魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます 作:異星人アリエン
《スター⭐︎ゲイザー》に訪れたが、凪沙が俺を見るなり動揺してズッコケた。
てか、怪我してないよな?
「大丈夫か? 立てる?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます。それで先輩、どうしてここに?」
俺の手を取りながら立ち上がる凪沙が、尋ねてくる。
「いや、せっかく後輩が働いているのだからその姿を見に来たんだよ」
「せめて連絡くださいよ! 心の準備がっ……!」
「ん? 一応ミッチェルさんには普通に客として来ても大丈夫なのか確認をとったが」
「あんらぁ〜! ごめんなさい、凪ちゃん! つい、伝えるの忘れちゃったわ。えへっ」
「店長!?」
うお、きっっっつ。
流石に成人男性、それもガタイの良い
「とりあえず、着替えてきなさ〜い。そのままじゃ風邪ひいちゃうわぁ」
「す、すみません。先輩、一度失礼いたします」
とりあえず、ずぶ濡れになった凪沙を奥の従業員用の部屋に送った後、店長のミッチェルが水の入ったコップを俺に差し出してくれる。
「ごめんなさいねぇ〜。凪ちゃん、普段は頼り甲斐のある良い子なんだけどもどうにも貴方相手だと、ハリケーンみたいに大嵐になっちゃってぇ。あんな姿初めて見たわぁ」
「確かにバイト先に知り合いが現れたら動揺するでしょうね。わるいことしたな」
「んん〜、それだけじゃないと思うんだけどねぇ」
《スター⭐︎ゲイザー》が『魔法少女マギアイリス』における舞台なのは紛れもない事実。
1stシーズンの《二人のオーレオール》は焔と澪の人間関係に重きを置いて、登場人物も学友や互いの家族のみ。場所も天川ストリート近辺だけと限られていたが、2ndシーズンの《スタートゥインクル》では、新たに様々なところへと活動の場を広げていく。
中でも《スター⭐︎ゲイザー》は星見ヶ丘の魔法少女が集う、重要な施設だ。更にはなんとここでは焔ちゃんと澪も魔法少女だけでなく、アルバイトとして働くことになる!
中学生を働かせて良いのかって? まぁ、それはニチアサ特有の『アルバイトの子が風邪で休んで人手がいない』→『たいへん! あたし達が助けなくちゃ!』という展開だ。だから何の問題もない、良いね?
何も解決してないように思うが、アニメなんて細かいことにつっこんでいたら、キリがないぞ!
ちなみに《セブンスター》も出てくるが、復活したアルバイトもとい凪沙たちに瞬殺された。
かわいそうに、たまたま選んだ襲撃場所が魔法少女らの巣窟だったばっかりに……登場時間1分未満である。因みに《スター⭐︎ゲイザー》が魔法少女の集まり場だとは気付かず、運が悪かったで済ましていた。
《セブンスター》最大の失策である。
「はいこれ、メニュー」
「あ、どうも」
感慨に耽っていると、すっとメニューが手渡された。
店長ではない、《スター⭐︎ゲイザー》の店員だ。凪沙と違い、店長と似たフリルの付き、やたらと背中がぱっくりと開いたメイド服を着た少女だ。
俺にメニューを渡したメイド服の少女は、そのまま俺の前の席に腰掛ける。
「えっと、何か?」
「いや、
「
じ〜っと、こちらを見てくる真顔な少女。
ぽや〜とした感じの雰囲気を纏った、蜜柑色の髪に、眠たそうなタレ目。
「そうだ名乗ってなかった。あたし、
「こちらこそ。須佐八雲だ。凪沙とは中学校で先輩後輩としての仲だったよ。あと、《魔法執行機関》に入るのは高校を卒業してからだから、まだだよ」
当然、この喫茶店で働いている少女が一般人な訳がない。
炎谷熾穂こと、
『魔法少女マギアイリス』から登場する、焔ちゃんと澪の先輩魔法少女の一人だ。名前の通り、炎を操る。そして熾穂と焔と漢字も似ているからか、二人は仲の良い先輩後輩にもなる。
前回此処に訪れた時には居なかった魔法少女だ。
「それでいつまで見てるんだい?」
「顔は悪くないと思うけど、ん〜、この腕何か運動でもやってる?」
「あぁ、剣道部を少々ね。もっとも、ほとんど幽霊部員と化してしまっているけどね」
にぎにぎと俺の手を握ってくる。初対面なのに馴れ馴れしいな。
「そういえばお腹空いてる? なら良いのがあるよ、オススメはこれ。マスター特製オムライス。今ならなんと、熾穂ちゃんがケチャップで文字を書いてあげるよ」
「へぇ。ならそれをお願いしようかな」
「ん、オムライス代700円、熾穂ちゃん特製ケチャップ文字代1000円の計1700円になります」
「まさかの有料!? しかも後者の方が高い!」
「書いてあげるとは言ったけど、無料とは一言も言ってないよー」
言ってないけど詐欺だろこれは!
