魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます   作:異星人アリエン

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第33話

 

「焔〜、お母さん。博物館のチケットが商店街の景品で当たったわぁ。一緒にいきましょう」

 

 そんなお母さんの一言から始まった、博物館鑑賞。

 

 あまり興味はなかったけど、期限があってもったいないのと友達も誘って良いからと言われたので、あたしは澪を誘ってやってきた。

 

「あ〜あ、ほんとうは八雲おにいさんとねこちゃんとも来たかったなぁ」

「仕方ないわ。向こうにも都合があるもの」

 

 ほんとうは八雲お兄さんたちも誘ったのだけれども、断られちゃった。

 

 用事があるって言われて。残念。一緒に来たかったなぁ。

 

「わぁ〜、みてみて焔! これすごく可愛らしいわぁ〜」

「おかあさん、日本人形はかわいくはないと思う」

 

 綺麗とかならわかるけど、可愛いとは思わないかなぁ。

 夜中に動き出しそうで、ちょっとこわい。

 そんなはしゃいでいるおかあさんから目を逸らすと、視界に入ってきたのは刀身と鞘が飾られている一本の日本刀。

 

「これ、日本刀だ。こんなところにも飾られてるんだ」

「なんだか難しそうな顔をしているわね、焔。……まぁ、あまり良い思い出はないですものね」

「うん……」

 

 《トライデント》のアクラーツ、キンニバベール。

 《ヤミノマ》を生み出してくる敵だったけども、二人は紫の炎によって灼かれて死んじゃった。

 

 無頼さん、そしてカーバンクル。

 

 《ダークドリーム》以降、あの二人とは会っていない。特に無頼さんは、あたしたちを庇ってひどい傷を負ってしまった。

 

 その正体も全然わかっていない。アネモスさんも『影なき死神(ペイルライダー)』で《魔法執行機関》でつけただけで、知らないみたいだし……。

 

 わかっているのは、あの日本刀だけ……は!?

 

「良いこと思いついた!」

「わ!? きゅ、急になによ?」

「えへへ〜、あとで教えてあげるね!」

 

 そのまま訝しむ澪を他所に、博物館を鑑賞していく。

 おかあさんはなんか一人で盛り上がっていたので、あたしと澪で歩き回る。

 すると、人集りがすごいところを発見した。さらに、そこじゃなんだか多くの警備員さんたちも集まっていた。

 

「なんか多くない?」

「ちょっと待ちなさい。……どうやら《怪盗》ミスティリアから予告状が届いたそうね」

「予告状?」

 

 首を傾げると、澪が説明してくれる。

 

「有名な《怪盗》です。なんでも、盗めぬ物は何もないと豪語し、音も無く現れては光と共に消える。まさにこの時代を象徴する《怪盗》よ」

「はえ〜、なんかカッコいいね!」

「おばか! 泥棒にカッコいいなどと言うのはやめなさい! 犯罪者なのよ!」

 

 普通ならこんなに厳重な警備体制だったら盗むだなんて無理だと思うけど、その怪盗さんは華麗に盗んでいくらしい。

 みおみおから、携帯で写真を見せながら教えられた。……なんで、全部カメラ目線なんだろ?

 

「あれ? もう一人いるよ?」

「そっちはあんまり意識しなくても良いわ。たまに一緒にいるらしいけど、ほとんど何もしてこないらしいですから。おそらく下っ端ね」

 

 そっかー。

 でも、確かに澪の言う通りだ。盗むのは、よくないことだ。

 

 そう思って意気込んだけど、当然こどもなあたしたちを《怪盗》に狙われている〝夜天の宝石(ノクターン・ジュエル)〟の近くに寄せてくれるはずなんてなく。

 

「あははは! それではいただいていくよ。さようなら(オ・ルヴォワール)

「まて! 逃すなぁ!」

 

 そして、気づいた時にはすでに〝夜天の宝石(ノクターン・ジュエル)〟は奪われていた。

 

「追おう! オーロラミスト!」

「そうね。サンシャイン」

 

 あたしたちは、混乱する警備員を他所に柱の陰に隠れて変身する。そのまま、追いかけようとしたのだけど。

 

「うぇ!? 消えた!?」

「違うわ、サンシャイン! あっちよ! 鏡に反射して移動しているわ!」

 

 怪盗ミスティリアは、魔法少女。本来、魔法少女の力は《ヤミノマ》に向けて使われるモノ。

 

 それを犯罪に使うだなんて許せない!

 

 そんな思いを胸に、必死になって追い縋る。だけど、ミスティリアの力によるものか、全く追いつけない。

 

「追いついた!」

「盗んだモノを返しなさい!」

「おや? 随分と可愛らしい追跡者だ。それに、腕も良い。ボクに追いつくだなんてね」

 

 それでも頑張って追いかけて、怪盗がいたのは博物館の屋上。ドームの尖塔に立っていた。

 

 手に〝夜天の宝石(ノクターン・ジュエル)〟を転がしながら、怪盗はあたしたちの方を頭のシルクハットのつばを軽く持ち上げながら見た。

 

「盗みは犯罪でしてよ! 魔法少女の力をそんなことに使うだなんてよくありません!」

「そうだよ! 捕まったら刑務所に入れられちゃうんだよ! おいしくないご飯を食べることになって、布団でぐすぐす泣いちゃうことになるんだから!」

「あぁ、なら返すよ。こんな石ころ(・・・)

「「えっ!?」」

 

 怪盗はあっさり宝石を手放し……ちょちょちょっ!?

