魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます 作:異星人アリエン
再び空が赤くなる。
《ディスナンド》の技術、人々を閉じ込める
「さぁさぁさぁ! 暴れなさい《ヤミノマ》! 人間どもを襲って負のエネルギーを集めるのよ!」
「や、やるのダス! 必ず負のエネルギーを集めるのダス!」
現れたのは、《セブンスター》。赤い肌の少女メスレスと豚のような顔のフェック。
これまで姿形も現さなかった《セブンスター》の両者は、星見ヶ丘の噴水公園に現れると、すぐさま時計を《ヤミノマ》へと変貌させ周囲を襲い始めた。人々は逃げ惑った。
「やるのよ! ぎったんぎったんのぼっこぼこよ! あははは!」
《ヤミヤッミー!》
「ちょっと待ちなさい!」
「それ以上のおーぼーはゆるさないよ!」
「きゃはっ、来たわね! 魔法少女! 絶対に倒してやるんだから!」
そこに現れる魔法少女サンシャインとオーロラミスト。
戦意を漲らせるメスレスと違い、フェックは難しそうな顔をする。
「ゆ、油断しちゃだめダス。昨日から、メラックとも連絡が取れないダス。もしかしたら、やられたのかも……」
「はん! あの根暗がそんなわけないでしょ! きっとまた悪巧みしているだけよ、そうに決まっているんだから! それよりも、ドン・ドゥーベンはほんとうに臆病ね! ここであたしがあのダークネスさまを倒した魔法少女を倒して、力を見せつけてあげるわ!」
「か、帰ったら独断で来たことを怒られるダス。オ、オラは無理やり連れてこられただけダス……」
「うっさいわよ! 勝てば良いのよ、勝てば! とにかく、倒してやるんだからー!」
かくして戦闘を繰り広げる《セブンスター》と魔法少女の両者。
しかし、メスレスの意気込みも虚しく、《ヤミノマ》はサンシャインとオーロラミストの連携の前に敗れてしまう。
「ま、負けたダス! 引くしかないダス!」
「なんで勝てないのよ! むきー!」
「待ちなさい!」
「逃げるなんてずるいぞー!」
《ヤミノマ》が敗れ、退散していく《セブンスター》。
サンシャインとオーロラミストはすぐさま攻撃を放つも、黒いモヤが晴れた時には二人の姿はなかった。
「むむむ、逃げられちゃった……」
「仕方ないわ。とにかく今は、《ヤミノマ》の被害を防げたことだけを喜びましょう」
そう言って気を緩める二人。そこに新たな闖入者が現れる。
「これは……」
「む、もう終わり?」
「新手っ!?」
「いや、ちがうよ! あの人は……!」
日本刀を携え、鎧武者のような装いをした男。そして、そんな彼に寄り添うようにそばにいる二股に分かれた尻尾とケモ耳のある魔法少女。
「無頼……! それに、カーバンクル……!」
オーロラミストの顔が強張る。
《ダークドリーム》以降、足取りのつかめなかった2人の登場に空気が張り詰めた。
「む、むぎぎぎぎぎぃぃぃ……!」
……
◇
大規模な
そこで見たのはすでに決着をつけたサンシャインとオーロラミストだった。
「……驚いた。《ヤミノマ》どころか、その召喚主まで既に撃退したとは」
「ボス。もうカブトムシのふたりだから、あまり驚かないよ」
思った以上に早い手筈に、驚く。
流石は『魔法少女マギアイリス』《二人のオーレオール》の主人公たち。歴代屈指の成長速度と言われるだけはある。
寧々子も、《天川事変》の一件から魔法少女として一目置いているらしい。
《むぅ、ワガハイの出番がないではないか!》
不満なのはムラサメだけのようだ。
……いや、ムラサメだけじゃないな。オレはじっと見る。
「やはり生きてらっしゃったのね。……あの、サンシャイン?」
「ぐぎぎぎぎぃ……!」
焔ちゃん、なにその顔。
複雑さがねるねるねるねくらい入り混じった、乙女のしちゃいけない顔。今まで表情豊かな焔ちゃんを見てきたが、こんな顔を見たことないぞ。どういう心境だ?
