魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます 作:異星人アリエン
数日後。
喫茶店、《スター⭐︎ゲイザー》にて。
「ぜんっぜん、あの二人と会いませんわぁ〜!!!」
《スター⭐︎ゲイザー》に大声を響かせるのはエクレア。
いつものようにハンカチを噛み締めながら、「きぃ〜!」と地団駄を踏んで悔しがる。名家のお嬢様とは思えない姿だ。
「いや、ほんとうにねぇ〜。これでも、結構巡回だってしてるのに全く会わないねぇ」
「天照さんと月詠さんだけが、二回会えてますがそれっきりですね。こればかりは運ですから仕方ないとはいえ、歯痒いものがあります」
だら〜ん、と机に突っ伏している熾穂と、真面目な表情で考えている凪沙。
《双星の魔女》編において、《ビックスリー》は何というか……出番に恵まれなかった。まぁ、明らかにセフィリアとクリフィアが、サンシャインとオーロラミストの対になるように作られた敵だったから仕方ないんだけど。
正直、俺も《ビックスリー》なら《双星の魔女》に勝てるとは思っている。
とはいえ、『魔法少女マギアイリス』では《
ちなみに、理由も特に明かされてない。
運が悪かっただけである。
設定がまだ曖昧だったアニメ特有の雑なところが出てるな。あるいは、うまくどちらの株を下げない戦闘シーンを描けなかったのか。
「でもぉ、しばらくは出てこないと思うわねぇん。……なにせ、吐血したっていうし。それだけ身体に負担がかかっているのならぁん、すぐには回復しないはずよぉん」
そこにやってくる
そう、俺もだがここにいるメンバーは焔ちゃんと澪が戦闘した際に、セフィリアとクリフィアが吐血したということを聞いている。
この話を聞いた時、焔ちゃんと澪はかなり動揺していたから、無論メンタルケアはしておいた。
そもそも俺はセフィリアとクリフィアが吐血した、ということには驚きはない。
何せ、セフィリアとクリフィアは
その負荷を補うため、セフィリアはミラクルパワーを、クリフィアは負のエネルギーを吸収し続けなければならない。いわば、自転車操業だ。当然、無理が生じる。
寧々子はまだ運が良い。
実験の最中に、正当に魔法少女として目覚めたのだから。
「でもぉん、これまでの情報からあの二人の能力はかなり割れてきたわねぇん。あの二人、やっぱりどう見てもミラクルパワーと負のエネルギーを吸収してるわぁん。実際、襲われた魔法少女は数日間、魔法少女になれないしぃん。《ヤミノマ》を吸収する様子を目撃されているからねぇん」
おぉ、そこに気付いたか。
ようやくあの二人の能力に《スター⭐︎ゲイザー》の面々が気づき始めたのだが……、なんだろう。なんか雰囲気がピリッとした風になる。
「それってさぁ」
「もしかしなくとも、ですわね」
「えぇ。あの二人は、無頼と関わりがある可能性が高いでしょう」
…………おっとぉ?
非常に雲行きが怪しくなってきたぞ。
「無頼? 誰だい、それは?」
俺は動揺を押し殺し、問いかける。
「そうでした。先輩は知りませんよね。これは極秘なのですが……、実は男性でありながら《ディスナンド》に対して力の通じる人物が存在するのです」
「男で!? そんなことが可能なのか!?」
「可能じゃないから、こうして議題にあがっているのですわよ! 少しは考えてくださいまし!」
「しかも、複数の魔法少女があっち側に着いているんだよねぇ〜。有名どころだと、《怪盗》のミスティリアとかだねぇ」
「あとは未登録の魔法少女が一名。獣耳の生えた娘です。こっちも手がかりは何も掴めていません」
「そんなことがあっただなんてな……。全く知らなかったよ」
いや、きっつ。きついって!
知っていながら、知らない反応するのだいぶキツいんだが。
しかも、張本人俺だし!
「そうだ! 先輩、確か剣道部でしたよね? 戦っている映像を見せれば、何かしら無頼の流派とか分かりますか?」
「さぁ、どうだろう。あまり当てにならないと思うな。そもそも、剣道と刀じゃ、求められる技術が違うし」
これは本当である。
そもそも俺の戦闘は我流なので、仮に調べたところで流派とかあるはずがない。
でも、あんまりまじまじ映像とかは見ないで欲しい。
ムラサメのおかげで、無頼の時は雰囲気も何もかも違うから気付かれることはないが、改めて映像を見られるとなると、なんだか気恥ずかしい。
理屈的には、凪沙たちが魔法少女になった際に、家族や友達であろうとも気付けないのと同じだ。認識阻害と言っても良いだろう。なので、無頼=俺だとは気付かないだろうが、一緒に映像を見る羽目になるのは嫌だ。
「んぅ、無頼の手掛かりがないのは残念だけどぉ〜。やっぱり、関わりはあると思うんだよねぇ」
「まずこれまでのセフィリアとクリフィアの戦闘から予想できるのは、彼女たちが魔法少女のミラクルパワーを何らかの方法で吸いあげているということですわね」
熾穂とエクレアが会話に混ざる。
凪沙もまた、二人の言葉を聞いて頷いた。
「たまたまじゃないか?」
「いえ、これはかなり無頼の能力と酷似しています。彼もまた、紫の炎で、負のエネルギーを吸収した《ヤミノマ》を焼き尽くし、その力を吸収する。さらには白い鞘で、魔法少女の力を封じてきます。後者は、方法こそ違いますが、結果として魔法少女から力を奪い、変身不能にする点では酷似しています」
「……そ、そうだね。話を聞くと、確かに俺も無頼が関わっている可能性があると思うよ……」
「なんか声震えてない〜?」
なんだこの羞恥プレイは!!?
なんで俺、自分で自分のことを疑ったり、擁護してるんだよ! おかしいだろ!
「……ですが、一点考慮すべき点があるとしたら、無頼は一般人を襲うような行動はしていないということです。あの二人とは違う」
「そこですわね。繋がりがあるのなら、無頼がセフィリアとクリフィアの二人と一度も同時に現れていないのは妙ですわ」
「それはそうだね! うん、やっぱり関係ないんじゃないかな!?」
「なんか急にすっごく元気になったねぇ〜?」
だって疑いを晴らしたいのだから仕方ないだろう!
じと〜、と見てきた熾穂だったが、何かを思い出したかのように口を開く。
「そういえば、あの面白かった彼は来ないの〜?」
「嶺のことか? 来ないと思うよ。嶺は……なんか調べているようだったしな。学校で会った時にも、目の下にうっすら隈までできていたよ」
「調べ事?」
「なんだろうな。確か、この星見ヶ丘の地図だったと思う」
「地図ぅ? そんなものを調べて何になりますの?」
エクレアが疑問に思うが、それは俺も同じだ。
俺も嶺に手伝おうかと思ったが、断られた。まだ仮説に過ぎないから、と。やたらと地図を睨んで、いろんなところに丸をしていたのを覚えている。
「結局、またもセフィリアとクリフィアが現れるのを待つしかないわねぇん」
最後にミッチェルさんが呟いた言葉が全てだった。
そんな会話をした帰り道。
オレンジ色に染まった夕暮れの道を歩きながら、今日の晩飯は何にするか考えていた時のこと。
「ねぇねぇ、素敵な兄さん? わたしたちと遊ばない?」
「なぁなぁ、男前な兄ちゃん? おれたちと戯れねぇか?」
にんまりと笑う白い髪の少女と、ニヤついた黒い髪の少女に、そう話しかけられた。
拝啓、光莉へ。
お兄ちゃん初めて年下の少女にナンパされました。