魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます 作:異星人アリエン
《セブンスター》。
それは『魔法少女マギアイリス〜』で新たに登場するダークネスの配下の七人の名称である。《トライデント》に代わる新たな敵として現れた彼らは、多種多様なデザインに個性を持って、魔法少女の前に立ち塞がった。
ここで思ったであろう。
実際その通りである。『魔法少女マギアイリス』、《スタートゥインクル》編が総話数25話程度なので、ラスト付近で再びダークネスが復活することも考慮すると大体3話くらいで一人やられる計算となる。
この時期は、まだ人気が出た頃とはいえ当時のアニメ業界がキャラ使い捨て上等だったため、多くの敵キャラを出してもすぐに死ぬんだよな。リーダーのドン・ドゥーベン以外あんまり出番もないし。
とはいえ、これが現実となると数の力は厄介だ。
単純に考えても、《トライデント》の倍だしな。当然繰り出す《ヤミノマ》の数も増える。ちなみにコイツらが繰り出す《ヤミノマ》、普通にサンシャインとオーロラミストを追い込んだりもする。
多分……いや普通に、
本人たちが語るには、より人の負のエネルギーを効率よく集めることが出来る技術が確立できたので、より強い《ヤミノマ》を生み出せるようになったとのこと。
一応、彼らのボスのダークネスを倒した
とはいえ、《ヤミノマ》が強くなるのはこちらにとっても不都合ではある。アニメ側の都合じゃなくて現実として、《ヤミノマ》が強くなるのだから。
しかし、奴らにも弱点がある。
こいつら戦隊モノの系譜を継いでるせいか、複数人でまとまった行動するのだ。そのくせ、繰り出してくる《ヤミノマ》は一体のみのことは多い。いや、強化個体ではあるんだが、やっぱり複数体出してくることは稀だ。
なんか自分達の力で《ヤミノマ》を強化しているから複数人必要……らしい。
脚本家の都合? それを言ったらおしまいだろ!
複数体《ヤミノマ》を出した回も、いわゆる新キャラお披露目回で即撃破されたし。ちなみにその時登場したのは凪沙だ。3体《ヤミノマ》がいたが、1分持たなかったよ。
とにかく強化個体の《ヤミノマ》を出すのに複数人必要というのは、非常に好都合だった。何故ならそれはまとめて始末できるチャンスだからだ。
寧々子にはかつて俺が《天川事変》の時に使った、同じ通信機を持たせてある。その寧々子からの連絡で、再び《ヤミノマ》が現れ、そのうちドン・ドゥーベンを筆頭とした3人は焔と澪に対峙しているのは知っていた。
奴らが動き出したことを知った俺は、同時に付近を大金持が構築した専用の星見ヶ丘の監視網を利用して索敵。トワイライト学園に向かう最中に、見事索敵網に引っかかった《セブンスター》の構成員3人。
ドン・ドゥーベンの方はアニメの方で顔見せしたら、すぐ撤退をすると判断してトワイライト学園に向かわず方向転換。3人の方に襲いかかった。
『ぐ、があぁぁぁ!?』
『リ・オート!? な、なんなのだ!? フェック! はやく《ヤミノマ》を出すのだ!」
『わ、わかったダスッ』
『させるとでも思っているのか?』
《ふははは! 怯えよ! 竦めぃ! 《ヤミノマ》の力を生かせぬままワガハイと主様の糧となれぃ!》
残念ながら
こいつ、キンニバベールみたいに肉弾戦も出来るやつだから、ほっといたら《ヤミノマ》に周辺を襲わせ、自らが魔法少女を抑える戦法を取り出すからな。普通に厄介だった。
不意打ちで初っ端から仕留められたのは行幸だ。
《ふっふっふ、吾輩の刃が冴え渡っておったわ!》
