魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます   作:異星人アリエン

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新たなる敵、《セブンスター》!

 

side:寧々子

 

 ボスの命令……ううん、お願いで寧々子は学園に通うことになった。

 

 正直、かなり気乗りしなかった。

 だって、ボスのそばにいられないから。

 

 でも、ボスからのお願いは断れない。その代わり、帰ったら目一杯甘えさせてもらうことで手を打った。むふー。今日は大トロにゃしぃ。

 

 早く帰ってボスに甘やかしてもらう。

 そんな面持ちで、学院の授業に臨んだ寧々子だったんだけども……。

 

「つ、つかれた……」

 

 ワン子は、寧々子がボスの家族だとわかったからすごく学園の案内をしてくれるのだが、そこに行くまでにどこも全力疾走。次から次へと、案内していく。

 ワン子の紹介に、ワン子の友だちだって子たちにも囲まれて気が休まらない。

 

 自分のペースでいきたい寧々子とは相性が悪い。

 

 いやになったから、そそくさと校舎裏へと逃げ込んだ。

 

 校舎裏の木に登って、ぽや〜、と空を見る。

 

 すごく青い。ボスも学校に行ってこんな空眺めているのかな。

 

「随分とおつかれのようね」

 

 話しかけてきたのは、髪の長い真面目そうな娘。

 

 確か、みおみお。覚えてる。ワン子と一緒の魔法少女の片割れ。

 教室にいたときにも、あまり干渉してこなかったのに突然話しかけてきた。

 

「……よく木の上に登れましたね。結構高いのですが」

「別にこのくらいなんともない。それで、なんの用?」

「いえ、随分と疲弊しているようでしたから。おつかれですか?」

 

 くるり、と下に降りる。

 みおみおは、寧々子があまりにも簡単に降りてきたからびっくりしていた。むふふ、もっと尊敬するがよろし。

 

「別に授業はむずかしくない。おにぃに教えてもらってたから。でも、ワン子に連れ回されるのは、疲れる」

「おにぃ……し、八雲さんのことですね。そしてワン子……焔ね。わかるわ。あの娘、すごく強引だもの」

「自分でできるって言ってるのに口出してくる。おせっかい」

「その通りね。何をするにしても、全力よね。でも、そこが彼女の良いところだわ。どんなことでも真摯に向き合うことができる」

「ふ〜ん」

 

 みおみおは口では、寧々子の言葉に同意しながらもどこか楽しそう。

 

 そのまま寧々子の隣に座ってくる。

 

「わたしも一人(・・)が好きよ。でもね、独り(・・)は寂しいわ。だから、彼女はそんな孤独を照らしてくれる太陽みたいな存在よ」

「……それって実体験?」

「さぁ、どうかしら」

 

 みおみおは、柔らかに笑った。

 自分のことのように、嬉しそうに。どうしてそんな顔をできるのか、よくわからない。

 

「あー! いたー!」

 

 そこに現れたワン子。

 息を荒くしているから、けっこう探し回っていたのかもしれない。

 

「もう! ねこちゃん! 勝手にひとりにいなくなるなんてひどいよぉ! 案内も途中だったのに!」

「ん、べつに大丈夫。みおみおが居るから、学園のことを知れるし平気」

「へ? み、みおみおっ……!? 焔! あなたね! 寧々子さんに教えたのは!」

「うぇぇぇっ!? し、知らないよぉ! あたし言ってないよぉ!」

「うそおっしゃい! そんな呼び方をするのは、あなただけでしょう!」

 

 そのままふたりはわちゃわちゃとケンカする。

 

 でも、険悪な雰囲気なんてまったくなくて。

 

「……へんなの」

 

 おこっているのに、わらっている。

 どうして楽しそうなのか、わからない。けど、なんか見たことあるような……。

 

 わかった。

 

 ボスと妖刀おばばだ。よく妖刀おばばが文句を言うのを、ボスは楽しそうに笑いながら受け入れていた。

 このふたりも、似たような関係なのかな。

 

「寧々子さん、わらっているの?」

「! わ、わらってない」

「えー! うそだぁー、わらってたよ!」

「むぅ、うそじゃない。ぷいっ」

 

 からかわれている。

 

 でも、なんだかいやじゃない。

 

 おにぃといるときのぽかぽかした気持ちとはまた違う。ほわほわした感じ。なんだろう、これ。

 

