魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます 作:異星人アリエン
星見ヶ丘某所。
大金持グループが所有する土地のとある場所に築かれた、側から見ればなんの変哲もない山の中腹部に築かれた地下施設。
そこには似合わないほどに整備された長い通路に、侵入者に対する防衛装置。監視カメラは勿論、生体認証式の隔壁や通路そのものを封鎖する機構まで備えている。
更には会議室、医療設備、訓練施設に加え、自然災害や《ヤミノマ》被害を想定した備蓄倉庫まで完備。いざというときのシェルターにも使える。
子どもが夢見る基地基地を、そのまま大人の財力で実現した秘密基地である。
因みに一つではなく、民家だったり、ビルだったり、俺の家だったりと複数存在するが、中でも使い勝手の良い此処を俺は指定していた。
……いや、本当はこんな立派になる予定はなかったんだ。
けど、大金持に良い感じの建物がないか話しかけたら、あれよこれよと計画が進んでいつのまにかこんな立派な秘密基地となってしまった。
おかねの ちからって すげー!
「さて、定刻になったから会議を始めるとしようか」
そんな中、議長席とも言える場所に俺は座っていた。
そして
俺の周りには同じように複数人の男女が座っていた。
多分もし漫画とかなら、見開きと共にそれぞれの名前と姿が大ゴマで紹介されていると思う。ということで、それを倣って紹介していこうとおもう。
『
「相変わらず、ここ変なにおいする」
『百鬼夜刀〜朝と夜の大決戦〜』のボス、《妖刀》ムラサメ。
「ワガハイはどこであろうとも主様とみたらし団子があれば構わぬ。此度も良いものを用意したのう、大金持よ」
『黄金の摩天楼/エル・ドラード』のボス、《CEO》大金持 財参。
「お褒めいただき感謝致します、ムラサメ殿。他の方々もご要望がございましたら、用意させてもらいますよ」
『幻影の支配者/シルエット・スター』のボス、《怪盗》ミスティリア。
「ボクはもっと派手な装飾が欲しいけどね! 組織には、豪華な装飾は必需品だよ!」
あとは『
だが、今回は不在。
以上、『魔法少女マギアイリス』を吟味した上でオレの集めた映画ボスのメンバーだ。
長く続いたシリーズ物の映画ボスの割に数少なくない? と思っただろう。
確かに『魔法少女マギアイリス』シリーズ自体の映画10本を余裕で超えている。実の所、仲間にしていない映画ボスも何人かいる。だが、そいつらは人格面に問題があったり、そもそも完全に《ディスナンド》側のやつだったりとで相容れない存在だから仕方ない。
あと、単純に時系列で
若干……というか、ほぼほぼ女子ばっかだがそれは『魔法少女マギアイリス』がそういったものなのでこれも仕方なし。
だが、その総戦力はたとえアニメ主人公であろうとも容易く撃退できると確信していた。
しないけど。敵は《ディスナンド》だし。
「さて諸君集まってくれた。多忙な中、こうして集まってくれたことに嬉しく思う」
「ボス、その語り方似合ってない。いつも通りにして」
開口一番、寧々子に言われた。
だって、映画ボスの取りまとめなんだからそれに相応しい装いを……と思ったが周囲を見ても、それを求められていないのが分かったので肩の力を抜く。
「あ、そう? なら、このまま会議を始めるよ」
「主様よ、その前にあの歌娘はどうした?」
「歌音ならアイドルとして全国コンサートの最中だから来れなかった。あぁ、でも録音メッセージはあるよ」
そう告げて、俺は自身の携帯に送られてきたメッセージを流す。
『もしも〜し? みんなのアイドル歌音ちゃんだよぉ〜⭐︎ ごめ〜ん、今ちょっと全国コンサート中でそっちにはいけないの! ファンのみんなの
「まぁ、話がズレるからここから先は大丈夫かな」
「よろしいので?」
