キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜   作:キング・クリムゾン!!

33 / 35
オリキャラの強化&新兵器回です。ゆっくりしていってね。


第32話:不落の巨盾、流水の衝撃波

信たち飛信隊との熱い宴の翌日から、穿紅軍の駐屯地にある鍛冶場は、再び心地よい金属音と凄まじい熱気に包まれていた。

 

しかし、今回炉の前に立っている工匠の拓が睨みつけているのは、貫の槍ではない。副将である鉄(てつ)が馬陽の戦場でボロボロになるまで使い込み、重装騎兵の突撃によって無惨に中央が歪んでしまった『大盾』であった。

 

「……鉄さん。馬陽の戦いで、お前が命がけで李牧軍の突撃を受け止めてくれたおかげで、俺たちは生き残れた。だけど、今のままのただ頑丈なだけの盾じゃ、次の戦場――魏国の誇る重量級の装甲部隊や、廉頗四天王のような化け物たちの前には、お前の身体ごと真っ二つにされちまう」

 

拓が真剣な表情で、歪んだ盾の表面を撫でる。

その横で、鉄は自身の太い腕を組み、静かに頷いた。

 

「ああ。馬陽のときは、お前から貰った補強のおかげで首の皮一枚繋がったが、あの時の衝撃は今でも腕の骨の奥に残っている。どれだけ踏ん張ろうが、敵の『質量』そのものが俺の肉体の限界を超えてくれば、いつかは盾ごと押し潰されるな」

 

二人の会話を、傍らで自身の『超螺旋・流星管槍』を磨いていた貫が静かに聞いていた。

 

「拓、お前の頭の中には、すでに鉄さんの大盾をさらに進化させるビジョンがあるんだろう?」

 

「当たり前だろ、貫!」

 

拓は待ってましたとばかりに不敵に笑うと、鍛冶場の机の上に、これまた緻密に描き込まれた新しい大盾の設計図を広げた。

 

「貫の『超螺旋』が、管槍の内部の螺旋によって衝撃を『回転の破壊力』に変えるものなら、鉄さんの大盾に必要なのは、受け止めた敵の重撃を『流水の呼吸』と同調させて、そのまま相手に爆発的に突き返すギミックだ。名付けて――『流水反衝・巨鉄盾(りゅうすいはんしょう・きょてつじゅん)』!」

 

拓が図面の一点を力強く指さす。

 

「素材には、百魔山で手に入れた『流星鉄』の残りを、盾の表面の『竜鱗積層(りゅうりんせきそう)』に薄く、だけど強固に鍛え直して配置する。そして最大の特徴は、盾の裏側……鉄さんが腕を固定する強連動の内部だ。ここに、特殊な『高圧内部緩衝ばね構造』と、衝撃を一時的に蓄積する『蓄気鋼(ちくきこう)』を仕込む!」

 

「蓄気鋼だと……?」

梁が木札を片手に、興味深そうに図面を覗き込む。

 

「そうさ! 鉄さんが敵の重撃を受け止める瞬間、お前の得意な『流水岩砕拳――剛流・破岩不動陣』の呼吸を、盾の持ち手を通じて一気に叩き込むんだ。すると、流星鉄の表面が受け止めた敵の突撃エネルギーと、鉄さんの流水の気が盾の内部で一瞬にして限界まで圧縮される。そして、その溜まった全衝撃を、盾を前に押し出すと同時に『爆発的な斥力(反発力)』として前方に一気に解放する!」

 

「なるほどな……。ただ耐えるだけでなく、敵の力を利用して、相手の武器ごと肉体を弾き飛ばす『攻防一体の盾』か」

鉄の瞳に、武人としての武者震いが走る。

 

「よし、そうと決まれば鍛錬開始だ! 鉄さん、火床(ひどこ)の蛇腹(じゃばら)を思いっきり煽ってくれ! 貫、お前の流水の気も、この流星鉄の積層に馴染ませるために手を貸してくれ!」

 

「ああ、いくらでも使ってくれ」

 

そこから再び、穿紅軍の技術の粋を集めた過酷な鍛造が始まった。

拓の槌の音が激しく響き、鉄が汗だくになりながら炉の温度を極限まで保つ。貫は、流星鉄の鱗を一枚一枚盾の表面に焼き付ける鍛錬の段階から、鉄と共に『流水岩砕拳』の呼吸を送り込み、盾の鋼そのものに「流水の気の通り道」を形成していった。

 

さらに二日二晩が経過した。

水蒸気の凄まじい爆音と共に、ついにその異形の巨盾が完成した。

 

