キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
激しい模擬戦の砂煙が収まり、練兵場に心地よい静寂が戻ってきた頃、穿紅軍の駐屯地には香ばしい肉の焼ける匂いと、新鮮な野菜を炒める小気味よい音が響き渡り始めていた。
「よおし! 手合わせで腹が減っただろ! 今日は百魔山の隠密行の帰りに手に入れた極上の山猪(やまいのしし)の肉と、採れたての山菜をふんだんに使った特製鍋だ! 遠慮せず食ってきな!」
エプロン代わりにボロ布を腰に巻いた工匠の拓が、鍛冶場から大きな鉄鍋を抱えて現れた。その中には、じっくりと煮込まれて黄金色のスープに浮かぶ肉厚の猪肉と、彩り豊かな地元の野菜が溢れんばかりに詰まっている。
「うおおおっ! 拓、お前、鍛冶だけじゃなくて料理まで天才かよ!」
信が目を輝かせ、木箸を両手に持って鍋へと突撃する。
「待て信、ずるいぞ! 一番美味そうな肉を真っ先に取るな!」
河了貂がすかさず信の手をパシッと叩き、飛信隊の面々からも一斉に笑い声が上がった。
穿紅軍の兵たちと飛信隊の兵たちは、並べられた長机を囲み、手を取り合って座っていた。つい先ほどまで死線を彷徨っていた馬陽の戦場から生還した者同士、言葉はなくとも通じ合うものがそこにはあった。
「……美味いな、拓。体に染み渡るようだ」
貫が静かに椀を傾け、猪肉の旨味を噛み締める。左腕から『超螺旋・流星管』を外し、リラックスした表情の彼の横には、同じく満足そうに箸を進める羌瘣がいた。
「これ、すごく、美味しい。力が、湧いてくる」
「だろ? 羌瘣ちゃんはもっと食べな! 馬陽じゃあ随分と無理してたみたいだからな!」
雷が大きな肉の塊を羌瘣の椀へと放り込み、鉄も大杯を掲げて飛信隊の尾平(びへい)たちと豪快に酒(若者は木の実のジュース)を酌み交わしている。
「しかしよ……」
信が、口いっぱいに肉を頬張りながら、ふと夜空を見上げた。咸陽の夜空には、馬陽の平原で見たものと同じ、満天の星々が美しく瞬いている。
「あの馬陽の戦いは、本当に凄かったな。俺たちの力なんて、あの巨大な渦の中じゃあほんの小さな羽虫みたいなもんだった。王騎将軍のあの一振りの『重量』……そして、李牧って男の張り巡らせた底の知れねえ蜘蛛の巣。思い出すだけで、まだ鳥肌が止まんねえよ」
信の言葉に、賑やかだった宴の席が一瞬、静まり返った。全員の脳裏に、あの戦場で目撃した「中華の頂点」の武と知略の姿が蘇っていたからだ。
軍師の梁が、静かに椀を置き、語りかける。
「李牧軍の連携は、組織としての完成度がこれまでの常識を超えていました。個の武勇だけでなく、戦術の質そのものを引き上げなければ、これからの大戦には生き残れない。それを身を以て知れただけでも、私たちの百人隊にとっては最大の財産です」
「ああ、全くだ」
貫が夜空を見つめ、自身の右手をじっと見つめた。
「王騎将軍の矛の重さは、ただの筋力ではない。背負ってきた人間の数、流した血の歴史そのものだ。俺の『流水岩砕拳』も『超螺旋・流星管槍』も、まだその領域には遠く及ばない。だが……だからこそ、挑戦し甲斐がある」
貫の瞳に、澄み切った、しかし烈火の如き熱い野心の穿光が宿る。
「おいおい、貫。お前、相変わらず冷静なツラして熱いこと言うじゃねえか」
信が不敵にニィと笑い、自身の愛用する大剣の柄を叩いた。
「俺は絶対に諦めねえ。王騎将軍が俺たちに見せてくれたあの『大将軍の景色』……あそこへ、誰よりも早く駆け上がってみせる。今回の戦いで、その気持ちがさらに強くなった。俺は、中華にその名を轟かせる、天下の大将軍になる男だ!」
信の堂々たる大言壮語に、飛信隊の兵たちが「そうだァ!」と歓声を上げる。
その熱い言葉を受け、貫もまた、静かに、しかし戦場全体を震わせるような淀みのない声で、自身の不屈の誓いを平原――いや、この咸陽の夜空へと響かせた。
「初めてお目にかかる……いや、ここにいる全員に改めて誓おう。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃百人隊『穿紅軍』を率いる百人将、貫(かん)だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、そして『積層流星槍』を以て、これから立ち塞がる中華のあらゆる不落の城、あらゆる神の知略を、その正面から一人残らず穿ち砕く。信、貴様が光の路を行くならば、俺はその影をも貫く最強の槍となり、貴様より先に大将軍の座へと登り詰めてみせる。我らの穿光の前に、並び立つ者など存在させん」
貫の傲る高ぶることのない、しかし絶対的な決意が込められた「自己紹介の誓い」を聞き、信は一瞬呆気に取られた後、最高の笑顔で吠えた。
「ハハハ! 言いやがったな貫! どっちが先に大将軍になるか、勝負だァ!!」
カチャャャャャン!!!!
信のジュースの木杯と、貫の椀が、夜空の下で激しくぶつかり合い、快い音を響かせた。
「俺たち突撃隊も、飛信隊の歩兵には負けねえぞ!」と雷が叫べば、「俺の盾が、すべての敵を撥ね退けて道を拓いてやる!」と鉄が笑う。
拓と河了貂も、次なる戦いに向けた新しい戦術や兵器のアイデアを語り合い、梁はそれを静かに微笑みながら木札に書き留めていく。
馬陽の死線を共に越えた、若き二つの百人隊。
彼らが囲む温かい飯と、語り合う熱き夢は、冷たい戦乱の時代を照らす不滅の灯火のようであった。
宴の賑わいは夜更けまで続き、若き双璧の誓いは、やがて中華全土を震撼させる次なる大戦「山陽攻略戦」の嵐の中へと、彼らを力強く押し出していくのだった。
次回:第32話 不落の巨盾、流水の衝撃波
次に書く二次創作小説の原作
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