キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜   作:キング・クリムゾン!!

1 / 6
プロローグなので短めです。

あと名前の部分を再編集しました。


プロローグ:穿光の誕生

紀元前、中華西方の壮大な大地に広がる秦国。その片田舎の小さな村に、一人の少年がいた。

 

名を貫という

 

少年の脳内には、現代日本という遥か未来の記憶が眠っていた。そして転生に伴う特典として、二つの至高の武術、すなわち神速の突きを誇る『尾張貫流槍術』と、あらゆる攻撃を受け流す究極の拳『流水岩砕拳』の知識と技術が刻まれていた。

 

しかし、知識があるからといって、幼い肉体がすぐにそれを体現できるわけではない。何よりこの世界の人間の肉体は、現代人とは比較にならないほど頑丈で、圧倒的な野生のエネルギーに満ちていた。

 

「この世界の人間は化け物揃いだ。まともに打ち合ったら、技を出す前に力で叩き潰される。なら、俺がやるべきことは一つだけだ」

 

貫は幼少期から、来るべき乱世を見据えて過酷な鍛錬を開始した。現代の最先端スポーツ科学に基づいた体幹トレーニングや、インナーマッスルを極限まで鍛え上げるメニューを自らに課した。流水岩砕拳の「柔」の動きで関節の可動域を広げ、尾張貫流槍術の「剛・速」の衝撃に耐えうるしなやかで強靭な肉体を、何年もかけてじっくりと作り上げていった。

 

そんなある日のこと、貫は近隣の村で、他の子供たちからいじめられている大柄な少年を見かける。それが、後に彼の運命の相棒となる拓(たく)との出会いだった。

 

拓は体格こそ人一倍大きいものの、信じられないほど臆病で、いつも縮こまっていた。しかし貫は、拓が泥をこねて作った精巧な玩具や、木を削って作った精緻な道具を見て、その手先の器用さが天才の領域にあることを見抜いた。

 

貫はいじめっ子たちを流水岩砕拳の軽い身のこなしで追い払うと、地面に座り込んで震えている拓に手を差し伸べた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

「あ、ありがとう……。僕、何もできないから、いつもからかわれて……」

 

「そんなことはない。お前のその手、普通のやつには作れないものを作れるだろ。なぁ拓、俺と手を組まないか。お前のその器用な手で、俺にしか使えない特別な『道具』を作ってほしいんだ」

 

「え……? 僕が作ったものでいいの……?」

 

拓は目を丸くして驚いたが、自分を必要としてくれた少年に、生まれて初めて希望の光を見たようだった。

 

それから数日後、貫は拓の作業場を訪れ、一本の奇妙な図面を渡した。それは、尾張貫流槍術の核となるガジェット『管(くだ)』の設計図だった。左手で握り、その中に槍の柄を通して滑らせることで、目にも留まらぬ速度の突きを繰り出すための特殊な筒だ。

 

「これを作ってほしい。内側を極限まで滑らかに研磨して、木でも、硬い竹でもいいから、俺の手に馴染む筒にしてくれ」

 

「う、うん、やってみる。こんな形の道具、見たことないけど……滑らかにすればいいんだね?」

 

拓は怯える性質をすっかり忘れ、職人の目になって作業に没頭した。何度も試作を繰り返し、内側を限界まで削り、動物の脂を塗って滑りを極限まで高めた。そうして完成したのが、記念すべき最初の『竹製の管』だった。

 

貫がその管を左手に通し、右手で槍を構える。

 

「いくぞ、拓」

 

次の瞬間、シュバッ、という空気を切り裂く異質な高音が響いた。少年の手から放たれた槍が、視認できないほどの速度で前方の木を貫き、そして一瞬で手元へと引き戻された。

 

「ひゃあぁっ!? 今、何が起きたの……!? 槍が一瞬で伸びて戻ってきた……!」

 

「素晴らしい出来だ、拓。お前はとんでもない天才だよ。これがあれば、俺の槍は中華の誰も届かない速度に達する」

 

貫は満足そうに微笑み、拓の手を力強く握り締めた。拓は自分の作った道具がもたらした奇跡に、恐怖を忘れて歓喜した。

 

それから数年の月日が流れ、少年たちは逞しい若者へと成長していった。貫の肉体は完全に仕上がり、管を介した神速の槍術も、いかなる攻撃も無力化する流水の拳も、完全にその身に馴染んでいた。

 

そしてついに、その時が訪れる。秦国全土に下された、魏国との大決戦に向けた大規模な徴兵令。村の若者たちと共に、貫と拓もまた、蛇甘平原の戦場へと駆り出されることになった。

 

戦地へと向かう行軍の最中、周囲の怒号と地響きのような足音に、拓はガタガタと体を震わせていた。

 

「どうしよう……死ぬ、絶対に死んでしまうよ! あんな恐ろしい戦場、僕みたいな弱虫が行ったら一瞬で……!」

 

主人公は赤い布を肩に巻き直し、腰に下げた拓の作った特製の管をカチャリと指で弾いた。そして、怯える親友の肩を叩き、不敵な笑みを浮かべた。

 

「安心しろ、拓。お前が作ったこの『管』がある限り、俺の槍は誰にも止められない。どれほど厚い盾を構えようが、どれほど強固な防陣を敷こうが無駄だ。すべてを穿ち、お前も、これから出会う仲間も、全員俺が生き残らせてみせる」

 

若き『穿光』の瞳は、遥か先の戦場を見つめていた。黒と泥にまみれた中華の戦史を、鮮烈な『赤』で塗り替える伝説の幕が、今静かに上がろうとしていた。




次回:第1話 蛇甘平原の風穴
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。