魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます   作:異星人アリエン

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魔法少女は、いわゆる少年兵って話

 

 俺は《ディスナンド》を恐れている。

 

 前世では歴史を顧みても、誰一人として成し遂げることができなかった世界征服どころか、銀河そのものを征服した組織なのだから当たり前だ。

 

 創作物は敵の規模も野望も大きくなりがちだが、現実となれば洒落にならない。

 

 《ディスナンド》が手をこまねいているのも、あくまで人間を襲うのは負のエネルギーを集めるからに過ぎない。そして、対抗できる魔法少女がいるからだ。

 

 その気になれば、現代兵器の通用しない存在を容易く生み出せる。なんなら、『魔法少女マギアイリス』シリーズの、それぞれの最終回付近で地球が闇に呑まれかけるのも、よくあることだ。

 

 俺が映画のボス達を救済したのは、自らの身を守ってもらうためだ。ミラクルパワーを持たず、ムラサメがいなければ無力な一般人の俺は、瞬く間に《ヤミノマ》にやられてしまうだろう。

 

 そうならないように、完全に魔法少女サイドではなく、《ディスナンド》でもない映画ボスたちをかき集めた。

 

 ムラサメを初め(・・)に、そこから数多の映画ボスたちを救済し、組織を立ち上げた。そして、最後(・・)に寧々子を拾いあげた。

 

 その頃になると、おおよそただの《ヤミノマ》であれば俺の敵とはなり得なくなっていった。ある程度の安寧を取り戻したのだ。

 

 この頃、やっと俺は一息つけるようになった。

 

 だからだろうか。

 

 落ち着いて世界を見ることができた時、歪んでいる(・・・・・)と思った。

 

 《ディスナンド》という明らかに国家、いや世界が対峙すべき存在に、単なる学生の少女たちが戦わねばならないことに。

 

 『魔法少女マギアイリス』。当時は娯楽と観ていた創作が、現実へと変化したからこそ肌で感じた。不思議な力を持つとはいえ、なぜ庇護されるべき子どもと言って良い存在が戦わねばならないのかと。

 

 きっと、《ヤミノマ》による被害にあわなかったら気付きすらしなかっただろう。漠然と、そういう世界観だから──そうやって目を背けていたに違いない。

 

 だけど、それでも。

 

 実際に立ち向かう天照焔と月詠澪の姿を見て。

 

 それでこそ、天照焔と月詠澪だという気持ちと共に、まだ親の庇護の元におらねばならない少女達に世界の命運という重積を背負わせることに沈痛な思いを抱いだ。

 

 そしてそれは、俺の身を守るために行動してくれる映画ボスの(・・・・・)魔法少女たち(・・・・・・)にも。

 

 だからこそ、俺は計画を立てた。

 

 俺の目的は《ディスナンド》の殲滅。

 

 ひいては、魔法少女そのものの存在を抹消すること。

 

 正確には魔法少女の力の源。ミラクルパワーとかいう、不可思議な力そのものを消滅させる。

 

 そうすれば、もう魔法少女は生まれない。

 

 俺は、魔法少女に恨みがあるわけじゃない。寧ろ率先して戦う彼女らには敬意を払っている。

 

 でも、それは魔法少女(・・・・)に対してであって、彼女らを戦いに駆り立てるミラクルパワー(・・・・・・・)は忌むべき存在だと思っている。

 

 そうだろう? 

 

 彼女たちは、本当ならば争いとはほど遠い平和な日常を送っていけたはずだ。

 

 家族と過ごし、学校で学び、友だちと語らう。そんな平穏を謳歌していたはずなのだ。

 

 それがミラクルパワーを扱える素質があり、魔法少女になれてしまったというだけで戦いに身を投じる羽目になった。

 

 『魔法少女マギアイリス』を観てきたからこそ、その力に振り回される魔法少女らをよく知っている。

 

 平和な日常の裏で、いつ敵が現れるのか。そのことを一度だって忘れたことないと語る魔法少女がいた。

 

 戦うのが苦手で、それでも友達や家族を失いたくないからと、戦う魔法少女がいた。

 

 その気持ちが、今ならばよくわかる。誰だって戦いはいやだ。それでも、戦わざるを得ないから彼女たちは戦っている。

 

 ならば、その元凶となった力そのものを消し去るのは当然の帰結だ。

 

 確かに、ミラクルパワーのおかげで攻めてくる奴らに対抗できているのは事実だ。

 

 だが、そもそもの話、なんで《ディスナンド》の奴らが地球へと侵攻してきたのか。

 

 それもまた、ミラクルパワーが原因だ。

 

 《ディスナンド》の目的は銀河中を闇に包むこと。それに対抗できるミラクルパワーを、積極的に消そうとするのは当たり前のことだ。つまり侵攻する理由の一端でもあるのだ。

 

 無論、悪いのは《ディスナンド》の方だ。だが、原因であるというのであれば、無視はできない。

 

 だからこそミラクルパワーを消し去る。

 

 もっとも、こっちの方は未だどうしたら良いか見当もつかないが。

 

 そもそも、ミラクルパワーの設定が原作からしてふわふわしてるのだ。

 

 扱えるのは年若い少女たちだけ。その力の増減は、使用者の意思によって変動し、《ディスナンド》の集めた負のエネルギーに対抗できる。人々に希望と勇気を与えることができる正のパワー。

 

 一方で、闇堕ちした魔法少女であろうとも使うことができる。大体の闇堕ち魔法少女は人を害するにも関わらず、正の力の象徴であるミラクルパワーを扱えることを考えると矛盾している。

 

