キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
「ぬおォォォォォッ!!」
胸甲を粉砕され、鮮血を撒き散らしながらも、介子坊の動きは止まらなかった。廉頗の第一の部下として、幾多の死線を潜り抜けてきた怪物の執念。喉元へと迫る王賁の『龍指』を、介子坊は信じがたい反応速度で巨大な大刀の柄を突き出し、強引に弾き返した。
ガキィィィィィンッ!!
「チッ、浅いか……!」
王賁が舌打ちをしながら、馬の手綱を引いて距離を取る。
「ガハッ……! 小着どもが、よくも我が肉体をここまで傷つけたな。だが、廉頗四天王が筆頭、介子坊の『武』は、この程度の傷で揺らぐほど軽くはないわァ!!」
介子坊の瞳が血の赤に染まり、その巨躯から立ち上る将気がさらに狂暴な黒い炎となって吹き荒れる。重傷を負うことで逆にその防衛本能が完全に破壊され、純粋な戦鬼と化したのだ。大刀を大きく振り回すその一振りの風圧だけで、周囲の地面の岩盤がバリバリと捲れ上がっていく。
「新兵ども、怯むな! 奴の動きは確実に鈍っている!」
両足を土に埋め、満身創痍の状態で叫ぶのは副将の鉄だ。軍馬を失い、口から血を流しながらも、その両手は未だに『流水反衝・巨鉄盾』をガチリと握り締めている。盾の表面は、先ほどの激突の衝撃で鎔解流星鉄が激しく火花を散らし、黒煙を上げていた。
「鉄さん、無理をするな!」「いや、まだだ貫様! 俺のこの盾が生きている限り、奴の一撃は必ず俺が受け止める! 貫様と王賁、お前たちの槍で、あの化け物の息の根を止めてくれッ!!」
鉄が最後の力を振り絞り、再び盾を正面に構える。その姿に応えるように、貫の左腕の『超螺旋・流星管』が、限界を超えた超高速回転へと移行し、大気を激しく引き裂く高周波の駆動音を響かせた。
狂暴化した介子坊が、大刀を上段へと構え、すべての質量を乗せて鉄へと突撃する。城壁をも粉砕する、まさに絶望の鉄槌。
だが、命を懸けて壁となる鉄の背中を信じ、玉鳳の王賁とともに新たなる時代の幕を開ける真の将として、貫は馬上、淀みのない声を平原へと轟かせた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫(かん)だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、そして『積層流星槍』を以て、狂暴化せし廉頗四天王筆頭・介子坊、貴様の放つ最後の重撃、その芯ごと正面から跡形もなく穿ち砕く。王賁、我が超螺旋が再び奴の肉体を抉る。玉鳳の至高の槍を、その隙に叩き込め!」
貫の傲る高ぶることのない、しかし世界の質量をもねじ切る絶対的な自己紹介の激。
その瞬間、介子坊の大刀が振り下ろされ、同時に鉄の巨鉄盾がそれを真正面から受け止めた。
ズゴォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!
衝撃で鉄の防具が弾け飛び、凄まじい衝撃波が周囲を吹き飛ばす。だが、鉄が命を賭して作り出した、ほんの数寸の制動の時間。
その瞬間、貫の右腕が爆発的な速度で突き出され、積層流星槍が流星管へと叩き込まれた。
(流水岩砕拳・剛流奥義――超螺旋・流星一点穿・芯貫)
ドガァァァァァァァァァァンッ!!!!!!!!
放たれた超螺旋の破壊力は、介子坊の大刀の刀身、その力の集約点へと正確に着弾した。魏国特製の超厚装甲をも容易に穿ち砕く拓の螺旋エネルギーは、介子坊の大刀をその根元からバリバリと音を立てて粉砕し、そのまま怪物の右肩の関節を完全にねじ切った。
「ぐわァァァァァァァッ!?」
介子坊が絶叫し、その巨躯が大きく仰け反る。
「――仕留めるッ!!」
その完璧な隙を、王賁の瞳が見逃すはずがなかった。白銀の閃光が戦場を駆ける。玉鳳隊の誇る千人将が、己のすべての覇気と技術を一点に凝縮し、放った究極の一突き――。
(槍術極意――龍指・連閃)
ブシュゥゥゥゥゥッ!!!!
王賁の放った神速の槍は、介子坊の分厚い首筋を完全に貫き、真後ろへと突き抜けた。
怪物の巨躯が、一瞬の静寂ののち、どさりと音を立てて平原の土へと崩れ落ちる。
「て、敵総大将……廉頗四天王筆頭・介子坊! 穿紅軍の貫、玉鳳隊の王賁が、討ち取ったりィィィ!!!」
番陽の狂おしいほどの勝鬨の声が、山陽の平原へと響き渡り、魏軍の二万の大軍勢は、総大将の戦死を目の当たりにして完全に戦意を喪失し、総崩れとなって敗走を始めるのだった。
次回:第47話 巨星墜つ、新たなる光