「っ!」

「あれ、どうしたのねこちゃん……!?」

「この感覚……!」

 

 ぞわり、といやな感触が背筋を伝う。

 

 やがてどんどん、青空が赤く(・・・・・)染まっていく(・・・・・・)。遠くの景色との境界が歪んでいって、奇妙な空間に閉じ込められた感覚。

 

 そんな現象を起こせる存在なんて一つしかない。

 

「こ、これってまさか……!?」

隔離空間(コンサート)、そんななぜ……!?」

 

 二人はすごく驚いていたけど、寧々子は驚いていなかった。

 ボスが言っていたダークネスはまだ生きているという言葉。敵の幹部は《トライデント》だけとは思えないとも。

 

 つまり、《ディスナンド》がまた動き出したんだ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

「いそいで、焔!」

「うん! わかっている!」

「あっ、まって、はや、はやすぎっ……、置いていかないで!?」

 

 急いで現場に向かうふたり(澪は置いていかれそうになっている)。

 

 焔と澪は、他に逃げられていない人がいないか確認すると誤魔化して、そのまま隔離空間(コンサート)の中心地に向かっていた。

 

 寧々子がいたことでどう誤魔化して魔法少女になるか悩んでいたが、避難すると言って校舎の方に向かった。やけにあっさりと、寧々子が下がったことに二人は気付くことはなかった。

 

 むしろ、これで憂いなく魔法少女になれると安堵していた。

 

《ヤミノマーッ!》

「きゃあぁぁぁぁ!」

「たす、たすけてぇー!」

 

 やがて姿が見えてくる。

 

 かつて初めて出会った校舎のベルに取り憑いた《ヤミノマ》のように、雄叫び、校庭に現れたのは間違いなく《ヤミノマ》だった。

 付近にはトワイライト学園の生徒たちが、逃げ回っていた。

 

「やっぱり《ヤミノマ》! でも、どうして? ダークネスは倒されたんだからもう現れるはずがないのに!」

「疑問は後にしましょう。いまは《ヤミノマ》を倒すことが先よ!」

 

 澪の言葉に焔は頷く。

 物陰に隠れ、そしてすぐさま二人の姿が光に包まれた。

 

「魔法少女サンシャイン!」

「魔法少女オーロラミスト!」

「「闇が世界を覆うだなんて許せない。光で貴方の野望を打ち払う!」」

 

 宣言と共に、二人の衣装が変わる。

 

 天照焔は、赤を基調としたフリフリとした活発そうな衣装に。

 月詠澪は、青を基調とした落ち着いた印象をあたえる衣装に。

 

「とりゃあっ!」

「はあぁぁっ!」

《ノマッ!?》

 

 それぞれ助走をつけたキックとパンチをお見舞いする。

 

「あれって!」

「サンシャインに、オーロラミストだぁっ!」

「ここはわたしたちが食い止めます!」

「はやく逃げて!」

 

 二人の登場に喜ぶ生徒たちに、避難を促す。生徒たちは、慌てて逃げていった。

 

 そして、《ヤミノマ》はあまりの衝撃に吹き飛ばされながらもすぐに体勢を立て直し、二人を睨みつける。

 

《ヤミノマー……!》

「この《ヤミノマ》、何かが違う?」

「えぇ。強さもですが、何よりもタフです。ともすれば、《トライデント》が召喚した奴らよりも強い気を感じるわ」

「けれど、諦める理由にはならないよね?」

「ふふっ、そうね。いきましょう!」

 

 《ダークドリーム》でのダークネスとの戦闘は、二人にとてつもない経験を積ませた。

 

 ダークネスの存在感は圧倒的だった。

 あの恐怖に比べたら、この程度の《ヤミノマ》なんとでもない。

 

 わずかな手合わせでこの《ヤミノマ》が普段と戦う《ヤミノマ》とは違うと気づくも、二人の連携の前にはそれも苦とはならなかった。

 

「貴方が世界を闇に包み込もうとするならば!」

「わたしたちは、光の力で世界を照らしてみせる!」

「「マギアイリス・クェーサー!!!」」

《ヤ、ヤミィッー!!?》

 

 七色の虹のように光り輝く光の奔流。

 二人の必殺技〝マギアイリス・クェーサー〟。

 