「聴いていたらいつまでも本題に入れないからね」
ピッ、と録音を止める。
大金持が途中で切ったことを心配するが、あのまま歌わせたら多分小一時間は続くよ。
「さてと、まずは先の《ダークドリーム》の件について情報共有しようか」
俺は先の《ダークドリーム》の結末について話した。
一部の者にとってはおさらいになってしまうが、いない者もいるので共通認識を持つ為にも説明は必須だ。
「──よって、《トライデント》は壊滅した。首魁であるダークネスも、今後しばらくは動けないだろう。……そうだ、消滅には至っていない。あの程度で消滅するならば、星々を闇に包むなんてことはできないだろう」
報連相は組織の基本だよね。
俺は一連の事変について、現場にいなかった者への共有も兼ねて説明する。
「まさかそのような事態になっていたとは。ニュースでこれまでにない規模の《ヤミノマ》が発生したとの情報は得ていましたが……やはり《ディスナンド》を侮りがたしですな」
神妙な顔で考え込む大金持。こういう時、飲み込みの早い大人がいると助かるな。
「そうだよ。そんな大パーティに呼んでくれないだなんて悲しいじゃないか!」
一方で何処かズレた方向で声をあげる者が一人。
質の良い真っ黒なタキシードに、真っ黒なシルクハット。胸元には赤いネクタイを結び、白手袋をし、片目にはモノクルをつけた顔の整った麗人。俺はその名を呼ぶ。
「
義賊、《怪盗》ことミスティリアだ。
一応、魔法少女ではあるが彼女の衣装は、他の魔法少女とは違い男装のタキシードのようになっている。彼女は芸術品のような銀髪を揺らしながら、俺に指摘する。
「だとしてもだよ。《ディスナンド》との決戦だなんて、これ以上ない舞台じゃないか! そこにボクが居ないのは、世界の損失だよ!? 華麗に、流麗に、鮮やかに活躍できたのに! できたのにぃ!」
「わかったから、机をバンバン叩くのはやめなさい」
不満です! と子どもみたいに机をバンバン叩く様は、優雅さのカケラもない。だけど、大いに不満なのは確かのようだ。ミスティリアは目立ちたがり屋だからな。
その姿を見た寧々子が、にんまりと猫みたいな口をして誇らしげにする。
「むふ、寧々子は大活躍したよ。《ヤミノマ》たちは寧々子のつよつよパンチで敵は一撃粉砕、完全無欠のちょーつよつよだった」
「うそつけ、主様がやられたのに動揺して、敵に飲み込まれかけてたじゃろ」
「む、そっちこそボスをちゃんと守りきれなかったくせに。妖刀だとか言ってるくせに、名折れだよ。妖刀じゃなくて、
「牝猫がぁ! 言うてはならんことを言いよったなぁ!」
あぁ! 今度はこっちで喧嘩が始まった。
既に会議が混沌としてきてる!
「相変わらず騒がしいですな。もっと余裕と嗜みを持ってもらいたいモノです」
「きみは余裕持ちすぎだけどね」
大金持は大人の余裕で、今も優雅にワインを嗜んでいた。
ところでそのワイン何処から取り出したの? 持ってきたの? それはそれで、会議中にアルコールを飲むのはどうなんだと思うのだけど、他の面々と比べて実害はないから何も言えねぇ。
「そもそもだよ! 相手がこの星の支配を目論む親玉だというのなら、そいつに相対するにはきみたちじゃ、役者不足なんじゃないかい?」
「ボスが選んだことに文句言うの? しっと、みくにい」
「はっ! 選ばれたくせに肝心な時に役に立たなかった牝猫が。何のための護衛じゃ?」
「む、そっちこそあのダ、ダー……ダイクサス? を仕留めきれてないくせに。ぼろ刀」
「んじゃとぉ!?」
「はっはっは! 脇役じゃ話にならなかったようだ。やっぱり主役であるボクがいないとダメみたいだね?」
「「その場にいなかった
「はぐさっ!? い、言ってはいけないことを言ったね!?」
もはやしっちゃかめっちゃか、会議の体を成していない!
