5月下旬静岡県某所、其処では国立雄英高等学校ヒーロー科1年A組ヒーロー名デク事緑谷出久と、ヴィラン連合オールフォーワンに体と精神を乗っ取られたヴィラン死柄木弔が熾烈な戦いを繰り広げていた。
デクは戦闘で両腕を無くすが、黒霧事白雲朧の個性ワープゲートで駆け付けた緑谷の担任教師ヒーロー名イレイザーヘッド事相澤消太が、死穢八斎會組長の孫娘エリちゃん事壊理の個性巻き戻しの角を緑谷に突き立てると、失った両腕は失う前の状況に戻った。
「エリちゃんのお歌、聴く迄死ねないぞ」
緑谷は相澤の言葉に、壊理からの思いや相澤の思いに今日何度目かの涙を流した。其の時だった、ワープゲートから何人ものヒーローが現れた。
「皆もきっと……オイラと一緒だよな……もう動けねーって思ってても……緑谷が頑張ってっとよォ、体動いちまうんだよなァ!!!今日踏ん張れなきゃ、何の為にヒーローを夢見たのか分かりゃしねえ!だからよお~オイラ達が来た!!!」
ヒーローの数で一番多かったのは緑谷のクラスメイトである1年A組の面々だった。けれど、そのA組のメンバーは全員ではなかった。
「緑谷、本来ならこんな時に言うべきではないが、青山と心操が殉職した」
「っ……!!」
相澤からの報告を受け緑谷の歓喜の涙が悲しみの涙へと変わった。緑谷が何度目かの体が崩れそうになった時相澤が彼の肩を掴んだ。
「緑谷、彼奴等に対して悲しむのも、弔うのも全て後回しだ!今は、勝つぞ!」
「……っ、はい!」
戦場に駆け付けたヒーロー達は
「……どれ程長く激しい戦いを……」
「……っ僕は……OFAを擲ちました」
「――!無いのか!?」
「全てではありません。残っているのは、初代と
「緑谷……傷薬と包帯後……体を冷やしちゃいけない。避難先の方々からだ」
相澤が緑谷へ簡単に治療を行い持って来たTシャツを着せた。
「メンズノンノの全サ第5弾Tシャツ……!」
Tシャツは淡い水色にオールマイトの顔がプリントされた物だった。此れを着た時緑谷出久は英雄から嘗てヒーローに憧れた少年へ少しだけ戻る事が出来たのだろう。
(走ろう☆彼等には君の力が必要だし、君には彼等の力が必要だ)
緑谷の目に映ったのは既にこの世を去った友人の姿だった。彼も此れは幻影だと理解していた。けれど、幻影でも、幻でも、妄想でも其の姿と言葉から力を貰った。
(皆、一緒に戦ってくれてるよ)
「頑張れ……!」「デクさん!」「デク兄ちゃん!」「デク……!」
「「「頑張れ!!」」」
「有り難う青山君……」
緑谷は走り出した。時には黒鞭を使いAFOの攻撃を回避したり防御し乍ら前へと進んだ。他のヒーロー達もAFOに攻撃を仕掛けた。だが、どの攻撃も通じなかった。
『道を作るんだ!死柄木に至る道を!!!』
相澤からの通信で全員が何をするべきなのか理解した。
「「全因解放」其の本質は”感情任せ”に膨れ上がる事ではない。数多の力を”抑し””支配”してこそ故数で勝ると思うなよ」
AFOは大きく形を変え強力な光線や大量の棘の様な物を射出した。だが、光線は1人の少女のおかげで射線が大きく逸れた。
「葉隠さん!」
「光線の類なら私!」
其の隣では八百万百が武器を創造していた。
「電磁投射砲!撃てぇ!」
「ウェイ」
電磁投射砲からミサイルの様な弾頭が発射された。だが、AFOには一切効かなかった。更には其れ以上力で反撃して来た。
「此れ以上皆を――」
「全身ズタボロだろ!温存しろ!」
「彼奴に届く力はお前だけだ!俺達が禦ぐ!」「「行け!」」
緑谷は力で棘や触手を壊そうとしたが、其れを尾白や砂藤達が攻撃を防いだ。すると、蛙吹の舌と障子の腕が緑谷の腕に巻き付き其の儘AFOから出て来た巨大な棘の様な触手の上を走った。
「ママ、お姉ちゃん!パパ、お姉ちゃ!」「梅雨っ!」
「障子君……頑張れ障子君……!」
「俺達の起動力じゃ此の猛攻を掻い潜るのは難しいが」
「少しだけ貴方を運ぶ事位なら」
「障子君、梅雨ちゃん!」
蛙吹と障子は鞭の様に緑谷を前へと飛ばした。緑谷の着地と同時に巨大な棘の様な触手が緑谷を襲おうとした。
「根!性!」
ファットマンと芦戸、切島が其れを防いだ。
「鋭ちゃん!」「三奈!」
「頑張れ!」
「頑張ろ!」
「うん!!」
芦戸と切島の言葉に強く返事をした。緑谷はOFAの力でAFOの猛攻を搔い潜った。此の時、AFOは強い疑念を抱いていた。
(何だ、屍肉にしか見えぬ者共……何故死なない。碌に動けていないのに目が、目玉だけが、目玉をギョロギョロさせるだけの出来損ないに渡ってしまった事が間違いだって。そうか緑谷、緑谷出久……緑谷!お前の弱さが、オールマイトには無かった弱き強さが、こいつ等を何度でも立ち上がらせているのだ!お前が其の足を止めぬ限り!)