《なんじゃあれ。奴は変顔グランプリの優勝でも目指しとるのか?》
そんなことないと思うけど。
俺が見ていることに気付いたのか、焔ちゃんはこっちを見る。顔は相変わらず歪んでいるが。
「ひ、久しぶりです。生きていてよかったです……!」
「よかったと思ってくれている顔には見えないのだが」
喉を奥から絞り出したような声に、流石に引く。なんなら、ちょっとこわい。
なんだか妙な空気になってきたな。咳払いして、空気を戻す。
「この短期間で《セブンスター》の一角を落とすとは。やはり、ダークネスを退治したという力は健在か」
「? ボス、ダークネスは生きてるって前に言ってなかった?」
やべ、寧々子から指摘が入った。
口封じしてなかったのだから、当然の疑問か。そしてその言葉に目敏く澪が反応する。
「あなたもダークネスが健在だと知っているのですか? でしたら、教えてください。《ディスナンド》についてどこまで……ちょっと、サンシャイン。いつまでその顔をしているのよ」
「うぐぐ、だ、だってぇ〜」
何故か焔ちゃんの様子がおかしいが、澪からの問いに答えるわけにもいかないな。
今はとにかくこの場をどう切り抜けようかと思考を巡らせていると。
「オ〜ホッホッ〜!!!」
響き渡る高笑い。
いかにもな高笑いを伴って現れたのは、新たな二人の魔法少女。二人は近くの滑り台の上でポーズを取る。
「いなびく雷光、悪しき相手に華麗な鉄槌を! 魔法少女エクレールですわ!」
「燃え上がる炎、みんなの気分をぽかぽかに〜。魔法少女ファイネル〜」
サンシャインやオーロラミストよりも洗練され、手慣れポーズを取る二人組。《ビックスリー》と名高い魔法少女、エクレールとファイネルだった。
その姿とポーズは非常にカッコいい。かっこいいのだが。
二人が立っているのは、子ども用滑り台の上だった。なんなら、ちょっと狭そうにしていた。
……なんか、滑り台の上ってのが絶妙に締まらないな。ジャングルジムみたいな、もっと高い遊具があれば良かったのだろうけど、昨今の公園は遊具に厳しいのだ。
エクレールは、元々あった縦ロールが更に増えて派手な金色に、これまた豪華絢爛なフリルの多い衣装へ。ファイネルは、相変わらずの眠たげな瞳にのんびりした声だったが、その服装は対照的に焔ちゃん以上の露出だった。
「魔法少女エクレールに魔法少女ファイネル!? わぁー!!! 初めて見た!!! ど、どうしようサインもらえるかな!?」
「あの、サンシャイン。明らかにそんな雰囲気じゃない気がするわ。あと、揺らすのやめて」
一方で焔ちゃんの方は大興奮。隣の澪の肩をもってブンブンと揺らす。
アネモスこと凪沙とは知り合いなのに、この二人とはまだ会ったことはなかったのか。意外だ。
「みーつけましてよ! 『
「100年……つまり、エクレールは若作りババァ」
「言葉のあやでしょう!!? わたくしはピッチピチの16歳でしてよ!」
来て早々漫才を繰り広げる二人。
うん、見た目は結構変わっているけども、あれを見るとそれぞれが吾妻エクレアと炎谷熾穂だというのがよくわかる。アニメでは、魔法少女に変身すると途端に親族だろうと正体に気付けなくなるが、口調や関係性までは誤魔化せないようだ。
二人は揉めているし、めんどくさい雰囲気が漂っている。今のうちに去るとしよう。
「ちょっと! 勝手に逃げようとしないでくださいまし!」
「こら〜、だめだよ〜」
ちっ、気付かれた。
そのまま俺を囲むようにエクレールとファイネルが着地する。寧々子も臨戦態勢になった。
俺は努めて冷静に言葉を紡ぐ。
「《ヤミノマ》は既に倒された。いずれ
「それには及びませんわ! むしろ、わたくしの勇姿を見てもらうために集まって欲しいくらいでしてよ!」
「随分と目立ちたがり屋なことだ」
ミスティリアみたいだな。
自信満々なエクレアに対して、熾穂が尋ねてくる。
「あのアネモスを撃退したってほんとう〜? すごいよね〜、どうだった? アネモス泣いちゃってた?」