 片腕だったとはいえ、かのダークネスの奥義すら吹き飛ばした魔法少女の一撃に、《ヤミノマ》が耐えられるはずがない。

 そのまま光の渦に巻き込まれ、小さな《ヤミノマ》すら出てこずに消え去った。それを見たサンシャインが嬉しそうに、オーロラミストは冷静にしながらもハイタッチをした。

 

「やったね、オーロラミスト!」

「えぇ。しかし、ほんとうにどうして《ヤミノマ》が急に現れたのでしょうか」

「たしかに。ダークネスはたおしたから、もう現れるはずないのに」

 

 疑問に思う。

 

 《ヤミノマ》は《ディスナンド》からの世界を闇に包むための尖兵だ。だが、その頭目であるダークネスが消滅した以上、もはや現れるはずがないはずと二人は思っていた。

 

「この程度の《ヤミノマ》では相手にすらならんか」

「だれ!?」

 

 校舎の上に並び立つ複数の人影。

 

 全員が全員、人の形をしているも角が生えていたり、肌の色が異なるなど純粋な人らしからぬ異形であった。

 その中でもっとも背が高く、マントを羽織る男が代表して答えた。

 

「お初に。この星の魔法少女たちよ。我が名はドン・ドゥーベン。そして我々は《セブンスター》、ダークネス様の親衛隊である。ダークネス様を退けたとの話、どうやら嘘偽りではなさそうだな」

「ダークネスって、あの!?」

「ダークネスはもう倒されたわ! 貴方たちの野望はもう潰えているのよ!」

 

 ドン・ドゥーベンと名乗った男の言葉に焔が驚き、澪がすぐさまダークネスが倒されていることを指摘する。

 

「きゃははは! おめでたい連中だね! まさか本当にダークネス様が倒されたと思っているの〜? ちょ〜ウケるんですけど! ばぁ〜かじゃないの?」

「戯言。あの御方は闇そのもの。すなわち、この不滅の存在」

 

 ツンツンした髪の少女が嘲笑い、青い肌のぐるぐる眼鏡をかけた男が切り捨てる。

 

「複数の銀河を闇に包み込んだダークネス様が、貴様ら如きに完全に滅ぼされる訳がないだろう? 矮小な存在の人間風情が、己が尺度で知ったように語らないでもらおうか」

 

 ドン・ドゥーベンが睨む。

 

 《ヤミノマ》とは違う、いっそ無邪気と言っていいほどに負のエネルギーを集めるために無闇矢鱈に破壊をもたらす存在ではない、確固たる敵意を持った紛れもない強者としての圧に思わず怯む。

 

「とはいえ、ダークネス様……そして直属の《トライデント》を追い詰めたのは紛れもない事実」

「肯定。魔法少女は、周囲の人間から認知されればされるほど強くなる。今、この町でもっとも力が強いのはきみ達だ。だから、確かめさせてもらった。まさか負の力を充分に蓄えた《ヤミノマ》すらも打破するとは」

「生意気だよねぇ〜。ねぇ、やっぱりいまやっちゃわない?」

「否定。メスレス、今回は奴らへの宣戦布告と力を測るために接触したのだ」

「うげぇ〜、メラクは本当考えが根暗だよねぇ」

「根暗っ……!?」

 

 赤い少女(メスレス)の言葉に、青い肌の眼鏡の男(メラク)がショックを受けた。

 

「忌々しき魔法少女よ。覚えておくが良い。この星は我々が必ず闇に包ませてもらう」

 

 ドン・ドゥーベンが指を鳴らす。すると突然周囲に黒いモヤが発生した。アクラーツやエレガンシアが用いていたワープ技術だ。

 

 やがて黒いモヤが消えた時、《セブンスター》の姿はなかった。

 

「せっかく穏やかな日常になったと思ったのに、どうやらまた忙しくなりそうね」

「うん。でもあいつらの好きにはさせない。必ずこの町の平和は守ってみせるよ」

 

 新たな戦いの気配に、二人は気を引き締めた。

 

 そしてその姿を、遠目から見ていた黒猫(・・)はにゃあ、と小さな声で鳴いていた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

「あら、おかえり。どうだった、華麗なる《セブンスター》のデビューわん?」

 