 

 あんな高さから落ちたら割れちゃうって! 慌ててオーロラミストと一緒に走って宝石が地面に落ちる前にキャッチする。

 

「あぶなっ!? セーフ! セーフだよね!? 割れてないよね!?」

「え、えぇ、危機一髪ね……」

「態々走ってまでキャッチしてくれたけれども、それは贋物だよ。お二人さん」

「「えっ!?」」

 

 贋物!?

 こんなに綺麗なのに!?

 

「本当の〝夜天の宝石(ノクターン・ジュエル)〟なら光を通した際に反射して周辺を星々のように照らす。だけど、それは全然光を反射しない」

「……本当だわ。これは贋物よ、間違いない」

 

 美術品を語るとめちゃくちゃ話が長いオーロラミストが納得したように呟く。あ、いたい! ごめんって、足つねらないで!

 

「星見ヶ丘随一の博物館を謳いながらも飾るのは贋物とはね。実に残念だ。それには歴史も重さもそして何より、その宝石には澱み(・・)がない」

 

 澱み?

 

 不純物のこと? でも、怪盗の言葉はそんなのよりももっと別の意味の言葉に聞こえた。

 

「また会おう、新たな魔法少女。次会う時は、その才能の原石がもっと磨かれていることを願っているよ」

「うわっ!?」

「眩しいっ……!」

 

 怪盗が指を鳴らすと同時に強い光があたしたちを包み込む。

 

 再び目を開けるとそこに《怪盗》ミスティリアはいなかった。

 

 代わりにひらひらと空から舞って落ちてくる紙。思わずそれを掴む。それは予告状だった。

 

 次こそ、本物の〝夜天の宝石(ノクターン・ジュエル)〟をいただくという。

 

 《怪盗》ミスティリア。

 あたしはその存在を脳内に刻みつけた。次こそ捕まえてみせるんだから……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おかしいな、《ディスナンド》が現れなかった」

《おい! これでは単に物見雄山に来ただけではないか!》

「ボス、待ちぼうけ?」

「はーはっはぁ! 見てくれたかい? ボクの華麗な怪盗劇を! とくに去り際の一言は会心の出来だったと思うんだけど……あれ、ねぇ? 聞いてくれてる?」

 

 どこかでそんな会話をしている声があった。

 

 

 

◇◇◇

 

 キンコンカンコン鐘が鳴る。放課後。

 

 トワイライト学園であたしはあるところを目指して歩いていた。

 

 実はあの博物館であたしが思ったこと。

 

 それは、あの無頼っていう人の手掛かりが掴めるかもしれないことに気づいた。

 あの人自身の素性はわからない。でも、あの刀は違う。形も覚えている。なら、それから無頼の正体を辿れないかなって思ったんだ。

 

「恥ずかしながら、どうやらわたしもいっぱいいっぱいだったようね。こんなことに気付かないだなんて」

 

 澪にそのことを言ったら、悔しそうな顔をしながらもあなたしの考えに同意してくれた。珍しく褒めてくれたので、もっと褒めると良いよ! 

 

 そう言ったら鼻をむぎゅっとされた。いたい。

 

 そうして学院で授業を終えて、あたしたちは図書館にやってきた。ベローネ学院にだって図書館はある。でも、あたしは行ったことなかった。だって、本を読むより身体を動かす方が好きだし。

 

 最初はねこちゃんにも、どこに行くのか尋ねられた。

 どう誤魔化そうと思っていたら、行き先が図書館と聞いてすぐに興味を失っていた。た、たすかった……。

 

 学園に通ってから初めて来た図書館は、あたしが思うよりもずっと大きくて沢山の本が並べられていた。

 

「ほぁ〜、すっごい本いっぱい〜。……なんか変な匂いする」

「図書館は独特の匂いがあるものね。というか、本がいっぱいって図書館だから当たり前でしょう? 来たことなかったの?」

「うっ、だ、だって図書館って本がいっぱいで眠くなるから……」

「図書館の役割からして、本がたくさんあるのは当たり前でしょうに」

 

 呆れたようにこちらを見る澪に、バツが悪くなって目を逸らす。すると、あるものが目に入った。

 

「みてみて、魔法少女図鑑! わぁー、すごーい! こんな分厚いの初めてみたー!」

 

 新刊コーナーに、魔法少女についての図鑑があった! すぐさま手に取り、ペラペラとめくる。

 

 さっそくアネモスさんが大きく載っていた。

 

 やっぱりすごいなー! 憧れちゃう。その他にも魔法少女ファイネルや魔法少女エクレールとか有名どころがたくさん載ってる! あたしも魔法少女になったんだからいつか会えるかな?