「頑張れ」「「頑張れ!!」」「頑張れ」「頑張れ、ヒーロー」
「初日の下校を思い出す!今なら彼女が言っていた事もよく分かる気がするよ!」
でも「デク」って「頑張れ!」って感じでなんか好きだ私「がんばれ……」
緑谷を見ていた人達は彼を応援し、彼が転びそうになると飯田が手を取りそして背中を押した。
「今すぐ全ヒーローを日本へ向かわせろ!」
「しかし大統領、AFOが勝利した場合、我が国の保」
「知るか!行けえ!」
決戦を見ていたアメリカ大統領は、今迄援軍を出し渋っていたが援軍を出す事を強く命令した。
緑谷の戦う姿を見て多くの人達が心を動かされた。避難している一般人、戦って動けなくなっているヒーロー、今迄尻込みしていた政治家達。彼等彼女等は口を揃えて言った。「頑張れ!」と。そして、今迄彼の行動に涙を流し失神してしまい直視出来なかった彼の母親も。
「頑張れ、出久!!」
(皆の声が聞こえる)「うおおおぉぉぉぉ!!デトロイトSMASH!!!」
(何故気づけなかった。此の窶れた”身体”に「超再生」が適用されない違和感、こいつだ……いや――こいつ等が――!謀ったのだ。其れ単体ではあまりに脆弱な”敵意”しかし撚り集まって、何時しか僕を覆い感受を鈍らせていたのだ。継承者共を打ち込まれたあの時にもう精神のみ為らず身体も……!)
緑谷のデトロイトスマッシュを受けたAFOは身体がボロボロと崩れ始めていた。まだ緑谷の中に1stが残っている為超パワーによる身体崩壊ではないが、其れでも継承者達を打ち込まれ死柄木弔の精神と身体には拒絶反応が出ていた。其れが、超再生が適応されない原因だった。
「”個性”が崩れてく」
「やったのか緑谷……!」
「まだだ!」
半分以上身体が崩れてAFOは”個性”で崩壊を食い止めたのだった。彼の姿はこうなる前ですら異形に近い姿だったのが、もう人の姿を保っていなかった。
「まだ何も為していない……!誰にも奪わせわしない……!僕だけが夢を為す!誰にも、継がぬ紡がぬ!!魔王は唯一!」
AFOは死柄木弔へ行った様に、緑谷以外の人間に
AFOが身体奪う為触手の様な物を伸ばすと、緑谷が其れを止める為拳を握り腕を振りかぶり構えた。此れ以上の個性使用は不味いと瞬間的に思った相澤は緑谷の名前を呼び止めようとした時だった、動かなくなっていた白雲が歩き始めた。其れを見た相澤とプレゼントマイクが驚き振り向いたり足を止めた。
「消……太……山……田……ゴメン……ナ……行かなくては……私は――死柄木弔を守らなくては」
その時、白雲はワープを緑谷の拳の前に出現させ緑谷の攻撃からAFOを守ったのだった。
困っていれば例え
「ああ!畜生!やっぱり……!何処迄も……!手を差し伸べちまうんだあいつは!」
「A……FO……死柄……木弔を……オ返シ下サイ……ォッおォッ……オ友達が待っテイルんデす」
その時だった。黒紫色の煙の様なワープの背後で爆発が起きた。其処に居たのは既に体がボロボロになっており死に体になっており病院へ搬送されていた筈のヒーロー名大爆殺神ダイナマイト事緑谷出久の幼馴染でもある爆豪勝己だった。
「爆豪!?病院にって……!うっそだろ彼奴!「爆破」を使って1人で来やがった!」
プレゼントマイクは驚愕し乍らそう叫んだ。当然だ、爆豪は数十分前迄彼の心臓は止まっていた。其の後何とか蘇生したが其の時ですら何時死んでも可笑しくない状態だったのに、其の直後体に鞭を打ちAFOと戦闘を行い何とか勝利した。此の時彼の体は既に全身がボロボロ本来であれば歩くどころか立ち上がる事すらやっとだ。そんな彼が此処へやって来た。此れがどれだけ無茶苦茶だったのかは言う迄もない。
「轟の"ジャンプ台"借りたけどよぉ~~~俺に追い越されてンなよ出久!!」
爆豪の口から出した爆破で白雲のワープを霧散させ、緑谷もAFOに止めを刺す為に拳を振りかぶった。
