたらいやじゃん!?」

「みおみおと言うのはやめなさい。まぁ……思うところがないことはありませんが、それが魔法少女として人々の前に姿を現すということ。わたしの姿を見て、人々が勇気付けられるのであればこれ以上のことはないわ」

 

 焔ちゃんと違い、澪の方は落ち着いていた。

 

 元々生粋のお嬢様である澪は、ある程度社交場に出る機会もあっただろうから人の視線というものになれているのだろう。

 その言葉にむむむ、と眉を顰める焔ちゃん。しかし、澪の方もほんのわずかに恥ずかしそうにし始めた。

 

「ただ、その……」

「ただ?」

「……お兄さまが病院から退院したら、わたしのグッズを手当たり次第に買い占めると言っておられて。その、自らのグッズを身内が持っているというのは、恥ずかしくて……」

 

 はっちゃけ過ぎだろ嶺。

 

 兄妹間の(わだかま)りが無くなったのは良いが、妹のフィギュアを買うとか側から見たら結構あれだぞ。しかもあいつフィギュアひっくり返してパンツに至るまで細部を見るし。

 

「えぇ〜、みおみお良いなぁ〜。あ! そうだ、八雲おにいさんも、あたしのフィギュア買ってください!」

 

 恥ずかしいって叫んでいたのに、俺が買うのは良いのか?

 

 でも、その要望に応えるのは難しいんだよな。

 

「う〜ん、買いたいけども今どこも品薄でねぇ。前に見た缶バッジ覚えてる? 需要が跳ねあがって今このくらいの値段だよ」

「たっかい!? あたしの大好物のとちおとめと同じくらい!?」

「だから易々と手は出せないなぁ」

 

 まぁ、大金持に頼めば何処からか持って来てくれるだろうけど、それはなんか違うだろ? もし、手に入れるのなら自分の金で手に入れたい。

 

 めんどくさいって? コレクターってのは、みんな大なり小なりそんなもん。

 

「う〜、なら風羽さんにお願いして試作品でも貰ってこようかな……」

 

 俺に聞こえないように、小さな声で呟く焔ちゃん。

 

 《魔法執行機関》に関わりの深い凪沙は当然、グッズを販売する組織人とも交流がある。

 

 が、それだけに責任感が強く公平だ。

 単なる先輩に過ぎない俺が欲しがっていると聞いたところで、頷くことはないだろう。そも、後輩に女子中学生のフィギュア頼むとか変態の所業すぎる。

 

「そもそも、なんで師匠に自分のグッズ飾らせたがるのよ?」

「え? だっておにいさんにはあたしのかっこいいところ見ていてもらいたいし!」

「……わたし、あなたのそういうところは尊敬するわ」

「うぇへへ〜」

 

 皮肉だと気付いていない焔ちゃんが照れたように頭を掻く。

 

 う〜ん、仮に焔ちゃんのグッズを買ってもなぁ。

 

 おそらく寧々子が拗ねるんだよなぁ。ただでさえ、可愛がるのは寧々子だけにしてと焔ちゃんと澪を追跡させた時、釘を刺されたばかりだし。

 ムラサメもムスッとする。壊すとかはしないだろうが、面白くはないだろう。

 

 ……なんで同居人の顔色を伺ってるんだ俺?

 

 こうしてみると嶺が羨ましくなるな。まぁ、あいつもあいつで学校ではさも魔法少女に興味ありませんよ、という風に擬態しているが。

 

「ねぇねぇ、魔法少女ごっこしようよぉ〜」

 

 歩いているとそんな声が聞こえた。

 

 魔法少女ごっこ。前世にもよく見た光景だが、この世界ではその頻度が桁違いに多い。実際に存在する相手だし、女児の憧れもひとしおだ。なんなら、女児の将来の夢に出てくるワード一位だとニュースでやってるくらいだ。

 

「いいよぉ! じゃあ、私オーロラミストね!」

「え〜あたし、オーロラミストも良い〜。サンシャインにしてよ〜」

「あんなお腹丸出しの格好じゃ、風邪ひいちゃうからやだ〜」

「たしかにぃ。変な格好だよねぇ」

 

「…………」

「ほ、焔ちゃん……?」

 

 すれ違った幼女たちがそんな会話をしていた。

 

 子どもだからこそ、邪気のない発言。しかし、その言葉は焔ちゃんにとって何よりも鋭い鋭利な言葉と化した。

 固まっていた焔ちゃんがゆっくりとこちらを見る。ぶわっ、と滝のように涙が溢れた。

 

「お〝に〝い〝さ〝ぁ〜ん〝!!!」

「うぐっ。おぉ、よしよし」

「まったく。泣き虫ね」

 

 容赦ない幼女たちの言葉に焔ちゃんがわんわん泣いた。

 焔ちゃんとは、付き合いも長い。10分後くらいにはケロッと機嫌が治るのを知っているから慰めるか。ぐぇっ!? は、腹に抱きつくのはやめてくれ!?

 

 

 

 

「いつつ……なんとかバレないで済んだな」

 

 別れた後、俺は強く抱きしめられた場所をさする。表情にはおくびも出さなかったが、かなり強い力だったのでダークネスからもらった傷が痛んだ。

 とはいえこれでも傷もだいぶ癒えてきたほうだ。流石は大金持グループの最新鋭医療だ。もう、戦闘をしても差し支えないだろう。動きは鈍るだろうけど。

 

「ダークネスが倒されて早3日。その間《ヤミノマ》の目立った行動はなし。なら、やはり今のうちか」

 

 元々すぐに始める予定だったが、傷を癒すために時間を食ってしまった。

 

 なら、本調子ではないがやるべきだろう。

 

「始めるとするか。定例会議(・・・・)を」

 

 映画ボスたちを一度に集めた会議。

 

 それを俺はすることに決めたのだった。

 

 

 

 ……やっぱいやだなぁ。絶対まとまらないだろうし。

 

 我の強すぎる面々を思い出して、俺はひっそりとため息を吐いたのだった。

 




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 読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

 まさかここまで多くの方に読んでいただけるとは思っておらず、驚きと感謝でいっぱいです。
 今後ともよろしくお願いします。
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