誰も彼もが映画ボスだから我が強すぎる! やっぱり映画ボスを集めたら碌なことにならないわ。夢のオールスター大集結とか、よくあるけどそれを敵側がやったら、内部分裂するだけってのがよくわかる。敵の敵は結局敵なのだ。
しかし、それをわかっていて俺は彼女らを集めた。
そして仮初とはいえ、束ねる者として嗜めなければ。
「3人とも、各々言いたいことがあるのはわかる。だけど今は大切な会議中なんだ。それ以上揉めていると……怒るよ」
「「「ひぇ」」」
俺の声に、一気に静まり返る。
ちょっと怒気を込めて喋ってたのだけど、そこまで怯えられると哀しくなる。
「流石。わずか一声で治めてしまうとは。まさに貴方様こそ、王の器でございますな」
やめて。
そんな大層なものじゃないし、女の子を黙らして王の器とか、暴君か何かか? 重くなった空気をはらうように、わざと咳払いする。
「こほん。……確かに奴らの首魁であるダークネスは敗れた。でもね、消滅はしていない。奴はまだ生きている」
「おや、それはどうしてでしょうか?」
「簡単さ。ムラサメの焔が消えていないからだ」
〝天羽々斬〟は対象が存在する限り、燃え続ける奥義。
その燻りは、いまだに存在しているとムラサメからは報告があった。
「元々片腕を切り落としたに過ぎぬが、それでも傷口から奴を焼き続ける。そしてその炎が、完全には消えておらん。つくづく怪物じゃな、ダークネスとやらは」
「ん、大きいやつはしぶとい」
ムラサメの言葉に寧々子が同意する。
「《ディスナンド》が今後どのような手段を取るのか、依然として不明だ。そもそもの話、首魁であるダークネスが出てきたと言っても奴等の本拠地そのものは依然として健在だ。その上、《トライデント》という幹部らがいたけども、それで終わりとは思えない」
今の時代が『魔法少女マギアイリス』の一作目から地続きだとすると二作目の敵幹部、《セブンスター》は確実として、世の女子小学生たちにトラウマを植え付けた映画限定の《ディスナンド》側の映画ボスも考慮すべきか。
俺が仲間に引き入れなかった《ディスナンド》側の映画ボス。そいつの能力と映画で起きた出来事を考えると……。
そして悪しき魔法少女、
あぁ、くそ今から頭が痛くなる。
厄介な能力者が多すぎる。こっちも映画ボスを引き込んだのに全然足りない。戦えば互角以上に戦えるのに、後手に回るしかないのがしんどすぎる。やはり、銀河を闇に包む大組織と一惑星の数多ある組織程度じゃ、地力が違うということか。
だけど嘆いても仕方ない。
やれることはやらないとな。
「とにかくいつ再び《ヤミノマ》が出現してもおかしくない。各自、それまでに向けての警戒はしてくれ。大金持、先の《ダークドリーム》で得られたデータの解析は頼んだ」
「おまかせを」
「ミスティリア。きみは
「
「ムラサメは、引き続きダークネスに齎した炎の気配に変化があれば教えてくれ」
「ふん、良いじゃろう」
「ボス! 寧々子は?」
「寧々子、寧々子は……これまで通り健康に過ごそうか」
「わかった!」
その後もある程度の方針と指示を行い今回の会議を終える。
やれやれ、ほんの1時間くらいしか話していないのにどっと疲れたな。今回は歌音が居なかったが、いたらもっとしっちゃかめっちゃかになっていたよ。
「そうだ、マイスター。ちょっと、ムラサメ殿と一緒に力を貸して貰いたい案件があるんだけども」
その後細かな話が終わり、解散となった時に真面目な顔をしたミスティリアが話しかけてくる。
「案件? きみからの誘いだとしたらやっぱり
「うん。ちょっと、
そうミスティリアは無駄に良い顔で、ウィンクしながら宣った。