キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
『超螺旋・流星管槍』の圧倒的な産声から数日。咸陽郊外にある穿紅軍の駐屯地には、その凄まじい破壊力の噂を聞きつけた「お調子者」が、大剣を担いで勢いよく乗り込んできていた。
「おい、貫!! 隠れてとんでもねえ化け物槍を作ったんだってなぁ!?」
飛信隊の信(しん)だった。馬陽の死闘を経て、同じく百人将として武名を上げつつある少年は、包帯だらけの身体の痛みを忘れたかのように、目をギラギラと輝かせている。その後ろからは、副長の羌瘣(きょうかい)や河了貂(かりょうてん)が、呆れたように付いてきていた。
「信か。噂が回るのが早いな」
貫が、左腕に鈍い銀の光を放つ『超螺旋・流星管』を装着したまま、静かに迎え入れる。
「当たり前だろ! 王騎将軍を救ったお前の槍が、さらにヤバくなったって聞いちゃ、じっとしてられるかよ! 馬陽じゃあ美味いところを持っていかれたが、俺だってあの死闘をくぐり抜けて進化してんだ。どっちの武が上か、ここで手合わせしやがれ!」
信が大剣を構え、不敵に笑う。周囲の飛信隊の兵たちや、穿紅軍の雷、鉄、拓、梁たちも、若き二人の天才の激突を予感して、ゴクリと息を呑んだ。
「いいだろう。新兵器の『回転』の感覚を、実戦の速度で馴染ませたかったところだ。手加減はしないぞ、信」
「望むところだァ!」
広大な練兵場の中央。二人が距離を取って対峙する。信が放つ、戦場を修羅の如く駆け抜けて培われた「野性の殺気」。
対する貫は、全身の毛穴から白い気を立ち上がらせる、極限の静寂を宿した『流水岩砕拳』の呼吸。新しく出会う、この次代を担うべき飛信隊の頭領であり、互いの背中を預け合った最高のライバルに対し、貫は己の進化と穿紅軍の誇りを真っ向からぶつけるべく、淀みのない声を響かせた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃百人隊『穿紅軍』を率いる百人将、貫(かん)だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、そして『積層流星槍』を以て、貴様が持つその不屈の大剣ごと、その正面から穿ち止める。天下の大将軍を目指す貴様の武、我が新生の穿光でどこまで通用するか、確かめさせてもらう」
貫の傲る高ぶることのない、しかし絶対的な勝利の確信を秘めた自己紹介を聞き、信は体中の血を沸き立たせて吠えた。
「へっ、上等だ! 特殊遊撃百人隊だか何だか知らねえが、この俺の『天下の大将軍』への路、止めてみやがれェ!!」
ズガァンッ!! と地を蹴り、信が爆発的な推進力で跳躍。大剣を頭上高くに掲げ、王騎の「重量」をなぞるような、すべてを真っ二つに叩き割る豪快な一撃を振り下ろしてきた。
(流水岩砕拳――剛柔一体・流星受け流し)
貫は一歩も退かず、左腕の『超螺旋・流星管』の側面を、信の大剣の刃へと滑らせるように接触させた。キィィィィィィィン!!!!流星鉄の二重積層構造は、信の渾身の一撃を傷一つなく受け止め、さらに管の表面にしなやかに施された『竜鱗の積層』が、大剣の持つ破壊エネルギーのベクトルを滑らかに真横へと受け流した。信の刃は虚しく空を切り、自重で地面の岩盤を激しく爆発させる。
「なっ……前より硬ぇし、滑る……!?」
信が驚愕に目を見開いた瞬間、貫の右手が、新生の長槍を管の中へと滑り込ませていた。
(超螺旋・管槍術――神速重爆穿光「流星・寸剄」)
右手で握られた柄が、管の内壁に刻まれた螺旋に接触した瞬間、槍の全体が超高速で自己回転を始めた。
キィィィンという独自の高周波の駆動音が響き、一本の太い光の濁流となって放たれる。模擬戦ゆえに、貫は穂先を僅かに外し、信の胸当ての「真横の空間」へと突きを放った。
ドゴォォォォォンッ!!!
真空の衝撃波が爆発的な暴風となって練兵場を吹き荒れる。
放たれた槍の圧搾空気の渦(風圧)だけで、信の頑強な巨体が数十メートルも後方へと派手に吹き飛ばされ、泥の中に転がった。さらに、その背後にあった頑丈な木の的が、触れてもいないのに風圧だけで木端微塵に弾け飛んだ。
「が、はっ……なんだ、今の突きの『回転』は……!? 触れてねえのに、風だけで身体が持って行かれそうになったぞ……!」
信が仰向けに倒れながら、驚嘆のあまり笑い声を漏らした。胸当ての表面が、風圧の摩擦熱で僅かに焦げている。
「これが、拓が鍛えてくれた『超螺旋』の力だ。お前が大剣を力でねじ伏せるなら、俺はこの槍の回転で、あらゆる理を穿ち砕く」
貫が、長槍を静かに引き抜き、カチャリと管を鳴らして構え直す。
「ヒャハハハ! 最高の化け物じゃねえか、貫! 燃えてきたぜ、まだまだこれからだァ!!」
信が泥を払い、再び大剣を強く握り締め直して立ち上がる。その瞳には、敗北への恐怖など微塵もなく、ただライバルの圧倒的な進化への歓喜と、それを超えようとする闘志だけが爆発的に燃え上がっていた。
「ああ、来い、信。俺たちの武で、次の時代を強引に引き寄せるぞ」
二人の若き百人将が、再び練兵場の中央で激突し、火花を散らす。切磋琢磨の鉄音が響き渡る咸陽の空の下。
新たなる神兵『超螺旋・流星管槍』の感覚をその肉体へと完全に馴染ませていく貫と、それを受けてさらなる野生の武を目覚めさせていく信。
この熱き双璧の手合わせは、やがて中華全土を巻き込む、次なる大戦「山陽攻略戦」に向けた、大いなる飛躍の序章となるのだった。
次回:第31話 不屈の宴、夜空に誓う大将軍