キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
「あはは、本当に君たちは面白いな……!」
輪虎の顔から笑みが消え、その瞳に宿る純粋な殺気がさらに鋭さを増す。
超高速で繰り出される双剣の連撃は、信の大剣を幾度も弾き、貫の『積層流星槍』をも強引にいなそうと試みる。だが、貫の左腕で唸りを上げる『超螺旋・流星管』の高周波音は、戦場の騒音をかき消すほどに激しさを増していた。限界を超えた回転の負荷により、駆動部からは白い火花が激しく飛び散っている。
「拓、鉄さん、雷、みんなの思いを乗せて……これで穿つッ!!」
(流水岩砕拳・剛流奥義――超螺旋・流星撃)
貫の放った一撃は、ただの突きではなかった。周囲の大気を巨大な竜巻へと変え、すべてのエネルギーを一点に集約した穿光の螺旋。
輪虎は神速の双剣を交差し、その一撃を受け止めようとした。しかし、最先端の技術と古流の呼吸法が融合した破壊力は、彼の予測を遥かに超えていた。
ドガァァァァァァァァァンッ!!!!!!!!
凄まじい衝撃波が平原を駆け抜ける。貫の積層流星槍が放った超螺旋の直撃を受け、輪虎の右手に握られていた、幾多の戦場を潜り抜けてきた愛刀が、根元からバリバリと音を立てて木端微塵に砕け散った。
「なっ……僕の剣が……!?」
最大の武器を失い、輪虎の完璧だった均衡が初めて崩れる。その華奢な肉体が、馬上で大きく仰け反った。
「――終わりだァァァ、輪虎ォォォッ!!」
その決定的な隙を、信が逃すはずがなかった。貫が命懸けで切り拓いた一瞬の光路。信は王騎の大剣を両手で握り締め、己の魂と、これまでに散っていった仲間たちの全ての思いを乗せて、前方へと跳躍した。
ズブゥゥゥゥッ!!!!
信の放った渾身の一振りが、輪虎の無防備な胸元へと深々と突き刺さる。大剣の刃が肉を裂き、骨を砕き、その背中へと突き抜けた。
「ガハッ……!」
輪虎の口から鮮血が溢れ出る。しかし、その表情にあるのは絶望ではなく、どこか穏やかな諦念だった。
「……見事だよ、秦国の若き龍たち。廉頗大将軍……お傍に、お供できなくて……」
信が大剣を引き抜くと同時に、かつて秦軍を恐怖に陥れた「天の剣」、廉頗四天王が一角・輪虎の肉体が、ゆっくりと愛馬から崩れ落ち、山陽の土煙の中へと沈んでいった。
「輪虎様が、討たれたぞォォォ!!」
先鋒の特攻騎兵隊が、その絶対的な支柱を失い、一瞬にして完全なパニックへと陥る。
激戦の中心で、肩で激しく息をする信と、限界を迎えた流星管から立ち上る煙を静かに見つめる貫。
四人の千人将が並び立ち、ついに伝説の四天王をまた一人正面から打ち破ってみせたその瞬間。穿紅軍の将として、貫は赤く染まる平原へと、淀みのない声を響かせた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、あるいは『積層流星槍』を以て、廉頗が誇る天の剣・輪虎、貴様の超高速なる双剣を破り、ここに討ち果たした。信、お前の魂の一撃が、この戦いに終止符を打った。輪虎を失った魏軍よ、我らの前を進むことは断じてできぬ。次はいよいよ、総大将・廉頗、貴様の首を正面から穿ち砕くのみだ」
貫の傲る高ぶることのない、しかし怪物を連続で屠った真の勝者としての絶対的な自己紹介の激。
その声が響き渡ると同時に、本陣の後方から、それまでの戦場の熱気を一瞬で凍りつかせるほどの、まさに天災の如き巨大な地鳴りが近づいてきた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
「……来たな」
王賁が槍を構え、冷徹な視線を地平線へと向ける。
「ああ。介子坊に続き輪虎まで失ったんだ。あのじいさんが、もう黙っているわけがねえ」
蒙恬も笑みを完全に消し、冷や汗を流しながらその方向を見据えていた。
魏軍の鳴らす地響きが地鳴りへと変わり、引き裂かれた雲の隙間から、一際巨大な巨馬に跨った老将が姿を現す。その背に背負うのは、魏国の全軍を象徴する巨大な大将軍旗。そしてその瞳に宿るのは、二人の四天王を失ったことへの、底知れぬ怒りと狂気――。
「我が剣たちをよくも散らしてくれたな、秦国の雛鳥ども。……この廉頗自らが、貴様らを跡形もなく磨り潰してくれよう」
ついに前線へと降臨した、生ける伝説・大将軍廉頗。その圧倒的な覇気が戦場全体を圧殺する中、秦国の若き新星たちとの、時代を懸けた本当の最終決戦の幕が上がるのだった。
次回:第51話 不落の巨鉄、伝説を撥ね返す