キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜   作:キング・クリムゾン!!

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続きです。ゆっくりしていってね。


第48話:山陽震天、生ける伝説の進撃

介子坊という大巨星を叩き落とした熱気が色濃く残る平原から、貫、王賁、信、蒙恬の四人の千人将は、秦国総大将・蒙驁(もうごう)が鎮座する巨大な本陣へと呼び出されていた。

 

本陣を囲む幾重もの天幕をくぐり、中央の巨大な総大将天幕へと足を踏み入れると、そこには白髭を蓄えた巨体の老将、蒙驁大将軍が厳かに腰を下ろしていた。

 

「よくぞやった、若き新星どもよ。廉頗四天王が筆頭、介子坊を千人隊の連携を以て討ち取るとは、我が目を疑うほどの快挙である」

蒙驁の温厚な顔に、深い歓喜の笑みが浮かぶ。

「特に穿紅軍の貫、玉鳳隊の王賁。お前たちの放った矛と盾の武勇、昌平君へもすぐさま伝令を飛ばした。秦国の未来は、確かに明るい」

 

「もったいないお言葉です、総大将」王賁が最敬礼を捧げ、信も「へへっ、当然だろ蒙豪将軍!」と鼻を鳴らす。

 

だが、勝利の余韻に包まれる天幕の空気を、一人の血まみれの伝令兵が飛び込んできたことで、一瞬にして凍りつかせた。

 

「ほ、報告! 左翼戦線、完全に崩壊! 魏軍総大将・廉頗本人が率いる五万の本隊が、我が軍の防衛線を紙切れのように引き裂きながら、この本陣へと向かって猛進中!!」

 

「何だとォッ!?」

信が叫び、蒙恬の顔から笑みが消える。

 

「ば、馬鹿な……左翼には三万の精鋭を配置していたはずだぞ!」

番陽が狼狽の声を上げるが、伝令兵はガタガタと震えながら言葉を続けた。

「だ、大将軍・廉頗の一振りの前に、我が方の千人将、三千人将が瞬時に五人討ち取られました……! 敵の進撃速度は異常、もはや天災の如き大泥流であります!!」

 

天幕の全員が息を呑む。介子坊を討ち取った喜びなど、一瞬にして吹き飛ぶほどの絶対的な絶望。

かつて中華全土を恐怖で支配した本物の怪物、元・趙国三大天の廉頗が、ついにその全力を以て動き出したのだ。

 

だが、五万の軍勢がもたらす地響きが天幕を揺らす中、穿紅軍の将として、そして仲間の揺らぐ心を繋ぎ止める真の柱として、貫は『積層流星槍』の石突をドォンと地面へと突き立て、淀みのない声を天幕へと響かせた。

 

「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、あるいは『積層流星槍』を以て、左翼を崩壊させし魏軍総大将・廉頗、その生ける伝説が率いる五万の本隊ごと、正面から一人残らず穿ち止める。蒙驁大将軍、我が穿紅軍の防陣、そして四つの千人隊の武の真髄がある限り、本陣への到達は断じて許さぬ。伝説を討ち破り、新たなる時代を切り拓く光、この山陽の地に築いてみせよう」

 

貫の傲る高ぶることのない、しかし大将軍・廉頗の圧倒的な将気すらも正面から受け止める、絶対的な自己紹介の激。

その凛とした声は、天幕を支配していた恐怖を瞬時に消し飛ばし、若き将たちの瞳に再び闘志の炎を灯した。

 

「ふっ、そうだね。相手が伝説なら、僕たちがそれを超える新星になればいいだけの話だ」

蒙恬が鋭い目付きで戦術地図を睨みつける。

 

「フン、三大天の全盛期を知らぬ我らにとって、廉頗などただの老兵に過ぎん。我が玉鳳の槍で、その首を突き刺してくれる」

王賁が愛槍を握り直し、冷徹な闘志を爆発させる。

 

「おうよ! 介子坊の次は、あのじいさんを討ち取って、俺が天下の大将軍になる道標にしてやるぜ!」

信が王騎の大剣を誇らしげに掲げ、不敵に牙を剥いた。

 

「おお……若き龍たちが、これほどまでに頼もしく育っておったとはな……」

蒙驁の目から、感動の涙が微かに溢れる。老将は深く息を吸い込み、総大将としての威厳に満ちた表情で立ち上がった。

 

「全軍、迎撃態勢! 穿紅軍、玉鳳隊、飛信隊、楽華隊! お前たち四つの千人隊を、この本陣最前線の防衛主軸に任命する! 迫り来る廉頗の鉄槌を、お前たちの若き力で食い止めてみせよ!!」

 

「ハッ!!」

 

四人の千人将が同時に応じ、天幕を飛び出していく。

遥か地平線、山陽の空を完全に覆い尽くす漆黒の暗雲と、その中心から放たれる、かつてないほど巨大な廉頗の将気の嵐。中華の歴史そのものである生ける伝説との、生き残りと時代を懸けた真の大決戦が、今まさに火蓋を切ろうとしていた。




次回:第49話 天天の双剣、穿光の螺旋
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