キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜   作:キング・クリムゾン!!

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続きです。ゆっくりしていってね。


第49話:天天の双剣、穿光の螺旋

地平線を真っ黒に染め上げる五万の魏軍本隊。その圧倒的な軍勢が近づくにつれ、大地の震動は激しさを増し、秦軍の本陣を囲む空気が完全に歪んでいた。

 

蒙驁大将軍より本陣最前線の防衛主軸を任された四つの千人隊は、互いに連動しつつ迎撃の陣を敷く。その中央、もっとも激しい激突が予想される平原のど真ん中で、地を割るような大歓声とともに、魏軍の先鋒が突入してきた。

 

「突撃ィィィ!! 廉頗大将軍の道を阻む、秦国の雛鳥どもを一人残らず切り刻めッ!!」

 

魏軍の先頭を駆けるのは、かつて開戦前に秦国の将軍たちを次々と闇に葬り去った、廉頗の「天の剣」――四天王の一人、輪虎(りんこ)であった。

幼子の如き無垢な容貌とは裏腹に、その両手に握られた双剣から放たれるのは、一切の慈悲なき超高速の剣嵐。輪虎率いる特攻騎兵隊が放つ、風そのものと化した神速の突撃を前に、秦軍の防衛線の一角が容易く引き裂かれていく。

 

「見つけたよ、飛信隊の信。……そして、介子坊を討ち取ったという、穿紅軍の将もね」

 

輪虎の鋭い視線が、前線で大剣を構える信、そしてその隣で静かに槍を正眼に構える貫へと注がれた。

 

「輪虎ォォォッ!! ここで会ったが百年目だ、お前の首は俺がぶち抜く!!」

 

信が激昂し、王騎の大剣を上段から叩きつける。しかし、輪虎は愛馬を滑らかに操り、その一撃を双剣の軌道で軽々と受け流すと、目にも留まらぬ速度の返し刃で信の胸元へと肉薄した。

 

「相変わらずいい重さだね。でも、速さが足りないよ」

 

――(流水岩砕拳――柔流・水月穿)

 

ガキィィィィィンッ!!!!

 

信の肉体を切り裂くはずだった輪虎の双剣の一振りを、真横から正確に弾き飛ばしたのは、貫の放った『積層流星槍』の神速の突きであった。

 

「へえ……僕の剣を正面からいなすなんて。君が介子坊の重装甲をねじ切った、貫くんだね」

 

輪虎が空中を舞うように馬を操り、着地しながら不敵に微笑む。

 

超高速の「天の剣」を前にして、新たなる千人隊を率い、信とともに廉頗の至高の剣を正面から叩き潰す秦国の新星として、貫は左腕の『超螺旋・流星管』をカチャリと鳴らし、淀みのない声を平原へと響かせた。

 

「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、あるいは『積層流星槍』を以て、廉頗四天王が一人・輪虎、貴様の誇る超高速の双剣、その一糸乱れぬ連撃ごと、正面から跡形もなく穿ち砕く。信、貴様が敵の『心』を揺さぶる一撃を放つなら、俺は敵の『速』を殺す旋風だ。二人がかりを卑怯と思うな、これが我らの、時代を掴む武の極みだ」

 

貫の傲る高ぶることのない、しかし輪虎の神速すらも完全に捉える絶対的な自己紹介の激。それを聞いた信は、不敵にニィと牙を剥いた。

 

「へっ、卑怯もクソもあるかよ! 行くぞ貫、こいつをここで仕留めるぞ!!」

 

「あはは、面白いね! 二人まとめて僕の剣の錆にしてあげるよ!」

 

輪虎の瞳から無垢な光が消え、底知れぬ暗殺者の狂気が爆発する。輪虎の肉体が馬上でブレたかと思った瞬間、全方位から無数の白い剣閃が、貫と信の二人へと同時に降り注いだ。

(輪動)

 

キィィィン、ガガガガガガガガッ!!!!

 

信が大剣を盾のようにして必死に防ぐ中、貫は左腕の流星管を限界を超えて駆動させた。キィィィンと天を劈く高周波の音とともに、槍の穂先が超高速回転を始める。

 

(流水岩砕拳・剛流――超螺旋・流星連穿)

 

貫の放つ螺旋の突きは、一本一本が強烈な竜巻となり、輪虎の放つ超高速の剣嵐を、正面から一つ残らず弾き返し、逆にその双剣の軌道を強行突破して肉薄していく。

 

「何という速度、そしてこの回転の破壊力……! 僕の剣が、芯からねじ切られそうになる……!」

 

輪虎の顔に、初めて焦りの色が走る。貫の超螺旋によって、その神速のステップが、ほんの一瞬だけ、平原の土の上に縛り付けられた。

 

「――そこだァァァッ!!」

 

貫が作り出した、怪物の唯一無二の静止。その瞬間を、野生の獣である信が見逃すはずがなかった。空高く飛び上がった信の剣の猛撃が、輪虎の頭上から一気に振り下ろされた。

 

秦国の若き二人の千人将による、完璧な剛柔一体の共闘。輪虎の超高速の双剣と、貫の超螺旋の穿光、そして信の魂の一撃が激しく交錯する山陽の本戦最前線は、生ける伝説の先鋒を完全に揺るがす、烈火の如き死闘へと突入していくのだった。




次回:第50話 天の剣、落つ
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