魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます   作:異星人アリエン

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《喫茶店スター⭐︎ゲイザー》

 

 ミスティリアとの刺激的な盗み(デート)を終えた次の日の朝。

 

「もひもひ……おいしい……」

「おいこれ、半熟になっとらんぞ。ワガハイ、卵のあのトロッとした焼き加減が美味しいのじゃ!」

 

 そんな会話をしつつ、朝の朝食を終えた頃。

 

 俺の自宅にチャイムが鳴った。

 そのまま外に出ると、俺にとっては馴染みのある人物が二人。

 

「こんにちは、先輩。お話がございます。理由はもちろんお分かりですよね?」

「あ、あうあう、八雲おにいさん……」

 

 家の前には、こちらをまっすぐ見る凪沙と申し訳なさそうに見上げてくる焔ちゃんがいた。

 

 そういえば、《ダークドリーム》以降、凪沙と会うのは初めてだなぁ、と現実逃避をするのだった。

 

 

 

 

 

 喫茶カフェ、《スター⭐︎ゲイザー》。

 

 星見ヶ丘に存在する、レトロな雰囲気が売りの喫茶店である。

 

 『魔法少女マギアイリス』の2ndシーズン《スタートゥインクル》にて、舞台となる拠点だ。2ndシーズンでは、凪沙を含めた魔法少女たちの居処となっていた場所でもある。

 

 だから此処を使うのはおかしくない。おかしくないんだが……。

 

「……」

「……」

「あわわわ」

 

 なにこの……なに?

 

 三者面談を彷彿とさせる状況は? あと、焔ちゃん? きみ、本来はそっち側だよね? なんで俺の隣にいるの?

 

 連れて来られたは良いが、凪沙も喋らないし誰かこの状況をなんとかして。

 

「は〜い、お待たせぇ。ご注文の飲み物よぉん⭐︎ って、あらぁ? どうしたの、そんな顰めっ面で。だめよん! 時代はハッピー! 笑顔がきらりん! 明るくしなきゃ、幸せはやってこないのよん!」

 

 

 とんでもねぇバケモノが助けに来た。

 

 

 パッツンパッツンな大胸筋を見せつけるように、メイド服を着た男。もう一度言う、男だ。その腕は筋肉質で太く、持ってきたドリンクとの対比も相まって丸太のようだ。

 

「はいこれ、頼んでいたドリンクよん! おいしく飲んでねん」

「ありがとう」

「あ、ありがとうございます」

「……それで先輩、お話ですが」

「凪ちゃんは、こっちね! カフェオレよ! んも〜、いつもこれ飲むのにコーヒーだなんてかっこつけちゃってぇ。ちゃ〜んと、ミルクも持ってきたから淹れて飲みなさいよぉ」

「ちょ、ちょっと……! ミッチェルさん、言わなくていいこと言わないください!」

「いやん、怒られちゃったわ」

 

 きゃっ、と可愛らしい乙女みたいな反応をする。

 

 このメイド服を着た男性の名前はミッチェル──本名は星野原大吾郎だ。

 

 しかし、本人はミッチェルと呼んでと語っている。

 

 ちなみに呼ばないと、非常に圧をかけてくる。具体的にはそのやたらとプルンとした唇を近付けてくる。ちなみに本編の被害者は澪である。あの娘真面目だから、本名で呼ぼうとしたのよ……、ファーストキスはなんとか守られたけどトラウマになっていた。

 

 そして彼を語る上で欠かせないのが昨今の時代、お目にかかるのが難しいオカマ(・・・)であるということだ。オネェじゃないよ、オカマだよ。

 

 しかしその強烈な見た目とは裏腹に、『魔法少女マギアイリス』シリーズでも、頼りになる大人ランキングを開催したら必ずトップスリーに食い込む聖人だ。正直、俺もかなり強烈に印象に残っているキャラだ。

 

 今もドリンクを持ってきてくれたミッチェルの姿を観察する。

 

 間近で見たらより圧倒される。すげぇな、なんて筋肉だ。胸元ぱつぱつではち切れそうだ。

 

 はち切れてもなんも嬉しくないけど。

 

 メイド服って普通ちらりと見れる胸や足が醍醐味なはずなのに見えている部位、筋肉でばっきばっきだ。

 

 ほんと、肌色多めの衣装なのに何も嬉しくねぇんだけど。

 

 結論、メイド服が悲鳴をあげてるわ。

 

 やがてミッチェルは離れていった。スカート短いから、ばっきばきの太ももがチラチラと見えていた。

 

「はぁ、まったく……。それで焔さん、あなたは先輩の前で変身した。そして、先輩はその姿を目撃したということで間違いないですか?」

「は、はい! その通りです!」

「間違いないです」

 

 焔ちゃんは戦々恐々と、俺も思わず敬語になって答える。

 

 あー、やっぱりその件か。

 《ダークドリーム》以降、ゴタゴタしてたけど凪沙は俺が焔ちゃんが目の前で変身したことを知らなかったみたいだ。それで、どこかのタイミングで知って接触してきたと。むしろ、遅いくらいだな。

 

