キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
「て、敵総大将……廉頗四天王筆頭・介子坊! 穿紅軍の貫、玉鳳隊の王賁が、討ち取ったりィィィ!!!」
番陽の裂けんばかりの勝鬨が、山陽の平原へと響き渡る。
かつて秦の六大将軍や趙の三大天とも互角に渡り合った伝説の系譜、その筆頭たる介子坊の巨躯が土煙に沈んだ瞬間、二万の魏軍は、まるで頭部を失った大蛇の如く完全にその動きを止めた。
「介子坊様が、討たれた……?」
「嘘だろ、あの怪物のようなお方が、秦国の雛鳥ごときに……!」
恐怖は一瞬にして伝播し、魏軍の強固だった包囲網は内側から瓦解を始める。その極限の好機に、戦場の後方から凄まじい大音声が降ってきた。
「待たせたなァ、貫、王賁!! 美味いところを二人だけで終わらせんじゃねえぞォ!!」
地平線を割り、大泥流の如く魏軍の本陣横へと突入してきたのは、信率いる『飛信隊』、そしてしなやかにその側面を固める蒙恬の『楽華隊』であった。介子坊が前線へ移動し、完全に手薄となっていた本陣へ、蒙恬の完璧な手際による奇襲が炸裂したのだ。
「飛信隊、突撃ィィィ!! 逃げる敵を一人も残すなァ!!」
信が大剣を豪快に振り回し、総崩れとなった魏兵を馬ごと次々と叩き割っていく。
「楽華隊、各個撃破だよ。穿紅軍と玉鳳隊が作ってくれた最高の舞台だ、僕たちも華麗に決めようか」
蒙恬の流れるような指揮により、魏軍の退路は完全に断たれ、戦場は秦国の若き四つの新星による一方的な掃討戦へと変貌した。
半刻(約一時間)の後、鳴り響いていた怒号と金属音は静まり返り、山陽の広大な平原には、秦軍の完全勝利を告げる漆黒の軍旗が幾重にも翻っていた。
「……ふぅ、危ないところだったな」
突撃隊長の雷が、双剣の血を拭いながら地面に座り込む。
その横では、軍馬を失い満身創痍となった副将の鉄が、工匠の拓に肩を貸されながらも、未だに『流水反衝・巨鉄盾』を離さずに不敵な笑みを浮かべていた。
「へへ、見たか拓。お前の鍛えた盾のおかげで、俺の骨は一本も折れちゃいねえぞ」
「無茶をしすぎです、鉄さん。防具の内部回路が焼き切れて、あと一撃受けていたら盾ごと粉々でしたよ」
拓は呆れ顔ながらも、鉄の無事を心から安堵するようにその肩を強く叩いた。
激戦の跡地、血煙の立ち込める中心で、貫、王賁、信、蒙恬の四人の千人将が馬を並べ、互いの健闘を称え合うように視線を交わした。
新しく千の軍勢を率いる真の傑物となり、並び立つ戦友たちと共に介子坊という巨大な壁を正面から穿ち砕いてみせた穿紅軍。その将として、貫は『積層流星槍』を静かに鞘へと収め、淀みのない声を響かせた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、あるいは仲間の命を繋ぐ『流水の防陣』を以て、廉頗四天王が筆頭・介子坊を、ここに討ち果たした。王賁、貴殿の槍がなければ、この首は挙がらなかった。信、蒙恬、貴殿らの完璧な奇襲が、この戦いを完全勝利へと導いた。四つの千人隊が力を合わせれば、いかなる伝説だろうが正面から穿ち砕ける。我らの進む道に、もはや敗北の二文字はない」
貫の傲る高ぶることのない、しかし怪物を屠った真の勝者としての絶対的な覇気をはらんだ自己紹介の激。
それを聞いた信は、体中の血を再び沸騰させるように大笑いした。
「へっ、最高の戦いだったぜ、貫! だが、これで終わりじゃねえ。介子坊を討ち取ったってことは、次はいよいよ、あの本物の化け物が黙っちゃいねえはずだ」
信の視線の先――遥か地平線の向こう、魏国の本城へと続く空には、介子坊の死を感じ取ったかのような、一際巨大で禍々しい「雷雲」が立ち込め始めていた。
「ああ、信の言う通りだね」
蒙恬が笑みを消し、鋭い瞳でその雲を見つめる。「介子坊を失った魏軍は、残る四天王、そして真の総大将であるあの生ける伝説……『廉頗』大将軍本人が、いよいよその全軍を率いて僕たちの前に立ちはだかるはずだ」
「フン、望むところだ。廉頗が何ほどのものか、我が玉鳳の槍でその神話を終わらせてやる」
王賁が槍を強く握り締め、冷徹に言い放つ。
「……迎え撃つ。我が穿紅軍の進化した矛と盾で、その伝説ごと、正面から穿ち砕くのみだ」
貫が左腕の流星管をカチャリと鳴らし、静かに闘志を燃やす。
介子坊という巨星を叩き落とし、山陽の地にその名を轟かせた四人の若き新星たち。しかし、彼らの前に立ちはだかるのは、中華の歴史そのものである大将軍・廉頗。新たなる時代の幕開けを告げる真の決戦へ向けて、若き双璧たちは、さらなる激流の中へと力強く歩みを進めるのだった。
次回:第48話 山陽震天、生ける伝説の進撃