キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
「おのれぇぇぇ! 秦国の、秦国の若造どもがァァァッ!!」
装甲城門を正面から消し飛ばされ、怒髪天を突いた黒狼城の主・魏竜(ぎりゅう)が、本丸へと続く広場へ向かって怒涛の勢いで駆け下りてきた。その巨躯から放たれる殺気は、周囲の魏兵すら怯えさせるほど凄まじく、背負った巨大な大斧が、城壁の篝火(かがりび)を浴びて凶悪な青い光を放っている。
「邪魔だてする者は、味方ごと叩き斬るッ!!」
魏竜が大斧を横一文字に薙ぎ払う。その一撃は、混乱して逃げ惑っていた自軍の兵もろとも、前線にいた飛信隊の歩兵二人を鎧ごと真横に吹き飛ばした。
「がはっ!?」
圧倒的な質量と、介子坊直伝の「すべてを叩き潰す」破壊の重量。その一気呵成の武勇を前に、突入したばかりの秦軍の勢いが一瞬だけ止まる。
「へっ、大層な獲物を振り回してんじゃねえか、魏の巨漢が!」
その鉄嵐の真っ只中へ、誰よりも早く飛び込んだのは信(しん)であった。亡き友、漂から受け継いだ剣を上段に構え、魏竜の頭上へと渾身の力で斬り下ろす。
ギィィィィィィィンッ!!
信の猛撃を、魏竜は強引に大斧の柄で受け止めた。火花が夜闇を照らし、強烈な金属音が広場に響き渡る。
「ぬぅっ!? このガキ、なんという重さだ……!」
「お前が廉頗の四天王の弟子なら、俺はその廉頗と並び立つ『六大将軍・王騎』の魂を受け継いだ男だ、ナメんじゃねえぞッ!!」
信が顔に青筋を浮かべながらさらに剣を押し込むが、魏竜は不敵に牙を剥いた。
「若造が、小癪なァッ!」
魏竜が驚異的な怪力で信の剣を撥ね除け、そのまま返す刀で、信の胴体を真っ二つにせんと大斧を激しく振り抜く。
「危ねえ、信!!」
尾平たちが悲鳴を上げる。信の体勢は完全に崩れており、大斧のブレードがその脇腹へと肉薄していた。
――その刹那、青き光の残像が、信の視界を横切った。
カチャリ、と重厚な機械音が鳴り響くと同時に、放たれたのは神速の突き。
(流水岩砕拳――柔流・水月穿)
ガキィィィィンッ!!!!
魏竜の必殺の大斧の軌道を、真横から正確に弾き、軌道を逸らしたのは、貫(かん)の放った『積層流星槍』であった。超螺旋の回転を「いなす(受け流す)」方向へと応用した神速の防御。大斧の刃は信の数寸手前で空を切り、地面の石畳を爆発音とともに深く抉った。
「すまねえ、貫!」
「気にするな、信。一人で功を焦るからそうなる。……行くぞ!」
貫は左腕の『超螺旋・流星管』をガチリと鳴らし、愛槍を正眼に構え直す。
予期せぬ「二人の怪物」を同時に相手にすることとなった魏竜は、激しい息を吐き出しながら、大斧を再び天へと掲げた。
新しく千の軍勢を率いる秦国の双璧として、そして廉頗の遺伝子をここで完全に断つ者として、貫は魏竜の放つ圧倒的な殺気の真っ正面に立ち、淀みのない、しかし戦場全体を平伏させるような声を響かせた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫(かん)だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、そして『積層流星槍』を以て、貴様が誇る介子坊流の重撃、その正面から跡形もなく穿ち砕く。信、貴様が敵の『剛』を崩す矛となるならば、俺は敵の『隙』を穿つ旋風だ。二つの千人隊の武の真髄、この魏の猛将に叩き込んでやるぞ」
貫の傲る高ぶることのない、しかし勝利を完全に手中に収めた将としての絶対的な覇気をはらんだ自己紹介。
それを聞いた信は、不敵に笑い大剣を構え直した。
「へっ、最高の相棒じゃねえか! 行くぞ、貫ァ!!」
「小癪な雛鳥どもがァァァッ! まとめて細切れにしてくれるわ!!」
魏竜が地響きを立てて突進し、大斧を激しく振り回す。
ここから、戦場にいた誰もが息を呑む、若き二人の千人将による圧倒的な共闘劇が始まった。
「オラァッ!!」
まず信が、魏竜の正面から肉薄し、その大剣の圧倒的な『重量』で魏竜の大斧の連撃を受け止め、力任せに押し込んでいく。
「ぬぐぅっ! 馬鹿力が!」
魏竜が信のパワーに意識を取られた、そのわずかな一瞬。
「――そこだ」
貫の肉体が流水の如く滑らかな動きで、魏竜の死角へと滑り込む。左腕の流星管が高速回転を始め、キィィィンという高周波の産声とともに、必殺の突きが放たれた。
(流水岩砕拳・剛流――超螺旋・流星撃)
ドスバァァァァァンッ!!!!
超高速回転する積層流星槍の穂先が、魏竜の右肩の分厚い重装甲を、まるで紙切れのように容易くねじ切り、貫いた。
「ぐああああああっ!?」
激しい火花と血飛沫が舞い、魏竜の右腕から力が抜ける。その隙を、野生の獣である信が見逃すはずがなかった。
「これで、終わりだァァァッ!!!」
信が地面を蹴り上げ、空中へ高く跳び上がる。王騎の姿を彷彿とさせるような、すべてを乗せた大剣の猛撃が、満月を背に振り下ろされた。
ズバァァァァァァァァンッ!!!!
信の一閃は、魏竜の誇る巨大な大斧の柄を真っ二つに叩き折り、そのまま魏竜の巨躯を胸元から一刀両断にした。
「ば、馬鹿な……我が、介子坊流の武が……このような、子供らに……」
魏竜は信じられないという表情のまま、折れた大斧とともに、その場にどさりと崩れ落ち、二度と動かなくなった。
「敵将、魏竜! 穿紅軍の貫、飛信隊の信が討ち取ったりィィィ!!!」
信が天に向かって大剣を掲げ、勝利の咆哮を上げる。
「おおおおおおおっ!!!」
城内を埋め尽くす穿紅軍と飛信隊の兵たちから、黒狼城を揺るがすほどの地鳴りのような大歓声が沸き起こった。主将を失った魏兵たちは、完全に戦意を喪失し、次々と武器を捨てて降伏していった。
「やったな、貫!」
信が満面の笑みで貫の肩を叩く。
「ああ。だが、これで山陽への道が開かれたに過ぎない。本番は、蒙驁(もうごう)将軍の本隊が到着してからだ」
貫は静かに槍を引き、工匠の拓が作ってくれた左腕の流星管を見つめた。昌平君から下された「黒狼城の隠密制圧」を、完璧な正面突破と圧倒的な武を以て、わずか半日で成し遂げた二つの千人隊。
若き穿光・貫と、烈火の如き信。この二人の双璧が率いる千人隊は、魏国の大地にその名を轟かせ、これから始まる『山陽攻略戦』という巨大な歴史の嵐の中心へと、さらに深く突き進んでいくのだった。
次回:第39話 新星、山陽に集う
次に書く二次創作小説の原作
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