 凪沙は頭を痛そうに眉を顰める。

 

「全く、魔法少女が変身する姿を見られてはいけないとあれほど言っていましたのに……」

「あのあの、風羽さん。こんなところで大丈夫なんですか? だってその……」

 

 ちらりと、ミッチェルさんの方を見る焔ちゃん。

 

「ご心配なく。ここは、魔法少女が利用している施設です。ここでなら、魔法少女についてお話しても大丈夫ですよ」

「うぇ!? し、知りませんでしたけど!?」

「ちゃんと渡した書類に記載されてましたが、読まれませんでしたか?」

「あっ。え、えーと、難しい文字ばっかりでその……」

「読まなかったのですね」

「はいぃ……」

 

 縮こまる焔ちゃん。

 まぁ、この娘長い文章見るの苦手だからね。だから、時折よくわからないままサインしたり、頷いたりする。おにいさん、将来詐欺にあわないか心配です。

 

「色々と言いたいことがありますが、本題に入りましょう。単刀直入にいいます。先輩、彼女が魔法少女になる姿を見てどう思いましたか?」

「どう思ったって?」

 

 よくわからない質問だ。

 

 というか、あの時あまりに至近距離で焔ちゃんが魔法少女になってしまったせいで、お約束の変身シーン(謎のキラキラ)もなく全裸を見てしまい、非常に気まずいので思い出したくないのだけど。

 

 本人は見られたことに気付いてないし。

 

 あまりにも凪沙が真面目な顔で問いかけてくるので、素直に答える。

 

「意外と魔法少女は身近なんだなと思ったよ」

 

 無難に答えた。

 

 俺の周りにも魔法少女は何人もいるし、目の前の凪沙だってそうだし。

 

 だが、その返答は意外だったのだろう。

 凪沙はパチクリと目を瞬かせ、堪えきれないように笑みをこぼした。

 

「ふ、ふふふっ、魔法少女の正体を知って身近って。でも、先輩らしいですね」

「そうかい?」

「えぇ、まったく。変わらないですね。そして、天照さん。ごめんなさい。意地悪な言い方をしましたが、私に貴女を責める権利はないんです」

「え、えぇ!?」

「あの時、《天川事変》で私は不覚を取りました。そのせいであやうく《ヤミノマ》をフリーにしてしまった。貴女が戦ってくれなければ、被害はより増えていたでしょう」

 

 あー……、なるほど。

 

 魔法少女アネモスとしては《トライデント》戦で良いところ無しだったからか。でも《ヤミノマ》3体を瞬殺してたし、そこまで気にしなくても良いと思うんだが。やっぱり凪沙は真面目だな。

 

「先輩、魔法少女の正体を知ったあなたに言わないといけないことがあります。ですが同時に、この話を聞いたら後戻りはできなくなります。それでも、聞きますか? 今ならばまだ巻き込まれただけの人として戻れます」

「いいや、聞かせてもらいたい。君たちのことを。知ったのに、知らぬふりはできないから」

 

 きっと凪沙は俺をまだ普通の日常にいられるように、善意で言ってくれてるのだろう。

 

 だが俺にも打算があった。

 

 十中八九、彼女が話すのは魔法少女についてのこと。そうなれば、より知り、より深く潜り込める。

 《魔法執行機関》──寧々子にひどいことをした組織へと。

 

 そんな俺の思惑を知らずに、凪沙は俺の言葉に神妙に頷き、説明を始める。

 

「魔法少女は、若い少女たちだけがなることが出来る、いわば超能力者のような存在です。そして、正体を秘匿するのが義務付けられています。たとえそれが、家族であろうとも。何故ならそうしなければ、自らの身を守れないから」

 

 あぁ、知っているよ。

 

 大金持の奥さんは、その辺のリテラシーがまだなかった頃に正体を暴露されたせいで、正史では命を落としたのだから。

 

「なので本来であれば同じ魔法少女以外に正体を明かしてはならないのです。ですが、先輩は魔法少女の正体について知ってしまった。そうである以上、魔法少女ではない先輩は、組織に属する必要が生まれてしまいます」

「組織って?」

「《魔法執行機関》。魔法少女を支援し、管理する組織です。《ディスナンド》と戦えるのは魔法少女だけ。それは間違い無いのですが、やはり彼女たちはまだ若い。フォローする人が必要です。それが《魔法執行機関》です。もっとも、まだ先輩は学生なので先の話になりますが」

 

 俺も『魔法少女マギアイリス』の視聴者。

 光莉が『魔法少女マギアイリス』の後発シリーズについては知識が曖昧になっていくが、《魔法執行機関》についてはある程度知識がある。

 

 そして基本的に善の組織であり、魔法少女の味方であるのには変わりないが、初期の頃に一度だけクズな人間(・・・・・)が現れた。

 

 魔法少女を人工的に生み出そうとし、年若い少女たちを耐えがたいトラウマを与え、魔女(・・)を生み出す原因となった男。

 

 そいつこそ、俺が《魔法執行機関》で必ず消すと決めている人物だ。

 