 ここで予測なのだが、恐らくミラクルパワーに善悪の区別はない。いわゆる感情によって生まれる、単なるエネルギーに過ぎない。そう、ある意味で負のエネルギーと根っこが同じなのだ。

 

 それが幸福か恐怖か、喜びか悲しみかが違うだけで。魔法少女が使えるのがミラクルパワー、《ディスナンド》が使えるのが負のエネルギーと呼び方を変えているだけで。

 

 魔法少女はあくまでその力を扱える()に過ぎない。言うなれば、使い先を変えることのできる水道のホースみたいなものだ。

 

 だから、魔女となって、人を害そうとも使うことができる。

 

 危険だ。

 

 《ディスナンド》は負のエネルギーしか使えない。だが、それは()だけの話であり、ミラクルパワーと負のエネルギーが同根なら、奴らにも理論上扱える可能性がある。

 

 そしてそれが実現した時、《ディスナンド》はもはや弱点を失う。それは看過できない。

 

 だからこそ、消さねばならない。

 

 だって人は──感情を管理できないから。

 

 怒るなと言われて怒らない人がいないように。

 嬉しいときに、自然と笑顔となってしまうように。

 

 絶望が果てしなく広がるように。

 希望がどこまでも輝いているように。

 

 人と感情は切り離せない。

 

 だからミラクルパワーも、負のエネルギーも決してなくならない。

 

 ゆえに、戦いに駆り立てる仕組み(・・・)を破壊する。

 

 魔法少女たちが望もうと望むまいと関係ない。

 

 感謝されなくても構わない。恨まれてもいい。それでも、彼女たちが戦う必要のない世界を残すのだ。

 

 ミラクルパワーと負のエネルギーを消し去ることについては、最悪俺の助けた映画ボスの一人(・・・・・・・)に助けを求めれば光明はある。

 

 無論、タイミングは見極めねばならない。

 

 原因とはいえ、抗いようのない存在にミラクルパワーのおかげで、渡り合えているのは事実だ。一歩間違えれば、人類は対抗できる力を失い、この星が《ディスナンド》によって闇に包まれるのを防ぎようがなくなる。

 

 『魔法少女マギアイリス』は、終わらないこの星を狙う異星人との戦争だ。

 

 だから終わらせる。

 

 魔法少女じゃない。俺自身の手で。

 

 ムラサメと俺は相性が良い。

 ムラサメは『百鬼夜刀〜朝と夜の大決戦〜』のパンフレットや劇中の台詞から、使用者を(ことごと)く発狂させた妖刀だが、オレにはそれが通用しない。

 

 《ヤミノマ》に直接襲われるなどといったその場で経験してしまう苦痛(トラウマ)ならともかく、過去の怨念といったものをフラッシュバックさせる現象は、俺には起きなかった。

 

 おそらくは、俺がミラクルパワーで恐怖の感情を消し飛ばしてもらえないように、転生で生じたバグだ。

 

 だけど、今はこの現象に感謝している。これのおかげで俺は戦えるし、ムラサメを独り(・・)にせずに済んだ。

 

 だからこそ、先に《ディスナンド》のダークネスをなんとかしなければならない。

 

 ダークネスさえ、完全に滅ぼせれば後の『魔法少女マギアイリス』でも現れる、全ての組織が瓦解する。或いは大幅に弱体化する。最初の『魔法少女マギアイリス』のラスボスだからこそ、その影響は大きいのだ。

 

 さぁ、此処が勝負だ。

 

 必ず奴等を早急に消し去る。それが目下の目標だ。

 

 

 

「とはいえ、向こうから動き出してくれないとこっちとしても、やりようがないんだよな」

 

 俺は一人愚痴る。

 

 備えはできている。映画ボスという戦力を抱えている以上、負ける可能性は低い。

 しかし、《ディスナンド》の本拠地に攻め込むことができない以上、事態が動くまで待つしかなく、ことが起きても後手に回る。

 

 中々に辛い状況だが、その際にできた時間でやれることはある。

 

「やはり俺も月詠澪と邂逅すべきだな。問題はタイミングか。こればかりは実際にならないと何とも言えないか」

 

 『魔法少女マギアイリス〜二人のオーレオール〜』の主人公の片割れ。

 

 月詠澪。

 

 魔法少女サンシャインと対を為す、魔法少女オーロラミストの正体。

 

 星見ヶ丘では有名な由緒正しき月詠家の娘だ。こちとら平凡な家の生まれ、まさに住む世界が違う。その為、同じ学園に通う焔ちゃんと違って、狙って接触するのは難しい。

 

 ……一応、とある伝手を使えば接触自体は容易だがこれは最終手段だな。向こうからしても不審がるだろう。だからこの手は使いたくない。

 

 だからどうにか、穏当に接触できないものか。

 

 時刻は既に17時、育ち盛りを二人抱える身であるが故に、今晩の夕飯を袋に下げながら歩く。その際、近道のために狭い道を通った。

 

「ん? 人の声?」

 

 こんな人気のない裏路地で声が聞こえた。

 

 生憎この世界は《ヤミノマ》とかいう存在が跋扈する世界。それ関連の可能性がある。俺は気配を消して、声の主を探す。

 

《にゃーにゃー》

《にゃん!》

《にゃ〜ん》

「ふ、ふふふ。かわいい……どうしてあなたたちはそんなにかわいいの……もふもふ……姿形……すべてにおいて完璧だわ」

 

 そこに居たのは、長い青髪の少女。

 

 月詠澪が、猫に囲まれ恍惚そうにしているところに出くわしたのだった。




おかげさまでオリジナルの日刊ランキング100位圏内にも乗りました。
ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします!
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