しかし、吐いた言葉を撤回するのは男が廃る。俺は結局特製オムライスとケチャップ文字を注文した。
「なぁ〜にを騒いでいるのかしら? 熾穂」
そこに新たに現れる別の声。
カツン、と甲高いヒールの足音が聞こえた。
現れたのは、色々と髪が派手な『魔法少女マギアイリス』の中でも一際派手なロングの縦ロールにティアラのような髪飾りをつけた、気品を漂わせた少女。
明らかに纏う空気が違う。心なしか、周囲に流れるBGMも変わった気がする。
「エクレアちゃ〜ん、勝手に店の音楽変えないでねぇん」
本当に変えてた。
なんだこいつ。おもしれー女かよ。
冗談はさておきエクレアと呼ばれた少女は、俺の視線に気付き、笑い声をあげる。
「おーほっほ〜! わたくしの姿に見惚れたのかしら! 当然ですわよね! なにせわたくしは、吾妻エクレア! 由緒正しき吾妻家の令嬢ですもの! 溢れ出る気品に高貴さ! 見惚れるなということのほうが野暮ですわ〜!」
「いや、まだ何も言ってないんだが」
今時令嬢でもしない高笑いをしながら現れたのは、縦ロールの髪の少女。実際に見ると重量感と艶がすげぇな。この髪セットするのに毎朝どれくらい時間かけているんだ?
そして名前は言ってた通り、吾妻エクレア。
月詠家と並ぶ名家の一つ。そしてその長女であり、外国人とのハーフのエクレア。またの名は、魔法少女エクレール。雷の力を扱うことが出来る魔法少女だ。
魔法少女ファイネルと魔法少女エクレール。
この二人と魔法少女アネモスを合わせて《
もっとも、魔法少女サンシャインと魔法少女オーロラミストが出る前までの話だが!
間違いなく魔法少女アネモスと並ぶ現時点最高峰の魔法少女なのだが、私生活ではお嬢様口調でわりと愉快な人物だ。悪く言ったらポンコツなのだ。
現にほら、裾の糸がほつれている。
「語っている所申し訳ないけど、糸ほつれてるよ」
「なんですってぇ〜!? いやですわぁ〜! わたくしは常に優美で美しくないと! こんなの吾妻家のご令嬢らしくないですわ! すぐさま刺繍しないと!」
「はい、刺繍セット」
「感謝致しますわ、熾穂!」
熾穂から裁縫セットを受け取ったエクレアは、早速破れたところを刺繍しようとスカートを脱ぎはじめ、ちょちょちょ!?