完成した盾は、以前のものより一回り大きく、鈍い銀色の流星鉄が、まるで大亀の甲羅か龍の鱗のように美しく格子状に配置されていた。裏面の持ち手は鉄の強靭な前腕を完全に包み込むように設計され、内部からはカチャカチャと精緻な機械構造の重厚な音が響いている。

 

「さあ、鉄さん! 練兵場でこいつの力を試そうぜ!」

拓の呼びかけで、穿紅軍の全兵士が練兵場へと集まった。実戦を想定し、突撃隊長の雷が、馬陽で鹵獲(ろかく)した趙軍の重量級の「破城用丸太(ラム)」を十人がかりで抱え、鉄の正面に構えている。

 

新しく生まれ変わった、この穿紅軍の絶対的な守護神たる盾の産声を告げるべく、副将の鉄は、巨盾を地面にドォンと突き立て、己の存在と不屈の決意を刻み込むように、淀みのない声を響かせた。

 

「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃百人隊『穿紅軍』が副将、鉄(てつ)だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して、天の星の鉄より鍛え上げしこの『流水反衝・巨鉄盾』を以て、我が百人将・貫の背中を狙うあらゆる刃、あらゆる装甲部隊の重撃を、その正面から跡形もなく撥ね退け、打ち砕く。我らが築くこの不落の壁を破る者など、中華のどこにも存在せぬ」

 

鉄の傲る高ぶることのない、しかし大地そのものが語りかけてくるかのような絶対的な安定感を放つ自己紹介。その瞬間、彼の流水の呼吸が、巨盾のグリップを通じて完全に同調した。

 

「いくぞ、鉄さん! 遠慮なくぶち当てるぜ!……全軍、突撃ィィィ!!」

雷の号令と共に、十人の大男たちが抱えた巨大な破城丸太が、猛烈な突進速度を伴って鉄の正面へと肉薄する。直撃すれば、並の盾兵なら数メートル吹き飛んで即死する破壊の質量。

 

(流水岩砕拳――剛流・破岩不動陣「反衝」)

 

鉄は腰を深く落とし、巨鉄盾を真っ直ぐに構えた。

 

ズガァァァァァンッ!!!!

 

丸太が盾の表面に激しく激突した瞬間、強烈な衝撃音が練兵場に轟く。

しかし、鉄の肉体は一寸たりとも後退しなかった。それどころか、激突の刹那、盾の内部の『蓄気鋼』に敵の突撃エネルギーが完全に吸い込まれ、盾の表面の竜鱗が妖しく銀色に発光した。

 

「――そこだァッ!!」

 

鉄が短く呼気を吐き出し、盾を前方へと力強く一歩押し出す。

その瞬間、持ち手の緩衝ギミックが解放され、蓄積されたすべての衝撃波が、鉄の流水の気と共に前方に爆発的に解き放たれた。

 

ドゴォォォォォンッ!!!

 

「うわああああっ!?」

丸太を抱えていた雷をはじめとする十人の精鋭たちが、触れてもいない目に見えない「衝撃の壁」によって、まるで木の葉のようにまとめて後方へと派手に吹き飛ばされ、泥の中に転がった。さらに、十人がかりで抱えていた頑丈な破城丸太は、真ん中からへし折れ、木端微塵に弾け飛んでいた。

 

「な……何だよ今の……!? ぶつかった瞬間に、俺たちの突進の力がそのまま倍になって返ってきたぞ……!」

雷が頭をさすりながら、驚愕に目を見開く。

 

「す、凄い……! 完璧だ! 衝撃の吸収と反発のタイミングが、鉄さんの呼吸と完全に一致している!」

拓が拳を突き上げて大歓声を上げ、梁もその驚異的な防御能力の数値を木札に書き込みながら興奮を隠せない。

 

貫は、傷一つなく鈍い光を放ち続ける巨鉄盾と、その盾を構えて不敵に笑う鉄の姿を見つめ、静かに笑みを浮かべた。

 

「見事だ、拓、鉄さん。これで穿紅軍の『矛』と『盾』は、共に神の領域に至った」

 

最強の攻撃を誇る貫の『超螺旋・流星管槍』、そしてあらゆる重撃を爆発的に撥ね返す鉄の『流水反衝・巨鉄盾』。

限界を超えた絆と技術によって、二つの神兵を手に入れた穿紅軍は、もはやただの百人隊ではない。迫り来る次なる大戦「山陽攻略戦」の嵐を前に、彼らは秦国最強の特殊遊撃部隊として、中華の歴史を正面から穿ち変えるための圧倒的な牙を、完全に完成させたのだった。




次回:第33話 宿命の青き炎、魏国国境への進軍

ちなみに、鉄さんの盾の効果は簡単に言えば七つの大罪のメリオダスのフルカウンターの能力を盾に移したようなものです。ご了承ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。