キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
魏加の放った不意打ちの一矢が貫の神速の槍によって叩き落とされた瞬間、王騎の眼前に完全な勝機が生まれた。背後の脅威が消え去ったことを一瞬で察知した大将軍の戦術眼は、目の前で驚愕に目を見開いた武神・龐煖の隙を、決して逃しはしなかった。
「終わりですよ、求道者」
ズガアァァァッ!!!!
王騎の巨大な大矛が、天の重力をすべて巻き込むような軌道で振り下ろされた。龐煖が咄嗟に掲げた大矛の柄を叩き割り、その鋭い刃は武神の硬質な肉体を胸元から斜め一文字に深く切り裂いた。
「が、はっ……我が……我が武が……!!」
鮮血を撒き散らし、馬から崩れ落ちる龐煖。趙軍の旗本たちが決死の覚悟で突撃し、意識を失った龐煖の巨体を抱え上げて、泥煙の向こうへと命からがら撤退させていく。
九年にわたる宿怨の因縁には、確かに王騎の圧倒的な勝利という幕が下ろされた。
しかし、秦軍の勝鬨が響き渡る余裕など、今の馬陽の平原には一寸たりとも残されてはいなかった。
「王騎の武、まさに怪物……。ですが、戦局はすでに詰んでいます」
遙か後方、白馬の上から冷徹に盤面を見つめる李牧が、静かに右手を挙げた。
直後、秦軍を完全に包囲した李牧軍数万の鉄の包囲網が、音を立てて全方位から急速に縮まり始めた。退路は完全に遮断され、周囲は敵の槍と盾の壁で埋め尽くされている。
「ココココ……。趙の新しい若手は、随分と用意周到な罠を仕掛けてくれたものです」
吐血しそうになるほどの内傷を流水の呼吸で抑え込みながら、王騎は自身の黒馬を反転させ、血の海と化した戦場を見渡した。その視線の先には、傷だらけになりながらも互いの背中を守り合う、信の率いる飛信隊、そして貫の率いる穿紅軍の姿があった。
「信、そして百人将・貫。あなた方が魏加の影を払ってくれたおかげで、私はこうしてまだ呼吸をしていられます。……ですが、ここが正念場です。全軍、これよりこれまでにない過酷な『脱出戦』を敢行します!」
王騎が矛を高く掲げると、絶望に支配されかけていた秦軍の将兵の瞳に、再び生の灯火が宿った。
「私が先頭に立ち、あの李牧の鉄の包囲網を正面から叩き割ります。雛鳥たちよ、大将軍の背中を、その目に焼き付けながら付いてきなさい!」
「おうよ!! 誰がここで死ぬかよ!」
信が大剣を構え、飛信隊の兵たちが雄叫びを上げる。
「全軍、王騎将軍の左右を固めろ! 陣形は錐行(すいこう)、速度を落とした奴から死ぬぞ!」
軍師・梁の鋭い指示を受け、穿紅軍の百五人が完璧な突撃隊列を組み上げた。
「突撃ィィィ!!! ファルファルファルファル!!!」
副官・騰の凄まじい剣技が先陣を切り、王騎の巨躯が李牧軍の強固な集団盾陣へと真っ直ぐに突き刺さった。大将軍の一振りが炸裂するたび、李牧軍の重装歩兵が数十人単位で空中へと吹き飛んでいく。
しかし、李牧軍の連携は、これまでの趙軍とは次元が違っていた。一陣が破られれば即座に二陣、三陣が隙間を埋め、王騎の進撃速度を削ごうと、無数の長槍が波のように押し寄せる。
「王騎の首は渡さん! 我ら李牧様が直属、重騎兵連隊が討ち取ってくれるわ!」
突撃する秦軍の右翼を圧迫すべく、趙軍の精鋭重騎兵長――冥賀(めいが)が、鉄鎖で繋がれた巨大な騎馬集団を率いて横腹から突っ込んできた。このままでは王騎の突撃の速度が完全に止められ、包囲網の中にすり潰されてしまう。
「そこを退け。我が将軍の行く道を阻むな」