「エクレアちゃ〜ん、須佐くんもいるのだからこんなところで直すのはやめてねぇん」
「はっ!? そ、そうでしたわ! 男の人いたの忘れてましたわー!?」
「ひどいな!?」
「ひぃ〜ん! 見ないでくださいまし! 打ち首に致しますわ!」
恐ろしい言葉を吐きながら、慌てて従業員室に駆け込む。
「はきゃっ」
「ちょっと、凪沙。何を扉の前で立っておりましたのよ! ぶつかってしまうところでしたわ!」
「い、いや、それは」
「わたくし中に入りますので早く出て行ってくださいまし!」
「あ、ちょっとまって……!」
そのままエクレアに押し出される形で凪沙が出てきた。
どうやら着替え終わったようだ……って!
「あ、あ、せ、先輩。や、みないでくださいぃっ……!」
メイド服を着た凪沙が、恥ずかしそうにこちらを見ていた。
しかも、やたら露出度が高く、胸元や太ももがよく見えるメイド服である。サイズが合わないのだろう、ぐいぐいと胸元やスカートを伸ばそうとしている。
何故にメイド服……!?
いや、熾穂とエクレアがメイド服だったのだから不思議ではないが、先ほどまでは普通の作業服だった凪沙が何故着ているんだ?
「ず、随分と挑戦的な格好だな。凪沙がそういうのを着るとは意外だ……」
「しょ、しょうがないじゃないですか! 着替えがこれしかなくてっ……! うぅ、店長。なんで服がこれしかないんですかっ!」
「だって凪ちゃん頑なに着てくれないじゃない。いつか機会があれば着せたいと思っていたのよ。あらぁ〜、サイズはちょっと小さかったかしらん? でも、可愛いらしいわ。ね、熾穂ちゃん?」
「うん、すっごくえっちだと思う」
「熾穂!!?」
ごめん、俺もそう思う。口に出さないけども。
「うぅ、お腹を出すのよりはマシと思うしかないですね……」
「なぎなぎ、そんなにお腹出すのいや?」
「だ、だってそれは……」
何故俺を見る!?
今ちょっと後輩を、邪な目で見ないように努力してるからやめてほしい。
「ねぇ、須佐くんも良いと思うわよねぇ?」
やべぇ、感想求められた!?
凪沙も凪沙で、潤んだ瞳でこちらを見てくるし、これは誤魔化せない。
「いや、まぁ、うん。似合っているよ。普段の凪沙のイメージとは違うけど、それはそれですごく可憐だ」
「そ、そうですか……。なら、よかったぁ……」
凪沙は恥ずかしそうにしながらも、ほっとした顔になる。やめて、安堵するように胸を手で押さえたせいで、谷間が強調されてる。見ないように必死だ。
「ほうほうほう」
「ねぇ〜?」
「ちょっとなんなんですか、ふたりともその顔は!」
ニマニマとしたふたりに凪沙がぷりぷりと怒る。
あのふたり、仲が良いな。
「それで先輩。いったいどんな要件で来たのですか?」
「いや、凪沙に会いに来ただけだけど」
「はひゅ」
何だその鳴き声。
目の前で手をかざすも、凪沙は動かない。どうやら固まってしまったようだ。
「お〜ほっほっ〜! 真打ち、ただいま戻りましたわぁ〜。……なんですの、この状況?」
戻ってきたエクレアが、今の状況に首を傾げた。
「須佐くん、会いに来たって言うのわん?」
「今までは、そっちも魔法少女としての規則やらで中々会うことが出来なかったからね。これからは気軽に会えると思ってね。とりあえず今日は、どんな風に凪沙が働いているのか。あとは、《魔法執行機関》についても気になる点が出てきたから、細々と聞いておこうかと」
それと、あわよくば《ダークドリーム》のことで
まぁ、こっちは徐々にでも良い。急いで勘付かれてもダメだ。
『ニュースです。先日、博物館にて《怪盗ミスティリア》が現れ、展示されていた宝石が盗まれたとのこと。今月に入り、既に二度目の盗難であり、警察はこの件について……』