 あの後、一度退却した《セブンスター》の面々は彼らの隠しアジトへと戻って来た。そこで出迎えたのは、ちりちりパーマな髪に、やたらと厚化粧で体格の良い男だった。しかも、やたらとぷりぷりとした唇に、カールかがったまつ毛と一度見たら忘れられることのない衝撃的な顔である。

 

「わかりきったことを聞くな、ミザリィーン(・・・・・・)。それよりもさっさと調べたことを教えろ」

「ま! 冷たいわねん。でも良いわん。あたくしの成果にびっくりしなさ〜い!」

 

 そのままミザリィーンと呼ばれた人物は、ぷんぷんしながらもいくつもの写真を机にばら撒く。

 

「この町には、結構な数の魔法少女がいるようねん。ダークネス様を倒した魔法少女サンシャインと魔法少女オーロラミストを筆頭に、現役最強の魔法少女アネモス。彼女と同期の魔法少女ファイネルに魔法少女エクレール。この辺りが警戒すべき相手ねん」

「ふん、噂に聞く現役最強の魔法少女アネモスを筆頭とした《ビッグスリー》か。忌々しい輩だ。奴らのせいで随分と《ヤミノマ》が狩られたと聞く」

 

 ダークネスを倒した魔法少女サンシャインとオーロラミストは勿論のこと、それ以外にも幾人も魔法少女はいる。

 

 そのために、ドン・ドゥーベンはミザリィーン警戒すべき対象を探らせていた。

 

 初めに上がったのは自らの上司であるダークネスを倒した、魔法少女サンシャインとオーロラミスト

 

 そしてその他に、魔法少女アネモスを筆頭としたエクレールとファイネルら3人、通称《ビッグスリー》の名があがる。この3人がサンシャインとオーロラミストが現れる前までは、星見ヶ丘で有名な魔法少女だった。

 

「あとは魔法少女にしては変な動きをしている、《怪盗》ミスティリアかしらん」

「疑問。だれだ、ソイツは?」

 

 メラクが問いかける。

 

 ミザリィーンはまた別の写真を出す。ネットで拾ったものであり、複数あるが、すべてカメラ目線でこちらを見ているミスティリアの写真だ。

 

「どうやらミラクルパワーを使いながらも《ヤミノマ》を倒すことはせず、各地の珍品や貴重品を盗み取っている犯罪者らしいわん。でも、その知名度はダンチよ」

「納得。まぁ、我々には好都合か」

「てゆーか、よくこの短期間で情報集められたね」

 

 メスレスが疑問を呈すると、ミザリィーンはよくぞ聞いてくれたとばかりにやたらと鍛えあげられた大胸筋を張る。

 

「それはこのパソコンのおかげよん! ほんとう、便利ねん。このパソコンで調べれば調べるだけ情報が出てくるわ。あたくしも欲しいわぁ〜」

「持って帰っても《ダーク・ディストピア(本拠地)》じゃ使えんだろ」

「きぃ〜! マジレスは禁止でしょ!」

「マジレス?」

「あたしのこと?」

「きみはメスレスだろ……」

 

 妙なネット用語を使うようになった、ミザリィーンに疑問符を浮かべるドン・ドゥーベン。自身のことかと尋ねたメスレスに、メラクがツッコミを入れるとメスレスに蹴られた。

 

「どちらにせよ、《トライデント》ですら壊滅したほどに魔法少女のアベレージが高い町だ。入念に準備を進めて、より強い《ヤミノマ》を……ん?」

 

 とにかく今後のことを考えようとしていると、突然扉が開く。

 

「はぁ、はぁ」

「フェックではないか。随分と早かったな」

 

 フェックと呼ばれた豚のような人物は、息を荒くしながら部屋へと駆け込んで来た。その様子に、訝しみながらドン・ドゥーベンが問いかける。

 

「アルルカとリ・オートはどうした? 一緒に言ったのではないのか?」

 

 その場にいない、残りのメンバーの行方を問う。

 フェックは青い顔をし、息を整えぬままに告げた。

 

「殺されたダス……!」

「は?」

変な刀を(・・・・)持った男(・・・・)に、アルルカとリ・オートは殺されちまったダスよぉ!」

 

 その言葉に、残った《セブンスター》は凍りついたのだった。

 

 

 

 




 アニメ版マギアイリスタイトル
  『新たな敵の登場!? 闇からの刺客《セブンスター》!』

なお、画面外で二人欠けた模様。
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