激しい砂煙を突き破り、冥賀の前に躍り出たのは、漆黒の管を左腕に嵌めた百人将、貫であった。
右手に握られた『鉄芯複合鉄刀木槍』が、流水の呼吸によって恐ろしいほどの威圧感を放ち始める。貫は、押し寄せる鉄鎖の騎馬集団の『駆動力の流れ』を冷徹に見定めながら、新生の長槍を真っ直ぐに構え直した。
新しく出会う、この李牧軍の精鋭を率いる宿将に対し、貫は己の存在と穿紅軍の不屈の進軍を完全に刻み込むべく、戦場全体に響き渡るような、淀みのない声を轟かせた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃百人隊『穿紅軍』を率いる百人将、貫(かん)だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『新生・鋼鉄の管』、そして『鉄芯複合鉄刀木槍』を以て、貴様らが誇る鉄の包囲網を、その真横から跡形もなく穿ち砕く。大将軍の路を阻む者、我が穿光の前に一兵たりとも生かしては置かん」
貫の傲る高ぶることのない、しかし絶対的な死を宣告する自己紹介を聞き、冥賀は激しい怒りで顔を歪ませた。
「ほざけ、秦の雛鳥が! 鉄鎖の重騎兵、踏み潰せぇ!」
冥賀が馬を加速させ、巨大な長槍を貫の喉元へと突き出してきた。馬の突進速度が乗った、岩盤をも穿つ一撃。
しかし、貫の瞳は、その攻撃の軌道を完全に先読みしていた。
(流水岩砕拳――剛流・破岩受け流し)
貫は一歩も引かず、左腕の『新生・鋼鉄の管』の側面を、冥賀の長槍の穂先へと接触させた。
キィィィィィィィン!!!!
ブロンズを溶かし込んだ二重積層構造の管は、重騎兵の圧倒的な突進エネルギーを完全に受け止め、滑らかな円運動によってその威力を真横へと受け流した。冥賀の槍は空しく空を切り、突進の勢いのまま体勢が大きく前方に崩れる。
「な……馬の突撃の威力が、完全に消された……!?」
冥賀が驚愕に目を見開いた瞬間、貫の肉体はすでに、倍の重量を持つ槍を『神速の領域』へと解放していた。
(尾張貫流槍術――管槍・重爆穿光「螺旋」)
鉄芯が仕込まれた鉄刀木の柄が、新生の管の内壁を滑る。
倍の重量が、貫の流水の腕力と合わさり、一本の太い光の濁流となって放たれた。
ズガアァァァッ!!!
空気そのものが爆発するような重低音。
放たれた槍の穂先は、冥賀の分厚い胸当てを馬ごと貫通し、その後方にいた数騎の重騎兵をも巻き込んで完全に串刺しにしていた。
「が、はっ……化け物、め……」
冥賀が崩れ落ちると同時に、穿紅軍の兵たちが一斉に牙を剥いた。
「鉄さんの盾に続け! 道を開けるな、突っ込めぇ!」
雷の突撃隊が、指揮官を失った重騎兵の隙間へと滑り込み、十人で一人を確実に仕留める波状攻撃で趙の精鋭たちを次々と血の海へと沈めていく。
「ココココ、素晴らしいですねぇ、貫。あなたの穿った穴、使わせてもらいますよ!」
貫が切り拓いた右翼の突破口を見逃さず、王騎の本隊が爆発的な推進力で李牧軍の包囲網の一角を完全に突き破った。
「馬陽の平原を後にしますよ! 全軍、私に遅れず付いてきなさい!」
血煙が立ち込める戦場の中、王騎の背中を追い、必死の脱出戦を続ける穿紅軍と飛信隊。歴史の歪みを自らの槍でねじ伏せ、絶望の包囲網を喰い破った若き穿光・貫の戦いは、今、馬陽の戦雲を突き抜けて、秦国の未来へと繋がる血路を確実に切り拓きつつあった。
次回:第26話 血路の先の双璧、若き穿光の咆哮
次に書く二次創作小説の原作
-
ONEPEACE
-
呪術廻戦
-
鬼滅の刃
-
ワンパンマン
-
僕のヒーローアカデミア
-
キングダム