魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます 作:火星人マーズ
はぁ〜……。
クソデカため息を吐く。気分はさながらダークブルー。
オレはアクラーツを倒すべく、ムラサメを携えて二人の前に姿を現した。ムラサメは、《ヤミノマ》を倒すことができる。
〝妖刀ムラサメ〟の名の通り、人の怨念の集合体である彼女が負のエネルギーの塊とも言える《ヤミノマ》を
そうしてアクラーツを倒したわけだが、その光景はいささか少女らには刺激が強かったらしい。
慕ってくれていた子が、俺とは知らずとも、怯えと敵意を持った目で見てくるのは思った以上に心にくるものがあった。おかげで、『敵なのか』って問いに日和って煙に巻いてしまったよ。
でも、あの場じゃそう答えるしかないんだよぉ。
だって完全に魔法少女サイドの味方じゃないし、なんなら時期はともかく、魔法少女サイドの人間を
当初の予定通り、原作改変はできた。
けどオレは少なからず心のダメージを負った。どうやら思っていた以上に、彼女らの存在は俺の心を占めていたようだ。
「ボス、ショック受けてる?」
不意に膝の上へ柔らかな重みが乗った。
視線を落とせば、猫になった寧々子がこちらを見上げている。トパーズ色の瞳が心配そうに揺れていた。
「なら、寧々子愛でるといいよ。アニマルセラピー? ってやつ」
そう言ってごろんと仰向けになる。
どうやら腹を撫でろということらしい。
寧々子だが、あの時は近くに待機してもらっていた。
何か不測な事態が起きた時の備えとしてだ。当人は大いに不満そうだったが、帰ってきてからオレのテンションが落ちていることに気付き、こうして構ってくる。
「なら、お言葉に甘えようかなぁ。よしよし」
「むふー」
俺が撫でると満足げに、鼻を鳴らす。
「もっと撫でて」
「注文が多いね」
「ボスが元気ないから。特別」
「はいはい」
寧々子は映画では街を壊し、人を傷付け、魔法少女たちと敵対した。だけど本質は誰かを傷付けたいわけじゃない。
ただ愛情を知らないだけの少女だ。そんな彼女が今はこうして俺の心情を
「むふふー、よきよき。そのまま撫でてくれるとなおよろし。むふふ、そうそう、そのま……あ、ま、まって。くふっ!? そ、そこさわっちゃ、きゃふっ!?」
そんな寧々子の好意にあやかり、腹を部分を撫でる。
本人も猫っぽい気質だから自由気ままなのだが、ここまで甘やかしてくれることは中々ない。なら今は甘えさせてもらおう。
そうしてほぼ無心で撫で回す。
そういえば、テレビで猫吸いとやらをしているのを見たことあるな。
そう思い、俺は寧々子を抱き寄せる。今思うと、凹んでいて頭の回りが悪くなっていたのだろう。
普通に考えて、猫になっているとは言え、女の子にすることではない。
今の俺は鈍った思考のまま、猫の腹に顔を埋めた。
「……やわらかい?」
しかし返ってきた感触は、思っていた毛の感覚ではなく。
ぷにっとした柔らかな感触に、温かな肌の感触。
毛並みの感触じゃない。そう思って目を開けると、おへそが目の前にあった。
「寧々子っ!?」
見れば寧々子が元の人の姿に戻っていた。
頬は上気し、肩は小刻みに震え、肌はしっとりと僅かにだが汗ばんでいた。そのまま、ふぅふぅと荒い声をあげる。
「ふひゅ、ふひゅ〜、ボ、ボス、はげしい……、おなかあつい……からだ力はいらない……」
「寧々子ー!?」
そのままかくり、と寧々子は力尽きた。
「主様よ」
「……なんだい、ムラサメ」
「女子のお腹に顔近づけるとか変態みたいじゃぞ」
「ひどいな!? だが、否定できない……!」
ジト目でこちらを見ているムラサメ。
そのまま気を失った寧々子を横にして、介抱しつつ今後のことを考える。いや、ほんとうそうしないと今の失態を直視できない。
話を戻すが正直ここで《トライデント》の一人を倒せたのは大きい。
アクラーツはマジで余計なことしかしないからな。
具体的には、天照焔の友人を操ったり、魔法少女の正体を学友達にバラして、世間に公表しようとしてくる。そうして、世間で騒ぎを起こした隙に今度は親を人質に取ってくる。
本当に女児向けのニチアサアニメかってことをしてくる。追い詰め方が文字通り
その分倒した際にカタルシスもあるけども、どちらかというと不快な行動ばかりしてくる。
どの道、毎週に《ヤミノマ》自体は倒されはするから、毎回アクラーツの目論見は失敗しているとはいえ、それが成功したらと思うと背筋が凍る。
だが、それももう問題ない。
《ディスナンド》の幹部、3人いる《トライデント》のうち、アクラーツは既に死んだ。《二人のオーレオール》における《ディスナンド》との因縁の始まりであるアクラーツが最初期に倒されたことは、これ以上ない影響を及ぼすだろう。
なら残る二人を、どうにかしなければいけないことを考えよう。もちろん、その先にいる《ディスナンド》の首魁ダークネスも、だ。
「しかし、なんで態々あんな
ムラサメがそう問いかけてきた。
いつの間に取り出したのか、大好物のみたらし団子を食べている。
「そうかい? 焔ちゃんはお隣さんだからね。顔見知りを助けたいと思うのは当たり前じゃないか」
「それは、天照焔
相変わらず鋭い
「……そうだね。らしくもなく、焦ったのかもしれない。ようやく、敵の幹部が姿を現したんだ。この機を逃せないと、気持ちがはやってしまった」
「そうじゃのう。主様の
「あぁ、そうだね」
含みある言葉。
しかし、俺はムラサメの言葉を否定せず寧ろ肯定した。なぜなら、それは《ディスナンド》の殲滅に並ぶ俺の目的。
この世界に転生し、
「
誰よりも身勝手で、誰よりも残酷で、そして何よりも達成したい悲願。
魔法少女という存在の