キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
天険の要塞『黒狼城』を電撃的に陥落させた穿紅軍と飛信隊は、昌平君の命じた特殊任務を完璧に遂行し、熱気冷めやらぬまま秦軍の主力へと合流を果たした。
そこは、魏国攻略の要衝『山陽』の広大な平原に築かれた、秦国総大将・蒙驁(もうごう)が率いる二十万の大本陣。地平線の彼方まで埋め尽くす漆黒の軍旗と無数の天幕は、これから始まる大戦の規模を無言で物語っていた。
「おいおい、すげえ数の天幕だな……!」
突撃隊長の雷が、馬上で周囲を見回しながら圧倒されたように呟く。
「感心している暇はありませんよ、雷」軍師の梁が木札をまとめながら前方を指差す。
「私たちの目的地はあちら、若手将校の天幕です。すでに先客が来ているようですね」
穿紅軍と飛信隊が指定された天幕へ足を運ぶと、そこにはすでに、異様な緊張感と華やかな覇気を放つ二つの若き千人隊が陣を敷いていた。
一つは、洗練された白銀の装甲と、一糸乱れぬ一撃必殺の槍陣を誇る王賁(おうほん)率いる『玉鳳隊(ぎょくほうたい)』。
もう一つは、優美な染め色の羽織をまとい、しなやかで隙のない陣形を敷く蒙恬(もうてん)率いる『楽華隊(がくかたい)』。
「やあ、待っていたよ。黒狼城をたった二つの千人隊で落としたんだって? 相変わらず無茶苦茶をやるね、君たちは」
天幕の入り口で、飄々とした笑みを浮かべた蒙恬がひらひらと手を振って出迎えてくれた。
「フン、衝車も使わずに正面の装甲城門を粉砕したと聞いたが、どうせ飛信隊のそこの野獣が力任せに暴れただけの、品性のない戦い方だったのだろう」
奥から冷徹な声とともに姿を現したのは、愛槍を携えた王賁だった。その鋭い視線が信、そして貫(かん)の左腕にある鈍い銀光を放つ『超螺旋・流星管』へと注がれる。
「んだとコラァ、王賁! お前ら玉鳳隊がもたもた進軍してる間に、俺と貫で魏竜の首を引っ捕らえてやったんだよ!」
信がすぐさま噛み付くが、王賁はフッと鼻で笑って一蹴する。
「お前たちの運が良かっただけだ。これからの山陽本戦は、そんな小細工や野性が通用するほど甘くはない」
緊迫する若き傑物たちの空気。これから始まる大戦を前に、次世代の秦国を背負う千人将の一人として、貫は愛槍『積層流星槍』を静かに地面へと突き立て、全員の視線を一身に集めるような、淀みのない声を響かせた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫(かん)だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、そして『積層流星槍』を以て、本戦にて我らの前に立ちはだかる魏国の全軍、あらゆる堅牢なる防陣を、その正面から一人残らず穿ち止める。王賁、我が穿紅軍の武は運にあらず、必然の破壊だ。蒙恬、貴殿の知略の道標となるならば、我が槍の穿光、喜んで最前線で振るおう。四つの千人隊、互いに競い合い、この山陽の大地で誰が本物の新星か、白黒つけようではないか」
貫の傲る高ぶることのない、しかし王賁の冷徹なプライドすら正面から受け止める、絶対的な将の覇気をはらんだ自己紹介。
それを聞いた王賁は、わずかに眉を動かし、貫の『超螺旋』の腕をじっと見つめた後、静かに視線を外した。「……穿紅軍、貫か。その大言壮語、戦場で真偽を確かめさせてもらう」
「あはは、最高だね! 貫君は信と違って、すごく理知的で格好いいや」
蒙恬が楽しそうに笑いながら、一同を天幕の中央にある巨大な戦術地図の前に促した。
「さあ、冗談はここまでにして、次なる作戦会議を始めようか。僕たちの役目は、この山陽平原の中央に陣を敷く、魏軍の副将『介子坊(かいしぼう)』の直属部隊を切り崩すことだ」
蒙恬の言葉に、軍師の梁と河了貂が素早く地図の前に進み出る。
「介子坊……。黒狼城で貫さんと信が討ち取った魏竜の、師匠にあたる男ですね」
梁が冷静に呟くと、河了貂も「うん、魏竜よりもさらに強固な重装甲部隊と、数倍の破壊力を持った本物の怪物の軍勢だよ」と表情を曇らせた。
「あの城門を穿った君の『超螺旋』の威力、そして鉄殿の『巨鉄盾』の防御力があれば、介子坊の重装陣形にも正面から風穴を開けられるはずだ」
蒙恬が鋭い目付きで貫に提案する。
「それなら、その開いた穴に俺たち飛信隊が突っ込んで、介子坊の首をへし折ってやる!」
信が拳を突き出す。
「待ちたまえ。中央の突破口を開くのは、我が玉鳳隊の誇る至高の槍陣だ。穿紅軍は側面の防御に回るがいい」
王賁がすかさず割って入り、会議は一瞬にして熱い激論へと変わっていった。
蒙恬の『楽華隊』、王賁の『玉鳳隊』、信の『飛信隊』、そして貫率いる『穿紅軍』。
互いの実力を認めつつも、決して手柄を譲る気のない四人の若き千人将たち。彼らの放つ凄まじい熱量と闘志は、狭い天幕を完全に支配していた。次世代の秦国を担う若き双璧、いや「四つの新星」が揃い踏みした山陽の地で、かつてない激戦の火蓋が、いま静かに切って落とされようとしていた。
次回:第40話 双璧の龍、平原を穿つ
次に書く二次創作小説の原作
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