「AFO……!お前を許しはしない。けれど、理解出来ない化物とも思わない!」
「……やめろ」
「お前は魔王なんかじゃない」
「見るな!」
「お前はただの寂しがりな人間だ!」
緑谷はAFOの言葉と一緒に拳を振り上げようとしていた。此の時AFOは自身の死を確信した。其れは長年ヒーロー達と戦ってきた彼の直感の様な物だ。だが、此処から逃れ様にも体は動かず別の身体を奪う事すら出来ない。彼は何時も以上に頭を回転させた。此処から逆転する為の方法を。然し当然乍らそんな方法は無かった。
AFOは自分を魔王だと言い聞かせ乍ら1つの考えが思い浮かんだ。其れは無駄な抵抗であるが最悪な嫌がらせだった。
「僕は、魔王だ……ハッピーエンドは、許さない……認めない!」
AFOは緑谷の正面から光線を放ち、更に周囲へ無作為に光線を放った。緑谷は今迄足腰に感じていた痛みがいきなり消えた事への違和感を感じたが、頭から其の違和感を振り払い腕を振り上げた。そうしてAFOと死柄木弔の体は塵と消え今迄分厚い曇に覆われていた空は晴れて青空に変わった。
AFOに勝利した緑谷は其の儘地上に落下した。
「「「「緑谷!」」」」「緑谷ちゃん!」「緑谷さん!」
1年A組のクラスメイトは緑谷に集まると治療や回復系の個性を持っているヒーローや救助用ヘリを連れて来る様呼びかけたりしていた。此の時、緑谷は目線を自身の下半身へやると其処に在る筈の足腰が無く、腹部から内蔵が顔を覗かせていた。
緑谷が上空から落下した時、誰もが不味いと思い彼の担任である相澤の近くに居たプレゼントマイクと葉隠透が駆け寄った。
「イレ!っ……!消太!」
「相澤先生!緑谷君がっ……!」
2人が見たのは心臓に穴が開いていた相澤の姿だった。
「みど……りやは、どう……なった?目が霞んで……よく、見えないんだ……」
「み、緑谷君は……」
「緑谷は生きてるぜ。流石に無事ではないし気絶していて、暫く入院が必要だろうな」
「そう……か……なら、山田……俺の事は、あいつが……落ち着く迄、黙っててくr……」
相澤は其処迄言うと体から力が抜けていった。葉隠は涙を流しプレゼントマイクも涙を流し乍ら「分かった」と応えた。
緑谷は自身の命が残り僅かでもう助からない事を悟った。そして口を動かした。
「かっ……ちゃんは?……」
「緑谷もう喋るな!」「爆豪なら近くで気絶してるけどちゃんと生きてるから安心しろ!」
「そっか……」
切島の言葉に緑谷がそう呟くと腕を動かして自分の髪の毛を抜いた。
「や、八百万さん……居る?」
「はい、こちらに」
「こ、此れをかっちゃんに……僕は、もう助からないだろうから……継承出来るか、分からない……けど……此れを、真空パックか何かに入れて保管してて……」
緑谷の言葉に八百万は速やかに真空パックを創造し受け取った髪の毛をその中に入れて保管した。
「た、多分……かっちゃんの事だから断るかもしれないけど、其の時は……オールマイトに次の継承者を、任せて……」
其処迄言うと緑谷はヒューヒューと可笑しな呼吸を始めた。誰もが理解したもう緑谷の命は長くないのだと。けれど少しでも存命出来ないかと奔走した。
「つ、梅雨ちゃん……居る?」
「わ、私は此処よ緑谷ちゃん!」
「かっ……ちゃんと、エリ……ちゃん……其れから……麗日さんに、伝えて欲しい事が有るんだ。……っう、麗日さんには最後迄一緒に居られなくてごめんって……かっ……ちゃんには、ナンバーワン……ヒーローになってって……エリ……ちゃんにはおうた聴けなくて、ごめん……って……」
「わ、分かったわ……ぐすっ」
緑谷は蛙吹へ遺言を伝え彼女も涙を流し乍ら其れを受け取ったのだった。
こうして、歴史に残るAFOとの戦いは多くの犠牲の末幕を下ろしたのだった。
次回から本番more以降のお話になります!
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