「いや、彼女は強かったよ。あのまま続ければ、こちらとてタダですまなかっただろう」
「おぉ〜、高評価だね〜。でもね〜、それはこっちも同じなの〜、アネモスを撃退したあなたを、あたしたちは侮らないよ。ねぇ、エクレール?」
「えぇ、その通りでしてよ!」
エクレールとファイネルの表情からは、油断が微塵も感じられない。
むぅ、さすがに《ビックスリー》に油断なく戦意を向けられるとこちらとしても加減が厳しくなるのだが……。
その時、不意にエクレールが俺から視線を逸らした。
「ですが! で、す、が! 実に不本意ですが! それよりも優先すべきことがありますわ」
「……え、なに」
視線の先には、寧々子。
エクレールはずびしっ、と人差し指を突き出す。
「登録のない魔法少女! その子の件について、物申しますわ! あなたたち、どういう関係でして!」
「ん、ボスはかっこよくて、やさしくって、つよつよだよ。毎日ごはんも用意してくれるし、お布団だって準備してくれる。寝れない時は子守唄だってしてくれるし、最近はいつもお膝の上で頭撫でてくれるよ」
「すごく聞き覚えがある言葉だね」
「《天川事変》の時にも聞いた言葉ね」
寧々子の言葉に、焔ちゃんと澪が平然と頷く。
やめて、寧々子。すごいどや顔でむふー、としているけど、それ俺の普段の行動を赤裸々にバラしてるだけだから! 普通に恥ずかしいから!
しかも無頼は詳細不明な人物としての立ち位置をしているのに、可愛がっているのをバラされたら神秘性が薄れてしまう!
《くくく……言われておるぞ、主様》
ムラサメ! 笑うんじゃないよ!
「思ったよりもすごい言葉が出てきたね〜。どうするのエクレール?」
「想像以上に可愛がられていて、わたくしちょっと引いてますわ……」
「でも、悪い人ではなさそうだよ? それでもあの
指令?
あの二人にか? 魔法少女に指示を出すなんて、それこそ《魔法執行機関》しかあり得ないが……。
「当然ですわ! 『
「むっ、やる気? やるのなら、必殺カーバンクルパンチをお見舞いするよ。しゅしゅしゅっ」
「あなたがおとなしくわたくしたちに着いてきて、ちゃんと登録してくれたら、済むことですわよ!」
「それはやだ」
寧々子はやる気だが、その言葉に。
俺は誰がこの二人に指示をしたのかを悟った。
「そっかぁ、ならやるしかないねぇ。気が進まない〜。けど、ごめんねぇ。そこの男の人と一緒で野放しにはできないの〜。一緒に来てくれるなら、話が早いんだけども」
「それは断る」
「だよねぇ」
俺の言葉に、へにゃりと困った顔をするファイネル。一方で待っていたとばかりに、エクレールが構える。
「ならば実力行使ですわ! お二方揃ってお縄についてもらいますわ〜!」
「え、え!? た、戦うの!?」
「魔法少女同士が争うだなんて……!」
大層な言葉を並べてるが結局凪沙と言っていることは変わらないか。元々、凪沙も俺を捕えようと躍起になっていたしな。
戦闘態勢をとるエクレールとファイネルに、焔ちゃんと澪が驚く。ごめんね、巻き込んじゃって。
……だが。
エクレールとファイネルの言葉的に、どちらかというと俺ではなく、寧々子の方を優先している。
あの二人と《スター⭐︎ゲイザー》で会ったときは、そんな素ぶりは見せていなかった。当たり前だが、魔法少女にそんな指示をするような人物は《魔法執行機関》でしかない。
かねてから、俺の存在は徹底してメディアに漏れていなかった。
それは理解できる。
だが、寧々子はそうじゃない。
寧々子は魔法少女だ。だから、別に未知の魔法少女として放映されていたって不思議ではないのだ。
つまり、それは寧々子がこのまま魔法少女としてメディアに露出していくと困る人物がいるということ。そして、その人物は魔法少女に関わりが深い人物だということ。
「なるほど」
《主様?》
「ボス?」
こちらを見るムラサメと寧々子にも目を向けず、俺は一人動揺な笑みを浮かべた。
そうかそうか。
遂に尻尾を出してくれたのか。
《魔法執行機関》の