キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
ドゴォォォォォォォォンッ!!!!
地響きではない。それは、大将軍・廉頗が放つ、目に見えるほどの濃密な「覇気」が、山陽の平原を物理的に圧殺する音だった。
「介子坊に続き、輪虎まで……。我が愛おしき翼を二つ同時にへし折るとは、小癪な秦国の雛鳥どもめッ!!」
怒髪天を突くとはまさにこのことか。巨馬を駆る廉頗の姿は、さながら地獄から這い出た戦神そのもの。その手に握られた規格外の大刀が、陽光を浴びて凶々しくギラリと輝く。廉頗が率いる魏軍本隊五万の怒涛の進撃は、正面に位置する『穿紅軍』の第一防衛線へと真っ直ぐに向けられた。
「来るぞ……! 陣形を崩すな! 死力を尽くして持ちこたえろ!!」
突撃隊長の雷が声を枯らして叫ぶが、廉頗の放つ絶対的な威圧感を前に、百戦錬磨の穿紅軍兵士たちでさえも足がすくみ、呼吸を忘れるほどに圧倒されていた。
「ガタガタ震えてんじゃねえ、若造どもがァッ!!」
地平線を割り、弾丸のごとき速度で突撃してきた廉頗が、馬上で大刀を大きく振りかぶる。山をも一刀両断せんと放たれたその一振りは、空気を爆破させながら、穿紅軍の防衛線の中心へと振り下ろされた。
誰もが「全滅」の二文字を覚悟したその瞬間、血煙を割って最前線へと躍り出たのは、満身創痍の副将・鉄であった。
その両腕には、介子坊との戦いで大破したはずの盾が、全く異なる禍々しい輝きを放って装着されていた。工匠の拓が、他隊の職人たちをも巻き込み、魏竜や介子坊の武器から回収した特殊な流星鉄を鎔解して、文字通り命を削るような突貫作業で完成させた、進化の結晶――『真・流水反衝盾』である。
「拓が命懸けで直してくれたんだ……! 伝説だか何だか知らねえが、この鉄の防壁、1ミリたりとも凹ませられると思うなァァァッ!!」
ガギィィィィィィィィィィィィィンッ!!!!!!!!
戦場全体の動きが完全に止まった。
廉頗の放った一撃と、鉄の『真・流水反衝盾』が正面から激突する。
凄まじい衝撃波が円状に広がり、周囲の地面が直径数十メートルにわたって陥没し、土煙が天高く舞い上がった。
「ぬぅ……ッ!?」
廉頗の顔に、この日一番の驚愕が走る。己の渾身の一振りが、たかが千人隊の、それも傷だらけの副将ひとりに完全に受け止められたのだ。
鉄の両腕の骨がきしみ、口からドッと鮮血が溢れる。しかし、進化を遂げた盾の内部回路は、廉頗の破壊エネルギーを限界を超えて吸収し、凄まじい反発光へと変換していた。
「今だ……貫ァァァッ!! 受け流した力ごと、あのじいさんをブチ抜けェェェッ!!」
盾から放たれた目も眩むような反衝の光が、廉頗の視界と大刀の軌道を一瞬だけ強引に弾き飛ばす。
その極限の好機、光を放つ盾の真後ろから、一筋の穿光が一直線に廉頗の胸元へと突き出された。
新しく千の軍勢を率いる真の傑物となり、仲間の命懸けの防壁が作り出した唯一無二の勝機に、全霊の矛を振るう秦国の新星として、貫は『積層流星槍』を正眼に構え、淀みのない声を爆発させた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、あるいは仲間の命を繋ぐ『真・流水反衝盾』の真髄を以て、元・趙国三大天、現・魏軍総大将・廉頗、貴様の誇る絶対的な武勇、その大刀の一振りごと、正面から跡形もなく穿ち砕く。鉄、お前の不落の意思、確かに受け取った。四つの千人隊の絆がある限り、我らの防壁は、いかなる伝説だろうが絶対に突破できぬ!」
貫の傲る高ぶることのない、しかし大将軍・廉頗の首を本気で獲りにいく、絶対的な自己紹介の激。
キィィィンと天を劈く高周波の音が鳴り響き、貫の左腕の流星管が超高速で回転を始める。
(流水岩砕拳・剛流奥義――超螺旋・真・流星撃)
「小癪なァァァッ!!」
廉頗が驚異的な反応速度で大刀を引き戻し、貫の螺旋の突きを迎え撃つ。
槍の穂先が放つ大竜巻の如き螺旋の破壊力と、廉頗の大刀が放つ絶対的な剛力が、至近距離で激しく火花を散らし合う。
鉄が命懸けで守り抜いた防衛線の上で、ついに始まった総大将・廉頗と穿紅軍・貫による、時代を揺るがす直接対決。この一撃の行方に、山陽の、そして中華の未来のすべてが懸かっていた。
次回:第52話 宿縁の旋風、本気の伝説