「なら先ほどの……ミッチェルさんもそうなのか?」

「はい、店長も《魔法執行機関》の方です。ここは、この付近の魔法少女たちにとってのセーフティーゾーンでもあるんです」

 

 ばちこん、とミッチェルがウィンクした。鳥肌が立った。

 

「なるほどな……。それなら嶺についてはどうなる?」

「嶺……あぁ、月詠家の長男の方ですね。彼についても澪さんから伺っております。今は入院しているそうですが、退院してからになりますが先輩と同じように事情聴取をさせていただこうかと思っています」

 

 やっぱり嶺も同じか。

 となると、俺と嶺は《魔法執行機関》に関わることになるのか。魔法少女と近しくなれるとなると嶺は泣いて喜びそうだな。

 

 いや、逆に魔法少女に近づくなんて言語道断とも言いそうな気がする。

 

 まぁ、とにかく《魔法執行機関》に関われるのならそれに越したこともない。

 それに、凪沙が俺の学生生活が終わるまでは特に規則とかないと語ってくれてるし、無頼として裏で活動するのにも支障はないだろう。

 

 今度こそダークネスとは決着をつけるつもりだからな。

 

 俺が高校生の間に全てを終わらせるつもりだ。

 

「それで先輩、非常に心苦しいのですがこれであなたの将来が決まってしまったと言っても、過言ではありません。私たちの不手際で先輩の将来を決めてしまい、申し訳ございません」

「ごめんなさい、八雲おにいさん。あの時、あたしが変身したせいで……」

「いいや、そんなこと気にする必要はないさ。いままでキミたちがこの町の平和を守っていてくれたのには感謝しかないし、そんなキミたちの力の一助になれるというのなら否応はないさ」

「八雲おにいさん……!」

「先輩……」

 

 そう答えると感動したように二人が俺を見る。

 むず痒い気持ちになって、頬を掻きながら視線を逸らす。

 

「あんらぁ〜、なら須佐くんもあたしと同じ同僚になるってわけねぇ! うれしいわぁ! んちゅっ」

 

 俺と視線があったミッチェルが投げキッスもしてきた。吐きそう。

 

「でしたら先輩、これからよろしくお願いします」

「あぁ、それで凪沙は、どの魔法少女なんだい?」

「えっ」

 

 そう、凪沙は《魔法執行機関》や魔法少女関連については語ってくれたが自らがアネモスであるとは一切語っていなかった。

 今後のことも考えると、色々と知っておいた方が良いので踏み込んだのだが何故か凪沙は固まった。

 

「あ、え、それはさして重要なことではないので……」

「いやいや、可愛い後輩がどんな魔法少女かは気になるじゃないか」

「あ、う……」

 

 きょろきょろと目を彷徨わせる。え、俺嫌われてる? なんで教えるのそんなに躊躇するの?

 

「風羽さんは、魔法少女アネモスですよ! とってもつよくて、それでいてやさしいんです!」

「ちょ、ちょっと勝手に……!」

「そうよォ〜。なぎちゃんは、すっごく強くて真面目ちゃんでかわゆいの。あなた、わかってるわねェ。ん〜、サービスでケーキあげちゃうわァ〜」

「わ〜い! ありがとうございます!」

 

 初対面なのに既に仲良しだなこの二人。

 側からみたらむさ苦しいメイド服を着たおっさんが中学生に絡む事案な絵面だけど。

 

 焔ちゃんが嬉しそうにケーキを食べる中、俺は頷く。

 

「なるほど、凪沙が魔法少女アネモスだったのか……」

「あ、う。げ、幻滅しましたよね?」

「ん? なぜだい?」

「だって……アネモスは可愛らしい系の魔法少女でないですし……それに……腹筋が割れていますし

「いや、そんなことはないさ。俺はアネモスのこと、カッコいいと思っているよ」

「そうですよ! あたしも魔法少女アネモスのこと、すごく尊敬してます!」

 

 同意してくれる焔ちゃん。

 口元がクリームで汚れていたので、新品のおしぼりでとってあげる。

 

「凪沙は、中学の頃から真面目だったからね。今思うと、魔法少女アネモスの言動も真面目さが窺えるからそっくりだ」

「そ、そそそ、そんなことありますか?」

「あるよ。正直、陸上部をやめた時はどうしてって思ったけど今なら納得だ。人々を守るため、魔法少女に集中してたんだったんだね。うん。やっぱり凪沙は凪沙だ。優しく、まっすぐな自慢の後輩だよ」

「う、あ……先輩……しゅきぃ……」

 

 俺の言葉に、凪沙は固まって動かなくなってしまった。

 

 しまった、褒め過ぎたか? 

 

「むぅ〜……。八雲おにいさん! これすごく美味しいですよ! 食べてください!」

 

 ぐいぐいと、俺の方に食べていたケーキをフォークに突き刺して食べさせようとしてくる焔ちゃんの明るさが頼もしかった。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、凪沙。実は大切な話があるんだ」

 

「は、ははは、はい!? そ、それっても、もしかして……!?」

 

「俺のコート、返してくれない?」

 

「…………あっ」

 




なんでオカマキャラって少なくなったんですかね?
筆者はクレしんのオカマたちが大好きでした。
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