ちらりと見ればミッチェルが天井に備え付けられたディスプレイ型テレビで、先のミスティリアとの犯行が報道されていた。
「まったく、魔法少女としての力をこのような犯罪に使うだなんて……」
思わずといった風に凪沙が呟く。どうやら再起動したようだ。
「ミスティリアは魔法少女なのか?」
怪しまれないために、素知らぬ風に尋ねる。
「そだよぉ。どこからともなく現れては消えていく。付近のカメラにもほとんど映らない。そんなことができるのは、魔法少女しかないってぇ」
「現代の怪盗だなんてもてはやされちゃうから、困っちゃうわぁ。魔法少女の力をそんな風に使われちゃうだなんて」
ミッチェルが困った風にため息を吐いた。
うむむ、わかってはいたがきちんと働いている側からもそう認識されていると思うと悲しいところがあるな。
ミスティリアも、映画では〝呪負具〟を集めたせいで《ダークドリーム》の二の舞になりかけたが、元は人を守ろうとして〝呪負具〟を集めだしたのがきっかけだし。
「……やはり魔法少女の力を悪用するのは良くないことだと思うのかい?」
「ん〜、まぁ、悪いことに力を使われたらあたしらにも風評被害が及ぶしぃ〜」
「お〜ほっほ〜! 所詮は真正面からは戦えない、姑息なコソ泥のすること。わたくしが目の前で対峙すれば、お茶の子さいさいへのかっぱですわぁ〜!」
「屁? ……臭い」
「本当にしてませんけど!? お嬢様は屁をこかないのですわ!」
なにそのアイドルはトイレ行かないと宣うみたいな言葉。
漫才をしている熾穂とエクレアを他所に、凪沙が真剣な表情をする。
「どちらにせよ、魔法少女がその力を犯罪に利用しているなど言語道断です。いずれ必ず尻尾を掴み、そして正義を執行します。熾穂、エクレア。あなたたちにも手伝ってもらいますからね」
「気が向いたら〜。日中はお昼寝してるから、呼ばないでね〜」
「わたくし、美容の為に夜の9時には寝ていますので夜中に呼び出すのはやめてくださいまし」
「日中だろうと夜だろうと! 手伝って! もらいますから! ね!」
ギャグみたいなやりとりになってるけど、実際この三人揃ったらやばいんだよな。
魔法少女アネモス、ファイネル、エクレールが揃い踏みとか映画ボスでも素足で逃げ出す戦力なんだが?
風、炎、雷の力が合わさるとか最早自然災害だろ。世界の終わりかな?
あかん、次盗みに入る時ミスティリアに、注意を促しておいた方が良いかもしれない。特に、凪沙の力とは致命的に相性が悪すぎる。
「うふふ、頼りになる娘たちねぇ」
「やりすぎないかだけ心配ですけどね。相手トラウマになりそうです」
とりあえず、俺もこの3人と同時にハチ合わないように気をつけよう……。
微笑ましい光景を見る目のミッチェルと会話しつつ、俺はニュースを見る。
『さて、次のニュースです。博物館にて、《
「は!?」
その内容に俺は思わず大声を出してしまった。
先程のニュースで流れていた《
『魔法少女マギアイリス』の映画に関してだが、時期が不明瞭なのが多いのだ。
例としてあげるなら寧々子がボスを担った『
何故なら、《トライデント》が映画内でも現れるからだ。まぁ、出番と言っても召喚した《ヤミノマ》が、即座に魔法少女カーバンクルに踏み潰されるやられ役としてだけど。
だとすると、厄介なことが一つだけある。
俺は今《セブンスター》と抗争が始まったばかり。
つまり、ここから更に《ディスナンド》側の敵が現れるのだ。
『幻影の支配者/シルエット・スター』の
え、いまから始まるの?
まだ《セブンスター》との戦いも始まったばっかりなんだが!? そもそも、その映画だと《セブンスター》は冒頭5分しか出てこなかったし、メンバーももっと少なくなってからだっただろ! 脚本、ちゃんと整合性持たせなさいよ!
波乱の予感に、俺は一人気を引き締めるのだった。