魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます 作:異星人アリエン
黒い炎は、囂々と燃え上がる。
ただの炎じゃない。色だけじゃなく、そう感じる何かがある。
「我が力は、黒い炎を操る。負のエネルギーが集まり、昇華されたこの力。ちっぽけな貴様ら如きのミラクルパワーで太刀打ちできるとでも?」
「確かに……、それに当たればタダじゃすまないのは確かでしょうね。ですが、わたしたちはそれ以上の力を知っている」
「うん! ダークネス……あいつの方が、もっとすごかった」
その言葉に、ドン・ドゥーベンはぴくり、と反応した。
「そしてあなたたちのボスを、わたしたちが倒した。……手助けはありましたけれども。それを知りませんの?」
「あぁ、知っているとも。〝マギアイリス・クェーサー〟と言うそうだな?」
澪の言葉を、ドン・ドゥーベンは鼻で笑った。
知られてるの……!?
「ミザリィーンの奴から聞いているぞ。ダークネス様を打ち破った貴様らの必殺技〝マギアイリス・クェーサー〟。随分と有名らしいな? ネット上でよく語られていたと聞いている。……そして、その力は二人が手を合わせねば使えんそうだな?」
《ダークドリーム》をはじめに、《ヤミノマ》対峙にも使ったことがある。そして、その光の奔流は
「むぐぐ、に、人気者って辛いんだね。あたしたちのこと、よく知られちゃってる」
「魔法少女としての露出が、仇となりましたね。ですが、サンシャイン。よく考えて。わたしたちには、先にすべきことがある」
うん、その通りだ。
とにかく放送室にいるであろう《セブンスター》も出し抜いて、船と化した《ヤミノマ》そのものを倒さないと。アネモスさんたちも、乗客を守るために奮戦している。あたしたちがやらないと。
「遺言はそれで良いか? では死ぬが良い!」
また、黒い炎が降り注いでくる。
ドン・ドゥーベンは煙突にいるのを生かして頭上からとにかく攻撃をしてきた。しかも、あたしとオーロラミストを合流させないように、黒い炎を撃ち込んでくる。
「ぐぬぬぅ〜! や、やりつらい……!」
「えぇ。あれだけ言っても〝マギアイリス・クェーサー〟を警戒しているのでしょうね。だったら、サンシャイン。今から──」
「うん! わかったよ!」
オーロラミストの語る策にあたしは頷いた。
あたしたちはドン・ドゥーベンの攻撃をかわしつつ強引に合流する。手を繋いで、ドン・ドゥーベンを見据える。
「ふんっ、使うつもりか? だが、溜めが必要なのはわかっている。その隙に二人もろとも焼き尽くしてくれるッ!」
両手を頭上に掲げて、より大きな炎をドン・ドゥーベンが集めている。そう、
「今よ!」
「うん!」
「なにっ……!?」
「「〝ダブル・シューティング・スター〟!」」
その隙にあたしたちは手を離し、すぐに跳躍した。
そのままの勢いで、ドン・ドゥーベンが立っていた煙突に蹴りを加えた。その衝撃は容易く足跡を残して、煙突を凹ませる。ドン・ドゥーベンも立っていられず、舌打ちして
「いまよ! 急ぎましょう!」
「わかった! うぅ、あとで怒られないかなぁ」
「大丈夫よ。理解を示してくれるはずだわ」
オーロラミストの作戦は、〝マギアイリス・クェーサー〟を警戒しているならそれを囮として使い、ドン・ドゥーベンを煙突の上から引き摺り落とすことだった。
あたしたちは、ドン・ドゥーベンが動けない隙に強引に
「それをさせると思っているのか? フェック!」
「わかっているダス! いくダス、《ヤミノマ》たち!」
《ヤミミ〜ッッッ!!!》
フェックによってまたも《ヤミノマ》たちが召喚される。その数は、《天川事変》の時の比じゃない。
一体一体は比べるべくもないくらい弱いけど、数が多すぎる。おまけにここは
あたしたちが一匹を倒せば、その隙に2匹が迫ってくる。倍々ゲームだ。フェックはまだまだ《ヤミノマ》を召喚してくる。
「この数、流石にこれは……!」
「諦めちゃだめだよ! あたしたちがなんとかしないと、この船の人たちが危ない……!」
だが、多勢に無勢。
倒しても倒しても湧いてくる《ヤミノマ》。更にそこに、ドン・ドゥーベンが黒い炎を大きく溜めているのが見えた。
《ヤミノマ》ごと焼き払うつもりだ!?
大変なのに、動けない。これやばい……!