《セブンスター》の二人を斬れたムラサメは終始ご機嫌だ。
なんならそのままスキップでもしそうなくらいだ。まだ懐に仕舞える小刀形態だが。
「それじゃーねー! ねこちゃーん!」
「ん……、またね」
家の前。そこで丁度帰ってきた寧々子と会う。
どうやら、焔ちゃんと別れたところらしい。
「あっ! おにぃ!」
「やぁ、寧々子。連絡ありがとう。おかげで、《ディスナンド》の幹部を仕留めることができた。ありがとう」
「むふふん、もっと褒めて」
「よしよし」
そのまま頭を撫でてあげる。寧々子はご満悦そうだった。
「トワイライト学園はどうだった?」
「ん、ちょっと慣れない環境だからつかれた」
「まぁ、初めはそういうものさ。でもそのうち慣れるさ。焔ちゃんたちが対峙した《セブンスター》について、詳しくは中で聞かせてくれ」
「ふぅー、やっと家に着いたのじゃ」
会話をしつつ、家の鍵を開ける。
そのまま上がるが、寧々子は入ってこない。ムラサメは小刀から戻って、我先に中に入っていったのに。
「どうした? 入らないのか?」
「おにぃ、まだ言ってないよ」
寧々子が何を望んでいるのか、すぐにわかった。
苦笑しながら寧々子の方へ向き直り、迎え入れる。
「おかえり、寧々子」
「ただいまっ!」
俺の言葉に、寧々子は笑顔で飛びついてきた。
かつて、光莉に言えなかった言葉。
それを俺は寧々子に向けて言い、優しく抱きしめるのだった。
その後、活躍したと語るムラサメの煽りに、すぐに不機嫌になりキャットファイトを繰り広げることになった。
きみら本当に煽りあうの好きだね。
その後、俺は寧々子から学園についていろんな話を聞いた。
「ワン子はまとわりついて、振り回されてる。みおみおも、寧々子とは気が合いそうだけど、勉強のことだと生意気。寧々子も、おにぃに教えてもらっているのに、寧々子よりもできているから、むむむってなる」
と言っても、ほとんど愚痴みたいな内容だったが。
まぁ、これまで俺の家と映画ボスたちという狭い世界しか知らない寧々子じゃ、そう思ってしまうのも仕方のないのかもしれない。
でも、寧々子は口ではそう言いながらも決して
「寧々子。……楽しかったか?」
「……ん。まぁ、また行っても良いかなとは思う」
ぷいっ、と横を向きながら寧々子はつぶやいた。
俺はその言葉が何よりも嬉しかった。この子が友達ができたこと。あんな映画の末路にならなかったことが、何よりも。
「え、おにぃ!? な、泣いてる。なんで!?」
「おい、牝猫。主様をいじめるでないぞ」
「ね、寧々子なにもしてないよ!? ボ、ボス! 泣き止んで! ほら、寧々子のお腹吸って良いから! ね!?」
「変な癖ついとるなこやつ……」
その後、感極まっていると寧々子がお腹をぐいぐいと俺の顔に当ててきた。前に一度猫吸いをしてしまった時に、変な癖つけてしまったようだ。ムラサメの言う通りだ。
そのことに気付いた俺は、感涙ではなく自身のアホさにまた涙を流した。
◇
からんからんと音が鳴る。
土曜日のお昼過ぎ。ピークタイムが過ぎて、客もいない時間帯に俺に《スター⭐︎ゲイザー》に訪れた。
「いらっしゃいま、せ〝ぇ〝!?」
「やぁ、凪沙」
カエルが潰れたみたいな声を出したのは、俺の後輩の凪沙だ。スタッフ用の服に清潔感のある胸当てエプロンをつけ、こちらを見て驚いている。
「せ、せせせ、先輩!? ど、どどどどどっ、あ、きゃうっ!?」
俺の登場に慌てた凪沙が、拭いていたテーブルを離れてこちらに来ようとして椅子に引っかかり、どんがらがっしゃんと、大騒ぎだ。
凪って名前についてるのに、荒ぶりまくってるなぁ。