 

「つぎはぁ〜……ぷぇっ!!?」

「なによ、潰れたカエルみたいな鳴き声をして。ってあら、これは」

 

 ワクワクして捲ると、あたしが写っていた。

 

 サンシャインとして変身していた時のものだ。い、いつの間に撮ったの!? というか、いつの!? お腹丸見え! や、やだ! 本ってことはこれ全国の人たちに見られてるってことだよね! あたしのお腹が! 

 

「焔、あなた目的忘れてるでしょ?」

「はっ!? い、いやいや、そんなことないよ!?」

 

 ジト目で見てくる澪に思いっきり首を振る。

 だからそんな目で見ないで!

 

「「「しぃ〜」」」

「「ご、ごめんなさいっ」」

 

 騒いでたら周囲の人たちに、静かにするようにジェスチャーされた。

 

 なんだか気恥ずかしくなって、あたしたちは真面目に探し始めた。幸い、きちんと整頓されていたから背表紙のラベルを見るだけで、日本刀についての書物だってわかった。

 

 問題は、選んだ本を開いてからだった。

 

「ぜ、全然わかんなーい!」

 

 刀ってこんなに種類があったの!?

 名前も漢字ばっかりだし、刃の形や反り具合によって項目がわかれるからちんぷんかんぷん! そもそも、あたし歴史の成績2だからこーゆーのすごく苦手!

 

「あの刀身の刃紋からしてかなり古い代物じゃないかと思うけども……だめね、同じ刃紋がない。これじゃ皆目見当がつかないわ」

「これむりだよぉ〜。うぅ、良いアイディアだと思ったのになぁ」

「調査とは地道なものよ。千里の道も一歩から。というわけで、焔。次はこの年代の本持ってきてちょうだい」

「えぇ!? なんであたしが!?」

「あら、ならこれを読み解いてこっちのメモに記していってくれるかしら?」

「…………いってきます」

 

 すごすごと、あたしは本を探しに行く。

 

「うひゃ〜、本、本、本ばっかりだぁ。タイトル見てるだけで眠くなりそう」

 

 棚いっぱいに本ばかり。難しい漢字もたくさんだ。

 

 この中から澪に頼まれた本をさがすの? もういやになってきちゃった……。

 

「どうも。なにか、お探しでしょうか?」

「ひゃい!」

 

 か細い声に、声をかけられ思わず素っ頓狂な悲鳴をあげちゃう。

 

「あの、図書館ではお静かに……」

「ご、ごめんなさい!」

 

 あたしに話しかけて来たのは、図書委員の証の帽子を被った女子生徒だった。

 

 ネクタイの色からして先輩さん。トワイライト学園は校舎で中等部と高等部が分けられているけど公共の場ならこうして境なく、学園生全員が集まることが出来る。

 

「それで何を探しているのでしょうか?」

「えっと、その〜……じ、実は本を探していて。日本刀について詳しく載っている本なんですけど」

「それはまた、範囲が広いですね」

「そうなの! 背表紙だけ見ても漢字ばっかりで訳わかんなくて。あ、いや、読んでも結局わからないんだけど」

「そうですか……。ふむ、少々お待ちください」

 

「お待たせしました」

 

 図書委員の人が戻って来る。

 そう言って渡されたのは一冊の本。タイトルは……。

 

「え? 名刀図鑑?」

 

 日本刀の作成方法じゃなくて名刀について記されていた図鑑だった。

 

「あなたのお話から、とある特定の刃紋を探しているのはわかりました。でも、初めからそれじゃとっかかりが掴めない。まずは時代を象徴した物から知ることで、それが使われていた理由や技術を推察することからはじめましょう。そうすれば、もしかしたら似た物が見つかるかもしれません」

「はぇ〜。象徴ってアネモスさんみたいに?」

「アネモス。魔法少女アネモスだね。確かに、彼女は今の魔法少女の中で最も強い魔法少女です。彼女を知らずして、魔法少女を知ることはできません」

 

 ふむふむと、先輩さんは頷く。

 心なしか、鼻息も荒い。語るの好きなのかな。

 

「しらみつぶしにあたるよりは、まずは有名所を知ってそこから数珠繋ぎに調べていく方が良いかと思います。その過程で、面白い本にも出会えるかもしれません」

「た、たしかに。これならあたしも涎を垂らして寝ずに済みそう!」

「本が汚れるから寝るのはやめて欲しいです」

 

 自分でもなんとかできそうだ。ふぉー! やる気でてきたー!

 

「ありがとうございました! えっと……」

「あ、お名前を名乗っていませんでしたね」

 

 そう言って目の前の先輩は、佇まいを直す。

 

ボク(・・)は、四鏡(しきょう) 魅夜(みや)といいます。以後、お見知り置きを」

 

 そう言って、前髪のせいでわからなかったけど顔の良い女生徒さんは笑いかけてきた。

 

 

 

 

 

「あ、あと尋ねたいことがあるんですけど! 《怪盗》ミスティリアについて載ってる本とかないですか?」

「ひゃい!!?」

 

 ついでにもう一冊頼んだら、ひどく動揺して変な声をあげられた。

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