「〝羅刹廻り〟」
《ヤミノマァッ!!?》
「な、なんダスか!!?」
あたしたちを囲んでいた《ヤミノマ》たちが一斉に切り裂かれた。そして紫の炎で出来た道の中央を走る、一人の影。向かう先は、ドン・ドゥーベンのところ。
「何っ!? 貴様はッ……!」
「〝鬼祓門〟」
咄嗟に腕に黒い炎を纏わせ、両手を交差させることでドン・ドゥーベンは防ぐ。しかし、勢いは殺しきれずそのままプールへと水柱をあげながら吹き飛ばされた。
「咄嗟に防いだか。流石だな」
「あなたは……!」
「ど、どうしてここに!!?」
無頼。
なんどもあたしたちの前に現れては《ディスナンド》を倒す、謎の人物が現れて助けてくれた。
◇◇◇
ドン・ドゥーベンを吹き飛ばした俺だが、舌打ちをする。手応えが浅い、咄嗟に黒い炎を纏った両腕でガードされたからだ。とはいえ、成果はある。
「どうだ、ムラサメ。奴の黒い炎、喰えるか?」
《うぇぇ、く、くどいのう。じゃが、問題はないぞ! この程度であれば喰らえる!》
若干嫌そうだったムラサメだが、すぐに力強い返事が返ってきた。
よし、と頷く。ドン・ドゥーベンの黒い炎は、当たるだけで対象に火傷と負のエネルギーを強制的に発生させる。《スター⭐︎トゥインクル》では、これによって《ビックスリー》の三人が魔法少女としての姿を維持できなくなり、強制的に元の姿に戻されたのだ。
だが、ムラサメの返答を聞く限り問題はなさそうだ。
一方で困惑しているのは、もちろん焔ちゃんと澪だ。
「ぶ、無頼さんどうしてここに?」
「船に乗っていたのですか?」
「なぜ、どうして。そんなことは今どうでもいい。違うか?」
俺の言葉に、焔ちゃんと澪はすぐに気を引き締めた。さすがだ。思わず笑みを浮かべそうになるのを、なんとか堪える。
「この豪華客船を乗っ取った《ヤミノマ》の本体は、
「え?」
「放送室なんじゃ……」
「なんで知ってるダスか!!? ……あ、しまったダスゥ!?」
二人は放送室だと思っていたようだ。まぁ、俺も最初はそうだと思っていたからわかる。ムラサメの言葉がなければ、そっちに向かっていただろう。
疑問に思った焔ちゃんと澪だが、フェックの反応から真実だと悟ったようだ。
「此処は俺が引き受けよう。いけ、魔法少女たち!」
「わかりました!」
「すみません、お願いします!」
俺の隣を通り抜けていく二人。
しかし、敵はドン・ドゥーベンだけじゃない。
「い、いかせないダス! ここは通行止め……あばダス!!?」
「じゃま」
「あなたは……!」
「カーバンクル!」
立ち塞がろうとしたフェックを、横から寧々子が〝つよつよパンチ〟で殴り飛ばした。そのままちらり、と二人を見る。
「いって。あいつは、カーバンクルが相手する」
「ありがとう!」
「助かりました!」
「……ボスの頼みだから、やってるだけ。また、ボスの邪魔をすることがあれば倒すよ」
「それでも感謝いたします。どうかあなたもお気をつけて」
「またあとでね!」
やがて操舵室へと向かっていく二人。その姿を見送る寧々子。
「……」
「どうした?」
「なんか……胸がムズムズする」
寧々子は顔を赤らめ、二股の尻尾を落ち着かなさそうに揺らしていた。
どうやら、寧々子も情緒がかなり成長しているようだ。あの時は二人と戦ってしまったが、今真っ直ぐにお礼を言われて照れ臭いようだ。その光景に微笑ましい気持ちになる。
しかし、今は感慨に耽っている暇はあいにくとない。
「それで? あっさりと見逃すだなんて、らしくないじゃないか?」
「あの程度の魔法少女なんぞ、見逃しても問題はない。操舵室には、ミザリィーンがいる。奴らが突破することは不可能だ。自分が迎え撃つと放送室で息巻いていたメスレスは、貧乏くじを引いたようだがな」
ドン・ドゥーベンはプールから上がってきた。
水が重かったのか、マントをその場に落とし睨みつけてくる。
「貴様らに勝利なんぞ訪れない。勝つつもりだったのだろうが、残念だったな」
「へぇ? じゃあ、その言葉そっくりそのまま返してやるよ。お前、なんでまだ勝てると前提で語っているんだ?」
「ほざくがいい。これはな、確信だ。いま、この場で貴様を殺すというのな!」
こうして《セブンスター》のリーダー、ドン・ドゥーベンとの戦いが始まった。
「油断しちゃだめダス! そいつはアルルカとリ・オートを殺した奴ダス! オラも……!」
「黙っていろフェック! コイツはオレが殺す……! 《セブンスター》の栄えあるデビューを台無しにしてくれたコイツだけはな!」
意気込むドン・ドゥーベンだがそれは俺も同じだ。
ドン・ドゥーベン。
《セブンスター》のリーダーである彼は、ある特徴があった。《スター⭐︎トゥインクル》において、彼は《セブンスター》のリーダーとしてたびたび焔ちゃんと澪の前に現れた。
《セブンスター》が壊滅し、彼が最後の一人となった後も、最大の敵として二人の前に立ち塞がり続けた。
そして、何より語る上で外せないことがある。
そう、ダークネスの
つまり、2ndシーズン《スター⭐︎トゥインクル》で、ダークネスは奴の肉体を憑代として復活する。奴をこの場で倒してしまえば、ダークネスが今後どんな形で復活するのか、完全に読めなくなる。
「そんなことは、もはや考慮に値しない」
もう既に原作は崩壊した。
アルヴィオスが《セブンスター》を動かして豪華客船を乗っ取ったように、人間関係や勢力図はともかく、奴らがもはや原作通りに動かないのは自明の理。
そもそも、ムラサメの焔を受けたダークネスが、ほんとうにドン・ドゥーベンを憑代にするのかという疑問もある。
ならば、原作で起きるはずだった未来に縋るより、目の前で起きる被害を防ぐ。
俺の中途半端な覚悟が、ダークネスを取り逃がした。焔ちゃんと澪を、危険に晒した。ならば、その禍根はここで断つ。
傷つくのは、
「決着をつけよう。今日が貴様の命日だ!」
《フハハハハァッ! ゆくぞぉ、主様ァッ!》
「ん、カーバンクルもがんばるよ」
「ほっほっほ、さてお手並み拝見としましょうカ。まぁ、どちらが勝とうとも問題は無いのですがネェ。